レビュー
イメーションのWindows To Go対応USBメモリを試す
~USBからWindows 8を起動可能
(2013/11/9 06:00)
イメーションが発売中のUSBメモリ「IronKey Workspace W500」は、一般的なUSBメモリと色々な点で異なるハイエンドな製品だ。
まず、速度については連続読み込みが400MB/sec、連続書き込みが316MB/secとSSD並に速い。さらに、256bit AESハードウェア暗号化機能を搭載。筐体は、MIL-STD-810F準拠の防水/防塵/耐衝撃仕様といった具合だ。加えて、Windows 8 Enterprise版でサポートされるWindows To Goにも対応する。店頭予想価格は32GBが17,300円前後、64GBが25,000円前後となる。今回32GBモデルをイメーションから借用できたので、簡単に紹介したい。
まず、Windows To Goについて説明しよう。これは、WindowsをUSBメモリにインストールしたものである。仮想化ではなく、完全なWindows OSがUSBメモリにインストールされる。これにより、会社で作業していた環境をそのままUSBメモリごと持ち帰り、家や出張先などで違うPCで同じ環境で作業できる。この際、ホストPCの内蔵ストレージはWindows To Goからはアクセスできず、履歴やデータがPCに残ることがないため、情報が漏洩する心配はない。
Windows To GoをUSBメモリにインストールできるのは、Windows 8 Enterprise版となる。同OSは、一般に小売りされておらず、マイクロソフトとの契約ベースで導入する。そのため、一般のコンシューマユーザーがこの機能を利用する機会はほぼないと言っていい。しかし、面白い機能ではあるし、今回イメーションより、Windows To Goをインストールした形でお借りできたので、その挙動についても併せて紹介する次第だ。
Windows 8のWindows To Goをインストールできるのは、Windows To Go認証を受けたUSB 3.0対応デバイス。利用に当たっては、USB 3.0でもUSB 2.0でも動作するが、OSを動作させるので、USB 3.0で利用したいところだ。ホストPCのOSとしては、USBブート対応のWindows 7/8機で利用できる。
Windows 8は起動シーケンスが高速化されたため、普通に起動しているとBIOSを立ち上げられず、USBブートが無効になっているとWindows To Goが起動できない。ここで、「PC設定の変更」からBIOSを立ち上げるようにWindows 8を終了させてもいいのだが、チャームの検索で「Windows To Go」と入れれば「Windows To Goスタートアップオプション」が開くので、こちらの方が手軽だ。「はい」を選択して再起動すると、USBから起動する。
先ほど、ローカルストレージに情報を残さないので、漏洩の心配がないと書いたが、もちろん、USBメモリごと紛失/盗難してしまうと、その限りではない。そのため、何らかの暗号化とペアで利用するのは必須だろう。Windows 8のBitLocker To Goで暗号化してもいいが、本製品は標準でハードウェア暗号化機能が付いているので、これを利用するといいだろう。
借用品はIronkeyユーティリティによる暗号化とパスワードロックがかかっていたので、Windows To Goが起動する前に、このユーティリティによるパスワード入力画面が表示される。パスワードを入力すると、普通にWindows 8が起動する。この際、ハードウェアはそのPCのものを利用するが、ストレージはシステムドライブがUSBメモリとなり、元々のHDD/SSDは見えなくなる。
起動してしまえば、あとは普通のWindows 8(Enterprise)だが、何点か通常版と異なるところもある。まず1つが既定では休止状態をサポートしないこと。これは、休止状態にして、別のPCに挿して復帰するとストレージに待避させた内容が失われてしまうためだ。また、Windowsストアを通じてライセンス供与されるアプリは、ライセンスがハードウェアにリンクされるが、Windows To Goは異なるホストPCにローミングするよう設計されているので、ストアへのアクセスは既定で無効となっている。ちなみに、Windows To Goが動作中にUSBメモリを抜くと、システムは一端停止し、60秒間そのままだと停止する。60秒以内に挿し直せば、元に戻る。
参考までにWindows To Goを起動した状態でCrystalDiskMarkによるベンチマークを測定してみた。結果として、連続読み込みが約350MB/sec、連続書き込みが約105MB/secと、書き込みが公称よりずいぶん低い値になってしまった。これは、Windows To Goのシステムドライブとして利用していることや、暗号化が有効になっていることが関係しているのかもしれない。今回借りた状態では、通常のUSBマスストレージとしては利用できなかったのだが、その状態であれば、もう少し書き込み速度は向上するものと思われる。イメーションでは、Windows To Go対応製品として、最速を謳っている。
本体サイズは21×9×82mm(幅×奥行き×高さ)、重量は32gで、一般的なUSBメモリと変わらないが、Windows To Goデバイスで唯一防水仕様となっており、防塵機能も備えるなど、高耐久を謳う。ただ、利用していると本体がそこそこ熱を持つのが、ちょっと気になった。また、幅はそんなに広いわけではないが、隣接のUSBポートとの距離が近いと、若干干渉する可能性がある。
以上の通り、IronKey Workspace W500は、MicrosoftによるWindows To Go認定を取得するとともに、他社製品にない防水仕様や、高速アクセスを売りとしたハイエンド製品だ。利用するユーザーは限られるものの、Windows To Goを使うのであれば、選択肢の1つとして検討すべき製品だろう。