レビュー

第2世代Maxwell採用の「GeForce GTX 980/970」詳細レビュー

 前回の「GeForce GTX 980」ベンチマーク速報の続報として、GeForce GTX 980と同時に発売となった下位モデル「GeForce GTX 970」のベンチマークスコアを、新たに追加した比較製品のスコアとともに紹介する。

TDP145WのハイエンドGPU「GeForfce GTX 970」

MSI「GTX 970 GAMING 4G」

 今回新たにベンチマークテストを実施するGeForce GTX 970(以下GTX 970)は、9月19日(日本時間)に上位モデルにあたるGeForce GTX 980(以下GTX 980)とともに登場したMaxwellアーキテクチャ採用のハイエンドGPUだ。

 GTX 970は、上位のGTX 980と同じGPUコア「GM204」を採用。1,664基のCUDAコアと104基のテクスチャユニットを備える。GPUコアは自動オーバークロック機能の「GPU Boost 2.0」をサポートしており、ベースクロック1,050MHz、ブーストクロック1,178MHzで動作する。メモリインターフェイスは256bitで、7GHzで動作する4GBのGDDR5メモリと接続している。

 メモリ周りの仕様が上位のGTX 980と同等である一方、CUDAコアやテクスチャユニットなど、GPUコアが持つユニットが削られ、動作クロックも引き下げられた。削られたユニットの数は、128基のCUDAコアや8基のテクスチャユニットにより構成されているSMMの2基分に相当する。この結果、GPUのTDPはGTX 980より20W低い145Wとなっている。

【表1】GeForce GTX 980/970の主な仕様
GeForce GTX 980GeForce GTX 970GeForce GTX 780 Ti
アーキテクチャMaxwell(GM204)Maxwell(GM204)Kepler (GK110)
製造プロセス28nm28nm28nm
GPU ベースクロック1,126MHz1,050MHz875MHz
GPU ブーストクロック1,216MHz1,178MHz928MHz
CUDAコア数2,048基1,664基2,880基
テクスチャユニット128基104基240基
メモリ容量4GB GDDR54GB GDDR53GB GDDR5
メモリクロック7.0GHz7.0GHz7.0GHz
メモリインターフェイス256bit256bit384bit
ROPユニット64基56基48基
TDP165W145W250W
価格549ドル329ドル699ドル

【記事修正:2015年1月30日】NVIDIAよりGeForce GTX 970のスペックに誤りがあったとのアナウンスがありました。ROP数は64基から56基、L2キャッシュが2,048KBから1,792KBとなります。記事中の当該箇所を修正しました。

 今回借用したGTX 970搭載ビデオカードは、MSIの独自デザイン採用モデル「GTX 970 GAMING 4G」だ。大口径ファンを2基搭載した大型GPUクーラー「TWIN FROZR V」を搭載。MSI謹製のユーティリティ「GAMING APP」を利用することで、GPUの動作クロックを3段階(OC Mode、Gaming Mode、Silent Mode)に切り替えて運用できる。

 ディスプレイ出力は、HDMI 2.0、DisplayPort、DVI-D、DVI-Iを各1系統ずつ装備。基板上部には2基のSLI端子と、8ピン、6ピン各1系統の補助電源供給用コネクタを備える。

大口径ファンを2基備えるMSI独自のGPUクーラー「TWIN FROZR V」を搭載。低負荷時はファンが自動的に停止する
基板裏面。GTX 980のリファレンスボードのようなバックプレートは搭載していない
ディスプレイ出力インターフェイス。HDMI 2.0、DisplayPort、DVI-D、DVI-Iを各1系統ずつ用意
SLI端子は2基用意されている
補助電源コネクタは8+6ピン仕様

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマーク結果の紹介に移りたい。今回は、前回の記事でテストしたGTX 980、Radeon R9 290X(以下R9 290X)に加え、NVIDIA製GPUは、GeForce GTX 780 Ti(以下GTX 780 Ti)、GeForce GTX 780 6GB(以下GTX 780 6GB)、GeForce GTX 770(以下GTX 770)、GeForce GTX 680(以下GTX 680)の4製品を追加。AMD製GPUもRadeon R9 290(以下R9 290)を追加した。

 基本的に、テスト用の機材は前回の検証時と同じだが、GTX 980については、前回の記事公開後にリリースされた新ドライバ「GEFORCE 344.11 Driver」で再テストを行なっている。また、用意した比較用GPUのうち、GTX 780、R9 290については、OC仕様のビデオカードであったため、リファレンス相当のクロックまでダウンクロックしてテストを行なった。

【表2】テスト環境
GPUNVIDIA GeForce
(GTX 980/970/780Ti/780/770/680)
AMD Radeon
(R9 290X/290)
CPUIntel Core i7-4790K
マザーボードASUS MAXIMUS VII GENE
メモリDDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V)
ストレージ120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ)
電源Antec HCP-1200(1200W 80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバGeForce 344.11 DriverCatalyst 14.7 Beta
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit
GeForce GTX 780 6GB搭載ビデオカード、MSI「N780 TF 6GD5/OC」
Radeon R9 290搭載ビデオカード、MSI「R9 290 GAMING 4G」

 今回実施したベンチマークテストは、「Battlefield 4」(グラフ1、2)、「3DMark」(3、4、5、6、7)、「3DMark11」(グラフ8)、「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ9)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ10)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ11)。

 まずはDirectX 11とAMD独自API「Mantle」をサポートする「Battlefield 4」での結果から確認する。8つの比較製品の中で、Battlefield 4のトップスコアをマークしたのはGTX 980。3,840×2,160ドット時にMantleを利用したR9 290Xに2fpsの差で逆転を許しているものの、DirectX 11ではいずれの条件でも最高のfpsを記録した。

 GTX 970はGeForce勢ではGTX 780 Tiに次ぐスコアを記録した。描画品質を「中」に落とした条件では、GTX 780 Tiに10%ほど差を付けられているものの、描画品質を「最高」に設定すると一気に差を詰め、1,920×1,080ドット時に1%差、3,840×2,160ドット時には逆転している。

【グラフ1】 Battlefield 4 [描画設定:中]
【グラフ2】 Battlefield 4 [描画設定:最高]

 Futuremarkの3DMarkでも、スコアでトップに立ったのはGTX 980だ。GeForce勢で2番手に付けたGTX 780 Tiとのスコア差は、Fire Strikeで11~15%、Sky Diverで5%、Cloud Gateで6%、Ice Storm Extremeで4%。GPU負荷の高いテストほど、GTX 780 Tiとのスコア差が拡大する傾向がみられる。

 GTX 970は、GeForce勢ではGTX 780 Tiに次ぐ3番手のスコアを記録。4番手のGTX 780 6GBには2~8%の差をつけており、GTX 780 6GBよりもGTX 780 Tiに近い結果となった。Radeon勢との比較では、僅かな差で遅れを取ったSky Diverを除き、GTX 970がR9 290を1~5%上回った。

【グラフ3】 3DMark - Fire Strike [Default]
【グラフ4】 3DMark - Fire Strike [Extreme]
【グラフ5】 3DMark - Sky Diver [Default]
【グラフ6】 3DMark - Cloud Gate [Default]
【グラフ7】 3DMark - Ice Storm Extreme [Default]
【グラフ8】 3DMark11 [Extreme]

 ファイナルファンタジーXIVでは、全ての条件でGTX 980が最高スコアを記録しているものの、描画負荷の高い条件になるほど、GTX 780 Tiとのスコア差が減少していることが確認できる。これは、3DMark - Fire StrikeやBattlefield 4での結果とは逆の結果だ。この傾向は、MHFベンチマークやPSO2ベンチマークでも確認できる。実際のゲームをベースにしたこれらのDirectX 9系ベンチマークテストにおいて、GTX 980とGTX 970は、Kepler世代のウルトラハイエンドGPUであるGTX 780 Ti、GTX 780 6GBに比べ、描画負荷が高くなった際のスコアの低下が大きいようだ。

 とはいえ、4K解像度で描画品質を上げた状態であっても、比較製品中最高のスコアを記録したGPUが、GTX 980であることに変わりはない。GTX 970についても、ファイナルファンタジーXIVの「3,840×2,160ドット@最高品質」でのみGTX 780に逆転されているものの、そのほかの条件ではGeForce勢で3番手のポジションを守っている。

【グラフ9】 ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
【グラフ10】 MHFベンチマーク【大討伐】
【グラフ11】 PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0

 最後に各GPUを搭載したシステムの消費電力を比較する。測定にはサンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用。ベンチマーク実行中の消費電力については、最大消費電力を測定した。

 アイドル時の消費電力はGTX 980が55W、GTX 970が56Wをそれぞれ記録。GTX 700世代の製品とはほぼ差がなく、GTX 680やRadeon勢には5~6W程度の差を付けた。

 一方、ベンチマーク実行時の消費電力については、GTX 980はGTX 780 Tiより30~82W、GTX 970はGTX 780より43~70Wも低い数値となった。性能で上回りながら、消費電力でもこれほどの差をつけるGTX 980とGTX 970の電力性能比は驚嘆に値する。

【グラフ12】 システム全体の消費電力

Keplerアーキテクチャをも圧倒する驚異的な電力性能比

 以上の通り、Maxwellアーキテクチャ採用の新GPUコア「GM204」ベースのGTX 980とGTX 970の性能を、従来のハイエンドGPUと比較してみた。GTX 980がGTX 780 Tiを確実に上回るパフォーマンスを発揮した点もポイントではあるが、やはり注目すべきはGM204コアの電力性能比だろう。Keplerアーキテクチャ自体、電力性能比の高さが注目されたアーキテクチャであったが、それを圧倒するMaxwellアーキテクチャの電力性能比は驚異的だ。

 GTX 970については、KeplerアーキテクチャベースのウルトラハイエンドGPUであるGTX 780を超え、条件次第でGTX 780 Tiに迫るほどの性能を持ちながら、5万円前後で購入できる費用対効果の高さも見逃せない。電力性能比と費用対効果、そこに実性能まで伴ったGTX 980、GTX 970は、より快適なゲーミングPCを構築したいと考えるユーザーにとって、極めて魅力的な選択肢となるだろう。

(三門 修太)