レビュー
日本市場向けにカスタマイズした「Radeon R7 250XE」
(2014/10/1 06:00)
今回、AMDより10月上旬発売予定のRadeon R7 250XE搭載Sapphire製ビデオカード「R7 250XE 1G GDDR5 PCI-E MICRO HDMI/DVI-I/MINI DP」を借用する機会が得られた。1万円台半ばでの販売が予定される同製品の性能をベンチマークテストで探ってみた。
R7 250Xを省電力化した日本市場向けGPU「Radeon R7 250XE」
今回借用したSapphire「R7 250XE 1G GDDR5 PCI-E MICRO HDMI/DVI-I/MINI DP」が搭載するGPUは、エントリー向けGPU「Radeon R7 250X」をベースに、日本市場向けに補助電源コネクタ無しでの駆動が可能なようにカスタマイズした「Radeon R7 250XE」(以下R7 250XE)だ。
AMDはR7 250XEについての詳細な仕様を公開していないが、ベースとなったRadeon R7 250Xと同じく、28nmプロセスで製造されたGCNアーキテクチャ採用GPUコア「Cape Verde」を搭載している。R7 250XEのCape Verdeコアは、640基のStream Processorを搭載し、800MHzで動作する。メモリインターフェイスは128bitで、4.5GHz相当で動作する1GBのGDDR5メモリと接続されている。
Radeon R7 250Xと同じ規模のGPUコアを備えながら、最大動作クロックを1GHzから800MHzに抑えることで消費電力を低減。これによって補助電源コネクタ無しでの動作を実現したのが、R7 250XEというGPUの実態だ。
Sapphire R7 250XE 1G GDDR5 PCI-E MICRO HDMI/DVI-I/MINI DPでは、1スロットに収まるサイズの薄型GPUクーラーを搭載。基板サイズを170×67mmに抑えたLow Profile仕様を採用している。
ディスプレイ出力ポートは、Micro HDMI、Mini DisplayPort、DVI-Iを各1系統ずつ搭載。ディスプレイ出力ポートは全てLow Profile基板上に直接実装されており、Low Profileブラケットに換装した場合でも、1スロットですべての出力ポートが利用できる。
ベンチマーク結果
それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。比較対象には、NVIDIAのGeForce GT 740(以下GT 740)搭載のビデオカードを用意した。
GPU | R7 250XE | GT 740 |
---|---|---|
CPU | Core i7-4790K | |
マザーボード | ASUS MAXIMUS VII GENE | |
メモリ | DDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V) | |
ストレージ | 120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ) | |
電源 | Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD) | |
グラフィックスドライバ | Catalyst 14.7 Beta | GeForce 344.11 Driver |
OS | Windows 8.1 Pro Update 64bit |
実施したベンチマークテストは「Battlefield 4」(グラフ1、2)、「3DMark」(3、4、5、6、7)、「3DMark11」(グラフ8)、「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ9)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ10)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ11)。
まず、DirectX11とAMD独自API「Mantle」の両方に対応する「Battlefield 4」での結果から確認していく。DirectX 11で実行したBattlefield 4では、R9 250XEがGT 740に対し、1,280×720ドット時に15~17%、1,920×1,080ドット時は0~8%、それぞれ優位な結果を記録した。描画品質を最高に設定した場合、両GPUとも30fpsを割り込んでおり、プレイには厳しい性能となっているが、描画品質をある程度落とせば、FPSゲームをプレイできる性能を持っていると言える。
Mantle時の結果については、DirectX 11時のスコアとほぼ同程度となっている。Mantleが性能向上に大きく影響するのは、GPU性能に対してCPU性能が不足しているような場合であり、現行最速の4コア8スレッドCPUであるIntel Core i7-4790Kを搭載した今回のテスト環境では、その恩恵を得られなかったようだ。
Radeonが得意とする新3DMarkでは、Fire Strikeで21~48%、Sky Diverで30%、Cloud Gateで16%、Ice Storm Extremeで22%と、各テストでR7 250XEがGT 740を大きくリードした。また、1世代前の3DMark11でも、約9%の差でR7 250XEが優位となっている。
R7 250XEがGT 740に対して優位な傾向は、実際のゲームをベースにしたベンチマークテストでも変わらない。ファイナルファンタジーXIVベンチマークで7~12%、MHFベンチマークで20~26%、PSO2ベンチマークで10~11%、それぞれR7 250XEがリードしている。
最後に、各ベンチマークテスト実行時の消費電力を比較する。消費電力は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を用い、ベンチマークテスト実行中の最大消費電力を記録した。
アイドル時の消費電力は、R7 250XEが58W、GT 740が52Wを記録し、GT 740が6Wの差をつけて優位に立った。GT 740が消費電力でR7 250XEより優位な傾向は、ベンチマークテスト実行中の最大消費電力でも変わらず、PSOベンチマーク実行時を除き、GT 740がR7 250XEより3~18W低い消費電力を記録した。
ただ、消費電力の数値としてはGT 740の方が低いものの、最大の差がついたファイナルファンタジーXIVベンチマークでも16%の差であり、その他のベンチマークでは3~8%と、1割に満たない差に過ぎない。R7 250XEとGT 740の性能差を考慮すれば、R7 250XEの電力性能比はGT 740と同等以上と言える。
4K解像度での60Hz出力にも対応可能なLow Profile「Radeon R7 250XE」
以上のテスト結果から、R7 250XEはGT 740を上回る3D描画性能と、同等以上の電力性能比を持った製品であることを確認できた。3D描画性能については、エントリー向けGPUの枠を大きく超える程では無いものの、多少描画品質を調整すれば、フルHD解像度でゲームをプレイ可能な性能を持っている。
今回借用したSapphire R7 250XE 1G GDDR5 PCI-E MICRO HDMI/DVI-I/MINI DPは、R7 250XEの持つ性能をLow Profileで利用できることに加え、Mini DisplayPortを備えたことにより、4K(3,840×2,160ドット)での60Hz出力を利用できるというメリットもある。Low Profileが必須なコンパクトPCを使用しているユーザーにとって、選択肢に加える価値のある製品と言えるだろう。