レビュー
新ミドルレンジ「GeForce GTX 960」の性能をチェック
(2015/1/22 23:00)
NVIDIAは1月22日、ミドルレンジGPU「GeForce GTX 960」を発表した。今回、同GPUを搭載したMSI製ビデオカード「MSI GTX 960 GAMING 2G」を借用する機会が得られたので、NVIDIAの新たなミドルレンジGPUを、ベンチマークテストでチェックする。
新GPUコア「GM206」採用のミドルレンジGPU
GeForce GTX 960は、既に発売済みのGeForce GTX 980/970の下位に位置するミドルレンジGPU。GPUコアは上位モデルで採用されている「GM204」ではなく、28nmプロセスで製造されたMaxwellアーキテクチャベースのミドルレンジ向けGPUコア「GM206」を採用。販売価格は199ドルが設定されている。
GeForce GTX 960のGM206コアは、128基のCUDAコアと8基のテクスチャユニット等から構成されるSMMを8基搭載。合計1,024基のCUDAコアと32基のテクスチャユニットを備えている。自動オーバークロック機能のGPU Boost 2.0をサポートしており、GPUコアは、ベースクロック1,126MHz、ブーストクロック1,178MHzで動作する。メモリインターフェイスは128bitで、7.0GHz相当で動作する2GBのGDDR5メモリと接続されている。TDPは120W。
上位モデルのGeForce GTX 970と比較すると、CUDAコアとテクスチャユニットは約6割、ROPユニットとメモリインターフェイスは半分、それぞれ大きく減少した。一方、次世代API「DirectX 12」やHDMI 2.0に関しては、GeForce GTX 960でもサポートしている。
GeForce GTX 960 | GeForce GTX 970 | GeForce GTX 760 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Maxwell(GM206) | Maxwell(GM204) | Kepler(GK104) |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm |
GPU ベースクロック | 1,126MHz | 1,050MHz | 980MHz |
GPU ブーストクロック | 1,178MHz | 1,178MHz | 1,033MHz |
CUDAコア数 | 1,024基 | 1,664基 | 1,152基 |
テクスチャユニット | 64基 | 104基 | 96基 |
メモリ容量 | 2GB GDDR5 | 4GB GDDR5 | 2GB GDDR5 |
メモリクロック | 7.0GHz | 7.0GHz | 6.0GHz |
メモリインターフェイス | 128bit | 256bit | 256bit |
ROPユニット | 32基 | 64基 | 32基 |
TDP | 120W | 145W | 170W |
今回借用したMSI GTX 960 GAMING 2Gは、2スロット占有の大型GPUクーラー「Twin Frozr V」を搭載し、GeForce GTX 960のGPUクロックを独自に引き上げて実装した、オーバークロック仕様のビデオカードだ。
基板上部にはSLI端子と8ピンの補助電源コネクタを各1基ずつ搭載。ブラケット部のディスプレイ出力端子は、DisplayPortを3系統と、HDMI、DVI-Iを各1系統ずつ備える。
MSI GTX 960 GAMING 2Gには、GPUクロック毎に「OC Mode」、「Gaming Mode」、「Silent Mode」という3つの動作モードが用意されている。今回は、最もリファレンスクロックに近いSilent Modeでベンチマークテストを実施した。
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマーク結果の紹介に移りたい。今回のテストでは、GeForce GTX 960の比較対象として、NVIDIA製GPUの「GeForce GTX 970」、「GeForce GTX 770」、「GeForce GTX 760」と、AMD製GPUの「Radeon R9 285」を用意した。
比較用に用意した製品が、いずれもオーバークロック仕様のビデオカードだったため、各GPUのリファレンスクロック相当にダウンクロックしてベンチマークテストを実施した。
GPU | GTX 960 | GTX 970/770/760 | R9 285 |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-4790K | ||
マザーボード | ASUS MAXIMUS VII GENE | ||
メモリ | DDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V) | ||
ストレージ | 120GB SSD(Intel SSD 510シリーズ) | ||
電源 | Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD) | ||
グラフィックスドライバ | GeForce 347.25 Driver | GeForce 347.09 Driver | Catalyst Omega 14.12 |
OS | Windows 8.1 Pro Update 64bit |
今回実施したベンチマークテストは、「BATTLEFIELD 4」(グラフ1)、「3DMark」(グラフ2~7)、「3DMark11」(グラフ8)、「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ9)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ10)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ11)。
まずはBATTLEFIELD 4の結果から確認する。ここでは、フルHD(1,920×1,080ドット)と4K(3,840×2,160ドット)の解像度で、描画設定を「中」と「最高」に設定した場合のfpsをそれぞれ測定した。
GeForce GTX 960の結果を見てみると、描画設定を「中」にした場合、フルHDと4KともGeForce GTX 760を上回る性能を発揮したが、描画設定を「最高」にすると、両GPUのfpsはほぼ同じ数値となった。Maxwellアーキテクチャはメモリ帯域の効率をKeplerアーキテクチャより約33%向上させたとしているが、流石に128bitという狭いバス幅が響いているようにも見える。
上位モデルであるGeForce GTX 970には、フレームレートが頭打ちになっている条件を除いて1.5~2.4倍もの差を付けられている。数字の並びでは隣り合うGeForce GTX 970だが、性能の隔たりはかなり大きいということが伺える。
AMDのミドルハイGPUであるRadeon R9 285との比較では、最も負荷の低い条件では同じfpsを記録したものの、描画負荷が上がるにつれ、10%前後の差を付けられている。なお、Radeon R9 285に関しては、同GPUのベンチマークレビュー時同様、独自API「Mantle」を利用した時のスコアが奮わない結果となっている。
続いて、3DMarkの結果を確認していく。3DMarkにおけるGeForce GTX 960のスコアは、ほとんどの条件で比較製品中4番目に位置している。唯一の例外は、最も負荷の高いFire Strike Ultra実行時で、GeForce GTX 960はGeForce GTX 770に約11%の差を付けて逆転している。
もっとも、より高いスコアを記録したGeForce GTX 970とRadeon R9 285と比較すると、描画負荷が上がる毎にスコア差を広げられていることが分かる。GeForce GTX 960が高負荷時に性能が落ちにくいというより、GeForce GTX 770のスコア低下が大きいとみるべきだろう。
そのほかのベンチマークテストの結果では、おおむねGeForce GTX 760以上のスコアは維持しているものの、描画負荷が高くなるとその差が減少していることが見て取れる。特にスコアの落ち込みが顕著なファイナルファンタジーXIVでは、描画品質を最高品質にした際に、フルHDと4Kのどちらの解像度でもGeForce GTX 760の逆転を許している。
最後に、各ベンチマークテスト実行時にシステムが消費した最大電力を測定した結果を紹介する。消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)で行なった。
アイドル時の消費電力についてはほぼ横並びの結果となったが、ベンチマーク実行中の最大消費電力については、GeForce GTX 960が、比較製品の中でただ1つ200W未満に収まるという結果で他のGPUをリードした。
比較対象のうち、GeForce GTX 970が特別仕様のオーバークロックモデルを利用したためか、消費電力がかなり高めになっている点には注意が必要だが、GeForce GTX 960の結果は、Keplerアーキテクチャ比で2倍の電力効率を実現するという、Maxwellアーキテクチャ採用のミドルレンジGPUらしい結果と言えるだろう。
高いコストパフォーマンスが期待できるミドルレンジGPU
性能面でGeForce GTX 760から大きく進化したとは言えない結果となったが、一世代前のミドルハイGPUをおおむね上回る性能を発揮しつつ、Maxwellアーキテクチャらしい省電力性を示した点は評価できる。DirectX 12やHDMI 2.0など、新しい機能をサポートしていることも含めて考えれば、199ドルクラスのGPUとしては、一歩抜きんでた存在と言えるだろう。
国内では2万円台後半からと、ミドルレンジとしてはやや値が張るが、フルHDまでの解像度でPCでゲームを楽しみたユーザーにとって、コストパフォーマンスに優れた選択肢となりそうだ。