レビュー
【本日発売】薄くなったNEC AT製WiMAX 2+モバイルルーターを試す
(2014/6/20 06:00)
厚さ8.2mmのNECアクセステクニカ製WiMAX 2+モバイルルーター「Wi-Fi WALKER WiMAX 2+ NAD11」(以下、NAD11)が本日6月20日より発売となる。それに先駆けて製品を試用する機会を得たので、簡単なレビューをお届けする。
UQが発売するWiMAX 2+製品は、NAD11が2製品目。初の製品の「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」(以下、HWD14)もモバイルルーターで、大きな違いとしては製品の薄さが半分近くになったことが挙げられる。その一方で公称連続通信時間は、WiMAX 2+では約540分から420分に短くなっているものの、WiMAXでは約570分から約630分に伸びており、必ずしもスタミナは減っていない。このほか、KDDI網のLTE通信機能が省略されているのも、HWD14との違いだ。
価格はUQ Flatツープラスおトク割適用時で、単体が2,800円、クレードルセットが4,800円(いずれも税別)。
URoad-Aeroによく似たスリムな外観
では、まず外観から見てみよう。本体サイズは約109×65×8.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約81g。HWD14は約100×62×15.5mm(同)で約140gなので、厚さ/重量とも半分とは言わないが、それに近くなっている。15.5mmだとポケットに入れると嵩張るが、8.2mmならスマートフォンよりも薄く、ほとんど気にならないだろう。なお、通信中は身体から1.5cm以上離すことが推奨されている。
製造元が違うが、サイズも含め、デザインの雰囲気はWiMAX用の「URoad-Aero」にちょっと似ている。実際、URoad-Aeroの本体サイズは約106×63.8×8.4mm(同)、重量は約74gなので手に持った感覚は近い。筆者は普段URoad-Aeroを使っているので、WiMAXからの乗り換えという視点で、主にこの2つを比較していきたい。
バッテリ容量は、URoad-Aeroが2,080mAhで、NAD11が2,100mAhとほぼ同じ。だが、WiMAX利用時の連続通信時間は、URoad-Aeroは約720分なので、NAD11の方が1時間半ほど短いことになる。とは言え、これだけ持てば丸1日の外出も充電無しでカバーできる。電波の出力を上げたWiMAXハイパワーに対応し、オプションで有線LANクレードルが用意されるのは、両製品とも同じだ。
URoad-Aeroにない機能としては、IEEE 802.11acに対応する点が挙げられる。WiMAX 2+は最大110Mbpsなので、LAN側は11nでも事足りるが、5GHz帯対応という意味で、周囲の2.4GHz帯の干渉を受けにくくなることは歓迎できるだろう(URoad-Aeroは2.4GHz帯のみ対応)。なお、本製品に限らず5GHzは法令上、屋外では利用できない。
もう1つ、本製品は小型のディスプレイを備えるのも違いだ。URoad-Aeroではバッテリ残量や、接続状況をアイコンLEDで示すだけだが、NAD11は、文字表示もできるし、各種設定変更もできる。PCなどに比べると操作性が格段に悪いので、無理して本機で変更せず、PCなどを使った方がいいが、いざという時に単体でも設定ができるのは安心できる。
使い勝手
続いて使い勝手。基本的には、回線契約の部分を除いては、基本設定のまま特に変更する必要は無い。「AtermらくらくQRスタート」に対応するので、Android/iOS端末で同梱のQRコードを読み取ると、暗号化キー入力の手間も省ける。USBによる有線接続も同様で、少なくともWindows 8.1 Updateの環境では、USBに繋ぐと自動的にドライバもインストールされ、即座に使える状態になった。ただし、5GHz接続はデフォルトではオフになっているので、必要に応じて変更する。
USB接続については、マニュアルにほんの少ししか記載がないが、Windows VistaおよびMac OS X 10.6以降のPCでは、本製品をUSBモデムとして使うことも可能。例えばWAN側の回線は安定しているのに、周囲に人(無線端末)が多いせいで、PC-モデム間の無線LAN接続が安定しないような場合、役に立つ。
余談だが、URoad-Aeroでは裏蓋を開けると、そこにSSIDと暗号化キーが書かれているが、NAD11では電池を外した所に記載されている。最初は、これだと新たな端末を繋ぐ際、電源をいったん落とさないとダメだなと思ったが、NAD11は前述のディスプレイでSSIDと暗号化キーを確認できるので、それは杞憂だった。
WANの設定は、デフォルトでWiMAX 2+が使えるところではそちらを優先し、使えないところでは自動的にWiMAXに切り替える「ハイスピードモード」になっている。WiMAX 2+は、WiMAXに比べて、下りの最大速度が40Mbpsから110Mbpsになっているのが利点だが、通信量が1カ月7GBまでの制限がある。これを超えると通信速度は128kbpsに制限されるが、WiMAXにはそういった制限はないので、7GBを超えたら強制的にWiMAXのみにする「ノーリミットモード」に変更すれば良い。ただし、購入から25カ月は、WiMAX 2+の7GBの制限は適用されないので、それまでは常時ハイスピードモードで問題ない。
WAN通信については、ホットスポットを利用した通信も可能。そして、これはWiMAX 2+のおまけ的なもう1つの利点だが、UQでは、WiMAX 2+ユーザーに無料で「UQ Wi-Fiプレミアム」を7月25日より提供する。こちらを活用すると、WiMAXユーザーより広範な場所で、Wi-Fi WAN通信が使えるようになる。
前述の通り、使用に際して行なう設定はほとんどないが、必要に応じてルーターとしてのネットワークやセキュリティの設定を変更できる。主な項目としては、DHCP関連、パケットフィルタ、ポートマッピング、静的ルーティング、VPN、UPnP、DMZホストなどがある。オプションのクレードルと組み合わせると、本製品を家庭内のメインルータとしても利用できるだろう。
このほか、省電力設定もあり、指定したアイドル時間の経過に応じて、ウェイティング、休止状態、電源オフ、使用しないを設定できる。休止状態を設定した場合は、端末側から本製品をリモート起動することも可能で、専用アプリを使うとAndroid/iOS端末からBluetooth経由で起動できるので、本製品をカバンなどにしまったまま使いたい場合に便利だ。なお、これ以外にスマートフォンアプリからは、ハイスピードモードとノーリミットモードの切り替えや、WANのWiMAXとWi-Fiの切り替えが可能で、各種設定を押すとブラウザで管理画面が表示されるので、PCがなくとも、あらゆる設定を行なうことができる。
通信性能
最後に通信性能を測ってみた。測定には価格.comのスピードテスト・回線速度診断、端末はWindows 8.1ノートPCを利用。WANはWiMAX 2+とWiMAX、LANはWi-FiとUSBの場合でそれぞれ測定。計測回ごとに速度に大きなばらつきがでるため、平均ではなく、各回の結果を掲載している。測定場所は、東京都墨田区のマンションの一室。
まず、WiMAX 2+は、下りで20Mbps前後の値が出ている。サービス開始直前に検証した際の約100Mbpsという数値と比べるとどうしても見劣りしてしまうが、これだけ出ていれば、大抵の用途に対応できるだろう。Wi-FiとUSB接続では、気持ちUSBの方が速いが、体感できるほどの差ではない。上りについては、7Mbps前後で安定している。
WiMAXについては、概ね下りが10Mbps程度だが、USB接続の時はWiMAX 2+に迫る20Mbps前後の値も記録した。ただし、これはWi-FiとUSBの差というより、タイミングの問題だと思われる。PCで使うなら本製品は、有線で接続した方が確実かつ安定して繋がるのは確かなので、そちらの方がお勧めだが、Wi-Fiだからといって本製品の性能が発揮できないと言うことはないハズだ。
WiMAX 2+ | WiMAX | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Wi-Fi | USB | Wi-Fi | USB | ||||
下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り |
20.8 | 5.6 | 24.4 | 7.4 | 13.9 | 3.0 | 9.8 | 1.1 |
24.7 | 7.5 | 26.6 | 6.6 | 11.7 | 2.7 | 2.0 | 1.3 |
4.4 | 7.1 | 23.7 | 7.6 | 16.8 | 3.2 | 19.3 | 2.1 |
24.9 | 7.5 | 5.4 | 7.3 | 0.9 | 2.6 | 9.7 | 1.1 |
17.7 | 7.5 | 26.9 | 7.5 | 10.7 | 2.2 | 20.6 | 1.9 |
新たにWiMAXに加入するなら、2+にしてこの製品を選ぶ
以上、簡単にではあるが、NAD11を試してみた。当たり前だが、WiMAX 2+はWiMAXより速い。料金については、契約年数の縛り(WiMAXは1年、WiMAX 2+は2年)に違いはあるものの、月額は3,696円で同じ。機能性や、今回時間の都合で実際には計測していないが公称のバッテリ駆動時間も、大きく使い勝手が変わるほどの差は無い。
異なる点は利用可能エリアで、大都市を除いてはまだWiMAX 2+網は整備されていない。しかし、本製品はWiMAX 2+が利用できない場所では自動的にWiMAXに切り替わる。
以上のことから、新たにWiMAXに加入してルーターで利用するのであれば、将来性を考え、例えすぐにはWiMAX 2+を使わない場合でも、本製品にした方が、良いだろうといのが結論だ。