初の倍率ロックフリーAPU「A8-3870K」をベンチマーク


AMD A8-3870K

 AMDは12月20日、AMD Aシリーズ APUの新製品となる「A8-3870K」と「A6-3670K」をはじめ13製品を発表した。今回、AMDからA8-3870Kを借用できたので、ベンチマークテストでそのパフォーマンスをチェックしてみた。


●APUシリーズ初の倍率ロックフリーモデル

 A8-3870KとA6-3670Kは、いずれもLlanoベースのAPUで、それぞれA8-3850とA6-3650の上位製品としてラインナップされる。両製品は、動作クロックを除くCPU部の仕様は共通しており、どちらも4つのCPUコアと4MBのL2キャッシュを備える。動作クロックはA8-3870Kが3.0GHz、A6-3670Kは2.7GHzと、それぞれA8-3850とA6-3650から100MHz引き上げられた。

 自動オーバークロック機能のTurbo Coreには対応していないが、新たにCPU倍率の上方変更に対応した。従来のAMD Aシリーズ製品は全てCPU倍率の上限が固定されていたが、これによりA8-3870KとA6-3670KではAMD FXシリーズ同様、CPU倍率を上げるオーバークロックが可能となった。

 内蔵GPUは、A8-3870Kが「Radeon HD 6550D」を、A6-3670Kは「Radeon HD 6530D」を備える。いずれも既存のA8/A6シリーズに採用されていたものと同じ仕様のものだ。その他、既存のA8/A6シリーズ同様、内蔵メモリコントローラはDDR3-1866に対応し、動画の手ブレ補正を行なう「AMD Steady Video」やHDMI 1.4aをサポートする。TDPは両製品とも100W。

【表1】A8-3870KとA6-3670Kの仕様
CPU A8-3870K A8-3850 A6-3670K A6-3650
コア数 4 4 4 4
CPU動作クロック 3.0GHz 2.9GHz 2.7GHz 2.6GHz
TurboCORE
L2キャッシュ 4MB 4MB 4MB 4MB
内蔵GPU Radeon HD 6550D Radeon HD 6530D
GPUクロック 600MHz 443MHz
GPU Streaming Processor 400基 320基
TDP 100W
対応ソケット Socket FM1
推奨小売価格 13,980円 13,980円 11,980円 11,980円
CPU-Zの画面 GPU-Zの画面 テストに用いたASUS F1A75-V PROでは、CPU倍率を47倍まで設定可能だった

●テスト環境

 今回のテストでは、ASUSのAMD A75搭載マザーボード「F1A75-V PRO」を利用してA8-3870Kのパフォーマンスを測定した。比較対象としては、A8-3870Kの1つ下位に位置することとなるA8-3850のデータを用意した。

 その他、テストに使用した機材は以下の表の通り。

【表2】テスト環境
CPU A8-3870K A8-3850
マザーボード ASUS F1A75-V PRO (BIOS:1602)
メモリ DDR3-1866 4GB×2
(9-10-9-28、1.5V)
GPU Radeon HD 6550D 512MB
ストレージ Western Digital WD5000AAKX
電源 Silver Stone SST-ST75F-P
グラフィックスドライバ Catalyst 11.12
OS Windows 7 Ultimate 64bit SP1

●CPU処理中心のベンチマークテスト

 まずはCPUベンチマークのテスト結果から見ていく。テストは「Sandra 2012.SP1 18.20」(グラフ1、2、13、14、15、16)、「PCMark05」(グラフ3、4)、「CINEBENCH R10」(グラフ5)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ6)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ7)、「Super PI」(グラフ8)、「PiFast 4.3」(グラフ9)、「wPrime 2.05」(グラフ10)、「PCMark Vantage」(グラフ11)、「PCMark 7」(グラフ12)だ。

 テストによって変動はあるものの、CPU系のテストではほとんどのテストでA8-3870KがA8-3850を3%前後上回るスコアとなった。これは、両CPU間の動作クロック差(3.45%)に近い値であり、おおよそクロックに応じて性能が向上していることが伺える。

 Sandra 2012.SP1 18.20のCache and Memoryの結果を見ると、キャッシュ性能は動作クロックの差とほぼ同程度の伸びを示しており、動作クロックほぼ比例する形で性能が向上していることが分かる。一方、メモリアクセスについては、誤差と言える程度の差ながらA8-3850の方が高速という結果となっている。

【グラフ1】Sandra 2012.SP1 18.20(Processor Arithmetic/Processor Multi-Media)
【グラフ2】Sandra 2012.SP1 18.20(Cryptography)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test(マルチタスク)
【グラフ5】CINEBENCH R10
【グラフ6】CINEBENCH R11.5
【グラフ7】x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ8】Super PI
【グラフ9】Pifast 4.3
【グラフ10】wPrime 2.05
【グラフ11】PCMark Vantage Build 1.0.2
【グラフ12】PCMark 7 Build 1.0.4
【グラフ13】Sandra 2012.SP1 18.20(Memory Bandwidth)
【グラフ14】Sandra 2012.SP1 18.20(Cache and Memory)
【グラフ15】Sandra 2012.SP1 18.20(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ16】Sandra 2012.SP1 18.20(Cache/Memory Latency - nsec)

●GPU処理中心のベンチマークテスト

 続いて、3Dゲーム系のベンチマークテストの結果を確認していく。

 検証したテストは「3DMark06」(グラフ17)、「ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク」(グラフ18)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ19)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ20)、「3DMark Vantage」(グラフ21、22、23)、「3DMark11」(グラフ24、25、26)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ27)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ28)だ。

 CPU系のベンチマークテストではA8-3870Kが一定の優位性を示していたが、3Dゲーム系のテストでは、3DMarkシリーズのCPUテスト以外、A8-3850とほぼ同程度のスコアとなった。定格クロックにおけるA8-3870KとA8-3850の違いは、CPU動作クロックの100MHz差のみで、内蔵GPUのスペックがまったく同じであることを考えると、この結果は至極当然の結果と言えるだろう。

【グラフ17】3DMark06 Build 1.2.0
【グラフ18】ファイナルファンタジーXIV オフィシャルベンチマーク
【グラフ19】MHFベンチマーク 【大討伐】
【グラフ20】Lost Planet 2 Benchmark(DX9・テストタイプB)
【グラフ21】3DMark Vantage Build 1.1.0
【グラフ22】3DMark Vantage Build 1.1.0(Graphics Score)
【グラフ23】3DMark Vantage Build 1.1.0(CPU Score)
【グラフ24】3DMark 11 Build 1.0.3
【グラフ25】3DMark 11 Build 1.0.3(Graphics Score)
【グラフ26】3DMark 11 Build 1.0.3(CPU Score)
【グラフ27】Lost Planet 2 Benchmark(DX11・テストタイプB)
【グラフ28】Unigine Heaven Benchmark 2.5

●消費電力の比較テスト

 最後にシステム全体の消費電力を測定した結果を紹介する。

 消費電力の測定は、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用して行なった。アイドル時の消費電力のほか、ストレステストツールの「OCCT Perestroika 3.1.0」で、CPUに負荷を掛ける「CPU:OCCT」、GPUに負荷を掛ける「GPU:OCCT」、CPUとGPUの両方に負荷を掛ける「Power Supply Test」をそれぞれ実行した際の消費電力を測定した。

 アイドル時の消費電力が1W差でほぼ同等となった一方、CPUフルロード時には11W、GPUフルロード時で3W、CPUとGPUの両方に負荷を掛けた状態では11Wの差がついた。TDP枠は同じ100Wながらも、100MHz動作クロックが向上した分消費電力はA8-3850より高くなっているようだ。

【グラフ29】システム全体の消費電力

●CPU倍率ロックフリーが最大のポイント

 以上の結果から、A8-3850から100MHz向上した動作クロック分の性能向上は確認できた。ただ、それほど大きな性能向上ではないため、定格で使うことを前提とすると、A8-3850からアップグレードする魅力は薄い。やはり、CPU倍率の上方変更が可能になった点こそがA8-3870Kのポイントとなりそうだ。

 A8-3870Kの推奨小売価格は13,980円とされており、A8-3850の現在の市場価格に比べても割高感はほとんどない。また、同時にラインナップされるA6-3670Kは、内蔵GPUが1グレード下のRadeon HD 6530Dであるため、同じようにCPU倍率を変更できたとしても、3DパフォーマンスでA8-3870Kとの差を埋めるのは困難だろう。これらを考慮すると、これから新規にLlanoベースのPCを組む場合、A8-3870Kは有力な選択肢となりそうだ。

(2011年 12月 20日)

[Reported by 三門 修太]