多和田新也のニューアイテム診断室

AMDが「AMD Aシリーズ」をデスクトップ向けへ展開



 AMDは6月30日、AMD Aシリーズのデスクトップ向けラインナップを発表した。先行して、6月27日に同プロセッサ向けのチップセットを発表しており、早々に製品が発表されることを予想していた人も多いのではないだろうか。デスクトップ向けCPUの新プラットフォームとしても注目される本製品のベンチマーク結果を紹介していきたい。

●まずは4コアから発売、のちに3コア、2コアも

 AMD Aシリーズの概要は、前回のモバイル向け製品発表時に紹介した通り。CPUにStarsコア、GPUはVLIW5ベースの400SP(上位のみ)を持つGPUコアで、モバイル向けと同じアーキテクチャとなる。ただし、当然ながら細かな仕様はモバイル向けとは異なる。

 新製品の仕様一覧が表1だ。コア数、動作クロック、GPU仕様の違う、「AMD A8」2モデル、「AMD A6」3モデル、「AMD A4」2モデルがラインナップされる。またLlanoベースの「AMD E」シリーズも予告されており、デスクトップ向けAMD Eには、これまでの「Zacate」に加えLlanoの2つが混在する状況が生まれそうである。もっとも、PC製品としてAMD Eシリーズを見ると多少の混乱はあるかも知れないが、ZacateとLlanoでは提供プラットフォームが異なることから、自作シーンにおける混乱は小さいだろう。

【表1】デスクトップ向けAMD Aシリーズの仕様
  AMD A8-3850 AMD A8-3800
コア数 4
CPU動作クロック 2.9GHz 2.4GHz
TurboCORE(最大クロック) × ○(2.7GHz)
L2キャッシュ 4MB
対応メモリ DDR3-1866
内蔵GPU Radeon HD 6550D
GPU動作クロック 600MHz
TDP 100W 65W
  AMD A6-3650 AMD A6-3600 AMD A6-3500
コア数 4 3
CPU動作クロック 2.6GHz 2.1GHz
TurboCORE(最大クロック) × ○(2.4GHz)
L2キャッシュ 4MB 3MB
対応メモリ DDR3-1866
内蔵GPU Radeon HD 6530D
GPU動作クロック 443MHz
TDP 100W 65W
  AMD A4-3400 AMD A4-3300 AMD E2-3200
コア数 2
CPU動作クロック 2.7GHz 2.5GHz 2.4GHz
TurboCORE(最大クロック) ×
L2キャッシュ 1MB
対応メモリ DDR3-1600
内蔵GPU Radeon HD 6410D Radeon HD 6370D
GPU動作クロック 600MHz 443MHz
TDP 65W

 発売日についても各製品で異なるのでまとめておきたい。デスクトップ向けAMD Aシリーズの発売は7月3日とされているが、このタイミングではAMD A8-3850とAMD A6-3650の2モデルのみが投入される。追って夏頃にAMD A8-3800とAMD A6-3600、秋以降にAMD A4とAMD E2がリリースされる。トリプルコアのAMD A6-3500は日本国内では発売されない予定だ。

 仕様上のポイントをピックアップしておくと、AMD A8とAMD A6の各最上位モデルとなるAMD A8-3850、AMD A6-3650は、TDP 100Wで、動的オーバークロック機能であるTurbo COREが無効になっているという特徴がある。これは、常に最高のパフォーマンスで動作することを重視した仕様であるとしている。

 メモリはAMD A4/E2を除いてはDDR3-1866をサポートする。ただし、DDR3-1866のサポートは1チャネルあたり1DIMMまでの制限があり、1チャネルあたり2DIMMで使う場合はDDR3-1600がサポートされる最高クロックとなる。

 秋以降の発売となるAMD A4とAMD E2はいずれもデュアルコアの製品となる。気になるのがL2キャッシュの容量だ。Llanoの仕様ではコア当たり1MBのL2キャッシュを持っており、そのまま有効になっていればデュアルコアの場合は2MBとなるはずである。ところが、AMD A4とAMD E2は、L2キャッシュ容量が1MBとされている。

 AMDは秋以降の発売の両ブランドについては現時点で詳細を話せないとしていることから、あくまで推論となるが、1つ考えられるのはL2キャッシュの容量を制限している可能性だ。その根拠となるのが、AMDが示した資料の1ページ(図1)である。この図を見る限り、A8〜A4はいずれもダイサイズ、トランジスタ数が同じなので、同じコアを用いて、製品によって制限をしているという推定ができる。余談だが、この図1はGPUの仕様についても詳しいので参考にされたい。

 もう1つの可能性は、図1とは矛盾してしまうが、別のコアが投入される可能性だ。AMDでは、より低TDPのCPUとして、ネイティブデュアルコアのLlanoも計画している。そのネイティブデュアルコアLlanoの仕様が、512KB L2キャッシュなのかも知れない。こちらは公開されている資料による根拠がないものとなるが、秋以降の発売という時期に合致する。

 ただ、図1の資料がある以上、前者の推論のほうが可能性が高いと筆者は考えているが、これとは別に、デュアルコアLlanoの別モデルが投入される可能性だけは記憶に留めておいてもいいだろう。

【図1】AMD A8〜A4に搭載される各GPUの仕様

 さて、今回テストに用いるのはAMDから借用した最上位モデルの「AMD A8-3850」だ(写真1、2)。OPNは「AD3850WNZ43GX」となっており、具体的な文字列のルールは正式発表後に技術資料が公開されるものとみられる。コアのリビジョンはCPU-Zでは「B0」と判定される(画面1)。

【写真1】デスクトップ向けAMD Aシリーズ最上位モデルとなる「AMD A8-3850」 【写真2】CPU裏面。905ピンのSocket FM1と呼ばれるソケットに対応する 【画面1】CPU-Zの画面

【写真3】Socket FM1。CPUクーラーのリテンションパーツはSocket AM3と互換性がある

 ソケットはCOMPUTEXでマザーボードが公開された際に周知された通り、Socket FM1と呼ばれるものだ(写真3)。中央にブランク部分があり、一見するとSocket 754に似た形状だが、ピン数は905ピンとなっており、当然ながらこれまでのCPUと互換性のないソケットだ。

 ただし、クーラーはSocket AM3と互換性があるので、流用可能だ。ちなみに、ソケット脇のリテンション部はSocket AM3などと微妙に異なっている。Socket AM3などがソケットの周りをグルリと取り囲むような形状であるのに対し、Socket FM1は固定する両端部のみのパーツとなる。一説には、両脇を空けることでCPUクーラーのエアをメモリやVRM部へ流しやすくしている、という話をCOMPUTEXでOEMベンダーから耳にしたが、実際にAMDがそうしたことを考慮して設計したかは不明である。

 先述の通り、発売は7月3日とされている。パッケージは図2、写真4のようなものとなる。AMDよりATIをイメージしてしまうような赤を基調としたパッケージが印象的だ。

 このほか、GPU周りの仕様は先述の通りで、AMD A8-3850では600MHz駆動の400SPが有効化される(画面2)。内蔵GPUのクロック調整(ATI OverDriveに相当する)機能は持っていない。

 一方、CPUの動作クロックは、AMD Vision Engine Control Centerからは範囲を指定することができる(画面3)。これはWindowsの省電力設定と連動してプロファイルが記録される。スライダーを動かすことで800MHz〜最大クロックの間で指定が可能だ。

【図2】AMD A8〜A4で用いられるパッケージイメージ
【写真4】AMD Aシリーズの実際の製品パッケージ 【画面2】AMD A8-3850のGPUコア「Radeon HD 6550D」の動作状態。仕様通り600MHzで動作していることを確認できる 【画面3】GPUについてはクロック調整機能を持っていないが、CPU部の動作クロックの範囲を指定する機能は持っている

●デスクトップ向けLlanoに対応するチップセット
【写真5】AMD A75チップセット

 このデスクトップ向けAMD Aシリーズに対応するチップセットが、6月27日に発表されたAMD Aシリーズチップセットだ(写真5)。AMD AシリーズプロセッサとAMD Aシリーズチップセットの組み合わせで構成されるプラットフォームを、AMDでは「Lynx」のコードネームで呼んでいる。

 現時点ではAMD A75とAMD A55の2種類が提供される。その違いおよびブロックダイヤグラムは図3〜5に示した通り。主な違いは、USB 3.0とSATAだ。

 USB 3.0は上位モデルのA75のみが4ポートをネイティブで備える。ノートPC向けLlanoと同様の仕様で、デスクトップ向けチップセットとしては初めてUSB 3.0をネイティブサポートする製品ということにもなる。

 SATAはAMD A75、AMD A55ともに6ポートを搭載するが、AMD A75は6Gbps対応、AMD A55は3Gbps対応という違いがある。また、Port Multiplierにおけるスイッチング方式として、AMD A75はより性能の高いFIS-based Switchingをサポートする。FIS-based Switchingと、シンプルなCommand-based Switchingの違いについては、SATA-IOのWebサイトにあるアニメーションが分かりやすいので、興味がある方は参照されたい。

 このほか、TDPも多少差があり、AMD A75が7.8W、AMD A55が7.6Wとなっている。

【図3】AMD A75とAMD A55の比較表。また、一部発表済みの通り、ここにロゴがあるマザーボードベンダー各社から搭載製品がリリースされる
【図4】AMD A75のブロックダイヤグラム
【図5】AMD A55のブロックダイヤグラム

【写真6】GIGABYTEのAMD A75搭載マザーボード「GA-A75-UD4H

 今回テストに用いるのは、GIGABYTEのAMD A75搭載マザーボードである「GA-A75-UD4H」である(写真6)。ちなみに、同社のmicroATX版AMD A75搭載製品はすでに店頭に並んでいる。

 プラットフォームの特徴に沿って、簡単に製品をまとめておく。まずI/Oリアパネル部(写真7)のディスプレイ出力はDVI-D、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort、HDMIの4系統を装備。CPUの仕様により、同時出力は2系統までとなるが、出力インターフェイスの自由度は高い製品といえる。Dual Linkに対応するのもAMD Aシリーズの大きな特徴となる。

 USB 3.0ポートはI/Oリアパネルに4ポート、オンボードに4ポート分のヘッダピンを備えている(写真8)。計8ポートが提供されることになるが、うち4ポートはチップセットにより、残る4ポートはEtron Technologyの「EJ168A」を2チップ用いて提供されている(写真9)。

 そのほか、Gigabit EthernetにRealtekの「RTL8111E」、オーディオも同じくRealtekの「ALC889」、IEEE 1394にVIAの「VT6308P」を搭載しているのが特徴だ(写真10)。

【写真7】GA-A75-UD4HのI/Oリアパネル部。昨今のマザーでは一般的なインターフェイスに加え、PS/2を1基残す。オンボードにはシリアルポートのヘッダピンも用意されており、レガシーな環境にも配慮している印象を受ける 【写真8】マザーボード末端部に並ぶU各種ヘッダピン。右方向にUSB 3.0用のヘッダピンが4ポート分備わっているのが分かる
【写真9】USB 3.0を計8ポート搭載。うち4ポートはEtron Technology製のコントローラにより提供されている 【写真10】右から順にRealtek RTL8111E(LAN)、Realtek ALC889(オーディオ)、VIA VT6308P(IEEE 1394)の各チップ

 さて、話は少し変わって、AMD Aシリーズのクロック生成について簡単に触れておきたい。AMD Aシリーズのクロックは、1つのリファレンスクロックを元に、CPU、GPU、メモリ、ノースブリッジの各クロックを生成する。リファレンスクロックのデフォルトは100MHzだ。このクロックを変更することで、上記すべてのクロックに影響を及ぼすことになる。

 そういった中、今回テストに用いたGIGABYTEのGA-A75-UD4Hを例にとると、各部の倍率は割と自由に変更できるようになっている。最近のマザーボードではオーバークロックを多少なりとも意識した製品が増えてはいるものの、AMD Aシリーズがハイエンドユーザー向けプラットフォームではない点を考えると、オーバークロックを検討しているユーザーは、この辺りの設定の柔軟さには慎重になったほうがいいだろう。

 このオーバークロック周りの機能を中心に、GA-A75-UD4HのBIOS画面を何点かピックアップして画面4〜10に紹介しておく。

【画面4】GIGABYTE製マザーでおなじみの「MB Intelligent Tweaker(M.I.T.)」より各種オーバークロック設定が可能。CPU Host Clock Controlがリファレンスクロックの設定で、1MHz刻みでの指定が可能 【画面5】CPUの倍率もなぜか変更できる。倍率を変えると、見かけ上は動作クロックが変化するが、内部CPUクロックは定格でロックされたままで動作するという不思議な動きをする。これは記事では用いていない他社のマザーでも似た動きを示すものがあった 【画面6】メモリクロックの倍率指定。100MHz×9.33の設定が、AMD A8がサポートする上限のDDR3-1866動作ということになる
【画面7】ノースブリッジの倍率指定。ここでは整数倍の指定しか用意されていないが、AMDによるとリファレンスクロック100MHz時のノースブリッジのクロックは654MHzとのこと 【画面8】IGX(内蔵GPU)の設定画面。フレームバッファの指定や、Dual Link DVIの有効化、GPU動作クロックの調整などを行なえる 【画面9】コア電圧などの調整ももちろん可能。CPUコアの電圧は0.025V刻みで、±0.6Vの範囲で指定できる
【画面10】ディスプレイ出力の優先度設定は、Dual Graphics利用時に注意が必要。Dual Graphicsを用いるときはオンボード側から出力させる必要がある

●CPU処理中心のベンチマークテスト

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。前回のモバイル向けLlanoの記事同様、まずはCPU処理を中心としたベンチマークの結果から紹介していく。テスト環境は表2の通り。

 CPUの比較対象としては、まずStarsコアを用いアーキテクチャ面での類似性が高いAthlon II X4から動作クロックの近いAthlon II X4 640を選択。もう1つは価格帯が近いことが予想されるCore i5-2400を用意した。

 また、GPU統合型プラットフォームの比較という観点で、ここではいずれもAPU/CPU、およびチップセットに内蔵されたGPUを用いてテストを行なっている。比較対象の環境に用いたマザーボードは写真11〜12だ。

 なお、AMD環境におけるドライバについてはAMDより提供されたレビュワー用ドライバで統一している。ただし、本テスト終了後になって新ドライバが提供された。テストには間に合っていないが、発売時に公開されるドライバが後者ベースとなった場合、実際にユーザーが手にする環境と性能傾向に差が発生する可能性があることをお断りしておく。

【表2】テスト環境
CPU/APU AMD A8-3850 (2.9GHz) Athlon II X4 640 (3.0GHz) Core i5-2400 (3.1GHz)
チップセット AMD A75 AMD 890 GX+SB850 Intel Z68 Express
内蔵GPU Radeon HD 6550D Radeon HD 4290 Intel HD Graphics
グラフィックスドライバ 8.862-110607a-120249E 8.15.22.1.2361
メモリ DDR3-1333 2GB×2
ストレージ CFD CSSD-S6M128NMQ
電源 CoolerMaster RealPower Pro 1000W
OS Windows 7 Ultimate Service Pack 1 x64

【写真11】AMD 890GX+SB850を搭載するGIGABYTEの「GA-890GPA-UD3H 【写真12】Intel Z68 Expressを搭載するGIGABYTEの「GA-Z68XP-UD5

 まずは、CPUとメモリ周りの比較である。テストは「Sandra 2011 SP3」のProcessor Benchmark(グラフ1)、「PassMark Performance Test 7」のCPU Test(グラフ2)、「PCMark05」のCPUテスト(グラフ3、4)、Sandra 2011 SP3のMemory Bandwidth Benchmark(グラフ5)、Cache & Memory Benchmark(グラフ6)、Memory Latency Benchmark(表3)、PCMark05のMemory Latency Test(グラフ7)だ。

 AMD A8とCore i5については、CPU、メモリともにモバイル向けで見られた傾向と大差ない結果となっている。前回の比較対象としたCore i5-2410Mはデュアルコア+Hyper-Threading、今回のCore i5-2400はリアル4コアという違いはあり、得手不得手が逆転するほどの影響はなく、各プロセッサの総合的な特性による傾向差という判断ができるだろう。

 一方、同じStarsコアとなるAthlon II X4 640との比較であるが、まずCPUベンチマークの結果では、AMD A8-3850がやや低めの結果となった。これはクロック差によるものと見ていい。ある意味、アーキテクチャの類似性の高さがよく分かる結果といえるだろう。

 メモリ周りは帯域幅の測定結果においてAMD A8がAthlon IIに対して上回る結果を見せており、ここでは改善が功を奏していることが分かる。ただ、実効アクセス速度やレイテンシでは大差ない数値が出ており、アクセス手法によって効果の有無は分かれる結果となっている。

【グラフ1】Sandra 2011 SP3 17.64 (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PassMark Performance Test 7 (CPU Test)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test (シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0 CPU Test (マルチタスク)
【グラフ5】Sandra 2011 SP3 17.64 (Memory Bandwidth Benchmark)
【グラフ6】Sandra 2011 SP3 17.64(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ7】PCMark05 Build 1.2.0 Memory Lantecy Test

【表3】Sandra 2011 SP3 Memory Latency Benchmarkの結果詳細
Random Access A8-3850+A75 X4 640+890 GX i5-2400+Intel Z68
1KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.8clocks
4KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.8clocks
16KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.7clocks
64KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 3.6ns/11.2clocks
256KB 5.2ns/15.0clocks 5.2ns/15.6clocks 4.2ns/13.1clocks
1MB 7.1ns/20.7clocks 64.5ns/194.3clocks 10.5ns/32.6clocks
4MB 76.1ns/220.8clocks 72.1ns/217.3clocks 17.6ns/54.7clocks
16MB 86.0ns/249.3clocks 79.5ns/239.6clocks 71.2ns/221.2clocks
64MB 89.3ns/259.1clocks 93.7ns/282.2clocks 75.4ns/234.4clocks
Linear Access A8-3850+A75 X4 640+890 GX i5-2400+Intel Z68
1KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.7clocks
4KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.7clocks
16KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 1.2ns/3.8clocks
64KB 1.0ns/3.0clocks 1.0ns/3.0clocks 3.8ns/11.7clocks
256KB 3.6ns/10.5clocks 3.1ns/9.3clocks 3.8ns/11.8clocks
1MB 3.6ns/10.6clocks 12.2ns/36.7clocks 4.1ns/12.6clocks
4MB 12.7ns/36.9clocks 12.4ns/37.4clocks 4.4ns/13.7clocks
16MB 13.0ns/37.7clocks 12.5ns/37.6clocks 6.7ns/20.9clocks
64MB 13.1ns/37.9clocks 12.5ns/37.6clocks 6.7ns/20.9clocks

 次にアプリケーションを用いたベンチマーク結果だ。テストは「SYSmark 2007 Preview」(グラフ8)、「PCMark Vantage」(グラフ9)、「PCMark Vantage」(グラフ10)、「CineBench R10」(グラフ11)、「CineBench R11.5」(グラフ12)、「POV-RAY v3.7」(グラフ13)、「TMPGEnc Video Mastering Works 5」(グラフ14)を用いている。また、この環境における消費電力の測定結果をグラフ15に示す。

 こちらは先ほど打って変わって、Athlon II X4 640に対して、AMD A8-3850が優位性を見せるシーンが目立っている。これには2つの理由が考えられる。1つはストレージ性能だ。PCMark両ソフトのHDDテストの結果から、SB850に比べAMD A75のストレージ周りの性能は良い傾向が見られる。

 ただ、CineBenchのようにストレージ性能の影響が極めて小さいベンチマークでも好結果を見せるあたり、先の結果で出たメモリ周りの改善も好影響を及ぼしていると考えられる。ともかくCPUコアの演算性能としては大差ないAMD A8とAthlon II X4であるが、プラットフォームとして考えると、AMD A8はより高性能を期待できるシーンは少なくないということが分かる。

 ただ、消費電力は若干大きめの結果となった。Athlon II X4 640+AMD 890GXの環境に比べ1割強の電力消費となっている。一方アイドル時の消費電力はより低く抑えられており、こちらは好印象だ。

 AMD A8-3850+AMD A75の組み合わせではTDPは108W弱、Athlon II X4 640は95Wで、AMD 890GXとSB850のTDPは不明だが、GPU内蔵の2チップチップセットであることを考えればAMD A75を上回ることは考えにくく、両環境の比較においてAthlon II環境のTDPが極端に低いということはないと推測される。そう考えると、AMD A8-3850の実効消費電力は思ったより大きいという印象を残している。

【グラフ8】SYSmark 2007 Preview 1.06
【グラフ9】PCMark 7 Build 1.0.4
【グラフ10】PCMark Vantage Build 1.0.2
【グラフ11】CineBench R10
【グラフ12】CineBench R11.5
【グラフ13】POV-Ray v3.7 RC3
【グラフ14】TMPGEnc Video Mastering Works 5
【グラフ15】各システムの消費電力

●GPU処理中心のベンチマークテスト

 続いては3Dベンチマークである。テスト環境は表4の通りで、先ほどとほぼ同じである。

 ただし、内蔵GPUによるレンダリングのテストのほか、AMD A8-3850とRadeon HD 6450によるDual Graphics環境、および各テスト環境にRadeon HD 6570を装着してのテストも行なった。AMD 890GX内蔵のRadeon HD 4290と、Core i5-2400内蔵のIntel HD GraphicsはDirectX 11非対応のため、対応タイトルのみのテストとする。

 ドライバは先と同じもの。テストに用いたビデオカードは写真12〜13の通りだ。Radeon HD 6570搭載製品はオーバークロックモデルを用いているが、ここではプラットフォーム間の差を見ることが主目的ということもあり、定格へは戻さずにテストしている。

 なお、オーバークロック状態のRadeon HD 6570との比較にはなるが、AMD A8-3850内蔵のRadeon HD 6550Dとの差も、多少はグラフィックス性能の参考になるだろう。

【表4】テスト環境
CPU/APU AMD A8-3850 (2.9GHz) Athlon II X4 640 (3.0GHz) Core i5-2400 (3.1GHz)
チップセット AMD A75 AMD 890 GX+SB850 Intel Z68 Express
内蔵GPU Radeon HD 6550D Radeon HD 4290 Intel HD Graphics
Dual Graphics用GPU Radeon HD 6450
外付けGPU Radeon HD 6570
グラフィックスドライバ 8.862-110607a-120249E 8.15.22.1.2361
メモリ DDR3-1333 2GB×2
ストレージ CFD CSSD-S6M128NMQ
電源 CoolerMaster RealPower Pro 1000W
OS Windows 7 Ultimate Service Pack 1 x64

【写真13】Radeon HD 6450を搭載するGIGABYTEの「GV-R645OC-1GI」。コア675MHz、メモリ1.6GHzの動作 【写真14】Radeon HD 6570を搭載するGIGABYTEの「GV-R657OC-1GI

 さて、テストタイトルは「3DMark Vantage」(グラフ16、17)、「Left 4 Dead 2」(グラフ18)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ19)、「3DMark11」(グラフ20、21)、「DiRT 3」(グラフ22)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ23)、「Unigine Heaven Benchmark 2.5」(グラフ24)。また、3DMark両バージョン実行時の消費電力測定結果を(グラフ25)に示している。

 ちなみに、採用タイトルは前回のノートPCのテストと同じものであるが、今回はより高い性能を持つグラフィックス機能であることを考慮し、多少プリセットを変えている。前回のテスト結果との比較はできないので注意されたい。

 3DMark両タイトルのCPUテストに関しては、CPU依存の結果である。内蔵GPU使用時は外付けGPU使用時に比べ多少スコアが下がる傾向にある。ちょっと不自然な傾向が出てしまったのが、Dual Graphics時のスコアで、3DMark Vantageでスコアを大きく下げた一方で、3DMark11では内蔵GPU使用時とあまり差がない。両タイトルで物理演算エンジンの違いはあるが、ここまで傾向が大きく異なる理由は分からない。

 グラフィック性能の比較については、AMDのGPU統合型プラットフォームとしては、AMD 890GXからAMD A8-3850への移行で大幅に性能を増したことが分かる。AMD 890GXも当時の統合型チップセットとしては悪くない性能を持つものであったが、AMD A8-3850の内蔵GPUであるRadeon HD 6550Dは、Radeon HD 6570のオーバークロックモデルよりやや劣る程度の性能といったところで、AMDがディスクリートGPU並みのグラフィックス性能とアピールするのもうなずける結果だ。

 Dual Graphicsについては、テストタイトルによって効果がまちまちで、まだまだドライバの熟成が足りない印象を残す。ただ効果が大きいタイトルでは、Radeon HD 6570を上回る結果を見せている。

 外付けGPUを用いた際の結果は、低解像度ではCPU性能差の影響も色濃く、Core i5-2400の良さが出ている。解像度が高くなることでこの差が縮まる傾向は見えているので、各環境ともそれなりにビデオカードの性能は引き出せているが、選択するビデオカードとゲームの組み合わせによっては、実用的な解像度においてCPUの差が目立つ結果になる可能性はあるだろう。

 消費電力の結果は先のCPU中心のベンチマークテストの結果とはやや異なる傾向を見せ、A8-3850およびAMD 890GXの内蔵GPUを用いた場合には、やはり後者の環境のほうが消費電力が低い。この点は変わらない。

 ただし、外付けGPUを用いた場合はAthlon II X4 640+AMD 890GXの環境のほうが消費電力が高い。この場合、APU側のGPUがアイドル状態になることが影響しているのだろう。この両者の特性をざっくりまとめると、各プロセッサのTDP枠いっぱいまで動作するようなケースでは消費電力は大きめだが、アイドル時の結果同様、低負荷同士の比較であれば優位性を持つ、という結果になっている。

【グラフ16】3DMark Vantage Build 1.1.0 (CPU Score)
【グラフ17】3DMark Vantage Build 1.1.0 (Graphics Score - Performance Preset)
【グラフ18】Left 4 Dead 2
【グラフ19】Lost Planet 2 Benchmark DX9
【グラフ20】3DMark 11 Build 1.0.1 (CPU Score)
【グラフ21】3DMark 11 Build 1.0.1 (Graphics Score)
【グラフ22】DiRT 3
【グラフ23】Lost Planet 2 Benchmark DX11
【グラフ24】Unigine Heaven Benchmark 2.5
【グラフ25】グラフィックス描画時の消費電力

●GPU統合型プラットフォームと見て面白い製品

 以上の通り結果を見てくると、CPU性能を中心としたベンチマーク結果では、前回のノートPCでの検証と同様、やはりCore i5に対するビハインドは否めない。

 ただ、DirectX 11に対応し、かつRadeon HD 6570に近いレベルの性能を持つGPUが内蔵されている点は特筆できる。GPU統合型プラットフォームという枠組みで見れば、ちょっと大げさな表現ではあるが革命的な性能といっていいだろう。

 それでもやはり前回記事のまとめと同様の印象を筆者は持ってしまう。このグラフィックス性能や、CPUとGPUのメモリ共有など、「APU」という言葉にも表わされている通り、単なるCPU+GPUとして見るにはもったいないほど、Llanoのアーキテクチャは非常に面白いものである。しかしながら、現時点ではこれを活かせる状況になっていないのがジレンマなのだ。

 ハイエンド向けにはBulldozerベースのCPUが控えるものの、メインストリーム向けには、このAMD Aシリーズが主力製品となる。ソフトウェアベンダーからの協力を得てAMD Aシリーズの良さを最大限に引き出せるものをメインストリームユーザーが手軽に入手できる環境が整えば、今回のベンチマーク結果から受ける印象はまったく異なる性格を見せることは間違いない。

 前回と同じことの繰り返しになるが、Llanoのアーキテクチャの優位性を引き出し、AMD Aシリーズにとって追い風になる動きに期待せずにはいられない。