【特別企画】Windows 7インストール実験レポート
~Atom Zシリーズ+US15W搭載ミニノート「Viliv S7」編


Windows 7をインストールした、Viliv S7

 今回は、Atom Zシリーズ+US15Wを搭載するミニノート「Viliv S7」を取り上げる。Atom Zシリーズ+US15W搭載は、もともとMID(Mobile Internet Device)向けとして用意されているものだが、高解像度液晶を搭載するミニノートなど、いわゆる「ULCPCライセンス」の範疇に収まらない仕様を持つミニノートでの採用例が多い。

 今回用意したViliv S7は、Atom Zシリーズ+US15W搭載ミニノートの中でも特殊な製品だとは思うが、タッチパネル液晶を搭載していることも合わせ、Windows 7の動作を見るにはかなり面白そうな機種ということで取り上げることにした。

■■ 注意 ■■

・この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害は筆者および、PC Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・インストール状況、動作の確認などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません 動作確認などについて保証はいたしませんので、自己責任の範囲で行なってください。
・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


●11月5日よりWindows 7用ドライバ・アプリケーションの配布が開始

 今回、Viliv S7へのWindows 7インストール検証を開始した当初、発売元である韓国Yukyung TechnologiesはViliv S7向けのWindows 7用ドライバやアプリケーションを配布しておらず、Windows XP用として配布されているドライバとアプリケーションを利用して検証を進めていた。しかし、11月5日より、Windows 7用のドライバおよびアプリケーションの配布が開始された。過去取り上げた2機種は、どちらもWindows 7へのアップグレードはメーカー非サポートで、対応ドライバなども配布されていなかったが、Viliv S7はメーカーが公式にWindows 7用ドライバ・アプリケーションの配布を開始したことで、Windows 7へのアップグレードはかなりやりやすい機種となった。

 Windows 7用ドライバ・アプリケーションの配布が始まった以上、Windows 7の動作について大きな問題が発生することはほぼないと思われるが、一応マイクロソフトが配布している「Windows 7 Upgrade Advisor」を利用して、ドライバやアプリケーションの対応状況を確認してみたところ、いくつかの問題が表示された。

 まず1つは、Windows Aeroのサポートだ。Viliv S7のグラフィック機能は、チップセットであるIntel US15Wに内蔵される「GMA 500」が利用されている。GMA 500自体はDirectX 9.0/Pixel Shader 2.0に対応しており、Windows Aeroのハードウェア要件を満たしてはいるものの、ドライバの問題でWindows Vistaでも当初はWindows Aeroが利用できないことがあったため、Windows 7でもWindows Aeroの動作に不安があるのは事実。以前、US15W搭載のネットブックにWindows 7 RC版をインストールした時に、Windows Aeroの動作は確認しているので、おそらく動作に問題はないと思うが、この点は実際にWindows 7を導入して確認したいと思う。

 また、デバイスのうち、HDオーディオとタッチパネルコントローラの2つが「互換性不明」と表示された。この2つは、Windows 7インストール時にドライバが導入されない可能性が高いが、公式にWindows 7用ドライバが配布されているので、そちらを手動で導入すれば問題なく動作するはずだ。

 ちなみに、アプリケーションについては、互換性がなかったり、不明と表示されたものはなかったが、こちらについてもWindows 7用のものが配布されているため、基本的にはそちらをダウンロードして導入すればいいだろう。

Vilivサポートページで、Windows 7用ドライバおよびアプリケーションが配布されているWindows 7 Upgrade Advisorでは、Windows Aeroの動作がサポート外と表示されるデバイスでは、「IDT High Definition Audio CODEC」と「Jastec RU Touch Screen Controller」の2つが互換性不明と表示された

●無線LANなど、一部デバイスのドライバは手動での導入が必要

 今回利用したViliv S7は、32GB SSDを搭載し、OSがWindows XP Home Editionの「Viliv S7-32」だ。そのため、過去同様、Windows 7は新規インストールが必須となる。利用したWindows 7は、前回と同じパッケージ版の「Windows 7 Professional アップグレード」。インストールには、USB接続の外付けDVDドライブを利用した。

 今回も繰り返しになり申し訳ないが、一応記しておく。重要なデータのバックアップは必ず行なっておくようにしよう。Viliv S7では、SSDにリカバリデータが保存されており、比較的簡単にリカバリが行なえるようになっているため、システム全体のバックアップは必要ないと思うが、SSD容量が32GBとバックアップも取りやすいため、できれば重要データだけでなく全体をバックアップしたい。

 また、Windows 7インストール時には、リカバリ領域を削除せず、XPがインストールされている領域のみをフォーマットし、そこにWindows 7をインストールするようにしよう。リカバリ領域を削除してしまうと、以前の状態に戻せなくなるので要注意だ。

 加えて、Viliv S7では、Windows 7インストール前にやっておくべきことがある。それは、Vilivのサポートページに掲載されている、Viliv S7用のWindows 7対応ドライバおよびアプリケーションをダウンロードし、USBメモリなどに転送しておくということだ。先に書いておくが、実はViliv S7では、Windows 7インストール時に、無線LANのドライバが自動的に導入されないため、Windows 7インストール直後はインターネットにアクセスできないのだ。もちろん、Viliv S7以外にPCを持っているなら問題ないが、それでも先にWindows 7対応ドライバやアプリケーションを全てダウンロードしておいた方が安心だ。また、ダウンロードしたドライバの多くは圧縮ファイルとなっているため、あらかじめ解凍しておくことも忘れずに。

 Windows 7のインストール作業自体は、過去のマシンとほぼ同じで、特に問題も発生せずに完了する。Windows 7のインストールが完了したら、Windows Updateの実行やデバイスドライバの導入を行なうことになるが、Viliv S7では、それら作業を行なう前に導入すべきデバイスドライバが存在する。それは、デバイスマネージャーで「不明なデバイス」と表記されている、LPCバスコントローラだ。Viliv S7のWindows 7対応ドライバ配布ページには、他のデバイスドライバを導入する前に、「System Driver」として配布されているLPCバスコントローラのドライバを先に導入したうえでリブートする必要があるとされているため、それに従ってLPCバスコントローラのドライバをまず初めに導入する。

 導入方法は、デバイスマネージャーから「不明なデバイス」のプロパティを開き、「ドライバの更新」からダウンロードしておいたSystem Driverを指定するだけだ。導入が完了したらマシンを再起動し、他のデバイスドライバの導入を進める。

 再起動後、次は無線LANドライバを導入する。先ほど書いたように、Viliv S7ではWindows 7インストール直後は内蔵無線LANが利用できないため、あらかじめダウンロードしておいた無線LANドライバを導入する必要がある。配布されている無線LANドライバはインストーラが付属していないため、デバイスマネージャーから直接導入する。デバイスマネージャーを開くと、「!」マークの付いたデバイスが2つ表示されているが、そのうち「Marvell 802.11 SDIO ID: 0B」と表記されているものが無線LANなので、プロパティを開き「ドライバの更新」からダウンロードしたドライバを指定して導入する。これで、無線LANが利用可能となる。

 無線LANの利用が可能となったら、Windows Updateを実行しよう。すると、各種アップデートとともに、US15W内蔵グラフィック機能のGMA500用ドライバも自動的に導入される。そして、Windows Updateを実行しても自動的にドライバが導入されない「USB Touch Screen Controller」のドライバを導入する。こちらは、配布されているタッチパネルのインストールプログラムを実行すれば、ドライバと設定用アプリケーションが自動的にインストールされる。

 ここまでの作業が終了すると、デバイスマネージャーから「!」マークの付いたデバイスは解消される。Windows 7 Upgrade Advisorで「互換性不明」と表示されていたHDオーディオも、ドライバが自動的に導入され、Windows 7インストール直後から正常にサウンドの再生が行なえる。ドライバ配布ページでは、HDオーディオやBluetooth、グラフィック、チップセットなどのドライバも配布されているが、基本的にそれらは導入せずとも問題はないようだが、HDオーディオのドライバを導入すると設定ツールも導入されるので、こちらは別途インストールをおすすめする。

 デバイスドライバの導入が完了したら、アプリケーションのインストールだ。今回は、配布されているアプリケーションを全てインストールしてみたが、もちろん全て問題なくインストールできた。これによって、Windows XP時とほぼ同じ環境が整うことになる。

 以上で、インストール作業は完了だ。

Windows 7インストール直後のデバイスマネージャー。3個のデバイスに注意喚起の「!」マークが付いている「!」マーク付きデバイスのうち、「不明なデバイス」のプロパティーを開き、あらかじめサポートページからダウンロードしておいた「System Driver」を導入するドライバが導入されたら、1度Windows 7を再起動し、その他のデバイスをセットアップする
再起動後、無線LANドライバを導入する。先ほどと同じく、デバイスマネージャーから「Marvell 802.11 SDIO ID:0B」のプロパティを開き、あらかじめダウンロードしておいたドライバを導入する無線LANドライバ導入後、Windows Updateを実行。US15W内蔵グラフィック機能GMA 500のドライバはこの時に導入される
タッチパネルは、公式に配布されているドライバを導入すれば利用可能となるここまでの作業で、デバイスマネージャーから「!」マークは消える

●Windows 7のタッチパネル機能は利用できず

 では、Windows 7の動作確認だ。

 搭載されているデバイスの動作については、公式にWindows 7用ドライバが配布されていることから、搭載されているデバイスは全て動作を確認した。Windows 7 Upgrade Advisorで互換性不明とされたデバイスのうち、HDサウンド機能はWindows 7標準でドライバが導入され、その状態で問題なく音が再生された。また、タッチパネル機能については、タッチパネルは公式に配布されているWindows 7用ドライバを導入することで動作を確認。US15W内蔵グラフィック機能は、Windows Updateで自動的にドライバが導入され、Windows Aeroの動作も確認できた。SDカードスロットは、Windows 7インストール直後から利用可能だった。

 Windows Updateで自動的にドライバが導入されなかった無線LANは、タッチパネル同様公式に配布されているWindows 7用ドライバを導入することで利用できた。公式配布のソフトウェアキーボードも動作したので、同時にインストールしておこう。Webカメラは、公式に配布されているWebカメラアプリケーションをインストールし起動すると、ドライバが導入され利用可能となる。

 液晶ディスプレイ右の「PIVOT」と「MENU」ボタンは、標準では利用できないものの、公式に配布されている「vilivManager」を起動すれば利用可能となる。vilivManagerは、インストーラ形式ではなくプログラムがそのまま圧縮され配布されているので、適当なフォルダに解凍し、スタートアップに登録しておけばいい。

 ところで、タッチパネル機能については、ドライバを導入することで動作はするものの、Windows 7がタッチパネルの搭載を認識できず、Windows 7が持つタッチパネル機能「マルチタッチ」の利用は行なえなかった。オリジナルソフトのソフトキーボードとの併用だけでも、それほど不満なく利用できるため、現状でもそれほど大きな不満は感じなかった。なお、製品情報ページのFAQでも、マルチタッチに対応しない旨が記載されている。

【お詫びと訂正】初出時にWindows 7上でマルチタッチが可能になるであろうという推測を述べておりましたが、ハードウェア的に不可能であることが判明しました。お詫びして訂正させていただきます。

 

Windows Aeroの動作に問題はなかったSDカードスロットも問題なく動作「vilivManager」を起動すれば、液晶ディスプレイ右の「PIVOT」と「MENU」ボタンも正常動作する
ソフトウェアキーボードなど、公式配布アプリケーションの動作も確認できたタッチパネルドライバを導入しても、Windows 7からタッチパネルの存在が認識されず、マルチタッチなどのタッチパネル機能が利用できなかった

●パフォーマンス検証

 最後に、パフォーマンスを検証しよう。

 まず、OSの起動と終了の時間を比較してみた。起動は、電源ボタンを押してログイン画面(パスワード入力画面)が表示されるまでを、終了は終了コマンド選択から電源が落ちるまでを、ストップウォッチを利用して手動計測した。結果は表にまとめたとおりで、Windows 7の方が起動で約10秒、終了で約13秒ほど遅かった。

起動時間(単位:秒)Windows XPWindows 7
1回目27.4438.57
2回目27.0639.85
3回目2737.72
終了時間(単位:秒)Windows XPWindows 7
1回目13.4726.15
2回目13.0626.44
3回目13.5627.15

 また、アプリケーション速度の検証として、Internet Explorer 8を利用して、起動からPC Watchのトップページが表示されるまでの時間を計測してみたところ、こちらもWindows XPよりWindows 7のほうが大幅に遅く、2倍近くの時間がかかった。しかも、起動や終了、IEだけでなく、他のアプリケーションを使ってみても、Windows XP時のほうが快適だった。

IEの起動時間(単位:秒)Windows XPWindows 7
1回目4.949.72
2回目4.3111.47
3回目5.2210.53

PCMark05Windows XPWindows 7
PCMark ScoreN/A1128
CPU Score12451148
Memory Score19941723
Graphics ScoreN/A342
HDD Score37652987

 最初に取り上げたLaVie Light LB100/RA、前回取り上げたHP 2133 Mini-Note PCでは、Windows 7時に終了時間やIE起動時間がかなり高速になったが、Viliv S7ではそれとは大きく異なる結果となってしまった。

 前回のHP 2133 Mini-Note PCに搭載されるVIA C7-M ULVの方が、Viliv S7搭載のAtom Z520よりパフォーマンスが低いことを考えると、CPU処理能力の低さが原因というわけではない。それよりも、US15W内蔵グラフィック機能のGMA500でWindows Aeroを利用しているのが原因ではないかと考え、「Windows 7 ベーシック」に設定して、OSの起動・終了、IE起動時間を計測してみたが、それでもほとんど差は見られなかった。Windows Vistaと同様、US15Wのドライバ完成度が低いことが要因という可能性も考えられなくはないが、少なくとも現時点では、Viliv S7はWindows 7よりもWindows XPの方が快適だと結論づけて良さそうだ。

●Viliv S7は、Windows XPの方が快適に利用できる

 今回、Viliv S7にWindows 7をインストールしてみたが、デバイスの動作は確認できたものの、Windows 7のマルチタッチが利用できなかったり、Windows XP時に比べて快適度がかなり下がってしまうということから、Windows 7へのアップグレードはあまりおすすめできない。

 ただ、Atom Zシリーズ+US15W搭載のマシン全てで、Windows 7が快適に利用できないというわけではないだろう。以前、Windows VistaがプリインストールされているAtom Zシリーズ+US15W搭載マシン「VAIO type P」にWindows 7 RC版をインストールしてみた時には、Windows 7 RC版の方が明らかに快適に利用できた。そう考えると、Atom Zシリーズ+US15W搭載マシンでは、Windows XPがインストールされている場合にはそのまま利用すべきだが、Windows Vistaがインストールされている場合にはWindows 7へのアップグレードは十分検討に値すると言っていいと思う。

□インストール手順の注意事項
・インストール前に必ず「Windows 7 Upgrade Advisor」で環境をチェックしよう
・HDD内のデータは必ずバックアップしよう

□今回の結果

・Windows 7およびデバイスの動作に問題はないが、Windows XPよりも快適度は落ちる
・無線LANやタッチパネルなど一部のドライバは手動で導入する必要がある
・Windows 7のマルチタッチは利用できない

(2009年 11月 17日)

[Reported by 平澤 寿康]