ついに発売された、マイクロソフトの最新OS、Windows 7。Windows Vitaと比べ処理の軽量化が図られるとともに、操作性や機能面も改良され、Windows XPからWindows Vitaへの移行をためらっていた人にも大いに注目されている。
ただ、Windows Vista以前に登場したPCやネットブックなど、Windows 7の動作を正式サポートしていないPCも多く。Windows 7を導入した場合に、用意されている機能も含めて、どこまで正常に動作するのか不安に思っている人もいることだろう。そこで、Windows 7への対応が正式にサポートされていないPCを中心に、実際にWindows 7をインストールして動作を検証してみようと思う。
まず今回は、標準的なネットブックとして、NECが2008年11月に発売したネットブック「LaVie Light LB100/RA」を用意して試してみた。この製品はNECのネットブックとしては最初の製品で、8.9型液晶、Atom N270 CPU、160GB HDDと、当時のネットブックとしては、ごく標準的な仕様となっている。
登場時の実売価格が5万円前後だったこの製品に、1万5千円~2万円以上の金額を投資して新しいOSを導入するべきなのかという問題はあるが、それはそれとして、ネットブックというハードウェアでWindows 7がどのぐらい動作するかというところに注目していただきたい。また、お手持ちのPCをWindows 7にアップグレードする際の基礎的な手順のおさらいとして読んでほしい。
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NECは、OSとしてWindows XPを採用しているLaVie Lightシリーズを、Windows 7のアップグレード対象機種としていない。そのため、LaVie Light LB100/RA向けのWindows 7対応ドライバや専用アプリケーションは配布されておらず、用意されている機能をすべてWindows 7でも利用できるとは限らない。
そこでまず、マイクロソフトが配布している「Windows 7 Upgrade Advisor」を利用して、対応状況を確認してみた。
すると、搭載されるデバイスについては、無線LANやWebカメラなども含めて、すべて互換性があると表示された。この結果から、おそらく事前にドライバなどを用意せずとも、Windows 7のインストール自体は全く問題なく行なえると思われる。
それに対し、問題ありと表示されたのは、Windows Aeroのサポートと、付属アプリケーションの「バッテリ・リフレッシュ&診断ツール」の2つのみであった。Windows Aeroのサポートに関しては、Intel 945GSE Express内蔵のグラフィック機能「GMA 950」がWindows Aeroのハードウェア要件を満たしていることから、おそらく快適に利用できるパフォーマンスが得られない可能性が高いために問題ありと表示されたものと思われる。
バッテリ・リフレッシュ&診断ツールに関しては、「既知の問題」とされていることから、そのままではWindows 7でほぼ利用できないものと考えていい。しかも、LaVie Light LB100/RA向けにWindows 7対応アプリケーションは一切配布されていないため、この機能は利用できなくなる可能性が非常に高そうだ。専用のメニューソフトなどのオリジナルアプリケーションについては、互換性について全く表示されなかったため、Windows 7インストール後に実際にインストールしつつ確認していこうと思う。
では、実際にWindows 7をインストールしていこう。Windows XPからはアップグレードインストールが行なえないため、今回はCドライブに新規インストールを行なった。用意したWindows 7は、パッケージ版の「Windows 7 Professional アップグレード」だ。光学式ドライブは、USB接続の外付けDVDドライブを用意した。
まず、インストール前には、HDDのバックアップは必ず作成しておこう。必要なデータはもちろん、できればHDDを丸ごとバックアップしておきたい。もちろん、Windows 7インストール前に、リカバリディスクを作成しておくことも忘れてはならない。ちなみに、LaVie Light LB100/RAは、システムが導入されているCドライブと、データドライブのDドライブに分けられており、パーティション構成を変更せず、CドライブにWindows 7を導入するのであれば、Dドライブの内容は消えないので、必要なデータはDドライブにコピーしておくだけでもいい。
BIOSセットアップで、外付け光学式ドライブの起動順位を内蔵HDDよりも上位に設定しておく | Windows 7のインストール作業はスムーズに進み、トラブルは全く発生しなかった | インストール終了後、Windows Updateによって必要なデバイスドライバもすべて導入される |
Windows 7インストール時に気を付けることは、あらかじめBIOSセットアップを起動して、インストールに利用する光学式ドライブの起動優先順位を、内蔵HDDよりも高くしておくことぐらい。実際のインストール作業も、全く問題なく進む。
デバイスドライバは、インストール終了後にWindows Updateを実行することで、必要なものがすべて導入される。ちなみに、インストール終了直後から内蔵無線LANは利用可能となっており、Windows Updateも無線LAN経由で行なえた。
Windows Updateが完了すると、すべてのインストール作業は終了となる。この時点でデバイスマネージャーを確認してみたところ、注意を喚起する「!」マークの付いた項目は一切なかった。
LaVie Light LB100/RAは、ワンセグチューナやワイヤレスWANなどの特殊なデバイスが全く搭載されていない、オーソドックスなネットブックだが、他のネットブックでも、特殊なデバイスが搭載されていなければ、同様に問題なくWindows 7がインストールできると思われる。
では、Windows 7での動作を確認していこう。
まず、デバイスの動作だ。デバイスマネージャーで「!」マークがなかったことからも特に問題はないと思っていたが、無線LAN、有線LAN、サウンド、USB、SDカードスロット、Webカメラなど、すべてのデバイスで正常動作を確認した。Webカメラについては、Windows Live Messengerを利用して動作を確認した。
次に、キーボードとのFnキーとの併用で用意されている機能のチェックだ。まず、HomeやEnd、PrtScrなどの、キーの代用についてはすべて問題なく利用できた。また、サウンドのボリューム調節、サウンドのON/OFF、無線LANのON/OFF、外部映像出力と液晶の切り替えなどは正常動作を確認した。
また、Windows 7 Upgrade Advisorで注意されていたWindows Aeroについては、特に問題なく使用できている。パフォーマンス上の問題はあるのかもしれないが、日常的な使用の範囲では差し障りはない。
それに対し、液晶の輝度調節は機能しなかった。液晶輝度は、Windows 7の電力オプションに用意されている、「画面の明るさ」のスライドバーを利用して変更しなければならない。また、ボリューム調節などの機能も、動作はするが、液晶にメッセージは表示されない。こちらは、Windows 7用のドライバが用意されない限り実現不可能だと思われるため、仕方がないだろう。
ところで、Windows XP時のCドライブの「WINXP」フォルダには、Windows XP用のデバイスドライバが含まれているが、そのドライバをWindows 7にインストールすると、ブルースクリーンで正常に動作しなくなる場合があるため、Windows 7では利用しない方がいい。
最後に、付属アプリケーションについて。まず、Windows 7 Upgrade Advisorで問題が指摘されていた、「バッテリ・リフレッシュ&診断ツール」だが、ツール自体のインストールおよび起動は問題がなかったものの、機能は利用できなかった。
バッテリ・リフレッシュ&診断ツールを利用するには、スマートバッテリのドライバが導入されている必要があるのだが、Windows XP用のドライバを導入すると、Windows 7はブルースクリーンが表示されて異常終了してしまう。そのため、事実上利用できないことになる。
もちろんこれも、Windows 7用ドライバが用意されれば解決される可能性が高そうだが、Windows 7アップグレード対象ではないことから、実現は難しいだろう。
もう1つ、電源OFFでもUSB充電が行なえる「パワーオフUSB充電」も、セットアッププログラムが個別に用意されておらず、利用できなかった。その他の付属アプリケーションは、基本的にはWindows 7未対応で、インストール時にはねられたり、インストールできたものでも、XP互換モードで起動したとしても動作しないものがほとんどだが、「Roxio Creator LJ」と「LaVie Lightメニュー」については動作を確認した。
これら付属アプリケーションは、あらかじめバックアップしておいた、Windows XP時のCドライブに存在している「APSETUP」フォルダに含まれるセットアッププログラムを利用して試した。もし、Windows 7でもRoxio Creator LJとLaVie Lightメニューを利用したければ、あらかじめAPSETUPフォルダをバックアップしておけばいい。
最後に、Windows XP時とWindows 7時とのパフォーマンス差を検証しておこう。
まず、Windowsの起動と終了の時間だ。起動は、電源ボタンを押してログイン画面(パスワード入力画面)が表示されるまでを、終了は終了コマンド選択から電源が落ちるまでを計測した。結果は表にまとめたとおりで、起動はWindows XPのほうが10秒ほど高速だったが、終了はWindows 7のほうが2倍以上高速となっている。Windows 7は、起動や終了が高速と言われているが、LaVie Light LB100/RAのようなネットブックでも、起動はWindows XPよりやや遅いものの、終了はかなり高速なことがわかる。
OSの起動・終了時間 | ||
OS名 | Windows XP | Windows 7 |
起動時間 | 32.5秒 | 43.3秒 |
終了時間 | 38.9秒 | 15.7秒 |
次に、アプリケーション速度の検証として、Internet Explorer 8を利用して、起動からPC Watchのトップページが表示されるまでの時間を計測してみた。すると、Windows XPでは22秒ほどかかったのに対し、Windows 7では10秒ほどと、かなり高速だった。この結果を見る限り、LaVie Light LB100/RAではWindows 7もかなり快適に利用できそうに思うかもしれないが、今回の比較ではツール類がインストールされているWindows XPに対し、クリーンインストール状態のWindows 7との比較なので、Windows 7の結果はある程度割り引いて考える必要があるだろう。
それでも、Windows XP時と比べてアプリケーション速度が遅くなることは考えにくく、Windows XP時と同等程度の速度で利用できると言っていいだろう。
IEの起動時間(IE起動からPC Watchのトップページが表示されるまで) | ||
OS名 | Windows XP | Windows 7 |
起動時間 | 22.4秒 | 10.4秒 |
最後に、「PC Mark05」の結果だ。こちらは、各テストの結果に若干の差が見られるが、その差は小さく、ほぼ同等のパフォーマンスが発揮されていると言っていいだろう。とはいえ、やはりOSやドライバが異なるために、あくまでも参考程度に見た方がいいだろう。
PCMark05 | ||
OS名 | Windows XP | Windows 7 |
PCMark Score | 1354 | 1402 |
CPU Score | 1485 | 1353 |
Memory Score | 2384 | 2314 |
Graphics Score | 355 | 428 |
HDD Score | 4270 | 4017 |
●LaVie Light LB100/RAは、Windows 7でもほぼ正常に利用可能
今回、LaVie Light LB100/RAにWindows 7をインストールしてみたが、「バッテリ・リフレッシュ&診断ツール」やパワーオフUSB充電が利用できなかったり、Fnキーとの併用で液晶の輝度調節ができないなど、一部機能で制限は発生する。
しかし、そのほかの機能はほぼ問題なく動作しており、Windows 7を導入しても、ほとんど不便を感じることなく利用できると考えていい。LaVie Light LB100/RAは、ネットブックとしてオーソドックスな仕様であり、仕様の近い他のネットブックも、ほぼ同じようにWindows 7は問題なく利用できるはずだ。動作の快適度も、Windows XP時と比べて大きく損なわれることはなく、場面によっては逆に快適になる部分もあり、十分乗り換える魅力があると言っていいだろう。
とりあえず、Windows 7の新機能を試すために、ちょっと古くなったネットブックにインストールしてみるという使い方が十分に実用的であることは検証できたと思う。
Windows 7インストールの注意事項と、今回の結果をまとめると、次のようになる。
・インストール前に必ず「Windows 7 Upgrade Advisor」で環境をチェックしよう
・HDD内のデータは必ずバックアップしよう
・Atom N270+HDDという構成のネットブックであれば、基本的な機能は動作する
・メーカー提供のオリジナルアプリケーションは、動作するものとしないものがある
・メーカーからWindows 7用のドライバが提供されない機能については動作しない
(2009年 10月 27日)
[Reported by 平澤 寿康]