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【懐パーツ】将来性よりも画質を選んだ3dfxの最高峰「Voodoo5 5500」

Voodoo5 5500

 今回ご紹介するのは、DOS/V POWER REPORT(パワレポ)の部員の私物である、3dfx Interactive製ビデオカード「Voodoo5 5500」だ。押入れから出てきたそうで、これからパワレポの倉庫送りになる。

 Voodoo5 5500が発表されたのは1999年の11月16日。実際に製品として発売されたのは2000年6月10日だ

 1999年はNVIDIAがハードウェアT&Lを実装した「GeForce 256」を発表した年で、その後すぐに性能を強化した「GeForce2」を投入。ハードウェアT&Lを使ったアプリの場合、競合他社を寄せ付けない3D性能を誇った。しかし3dfxはこの流れに追従せず、32bitカラー環境下での性能や、フルシーンアンチエイリアスといった技術で、既存ゲームの画質向上を謳ったのである。

 もっとも、Voodooシリーズは独自のGlide APIのサポートを貫いたし、前世代に当たる「Voodoo3」では32bitモードでの3D描画はサポートされなかったので、3dfxとしては順当な進化であるとも言える。まあ、ハードウェアT&Lを利用したソフトがさほど多くなかった時代だったので、一般利用ではVoodoo5 5500の性能はそこまで悪くなかった

 Voodoo5 5500に搭載されるビデオチップはVoodoo5ではない。「VSA-100」と呼ばれるチップで、Voodoo5 5500ではこれを2基搭載し、並列動作(SLI)させることで高性能を実現している。VSA-100を1チップしか搭載していないビデオカードは「Voodoo4 4500」として発売された。一方で、ACアダプタを用いた電源供給で4チップ搭載を実現した「Voodoo5 6000」も予定していたが、一般販売はされず幻に終わった(世界的には数枚あったようだが……)。

 VSA-100は3dfx独自のレンダリング技術「T-Buffer」に対応しており、モーションブラーやフィールド深度ブラー、ソフトシャドウ、ソフトリフレクションといった機能が使用できた。また、FXT1という独自のテクスチャ圧縮をサポートし、最大1,024×1,024ピクセルのテクスチャデータを扱えた。

 カードの実装を見ると、AGPバスの信号線の多くはカード右側のVSA-100に繋がれており、左側のVSA-100はカード背面でAGPの一部配線が接続されている。VSA-100間の配線は見えず、基板の中ほどの層で接続されていると見られる。VSA-100自体は最大32プロセッサの並列動作が可能だが、AGPバスはブリッジによる接続をサポートしていないし、本製品にもそのようなブリッジは見当たらない。パッケージにも「タンデム方式」と書かれていることから、いわゆるデイジーチェーン方式が採用されていたのかもしれない。

 メモリは珍しく東芝製の「TC59S6432CFT-60」を採用する。524,288ワード×4バンク×32bit構成で、1チップあたり8MBという容量を実現する。Voodoo5 5500ではこれを1つのVSA-100につき、ボードの表裏に2枚ずつ接続させ、合計8枚で64MBという大容量を実現した。

 ミニD-Sub15ピン付近に見えるCalifornia Micro Devices(CMD)製の「PACVGA 105Q」は、静電気放電から回路全体を保護するためのチップである。AGPバス付近のFairchild Semiconductor製チップ「VXC08」は、AGPの電圧を変換するチップのようである。BIOS付近のIDT製「QS3861Q」は10bitの高速CMOSバススイッチだ。

 1ボードで2チップ搭載を実現するために、AGPバスからのみならず、ペリフェラル4ピンを用いた電源供給回路を装備。Linear Technology製の2フェーズ高効率同期ステップダウンスイッチングレギュレータ「LTC1929CG」を介して電源を生成される。電源回路にはInternational Rectifier(IR:現Infenion)製のパワーMOSFET“HEXFET”「IRF7811」や固体コンデンサが用いられているほか、余裕のあるパターンレイアウトとなっており、大電流に耐えられそうな作りではある。

 ボード全体としても非常にゆったりとした作りで、チップからボードまで全てを内製にしたからこそ、といった雰囲気である。もっとも、この全内製化により、それまで3dfxの売上に貢献したボードメーカーの反感を買った。彼らがこぞってNVIDIAへ移ったことで、3dfxの息の根を止めたのは言うまでもない。

パッケージ背面には特徴がずらずらと。よく読むと「日本語でおk」的な雰囲気である
Voodoo5 5500本体
大掛かりなカードだが、出力はミニD-Sub15ピン1系統のみでちょっと寂しい
カード正面。かなり長いカードである
カード背面にも部品が多く実装されている
ファンの下にVSA-100のチップを搭載している。小型ファンながらボールベアリングを採用しており、非常にスムーズに回転する
電源回路は非常にゆったりとした作り
ペリフェラル4ピンを用いて電源を生成する
LTC1929CGは2フェーズ高効率同期ステップダウンスイッチングレギュレータである
CMD製の「PACVGA」は静電気放電から回路を保護するチップである
Fairchild製の「VXC08」は電圧変換チップと推測される
BIOSを格納したROM(上)とIDT製のバススイッチ「QS3861Q」
AGPバスは右の方のVSA-100へと伸びており、右がプライマリのチップと見られる
ボードはメキシコ製とされている。空きスペースも多い
ボード上全てのコンデンサが固体であり、液体コンデンサは使われていない
メモリは東芝の「TC59S6432CFT-60」。60nsとされていることから、166MHz駆動と推測される