~PCゲーマー御用達!? Voodoo3搭載ビデオカード登場~



 最近のビデオカード市場は、CPU市場同様非常に活気に溢れている。2年ほど前から本格化したビデオチップメーカー間の3D描画パフォーマンス競争はとどまるところを知らず、まさに乱戦模様。次から次へと新チップが開発され、昨年秋に鳴り物入りで登場したRIVA TNT搭載カードですら既に陳腐化しているといった状況だ。そんな中、これから夏にかけての新製品ラッシュに先駆け、新たなビデオカードが秋葉原に登場した。世界中のPCゲーマーから圧倒的な支持を受けている3dfxが開発した最新チップVoodoo3を搭載する2種類のビデオカード、「Voodoo3 2000 AGP」と「Voodoo3 3000 AGP」がそれだ。無論速攻入手に成功したので、その実力はどの程度のものなのか、検証することにしよう。


■ Voodoo3はVoodoo Banshee2だ

Voodoo3チップ。チップには2000や3000といった刻印はないが、クロック周波数などの違いがある
 Voodoo3は、Voodoo2やVoodoo Bansheeなどでお馴染みの3dfxの最新ビデオチップだ。その名前だけを見ると3D専用チップのVoodoo2の後継チップであるかのような印象を受けるが、実際には2D表示機能も用意されており、Voodoo Bansheeの後継チップであると言ったほうが正確だろう。しかし、そのパフォーマンスはVoodoo Bansheeを大きく凌駕しており、特に3D描画パフォーマンスはマルチテクスチャリングのサポートなどにより、Voodoo2 SLIモードに匹敵または上回るものとなっている。また、AGP 2XモードのサポートやDVD再生支援機能の搭載などといった機能向上も実現されている。

 Voodoo3のラインナップは、143MHzのVoodoo3 2000、166MHzのVoodoo3 3000、183MHzのVoodoo3 3500と、動作クロックの異なる3種類のチップが用意されている。動作クロック以外にも、RAMDACがVoodoo3 2000が300MHzのものであるのに対し、Voodoo3 3000と3500には350MHzのものとなっていたり、Voodoo3 2000と3000ではビデオメモリとしてSDRAMをサポートしているのに対し、Voodoo3 3500ではSGRAMをサポートするなど、若干の違いが見られる。

 そして、今回秋葉原に登場した製品は、Voodoo3 2000と16MBのビデオメモリ(SDRAM)を搭載するローエンドモデル「Voodoo3 2000 AGP」と、Voodoo3 3000と16MBのビデオメモリ(SDRAM)を搭載し、ビデオ出力端子を備える「Voodoo3 3000AGP」の2種類だ。双方とも、日本での3dfxの正規代理店である日商エレクトロニクス経由(パッケージに「Voodoo3 世界同時発売」と書かれたオレンジ色のシールが貼られている)のリテール品である。

 ただ、残念ながら、Voodoo3 3500を搭載し、液晶ディスプレイをサポートするハイエンドモデル「Voodoo3 3500 AGP」の出荷はまだ未定となっている。一説では、183MHzという高いクロックで動作するビデオメモリの調達がうまくいっていなのではないか、といった噂もある。真偽のほどは定かではないが、市場に投入されるまでにもう暫く時間がかかりそうだ。また、PCIバス用の「Voodoo3 2000 PCI」という製品も用意されているが、こちらもまだ出荷されていない。


Voodoo3 3000 AGP。製品にはDESCENT3、NEED FOR SPEED III、UNREALの3つのゲームソフトが付属する 日商エレクトロニクス経由の製品には、このようなシールが貼られており、世界同時発売をアピールしている


■ ヒートシンクとビデオメモリに違いが見られる

 Voodoo3 2000 AGPとVoodoo3 3000 AGPの違いは、ビデオ出力端子の有無に加え、Voodoo3チップ上に取り付けられているヒートシンクの形状と、搭載されるビデオメモリの種類を挙げることができる。

 Voodoo3 2000 AGPのヒートシンクは、Voodoo3チップとほぼ同じ大きさの黒い正方形のものが直接接着されているが、Voodoo3 3000 AGPでは、Voodoo3 2000 AGPのゆうに3倍はあろうかという巨大なヒートシンクが取り付けられている。双方のカードを手に持ってみると、Voodoo3 3000 AGPのほうがずっしりと重く、その差を実感できる。
 もちろんこれは、駆動クロックの差による発熱量の違いを考慮した結果であろう。実際に使用してみると、双方のヒートシンクともかなり熱くなった。しかし、これだけ巨大なヒートシンクを取り付ける必要があるほど発熱するのであれば、カノープスのSPECTRAシリーズのようにファンを取り付けてもらいたかった。もちろんこのヒートシンクのみでしっかりと放熱できるように設計されているとは思うが、これから夏に向けてやや心配だ。

 また、ビデオメモリはVoodoo3 2000 AGPではSEC KM416S1020CT-G7というチップが、Voodoo3 3000 AGPではSIEMENS HYB39S16160C1-6というチップが使用されている。Voodoo3 3000 AGPのほうが高速なチップが採用されているが、これも駆動クロックが高速であることを考慮してのものだろう。

   
上がVoodoo3 3000 AGPで、下がVoodoo3 2000 AGP。ヒートシンクの違いが一目瞭然だ   Voodoo3 3000 AGPにはSビデオ出力端子が用意されている。また、コンポジットビデオ変換ケーブルも付属する   搭載されているSDRAMチップ。
(上)Voodoo3 2000 AGP
(下)Voodoo3 3000 AGP


■ 2D/3Dパフォーマンスは確かに現状最速ではあるが……

 では、Voodoo3 2000 AGPとVoodoo3 3000 AGPのパフォーマンスを、ベンチマークテストを行なって検証してみよう。まずは2Dのパフォーマンスからだ。

 2Dのパフォーマンス測定には、Ziff-Davis,IncWinBench 99 Version1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark 99を利用した。これらのベンチマークテストでは、ワープロや表計算、フォトレタッチソフトなど実在するアプリケーションの描画コードを再現することで、総合的な2D描画パフォーマンスを測定できる。今回は、解像度は1,024×768ドットで、16bitカラーモードと32bitカラーモードにおいて測定した。

 結果は下図のとおりで、比較に用意したSPECTRA 3200やRAGE FURY、3D Blaster Bansheeと比べてもほとんど差がないという結果であった。一応Voodoo3カードが最も良い結果を示したが、これは体感できる差ではない。

【WinBench】
(CPU: Pentium II 450MHz)
ベンチマーク一覧表
 

 次に3Dのパフォーマンス測定だ。まず、総合的な3Dパフォーマンスを測定するために、同じくZiff-Davis,Incの3D WinBench 99 Version1.1に含まれる、3D WinMarkを利用した。

 また、実際の3Dゲームでのパフォーマンスを測定するために、TUROK2のDEMOバージョンと、Quake2という2つのゲームソフトを用意し、それぞれに用意されているフレームレート計測機能を利用してテストを行なった。TUROK2はDirect3DとGLIDEに対応しているため、双方のモードでの測定を行なっている。Quake2に関しては、測定用のデモファイルとして、製品に付属している「DEMO1.DM2」と、バトルアリーナでのデスマッチの模様を再現し、Quake2をプレイする時に最も処理が重くなる場合に近い状況が再現されている「CRUSHER.DM2」というデモファイルを用意し、双方で測定を行なった(CRUSHER.DM2は、3 Fingers' and Heron's Hot RodShopから入手可能)。  さらに、ここまでのテストは全てCPUにPentium II 450MHzを使用して測定したが、ゲームを利用したテストに関しては、CPUにAMD-K6-III/400を使用した場合の測定も行なった(詳しいテスト環境は後述する)。

 結果は下の表の通りだ。3D WinMarkの結果を見ると、他をかなり引き離していることがよくわかる。特に1,024×768ドットでは3D Blaster Bansheeの2倍近い数字が記録されている。Voodoo2 SLIモードと比較しても、Voodoo3 3000 AGPでは1割以上良い結果となっており、これを見る限りでは、Voodoo3のパフォーマンスはかなり高いといえる。

【3D WinBench 99/3D WinMark】
(CPU: Pentium II 450MHz)
ベンチマーク一覧表

 ただ、ゲームソフトを利用したテストではやや異なる結果が得られている。確かにどの結果を見ても、Voodoo3カードがほぼトップの結果をはじき出している。特にQuake2でのテストでは、3D Blaster Voodoo2やRAGE FURY、SPECTRA 3200と比較して大幅な違いが見られる。しかし、Voodoo2 SLIモードとの差は、先ほどの3D WinMarkの結果とは違い、ほとんどないといっていい。中にはVoodoo3の結果がVoodoo2 SLIに負けているものもある。ということは、実際のゲーム環境においては、Voodoo3のパフォーマンスはVoodoo2 SLIとほとんど差がないといえる。

 また、CPUにAMD-K6-III/400を利用した場合の結果では、全体的に結果が悪くなっている。これは、CPU自体のパフォーマンス差によるものだが、Voodoo系のビデオドライバは3DNow!をサポートしており、Pentium II 450MHzに近い結果を示すだろうと期待していただけにやや拍子抜けであった。やはり、3DNow!の効果を発揮させるには、ビデオドライバだけでなくゲームソフト側でのサポートも不可欠なのだろう。ただ、3dfxが率先してドライバレベルで3DNow!のサポートを行なっている点は、K6-2やK6-IIIなどの3DNow!をサポートするCPUを利用しているユーザーにとっては十分評価に値するだろう。

【TUROK2 demo】 ベンチマーク一覧表


 

【Quake2】 ベンチマーク一覧表

【テスト環境】
マザーボードABIT BH6、MSI MS-5169
CPUPentium II 450MHz、AMD-K6-III/400
メインメモリ128MB SDRAM PC/100
サウンドカードダイアモンド・マルチメディア・システムズ Monster Sound MX300
比較用ビデオカードATI RAGE FURY
カノープス SPECTRA 3200
クリエイティブメディア 3D Blaster Banshee
クリエイティブメディア 3D Blaster Voodoo2



■ Voodoo Bansheeや旧世代ビデオカードからの乗り換えにはおすすめできる

カード表面に刻印されているSTB Systemsのロゴ
 Voodoo3を搭載する製品は、読者のみなさんもご存じの通り、3dfxが昨年買収したSTB Systemsからのみ供給されることになっている。秋葉原に登場した製品も、もちろんSTB Systems供給のもので、カード表面には小さいながら「(C) 1999 STB SYSTEMS. INC.」という文字がしっかりと刻印されていた。

 ただ、この3dfxの戦略を、従来Voodoo2やVoodoo Banshee搭載製品を発売していた、Diamond Multimedia SystemsやCreative Labsなどのビデオカードメーカーが不快に思わないはずがない。これまで3dfxのシェア拡大を支えてきたメーカーを、一方的な都合で切り捨てるようなやり方なのだから当然だ(Voodoo2やVoodoo Bansheeは従来通り供給される。また、一部のマザーボードメーカーにはオンボード用としてVoodoo3が出荷される)。

 3dfxがこういった戦略を打ち出したのは、自社のみでのVoodoo3カードの販売とシェア確保に自信があるからだろう。確かに、北米に関してはSTB Systemsの販売網がしっかりしているため問題は少ないだろう。しかし、日本やヨーロッパなどのようにSTB Systemsの販売網が整っていない地域でのシェアを確保するのは至難の業ではないだろうか。製品の供給を潤沢に行なうだけでなく、しっかりとしたサポートを行なうことは容易ではないはずだ。

 Voodoo3が他のビデオチップを寄せ付けない高いパフォーマンスを持つのであれば、 現在のシェアを確保するのも十分可能だろう。しかし、今回の検証からもおわかりの ように、現在2D/3Dともに最速に近いパフォーマンスを示してはいるものの、それも 他を大きく引き離すようなものではない。場合によっては、Voodoo2 SLI環境に負け ることもあった。しかも、「Tom's Hardware Guide」などのレビュー記事などを見ると、ここ1~2週のうちに登場するであろうRIVA TNT2搭載カードの方がVoodoo3よりも高い3Dパフォーマンスを持っていると思われる。

 以上のことを考えると、残念ながらVoodoo3には、Voodoo GraphicsやVoodoo2が登場した時のような魅力は感じられないと言わざるを得ない。Voodoo BansheeやRIVA 128以前の旧世代ビデオカードからの乗り換えといった用途には十分その期待に応えることができるとは思う。しかし、既にVoodoo2を1枚でも持っているという人はVoodoo3を購入する意味はほとんどないだろう。現在では、せいぜい1万円半ば程度の価格で手に入るVoodoo2カードをもう一枚入手しSLI環境を実現すれば、Voodoo3相当の3Dパフォーマンスを手に入れることができるからだ。

 もちろんVoodoo3に利点がないわけではない。最大1,600×1,200ドットという高解像度で3D描画が可能であるという点は他のVoodooシリーズにはない利点だ。実際、GLIDE対応ゲームであるTUROK2ではGLIDEモードでも1,024×768ドット以上の解像度を選択できた。しかし、通常ゲームでは解像度が1,024×768ドットもあれば十分で、これも大きな魅力とはなり得ないのではないだろうか。

 ところで、Voodoo3カードのビデオメモリ搭載量が16MBという点に疑問を持つ人がいるかもしれない。実はVoodoo3では3D描画は16bit以下のカラーモードしかサポートしていない。3dfxは、16bitカラーモード以下であれば、16MBのビデオメモリで十分なフレームバッファとテクスチャメモリを確保できるとアナウンスしている。

 24bitや32bitカラーモードではフレームレートを高速にできず、ゲームプレイに支障を来すというのと、16bitカラーモードでも32bitモードに匹敵する品質で表示できる機能を持っているから、というのが3dfxの言い分である。しかし、どのカラーモードでゲームをプレイするかはメーカーが決めるのではなくユーザーが決めることである。この点もやや残念な部分だ。

 おそらく、数週間後には、「Direct3DはRIVA TNT2、GLIDEはVoodoo2 SLI」がPCゲーマー向けの最強環境であると言われることになるだろう。今後AGP 4XをサポートするVoodoo3ファミリーの投入も予定されているようだが、Voodoo Bansheeの後継ではなく、真のVoodoo2後継チップ搭載カードの登場を心待ちにしているユーザーは筆者だけではないはずだ。今後の3dfxの奮起と戦略の見直しを期待したい。

□3dfxのホームページ(英文)
http://www.3dfx.com/
□Voodoo3 2000 AGP製品情報(英文)
http://www.3dfx.com/view.asp?PAGE=nusV32000
□Voodoo3 3000 AGP製品情報(英文)
http://www.3dfx.com/view.asp?PAGE=nusV33000
□Voodoo3 3500 AGP製品情報(英文)
http://www.3dfx.com/view.asp?PAGE=nusV33500
□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【4月10日号】Voodoo3搭載ビデオカード2種類の販売スタート
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990410/v3.html


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[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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