【COMPUTEX 2012】Intel基調講演編
~IvyBridge搭載Ultrabookは35を超え、タッチ機能の促進も

Intelの基調講演では、多数のUltrabookが展示された

会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 Intelが、COMPUTEX TAIPEIの基調講演(e21Forum)に登場し、同社が推進するUltrabookなどに関しての同社のビジョンを語った。この中で、Intel 上席副社長兼セールス&マーケティング統括本部長 トーマス・キルロイ氏は「1年前にUltrabook構想を発表したが、2013年には製品が110を超えるまでになる」と述べたほか、同日に発表されたデュアルコア版の第3世代Coreプロセッサ・ファミリーを搭載したUltrabookを搭載したノートPCも35を超える製品が計画されていることを明らかにした。

 さらにキルロイ氏は「これからもイノベーションを続けていく必要がある」と述べ、Intelが1月のInternational CESで明らかにしたUltrabookにタッチ機能や音声認識機能を搭載していくビジョンを加速していくため、タッチセンサーのベンダーなどに投資をし、Ultrabookにタッチ機能を搭載を促進していく計画を明らかにした。

●Windows 8のIAタブレットは、Metro Appsもデスクトップアプリ、両方使える

 COMPUTEXの基調講演は、例年Intelのセールス部門(セールス&マーケティング統括本部)のトップが努めることになっており、今年(2012年)は前任のショーン・マローニ氏(現Intel China会長)に代わりセールス&マーケティング統括本部長に就任したトーマス・キルロイ氏が担当することになった。

 キルロイ氏は「現在もっとも大事なことはユーザー体験を向上させていくことだ」と述べ、ユーザー体験を向上させるには3つの認識(見る、聴く、感じる)を向上させていくことこそ大事だと述べ、ユーザーがさまざまなコンテンツにアクセスする体験を向上させていくことが大事だと訴えた。

 また、「FacebookやTwitterに代表されるようなSNSなどにより、1日あたりのインターネットのデータ量は1EB(エクサバイト)にも達している。そしてそれらのコンテンツを消費するデバイスとして、モバイル機器が急速に立ち上がっており、2016年までにスマートフォンは19%、タブレットは33%、ノートブックPCは17%の成長が見込まれている」と述べ、モバイル機器の成長は著しく、デジタル業界に重要なエリアになっていると指摘した。

 続いて、「スマートフォンの利用方法はもはや90%がコンピュータ的な使い方になっている」と述べ、スマートフォンにおいても性能が重要視されるようになっていると指摘した。その上で、IA(Intel Architecture)のスマートフォンとタブレットに関しての説明やデモを行なった。キルロイ氏は「IntelベースのスマートフォンはJavaスクリプトの最適化がされており、非常に高速なWebブラウズが可能であるほか、14日間はスタンバイ状態で動かすことができる」と述べ、Intelが1月に行なわれたInternationalCESで発表したMedfieldことIntel Atom Z2640を搭載したスマートフォンを紹介した。

 また、Clover Trailのコードネームで知られる次世代のタブレット向けAtomプロセッサに関しても言及。「IAベースのタブレットはすでに20を超えるデザインウインを獲得した。Windows 8のConnected Standbyを利用して、これまでのPCとは異なる使い勝手を実現している。重要なことは、IAではMetro Appsとデスクトップアプリケーションの両方を利用することができることだ」と述べ、ARMベースのWindows RT搭載タブレットに注目が集まる中、IAベースのタブレットの魅力をアピールした。

 なお、キルロイ氏はClover Trailの投入時期については特に言及しなかったが、基調講演後に行なわれた質疑応答の中で「Windows 8のリリース時期がターゲットだ」とだけ言及した。

Intel 上席副社長兼セールス&マーケティング統括本部長 トーマス・キルロイ氏現代のコンピューティング環境ではユーザー体験が何よりも重要になっているユーザー体験を改善するには、コンテンツを見る、聴く、感じという体験を改善していく必要がある
FacebookやTwitter、写真投稿などにより、インターネットのトラフィック(データ量)は1日で1EBにも達しているスマートフォン、タブレット、ノートPCなどが今後の成長を支えるスマートフォンの使い方の90%はすでにデータ処理
Intelベースのスマートフォンの特徴はWebブラウジングの高速さやバッテリー駆動時間の長さ中国で販売が開始されたLenovoのIAプロセッサ搭載スマートフォンを利用したデモデモでは、IntelのWi-Fiを利用したワイヤレスディスプレイ機能(WiDi)を利用してディスプレイに接続する様子などが公開された
Clover TrailベースのWindows 8タブレットは20を超える製品が計画されているClover Trail搭載タブレットのデモ。1台目は途中でハングアップしてしまうというトラブルも……

●ポストPC時代って本当? 今でもユーザーの最優先はノートPCという調査結果

 ついでキルロイ氏は「我々はポストPC時代に突入しているのか?」という質問を聴衆に投げかけた。COMPUTEXの前日にARMが「すでにポストPC時代に突入している」と述べたのとは対照的だ。

 「この質問をCISCOが学生に投げかけたところ、彼らの答えはそんなことはないということだった。学生の66%にとってはPCこそが最も重要なデバイスであるという答えが返ってきた」と述べ、今でもPCは若いユーザーにとって最も重要なデバイスであり、彼らがこれから社会人になっていくことを考えれば、その状況は今後も変わらない可能性が高いと指摘した。そして別の調査による、利用シーンにおける、どのデバイスを利用したときに快適に利用できたかという調査でもPCが最も使いやすいという調査結果だったとし、こうした状況をさらによくしていくためにPCをさらに進化させていく必要があり、それこそがUltrabook構想なのだと説明した。

 「Ultrabook構想を発表してから1年が経ったが、来年には110を超える製品が出そろう予定だ。OEMメーカーも、ODMメーカーも、小売業者も誰もがこの構想を歓迎している」と、昨年発表したUltrabook構想が成功を収めつつあることを誇ってみせ、「我々は昨年3億ドルのファンドを設立してそれを進めてきたが、より素晴らしいUltrabookを製造できるようにするには、Intelのパートナーであるコンポーネントベンダーの協力が必要だった。ここにいるみなさんのおかげでそれが実現できた」と礼を述べると、来場者から大きな返礼の拍手を受けた。

ポストPC時代と言われるが、それは本当か?CISCOの調査によれば、学生の66%までがPCが最も重要なデバイスであると述べているというコンテンツを何を利用して楽しむかという調査結果。PCはかなりの重要な部分を占めている
1年前のCOMPUTEXでUltrabook構想は明らかにされたコンポーネントメーカーの協力などにより、コンポーネントレベルでの改善も進み、低価格なUltrabookが実現可能になってきている台湾のPC業界の関係者にIntelから特大の謝辞が

●Ivy Bridge搭載Ultrabookは35以上の製品が計画

 キルロイ氏は、基調講演の当日にIntelが正式に発表(別記事参照)したデュアルコア版第3世代Coreプロセッサ・ファミリーについても言及し、「第3世代Coreプロセッサ・ファミリーは、従来製品に比べて22%性能が向上し、15%消費電力が下がっているなど、全体的に性能が向上している」と述べ、特にUシリーズ(従来の超低電圧版に相当、プロセッサーナンバーの最後にUが付くモデルのこと)を採用したUltrabookは35を超える製品が計画されていることを明らかにした。

 また、第3世代Coreプロセッサ・ファミリーを搭載したUltrabookは、Rapid Startによりハイバネーションからの復帰が圧倒的に高速になり、デザイン性により優れ、Intel Anti TheftやIntel Identify Protectionなどによりユーザーはよりセキュアな環境で利用できるとアピールした。

 さらにキルロイ氏は「第3世代Coreプロセッサ・ファミリーでは、UltrabookでもvProがサポートされる。これにより、企業ユースでもUltrabookの導入が進むだろう」と述べ、Ultrabookをコンシューマ向けでなく、企業向けPCとして売り込んでいきたいと説明した。

第3世代Coreプロセッサ・ファミリーの特徴。性能では22%、消費電力では15%の改善を実現している応答性能改善、デザインの改善、セキュリティの改善などが行なわれている第3世代Coreプロセッサ・ファミリーではUltrabookにvPro対応版も追加される

●ノートPCにおけるタッチ機能搭載を加速、13型以上にフォーカス

 さらにキルロイ氏は「これだけでは十分ではない。Ultrabookはさらに進化していかないといけない」と述べ、その具体的な例として、音声認識機能の実装と、タッチ操作の実装の2つをあげた。

 そのタッチ操作の例として、ステージにはゲストとして台湾のPCベンダーであるAcer 社長 ジム・ワン氏を呼び、Acerが発表したばかり(別記事参照)のスレートPCとクラムシェル型でタッチ機能を搭載したUltrabookを紹介した。キルロイ氏は「タッチ操作はゲームチェンジャーであり、Windows 8がリリースされればその重要性はさらに増していくだろう」と述べ、IntelとしてもPCにタッチ機能を載せていくことを積極的に取り組んでいくという姿勢を明確にした。

 また、ASUSTeK会長 ジョニー・シー氏も呼ばれ、同社が発表(別記事参照)したばかりの分離型やコンバーチブル型Ultrabookのデモを行なった。

 その上で、キルロイ氏はIntelがUltrabookの関連技術の開発に3億ドルのファンドを立ち上げたことを例に、タッチ機能の開発においても同じように積極的に投資を行なっていくと述べた。

 Intelは、TPK、Wintek、Hanns Touch、Candoといったベンダーとタッチ機能の実装において協力し、特に13型を超える高品質パネルでもタッチ機能を実装することを目指していくという。現在タッチパネルは、10型以下のタブレットに利用されるような製品がほとんどで、12型以上のPCで一般的に利用されるようなサイズの液晶パネルでタッチ機能を実装しようとする場合は、特注品になりコストが高くついてしまう。しかし、Intelが旗振り役になることで、タッチ機能の部品を提供するベンダー、そして液晶パネルのベンダーも積極的に取り組むことが可能になり、低価格化が進み急速に市場が立ち上がる可能性がある。

 「これまでの予想の3~5倍の速度での普及を目指す」と述べ、Intelとしてタッチ機能のノートPCへの実装を加速していくとPC関係者に呼びかけた。

Ultrabookに搭載される新しい機能としてはタッチ機能と音声認識が強調されるAcer 社長 ジム・ワン氏(右)はタッチ機能搭載クラムシェル型UltrabookをデモASUSTeK 会長 ジョニー・シー氏(右)は分離型Ultrabookやコンバーチブル型Ultrabookをデモ
タッチ機能は、ゲームのルールを変えるほど衝撃があるものだというIntelはTPK、Wintek、Hanns Touch、Candoと協力してタッチ機能の普及促進を目指す

●今後もノートPCにはさまざまなセンサー機能を搭載していく

 最後にキルロイ氏は、Intelが注力しているもう1つの技術である音声認識についても触れた。Intelは1月のCESで、タッチ機能と並んで重要な機能として音声認識を紹介し、Dragonブランドで音声認識ソフトウェアを展開するNuanceとの提携を発表したが、今回の基調講演ではその様子がデモされた。壇上に登ったIntelの関係者が、音声コマンドを実行したり、Facebookへの投稿を行なったりという様子が実際にデモされた。

 また、英語だけでは台湾のユーザーにはわかりにくいということか、台湾の人気男性歌手ワン・リーホン氏が呼ばれ、台湾で一般的に使われている中国語(北京語)を利用して、同じようにFacebookに投稿するというデモが行なわれた。

 リーホン氏が登場する前に、女の子達がイケメンに目もくれずにUltrabookに興奮しているというビデオが上映されたが、リーホン氏はこれをネタにして、「女の子がこれ(Ultrabook)ばっかり見てたら困るな」とジョークを飛ばして詰めかけた観衆を笑わせた。

 最後にキルロイ氏は「これ以外にも、まだまだ注目の技術はある。例えば複数の人間によるジェスチャー、生体認証、光彩認識、健康チェック機能などがCOMPUTEX 2013ではテーマになっているかもしれない」と述べ、これからもそうしたセンサー技術をどんどんとUltrabookに取り込んでいきたいと意気込みを明らかにした。

音声認識のデモでは、音声コマンドを利用してG-Mailを送信したりする様子が公開された音声認識を利用して文字をFacebookに投稿する様子台湾の人気男性歌手ワン・リーホン氏
リーホン氏が中国語で音声認識を試している様子今度は中国語での投稿が成功
Ultrabookについて魅力を語るリーホン氏今後Ultrabookに搭載されていきそうなセンサー類。今後もさまざまなセンサーの可能性を探っていく

(2012年 6月 6日)

[Reported by 笠原 一輝]