Lenovoが世界初のIA+Androidスマートフォンを発売
Intel社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏は、International CESの初日にあたる1月10日夕方(現地時間)に行なわれた基調講演に登場し、コンシューマ向け製品に関する戦略などについて説明を行なった。
この中でオッテリーニ氏は、同日発表した32nmプロセスルールで製造されるスマートフォン向けSoC、Atom Z2460(開発コードネーム:Medfield)の状況について説明し、Lenovoが世界で初めてIA(Intel Architecture)に基づいたAndroidスマートフォン「K800」を中国で販売開始することを明らかにした。
さらに、スマートフォン大手メーカーの1つである、Google傘下のMotorola Mobilityと、複数年に渡り、複数のスマートフォンにIAプロセッサを採用する契約を結んだと明らかにし、大きな注目を集めた。
同社が強力にマーケティングキャンペーンを推進しているUltrabookに関しても説明を行ない、Dellが新しい「XPS 13」というUltrabookを発表した。加えて、米国のヒップホップ歌手であるウィル・アイ・アム氏と共同で世界各地でキャンペーンを行ない、その最初が東京で行なわれることを明らかにした。
●ムーアの法則による半導体の進化は、デバイスの進化につながっているオッテリーニ氏は、CESでの基調講演では恒例とも言える、ムーアの法則がコンシューマにどのような影響を及ぼすのかという話から始めた。ムーアの法則は、半導体に集積できるトランジスタ数が18~24カ月で倍になるという、Intelの共同創始者ゴードン・ムーア氏が考案した半導体ビジネスの“常識”だが、一見するとコンシューマには関係の無い話と言える。しかしトランジスタ数が増えるということはほぼ性能が上がるということと同義であるので、結果的にコンシューマに対してさまざまなメリットを提供してきた。
オッテリーニ氏は「ムーアの法則は依然としてゲームのルールである。ムーアの法則で半導体が進化していくので、エンドユーザーに新しい機能などを提供することが可能になる」と述べ、今後もプロセスルールを進化させていくことで、コンシューマに対して、より簡単に、より安全なコンピューティング環境を提供していくと強調した。
オッテリーニ氏は「我々は2年前に32nmプロセスルールをリリースしたが、すでに22nmプロセスルールで製造する次世代CoreプロセッサのIvy Bridgeを顧客に対して出荷開始した。さらに、その次のプロセスルールになる14nmプロセスルールに関しても開発を続けている」と述べ、今後も同社の製造技術を発展させることが、エンドユーザーに対してメリットをもたらすことになると強調した。
さまざまなデバイスの進化の基礎部分にあるのはムーアの法則 | 製品としての発表はまだだが、22nmプロセスルールに基づいて製造される次世代CoreプロセッサIvy Bridgeは顧客に出荷が開始されたことが明らかにされた | 22nmプロセスルールの先には14nmの開発が進められている |
●Lenovoが世界初のIAベースのAndroidスマートフォンを第2四半期出荷開始
具体的な製品の話では、Intelにとって新しい分野となるスマートフォンをまず取り上げた。「携帯電話は単なる電話からスマートフォンへと大きく進化した。実際、スマートフォンの使い方を調べて見ると、音声通話は10%程度で、残りの90%はコンピュータ的な使い方が占めている」と、時代がスマートフォンに向かって進化していることを改めて確認した。
そして、Intelが同日に発表した新しいスマートフォン向けSoCであるAtom Z2460について触れ、Lenovoの中国向けスマートフォンに早速採用されたことを明らかにした。ステージにはLenovo 上級副社長 リュウ・ジン氏が呼ばれ、世界初のIAベースのAndroidスマートフォンとなる「K800」を紹介した。ジン氏は「Atom Z2460の高いパフォーマンスを評価して採用を決めた。K800は中国チャイナユニコムの回線と組み合わせて販売され、第2四半期に市場に登場する予定だ」とし、第2四半期に同製品が中国市場で販売開始されることを明らかにした。
さらにオッテリーニ氏は、同社がOEMメーカーやODMメーカーなどに提供しているAtom Z2460のリファレンスデザインを利用して、Atom Z2460の性能の高さをアピールした。そのデモでは、Webブラウジング、3Dゲーム、セキュリティ、バッテリ駆動時間などが比較されており、バッテリ駆動時間では、ARMを搭載しているスマートフォンと同じ条件で比較してより長時間駆動を実現することができるというビデオが公開された。
ARM版Android端末(左)とのバッテリ駆動時間競争。Atom Z2460が勝利 | 処理能力の比較。Atom Z2460は他のスマートフォン用プロセッサよりも勝っている |
●Motorola Mobilityとの長期間の協力関係を発表
Atom Z2460を搭載したリファレンスデザインのスマートフォンのデモで、スマートフォン関連の発表はこれでおしまいだろうと思ったところ、オッテリーニ氏はスマートフォンビジネスでさらにもう1つのOEMメーカーを獲得したことを明らかにした。
それが、昨年(2011年)Googleに買収された米国の携帯電話メーカーのMotorola Mobilityだ。ステージにゲストとして呼ばれたMotorola Mobility 会長兼CEOのサンジェイ・ジャハ氏は「IAプロセッサは、複数年に渡り、我々の複数のデバイスに採用される」と、IAプロセッサの採用に長期間コミットメントしていく姿勢を明らかにした。出荷は今年の後半が予定されており、具体的な製品の詳細などに関しては今後明らかにしていくという。
Lenovo、しかも中国専用モデルにだけに採用されたというのであれば、特別なモデルに採用されたのだな、と流されてしまうところだが、スマートフォンの世界市場で大きなシェアを持つMotorola Mobilityが採用するとなれば話は別だ。つまり、IAプロセッサを採用したスマートフォンが、メインストリーム市場で投入される可能性がでてくるからだ。
この意味で、これまでARM陣営に比べてスマートフォンビジネスでは劣勢が伝えられていたIntelだが、反撃の狼煙を上げることができたという意味では、OEMメーカーとしてのMotorola Mobilityを獲得したことは大きな意味があるだろう。
Motorola Mobility 会長兼CEO サンジェイ・ジャハ氏 | Lenovo、リファレンスデザインとで終わりかと思っていた来場者にとって、よい意味で期待を裏切られた |
●WindowsとIAの親和性は高いと、オッテリーニ氏
次いでオッテリーニ氏は、開発中のタブレット向け次世代プロセッサ「Clover Trail」のデモを行なった。Clover Trailは、Atom Z670(開発コードネーム:Oak Trail)の後継となるタブレット向けSoCだ。同氏はClover Trailを搭載したタブレットで、Windows 8を動かし「IAではMetroだけでなく、既存のアプリケーションも動作させることができる」と、IAとWindows 8の組み合わせのメリットを強調した。
さらに話はUltrabookへと移り、「UltrabookによりPCは再定義されると」と述べるなど、これまでIntelがUltrabookに対してアピールしてきた内容を繰り返し、現在販売されているUltrabookを紹介していった。そして、その中に新たに加わるラインナップとして、Dellが「XPS 13」という13型のUltrabookを発表したことを明らかにした。
ステージに呼ばれたDell グルーバルオペレーション・エンドユーザーコンピューティングソリューション担当副会長 ジェフ・クラーク氏が呼ばれ、XPS 13の紹介が行なわれた。クラーク氏によれば、XPS 13はアルミ+カーボンのボディを採用することで、最薄部で6mm/重さ1.35kgという薄型軽量化を実現。さらに液晶部分の枠をできる限り小さくすることで、11型液晶のサイズに13型液晶を納めることに成功したという。
そのほかのスペックとして、液晶パネルの保護にゴリラガラスを採用していること、バッテリ駆動時間は公称で8時間であることなどが公開された。受注開始は2月になる予定だという。
Clover Trailの説明を行なうオッテリーニ氏 | Windows 8のUIでタブレットを操作しているところ | いまIntelが最も力を入れているUltrabook |
すでに販売が開始されているUltrabook | Dell グルーバルオペレーション・エンドユーザーコンピューティングソリューション担当副会長 ジェフ・クラーク氏による、XPS 13の紹介 | XPS 13は非常に薄型になっている |
●ウィル・アイ・アム氏と協力してUltrabookの普及を目指す
米国のヒップホップ歌手のウィル・アイ・アム氏 |
Ultrabookに関するデモが行なわれたあと、ステージには米国のヒップホップ歌手であるウィル・アイ・アム氏が呼ばれ、Intelと共同でUltrabookのキャンペーン「Ultrabook Project」を行なうことを明らかにした。
このUltrabook Projectでは、ウィル・アイ・アム氏が世界各地を回り、現地のアーチストとコラボレーションし、その中でUltrabookの魅力をアピールしていくというものだ。なお、この最初の訪問地は東京になることがすでに決まっており、その次にはメキシコにいくのだという。約1年をかけて世界中を回って行くとのことなので、そうした取り組みの中でUltrabookをアピールして行くことになりそうだ。
(2012年 1月 11日)
[Reported by 笠原 一輝]