エルピーダの四半期業績、営業赤字が減少

8月4日 発表



 DRAMの大手ベンダーであるエルピーダメモリ株式会社は、4日夕方に記者会見を東京で開催し、2009年度(2010年3月期)第1四半期(2009年4~6月期)の連結業績を発表した。同社代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏と同社取締役兼CEOの五味秀樹氏、同社執行役員CFOの福田岳弘氏、同社執行役員兼CSOのOliver Chang氏が説明にあたった(写真撮影が禁止されていたため、各氏の近影は掲載できなかった)。

 2009年度第1四半期(2009年4~6月期)の売上高は前年同期比33.6%減、前四半期比56.1%増のの726億円。営業損益は423億円の赤字で、前年同期の営業赤字156億円よりは大幅に増えているものの、前四半期の営業赤字494億円からは減少した。なお第1四半期からは連結対象子会社が増えており、旧連結ベースでの営業赤字は356億円となる。

 四半期ごとの売上高と営業損益の推移をみていくと、2007年度第3四半期から2009年度第1四半期まで、7四半期連続で営業損失を計上している。ただし売上高は急速に回復し、営業損益も赤字幅の減少傾向が出てきた。

 特に大きな変化は、DRAM平均販売単価の上昇である。前四半期比27%増と2年半ぶりに上昇に転じた。また需要が予想以上に拡大した。当初はDRAMビット需要の伸び率を前四半期比で1桁の%と予測していたのが、実際には12%の伸びを示した。このため、売上高が前四半期比で大幅に上昇した。

 エルピーダメモリはDRAM製品をプレミアDRAM(デジタル家電向けDRAMおよびモバイル向けDRAM)とコンピューティングDRAM(サーバー向けDRAMおよびPC向けDRAM)に分けている。

 2009年度第1四半期(2009年4~6月期)はプレミアDRAMの需要が旺盛で、スマートフォンとデジタルテレビ、ゲーム機器に向けた出荷が好調だった。売上高に占めるプレミアDRAMの比率は約4割に増えた。前四半期の売上高に占めるプレミアDRAMの割合は37%だった。

 コンピューティングDRAMではPC向けDDR2 SDRAMの大口顧客向け販売価格が上昇に転じた。また平均スポット価格は前四半期と比べて約20%上昇した。ちなみに2009年8月3日時点のDRAMスポット価格は1Gbit DDR3 1,333Mbpsタイプが2.10ドル、1Gbit DDR2 800Mbpsタイプが1.32ドルである(調査会社DRAM eXchangeのデータを引用していた)。

 地域別(所在地別)の売上高は日本が前年同期比41%減の305億円、アジア(日本を除く)が同35%減の224億円、欧州が同53%減の33億円、北米が同4.0%増の164億円である。北米が健闘していることが分かる。売上高比率は日本が42%、アジア(日本を除く)が31%、欧州が4.5%、北米が23%。営業損益は日本が369億円の赤字、アジア(日本を除く)が56億円の赤字、欧州が2億5,000万円の赤字、北米が4億3,000万円の黒字となった。

売上高と営業損益の四半期別推移製品別売上高と構成比
DRAMスポット価格の推移2009年度(2010年3月期)業績の参考指標。ビット成長率は第1四半期の結果を受けて若干、強めに修正された

 今後の見通しでは、プレミアDRAMの主要な顧客であるスマートフォンの市場が大きく拡大するとの期待を示していた。2013年の生産台数は、2009年の3倍に増え、1台当たりのDRAM搭載容量は2013年に2009年の2倍に増えるという。記憶容量換算の需要は6倍に拡大することになる。

 エルピーダは2009年3月に50nm技術による2Gbit Mobile RAMの製品化を発表した。2009年末までに、20件を超える受注を獲得する見込みだという。

 PC向けにはDDR3 SDRAMの需要が2009年中に急速に立ち上がるとする。この動きに対応し、PC向けDRAM生産能力の50%をDDR3向けに切り換え済みである。またこれまでは65nm技術でDDR3 SDRAMを製造してきたが、2009年8月からは50nm技術でDDR SDRAMの製造を開始し、製造コストを下げる。

 ファウンドリ(製造請け負い)事業では、液晶ドライバの生産を2009年7月に広島工場で始めることを明らかにした。製造技術は90nmである。そして2010年1~3月期には、NORフラッシュメモリの量産を始める予定。製造技術は65nmである。

スマートフォンの生産台数と搭載DRAM容量の予測DDR3 SDRAMの需要予測
50nm技術で超高速(1600Mbpsタイプ)のDDR3 SDRAMを製造するファウンドリ事業の状況

 記者会見の質疑応答では、DRAM全体のチップコストが現在は製造コストで1.3~1.4ドル、事業コストで1.5~1.6ドルであると述べていた。2009年9月にDRAMの販売価格が1.8ドルくらいで推移すれば、収支均衡を狙えるという。

(2009年 8月 5日)

[Reported by 福田 昭]