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Samsung、年末にはPCIe Gen3+NVMeベースで4GB/secクラスのSSDを製品化
(2013/7/19 00:56)
韓国Samsung Electronicsは18日(現地時間)、韓国ソウル市内のホテルで「Samsung SSD Global Summit 2013」と題したイベントを開催した。本稿では同社のSSDロードマップなどについてまとめる。
同社メモリマーケティング担当副社長のジム・エリオット氏は、SSDを取り巻く状況について説明した。
現在、NANDフラッシュは、SSD以外にも各種メモリカードやスマートフォン/タブレットなどのストレージなど、多種多様な機器に搭載されている。今後も年45%の成長が見込まれており、2015年に出荷される容量は、アメリカの総人口×256GBに達するという。そして、全NANDの用途の中でSSDの割合は、2012年に44億GBで全体の16%だったものが、2016年には330億GBで全体の26%にまで成長すると見込まれている。同社がSSDのためだけにこういったグローバルなイベントを開催するのは今回で2回目だが、背景にはそのような事情がある。
SSDを採用する主な機器はモバイルPCだが、モバイルPCでSSDを採用するメリットとしてエリオット氏は、薄くて軽い、反応性の良さ、低消費電力、壊れにくさを挙げた。特に、ランダムアクセス性能は、HDDの200倍程度もある。
さらにエリオット氏は、データセンターでもSSDによって大きな恩恵を受けられるとする。改めて説明するまでもなく、SNSの普及により、データセンターへのアクセスは日々増加しており、SSDはそこで求められるランダムアクセス性能や、低い消費電力を提供できるとする。ただし、サーバー市場でのSSDの需要はまだ少なく、今後もしばらくはクライアントPCが主戦場となる。
続けて同氏は、同社製SSDのこれまでの軌跡を振り返った。同社は2006年に世界初のSSD搭載PCにSSDを提供。2008年に世界初のMLC SSDを出荷、これによりSSDの容量当たりの価格を4割引き下げた。2010年には世界PCメーカー上位10社のうち8社の製品で採用。2012年には世界初のTLC SSDを投入し、容量を3割増やした。これらの例を元にエリオット氏は、「Samsung SSDの歴史はSSDの歴史そのものである」と語った。
ちなみに、SamsungはNAND市場において40%のシェア(2012年実績)を誇り、OEMと小売りを含めた全SSD市場での2012年同社シェアは46%、2013年の直近の結果では51%となっている。
そして2013年に同社が他社に先駆けて注力するのが、PCI Express(PCIe)ネイティブフラッシュコントローラ採用による、性能向上だ。利用するレーン数などにもよるが、PCIeは、6GbpsのSATAより遙かに帯域が広いため、SSDの持つ性能を最大限に発揮できる。
このPCIeベースのSSDについて、メモリプロダクトプラニング&アプリケーションエンジニアリングチーム担当シニアエンジニアのケウン スー・ジョー氏が解説を行なった。
SATAに対するPCIeネイティブのメリットは、帯域幅の広さ、スケーラビリティ、低レイテンシ、エネルギー効率などである。
現在のSATAは6Gbps(600MB/sec)までだが、PCIeはGen2の場合、1レーンで1GB/secとなる。また、4レーン、8レーン、16レーンなどを採用すればさらに帯域は広がる。レイテンシについてはSATAコントローラを介さずに、CPUと直結することでオーバーヘットを減らすことができる。
今回発表された840 EVOに採用されている同社製Toggle DDR 2.0 NANDフラッシュは400Mbpsで、4チップ8チャネルで1.6GB/secの速度を出せる。この場合、SATAではボトルネックになるが、PCIe 2レーンを使えば、性能をフルに発揮できる。デメリットとして、現在のPCIeネイティブコントローラは他のコントローラよりも消費電力が高いことが挙げられるが、性能も数倍高いので結果的に転送レート当たりの消費電力は低くなる。
ソニーが先だって発売した「VAIO Pro 13」では、M.2型SSDのオプションとして、PCIeネイティブタイプを選択できる。ソニー、Samsung双方は明言していないが、このM.2 SSDはSamsung製であり、ベンチマークで1GB/secを超える連続アクセス性能が確認されている。Samsungでは「XP941」として6月に製品化を発表している。
現在、通常のマザーボードBIOSやOSでサポートされていないという事情もあり、クライアントPC向けにPCIeネイティブSSDを製品化しているのはSamsungだけだが、同社はさらに高速化を推し進める。
その1つがNVMe(Non-Volatile Memory Express)インターフェイスの採用。NVMeはSSDのためにゼロから作られた初のインターフェイスで、Samsungのほか、IntelやSanDisk、Micronらが共同で策定。NVMeは現行のAHCIと比べ、ストレージアクセスのレイテンシを大幅に削減できる。具体的にはSATAで約12μs、PCIe+AHCIで約7μsかかるレイテンシが、PCIe+NMVeでは約1μsに短縮される。これは特にランダムアクセスに効果があり、4倍程度高速化できるとしている。
そしてジョー氏は、このNVMeを採用し、インターフェイスをPCIe Gen3の4レーンにした次世代のM.2 SSDを早ければこの年末にも投入予定であることを明らかにした。現状では、M.2型、ことPCIeネイティブのSSDとなると、ユーザーによる換装は事実上不可能なため、当面この製品はノートPCに組み込まれた形での出荷になると思われるが、同社では4GB/secクラスの連続アクセス性能をターゲットとしている。
また、サーバー向けにもNVMe+PCIe Gen3 x4のモデルとして、2.5インチでSFF-8639インターフェイス採用、連続読み込み速度3GB/sec、740,000IOPSの「XS1715」の開発を表明しているほか、SAS 12Gbps対応の次世代品も2014年に投入予定としている。