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【PC Watch25周年】AMDの歴代製品を振り返る

 AMDが誕生したのは、1969年5月。フェアチャイルドセミコンダクターから独立したジェリー・サンダース氏を始めとした数十人の社員でスタート。米シリコンバレーに本社を置き、今では全世界に1万2,000人以上の社員を擁し、50年以上の歴史を持つ半導体メーカーだ。

 1970年には、AM2501ロジックカウンタを開発し、AMD初の専売デバイスとして発売。業界初の2進数/16進数アップダウンカウンタとして、当時の最高水準システムを、大規模な集積回路を用いて実装する役割を果たしたとされる。

 1975年には、Intelとセカンドソース契約を締結。1976年には、NASAがミッションクリティカル処理にAMDを採用。1984年には、業界初のシングルチップバーストエラープロセッサ「Am9580」を開発。小型ディスクドライブ技術の進歩やPCの新興市場の成長を加速させた。

 AMDの歴史は、新たな技術開発によって、市場を開拓し続けてきたことにある。その後も、1986年には、業界初のシングルチップ圧縮/拡張プロセッサ「Am7970」を開発。3つの処理エンジンとツーバスアーキテクチャを用いて、テキストと画像データを同時に圧縮、拡張することができるようにしたほか、同年には業界初の100万bit EPROMを導入し、OEMによって異なる市場向けへの展開を加速させ、製品のカスタマイズも可能になった。

 また、1987年には、当時のコンピュータディスプレイ、グラフィックスインターフェイス、グラフィックソフトウェアに対応する業界初のグラフィックスボードを開発。1991年には、Intelの386互換マイクロプロセッサ「AM386」を発売。PCの低価格化を促進する役割を担った。

 それからも、1GHzの限界を打開した初のプロセッサや、業界初の1GB GPU、そして、業界最高性能を誇る6コアプロセッサの開発など、業界初となる数々の製品を投入し、実績を築いた。

 現在、世界35カ所以上の拠点で事業を展開。営業拠点や研究開発施設のほか、マレーシアおよび中国では、アセンブリおよびテスト製造施設とのジョイントベンチャーを設置している。

 日本AMDは、1975年2月にスタートし、現在では、スーパーコンピュータから常時接続のクラウドインフラストラクチャー、デスクトップ/ノートPC、ゲーム機まで様々なデバイスで、同社製品が活用されている。

 同社の歴史の中で重要なトピックスの1つが、2006年7月に発表されたカナダのATI Technologiesの買収だ。買収金額は約54億ドル。これにより、AMD は、ハイパフォーマンスコンピューティングとハイパフォーマンスグラフィックステクノロジの両方を開発し、さらにその2つを組み合わせてカスタムソリューションを提供できる世界で唯一の企業となった。

 CPUとGPU間をスケーラブルに相互接続し、マルチプロセッサのパフォーマンスや効率性、スケーラビリティを向上させ、それが大きな特徴となっている。

 2009年には製造部門のGlobalFoundriesをスピンオフ。2020年10月にはFPGA大手のXilinxの買収を発表し、2021年末までに買収を完了させる予定だ。

AMDプロセッサの変遷

 ここからはAMDが投入してきた主要なプロセッサを振り返ってみよう。

 1996年4月のPC Watchの創刊当時、大きな話題を集めたのが、AMD「K6」であった。Pentium Proに対抗する性能を実現できる第6世代プロセッサと位置付けられ、Socket7対応のマザーボードならば搭載が可能である点などが特徴。「K6」を採用することで、PC本体の価格を初めて1,000ドル以下にすることが可能になった点でもエポックメイキング(画期的)な製品だった。

 1998年5月には、3DNow!対応の「K6-2」を発表。さらに、1999年2月には2次キャッシュをチップ内に統合した「K6-III」を発表した。なお、K6の製品化には、AMDが1995年10月に買収したNexGen Microsystemsの技術が活かされている。

 もともとはK7のコードネームで呼ばれていたのが1999年6月に発表した「Athlon」である。業界最速のx86プロセッサとして発表されたほか、業界で初めて銅製造技術を利用したプロセッサとしても話題を集めた。

写真は笠原一輝氏のレビュー記事より転載

 また、2000年3月に発表した「Athlon 1000(1GHz)」では、デスクトッププロセッサとして世界で初めてCPUクロック周波数1GHzの壁を打ち破ることに成功した。

 さらに、AMD64アーキテクチャに基づいたサーバー/ワークステーション用の「Opteron」と、続いてクライアントPC向けの「Athlon64」をラインナップ。初のx86ベースの64bitプロセッサとして注目を集めた。

 2004年8月には、AMDのオースティン施設におけるデモで、業界初のx86デュアルコアプロセッサを稼働。この成果をもとに、2005年4月には、サーバー/ワークステーション向けのx86 CPUとして初となるデュアルコア製品「Opteron Dual-Core」を出荷するとともに、クライアントPC向けのデュアルコアCPU「Athlon 64 X2」も発表。デュアルコア分野における技術的な先進性が注目を集めた。

 2011年1月に発表した世界初のAPU(Accelerated Processing Unit)である「AMD Fusion APU」は、単一のダイ内でCPUとGPU機能を組み合わせて、高性能演算と高解像度グラフィックスを小さな1つのプロセッサとして提供。

 同年11月には、新規に開発したBulldozerアーキテクチャによるクライアントPC向けの「AMD FX」を発表して、さらに進化を遂げた。AMD FXでは、液体ヘリウムによる冷却を利用して8GHz超のオーバークロックを達成。ギネス世界記録に登録されたという。

 鳴り物入りで登場したのが「Ryzen」である。2016年12月にRyzenのブランド名を公表。2017年3月に第1号製品として市場投入されたRyzenデスクトッププロセッサは、最大8コア16スレッドで動作するハイエンドCPUで、動作クロックは3.4GHz以上、合計20MBものキャッシュを備え、AM4プラットフォームをサポート。従来のExcavatorアーキテクチャのプロセッサと比較して40%のIPC向上を達成した。

 それまでの記録を打ち破るオーバークロック性能と、大幅に性能を高める新たなテクノロジは、PCゲーマーやプロシューマーなどから高い評価を得たことは記憶に新しいだろう。

 さらに、2017年5月には、業界初の16コアハイエンドデスクトッププロセッサである「Ryzen Threadripper」を投入。新たなプラットフォームとマルチコアプロセッサによる高い演算能力が、ハイエンドデスクトップ市場に大きな衝撃を与えた。

 2017年10月には、Radeon Vegaグラフィックス搭載のRyzenモバイルプロセッサを発表。薄型ノートPC市場に向けても世界最速プロセッサを投入してみせた。

 こうしてみると、AMDの50年以上に渡る歴史は「次世代のコンピューティング・エクスペリエンスを加速する優れた製品を作る」という同社が掲げるミッションを具現化してきたものだと言えるだろう。