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AMDから史上最強のx86プロセッサ「Athlon」がデビュー



AMD Athlon 600MHz
 前々回のこのコーナーではインテルの最新CPUであるPentium III 600MHzとCeleron 500MHzの2つのレビューを行なった。その結論の中で筆者はPentium IIIが現時点で最高パフォーマンスのx86プロセッサという評価を下したが、最後に「この評価もAMDがAthlonを正式にリリースするまでの可能性が高い」という条件を付けた。そのAthlonが8月10日にAMDから正式に発表されたので、取り上げるとともに現時点でのCPUの性能・コストパフォーマンスなどを評価したい。


●正念場を迎えたAMDの切り札として「Athlon」登場

 一昨年にK6を発売して以来、AMDの快進撃は続いている。例えば、パーツショップの店頭では以前は「インテル、その他」だったCPU販売のスペースも、今では「インテル、AMD、その他」とすっかりその他グループからは脱出し、インテルに次ぐNO.2の座は確実に確保したといってよい。しかし、AMDがビジネスの面でも成功を収めたかと言えば、残念ながらそうでもないらしい。例えば、AMDは'99年第2四半期の決算で約1億2,700万ドル(日本円で約152億4,000万円)の赤字を計上しており、どうひいき目に見ても儲かっているという状況ではない。

 では、なぜAMDはこんなに儲かっていないのだろうか?
 8月10日に行なわれたAMDのAthlon発表会では報道陣から「どうしてAMDはこんなに儲かっていないのですか?」という痛烈な質問も飛び出したが、AMDの吉沢俊介取締役は苦笑しながら「確かに第2四半期の決算が良くなかったのは事実だが、Athlonには期待している」と今後のAMDの利益についての直接のコメントは避けたものの、Athlonでそうした状況を跳ね返すことができるという期待感を明らかにした。

 それでは、これまでのK6-2やK6-IIIで実現できなかったことが、どうしてAthlonでは達成できるというのだろうか? AMDがK6-2やK6-IIIでインテルに及ばなかった1つの理由に、常に同社のCPUが安価なローエンドのCPUだと見続けられていたことにある。【図1】を見て欲しい。これはAthlonが発表される前のCPUをセグメントごとに分類したものだ。こうした状況の場合、インテルはローエンド(Celeron)、メインストリーム(Pentium III)、ハイエンド(Pentium III Xeon)というすべてのセグメントにおいて対応したCPUを持っていた。これに対して、AMDはK6-IIIをPentium IIIに対抗できるメインストリームのCPUだと主張してきたが、実際にメーカーなどから発売されたマシンの多くはいわゆるローエンドPCで、実質的にはK6-IIIはローエンドのCPUになってしまっていた。このため、AMDは事実上ローエンドのCPUしか持っていなかったと言っていいだろう。

【図1】
IntelAMD
ハイエンドPentium III Xeon 
メインストリームPentium III 
ローエンドCeleronK6-2/K6-III

 こういった状況では、インテルがAMDと競争する場合、Celeronの価格をどこまでも下げていくことができる。なぜならば、仮にCeleronで利益がでなくても(もし赤字だったとしても)、Pentium IIIの値段を維持することで利益を出すことが可能であるからだ。これに対して、AMDはそうした戦略を採ることができないので、インテルがCeleronの値段を下げてくれば、対抗上全く利益がでなくても、さらにいえば赤字でも下げていかざるを得ない(そうしなければ全くCPUは売れずさらに赤字が増えかねないからだ)。しかし、AMDは利益を補填するPentium IIIのようなメインストリームのCPUを事実上持っていなかったので、他のCPUで利益を補填することはできない。だから、AMDは赤字になってしまう。

 このような状況を打破するためにも、AMDはPentium IIIに対抗するAthlonをリリースした。これにより、AMDは【図2】のようにメインストリームで対抗できる製品を持ったことになり、インテルもこれまでのようにローエンドでの利益の薄さをメインストリームで補填ということは不可能になる。ただし、鋭い読者であれば今度はさらに上位のPentium III Xeonでそれを行なえばいいのではないかという事を指摘するだろう。その通りである。

 そこで、AMDはXeonのAthlon版と言うべきAthlon UltraとAthlon Professionalを計画しており、これでインテルの戦略を封じる戦略に出ようと考えている。ただし、Athlon UltraとAthlon Professionalへつなげるためにも、Athlonが成功を収めなくてはならないのは言うまでもない。そうした意味でもAMDはこのAthlonで正念場を迎えているということができるだろう。

【図2】
IntelAMD
ハイエンドPentium III Xeon 
メインストリームPentium IIIAthlon
ローエンドCeleronK6-2/K6-III


●Athlonの特徴は浮動小数点演算の高さにあり!

 Athlonの技術的な特徴は以下の5点に集約できる

(1)9命令同時実行のスーパースケーラ
(2)浮動小数点演算能力の強化
(3)大容量のL1キャッシュを搭載
(4)CPUバスにEV6を採用
(5)3DNow!テクノロジの拡張

 AthlonではK6シリーズとは全く異なった新しいCPUコアを採用している。例えば、AthlonのCPUコアは1クロックの間に最高で9命令を同時に実行できるスーパースケーラ・マイクロアーキテクチャを採用している(通常のCPUでは1クロックあたり1命令を実行できるのだが、最近のCPUは1クロックの間に複数の命令を同時に実行できるようになっており、こうした仕組みをスーパースケーラと呼んでいる)。K6シリーズが同時6命令、Pentium II/Pentium III/Celeronが5命令であることを考えれば、Athlonの方がより効率よく命令を実行できるということがわかるだろう。ただし、実際にはかなりソフトウェア側で最適化されていないと9命令も同時に実行できることはまれであり、ソフト側でのAthlonへの最適化が期待される。

 浮動小数点演算能力の強化という点ではx86プロセッサとしは初めて、浮動小数点演算ないしは3DNow!命令を同時に3つ発行できるようなパイプライン化されたスーパースケーラ浮動小数点演算ユニット(FPU)が採用されている。このため、これまでAMDCPUの(K6シリーズの)弱点と言われ続けてきた浮動小数点演算能力は大幅に改善しており、後述するようにPentium IIIのFPUと比較しても、勝っていると言っていいだろう。

 Athlonではキャッシュ周りも大幅に見直されている。L1キャッシュはK6シリーズ(64KB)と比べて倍、Pentium II/III/Celeron(32KB)と比べて倍の128KBになっている(命令64KB/データ64KB)。ただ、L2キャッシュに関してはK6- IIIに比べるとやや後退したと言っていいだろう。K6-IIIが256KBのL2キャッシュをCPUダイ上に搭載しているのに対して、Athlonでは専用のバックサイドバス(BSB)に、ハーフスピード(CPUコアの1/2のクロック)で接続されている。容量こそ512KBと倍になったが、動作速度は1/2になってしまっており最近の流行(L2キャッシュはCPUダイ上に搭載)からするとやや後退している感は否めない(ただ、将来的にはXeonと同じようにL2キャッシュをCPUコアと同クロックにすることは可能になっている)。

 CPUバスに関しては、Compaq Computer(旧DEC)からライセンスを取得したEV6バスを採用している。EV6バスはDECがAlphaプロセッサ用に開発したCPUバスで、元々サーバー/ワークステーション用のAlpha向けに開発されただけあり、性能面では優れたものを持っている。また、AMDがPentium IIIなどで採用されているP6バスではなくEV6を採用した裏には、インテルとの長い法廷闘争がある。AMDは以前にP5バス(PentiumやK6で使われていたバスアーキテクチャ)の仕様に関してインテルと法廷で争った際に、P6バス以降は利用できないという条件で和解した経緯がある。このため、AMDはP6バスを使うことができず、EV6バスをチョイスしたという訳だ。

 AthlonのCPUバスの動作クロックはダブルデータレートの200MHz(チップセット側は100MHz)で、ピーク時のバンド幅は3.2GB/秒とPentium IIIなどで採用されているP6バスの0.8GB/秒に比べて実に4倍になっている。また、マルチプロセッサ時にはCPUはPoint-To-Pointと呼ばれる、チップセットと全てのCPUの間で3.2GB/秒の帯域が確保される構成になっており、複数のCPU間で帯域をシェアするP6バスのようなシェアードバスに比べると性能面でアドバンテージがある。ただ、現時点でのAthlonはマルチプロセッサ構成で利用することができない。なぜならば、後述するAthlon用のチップセットであるAMD-750チップセットがマルチプロセッサをサポートしていないからだ。

 また、K6-2から搭載されていたマルチメディア系の処理をより効率よく行なうための命令セットである3DNow!テクノロジも若干の新命令が追加されてエンハンスド3DNow!となった。追加された命令はAC-3やMP3のデコードに関する命令などだが、当然これまでの3DNow!に対応したアプリケーションでは単なる3DNow!としてしか利用できない。


●いきなりつまずいたが、素早いリカバリーを見せたマザーボードの相性問題

 今回のAMDのAthlon発表と同時に、いくつかのメーカーからAthlonマザーボードのリリースが明らかにされた。代表的なところをあげるとMSI、GIGA-BYTE Technology、FICといったメジャーなメーカーの他、BIOSTAR、GVCなどからリリースされる予定になっている。当初はASUSTeK ComputerもAthlon用マザーボードをリリースする意向と言われていたのだが、結局取りやめになったという噂もあるほか、AOpenのようにAthlonマザーボードの予定はないと明言するメーカーもあるなど必ずしもすべてのベンダーからサポートされている訳ではないというのが現状だ。

 それはなぜかと言えば、現状のAthlon用のチップセットであるAMD-750チップセットが本命ではないと見られているからだ。実は、AMD-750チップセットはノースブリッジのAMD-751(コードネーム:Irongate)とサウスブリッジのAMD-756(コードネーム:Viper)から構成されているのだが、AMD-751がEV6バスをサポートし、AMD-756がUltra DMA/66をサポートしている以外は、インテルの440BXとほぼ同等のチップセットだと言ってよい。しかし、インテルが9月にリリースするといわれているIntel820チップセット(コードネーム:Camino)や同じく9月にVIAがリリースするApollo Pro133A(コードネームはApollo Pro133/4x)はそれぞれ新世代のメモリ技術(Intel820はDirect RDRAM、Apollo Pro133AはPC133 SDRAM)をサポートしており、さらにAGPの4Xモードをサポートしている。これに対して、AMD-750はそれぞれPC-100 SDRAMとAGP 2Xモードのみのサポートで、そうしたトレンドを考えるとすぐに時代遅れのチップセットになってしまう可能性が高い。

 Athlonのチップセットがやや時代遅れという問題を解決するため、VIAはApollo Pro133Aと同等のPC133/AGP 4XサポートのApollo KX133(コードネーム:Apollo K7)をリリースすることを予定している。各マザーボードメーカーはそれを待っていると言われているのだ(実際に筆者がミーティングを持った複数のマザーボードメーカーはこういう説明をしていた)。この他、ALiやSiSなどもAthlon用のチップセットを計画していることを明らかにしている。現在のPCシステムは単にCPUの性能よりも、周辺部分(特にグラフィックスやメモリ)の性能も含めたトータルの性能が重視されるので、こうした方針も頷けなくはない。

MSI MS-6167
 そうした意味では、現状のAMD-750を搭載したマザーボードはつなぎであるという印象は否めない。そのため、すべてのマザーボードベンダが競って出しているという状況ではないのだ。その中でも事実上のAMDお墨付きと言ってよいマザーボードがMSIの「MS-6167」だ。MS-6167自体はAMD-750チップセットを搭載し、CPUスロットにAthlon用のSlot Aを採用した標準的なマザーボードで、特にこれといった特徴はない。1つだけ気になったのは、YMF-724やYMF-744などを搭載したPCIサウンドカードで、ISAのサウンドブラスターと互換性をとるために必要なコネクタであるPC/PCIがないことで、こうしたサウンドカードを使おうと考えていたユーザーは注意が必要だ。

 現時点では秋葉原などで入手できるマザーボードはMS-6167がほとんど唯一といっていのだが、このマザーボードにはコールドブート時にシステムが起動しないという問題があることが既に判っている。この問題に対するAMD(とMSI)のアクションは早かった。MSIと共同でこの問題に対処しており、ユーザーからの申し出により問題のあるマザーボードの交換に応じるという処置をとっており、問題が発生した場合は購入したショップで応じてもらえる。こうしたトラブルは起きないに越したことはないが、AMDが(直接は関係のないマザーボードについても)ユーザーをフォローしていこうという姿勢を見せていることは評価していいだろう。


●パフォーマンスではPentium IIIを上回る

 Athlonで最も重要なパフォーマンスだが、ある条件を除いてAthlonがPentium IIIを上回った。今回も前々回と同じく4つのベンチマークテストを行なった(ベンチマークの説明については前々回参照)。現時点で入手できるAthlonの最高クロックは600MHzなので、600MHzのAthlonを利用してのテストとなった。なお、環境はマザーボードとCPU以外は前々回のPentium IIIおよびCeleronと全く同じものを利用している(Windowsのバージョン及び、ドライバのバージョンなども含む)。

 ビジネスアプリケーションにおける処理能力を計測するのに利用したのは、Ziff-Davis,Inc.のWinstone 99 Version 1.1に含まれるBusiness Winstone 99だ。結論から言えば、Athlon 600MHzはPentium III 600MHzを上回った。同じく、ハイエンドアプリケーションにおける処理能力を計測するHigh-End Winstone 99でもAthlon 600MHzがPentium III 600MHzを上回った。このように、一般的に使われるアプリケーションなどでは明らかにAthlonがPentium IIIを総合性能で上回っていると言っていいだろう。

Business Winstone 99High-End Winstone 99
Athlon 600MHz36.3 29.3
Pentium III 600MHz34.0 28.2
Pentium III 550MHz32.5 27.1
Pentium III 500MHz31.0 25.7
Pentium III 450MHz29.6 24.3
Celeron 500MHz29.0 23.6
Celeron 466MHz27.8 22.8
Celeron 433MHz27.5 22.1
Celeron 400MHz26.8 21.8
Celeron 366MHz25.7 20.2
Celeron 333MHz22.2 17.0
K6-III/45032.0 24.7

 これに対して、MultimediaMark99および3DMark99 Maxでは前述の「ある条件」に当たる例外となり、MultimediaMark 99のOverallおよび、3DMark99 Maxの3DMarkに関してはPentium IIIがAthlonを上回った。ただ、これに関しては単にCPUの性能というよりは、拡張命令への対応の有無がきいていると言える。MultimediaMark 99はPentium IIIのインターネット・ストリーミング拡張命令(SSE)には対応しているものの、3DNow!には対応していない。また、3DMark99 Maxの3DMarkはCPUの処理能力よりも、ビデオカードの描画性能が大きく影響するテストなのだが、今回のテストに利用したカノープスのSPECTRA 3200R2のドライバはSSEにのみ対応しており、このために3DMarkの結果がPentium IIIに有利な結果がでたと考えるのが妥当だろう。その証拠に、CPUの浮動小数点演算能力を指し示す3D CPUmarkではAthlon 600MHzがPentium III 600MHzを圧倒的に上回っている。

MultimediaMark993DMark99
Max 3DMark
3DMark99 Max
3D CPUmark
Athlon 600MHz1,523 2,497
10,231 
Pentium III 600MHz1,824 2,640
 8,122 
Pentium III 550MHz1,692 2,632
 8,040 
Pentium III 500MHz1,565 2,614
 7,717 
Pentium III 450MHz1,422 2,607
 7,018 
Celeron 500MHz1,125 2,438
 4,377 
Celeron 466MHz1,061 2,426
 4,170 
Celeron 433MHz1,001 2,406
 3,954 
Celeron 400MHz 937 2,372
 3,732 
Celeron 366MHz 871 2,235
 3,474 
Celeron 333MHz 794 2,212
 3,204 
K6-III/450 949 2,219
 7,146 

 なお、今回は新しいチップセットということで、AGPのビデオカードを利用して互換性のテストも行なった。というのも、非インテルのチップセットではAGP周りのトラブルが起きることが多かったからだ。テストに利用したのはカノープスのSPECTRA 3200R2(RIVA TNT搭載)、SPECTRA 5400(RIVA TNT2搭載)、Matrox Graphics Millenium G400(Matrox G400搭載)、ATI TechnologiesのRAGE MAGNUM(RAGE128 GL搭載)、Voodoo3 2000(Voodoo3搭載)の5枚を挿し、複数のベンチマークテストを走らせてみたが、特に問題のあるカードは無かった。今回テストしたのは比較的最新のカードなのですべてのカードで問題ないとは言えないが、少なくとも現時点で入手可能なカードでは問題のない可能性が高く、その点ではあまり心配する必要はない。

 ただ、これまで440BXを利用してきたユーザーの場合、注意したいのはこうした非インテルチップセットの場合、マザーボードに付属しているCD-ROMからAGPドライバをインストールする必要があることだ。MS-6167の場合もCD-ROMが付属しており、これを利用してのインストールが可能なので、必ずAthlon用のAGPドライバをインストールしてからビデオカードに付属のビデオドライバをインストールしたい。


●現時点では最強のx86プロセッサ

 以上のようにSSEにだけ対応しているアプリケーションで利用している場合を除き、Athlon 600MHzはPentium III 600MHzを上回っており、少なくとも現時点では処理速度の面ではx86史上最強のCPUであると言っていいだろう。ではコストパフォーマンスはどうだろうか。ここでは前々回と同じように、コストパフォーマンスを数値化するために、以下の計算式で8月21日付けのAkiba PC Hotline! CPU最安値情報を元に1万円当たりのWinstone 99スコア、同じように、3DMark99 MaxのCPU 3DMarkの1万円当たりのスコアを計算してみた。

「Business Winstone99のスコア÷CPUの最安値価格×10,000」

「CPU 3DMarkのスコア÷CPUの最安値価格×10,00」

 結果は表の通りだが、注目すべきはどちらにおいてもAthlon 600MHzがPentium III 600MHzをわずかだが上回っていることだ。

Business
Winstone 99
8月21日付け
最安値
1万円当たりのWinstone
Athlon 600MHz36.3 79,500
 4.6 
Pentium III 600MHz34.0 77,500
 4.4 
Pentium III 550MHz32.5 59,800
 5.4 
Pentium III 500MHz31.0 32,800
 9.5 
Pentium III 450MHz29.6 23,980 12.3
Celeron 500MHz29.0 19,700 14.7
Celeron 466MHz27.8 13,580 20.5
Celeron 433MHz27.5 11,500 23.9
Celeron 400MHz26.8 9,100 29.5
Celeron 366MHz25.7 8,390 30.6
Celeron 333MHz22.2 8,280 26.8
K6-III/45032.0 21,500 14.9

3DMark99 Max
3D CPUmark
8月21日付け
最安値
1万円当たりの3DMark
Athlon 600MHz10,23179,5001,287
Pentium III 600MHz8,12277,5001,048
Pentium III 550MHz8,04059,8001,344
Pentium III 500MHz7,71732,8002,353
Pentium III 450MHz7,01823,9802,927
Celeron 500MHz4,37719,7002,222
Celeron 466MHz4,17013,5803,071
Celeron 433MHz3,95411,5003,438
Celeron 400MHz3,7329,1004,101
Celeron 366MHz3,4748,3904,141
Celeron 333MHz3,2048,2803,870
K6-III/4507,14621,500 3,324

 ちなみに、若干本筋からはそれるが前々回の結果に比べてPentium III 450MHzや500MHzのコストパフォーマンスが大幅に上がっている。もちろん、これはインテルがAthlonに対抗する意味でこれらのCPUの値段を大幅に下げたためで、Celeronと遜色無いレベルになってきた。そろそろこのあたりのCPUがお買い得になってきたということができるだろう(むろん、相変わらず最もお買い得なCPUはCeleron 366MHzないしは400MHzあたりであるというのには変わりはないが)。このあたりに、既にこうしたメインストリームのセグメントでも価格競争が始まりつつある好影響が現れている(もちろんCPUメーカーの利益ににとっては悪影響なのだが……)。

 こうして見ていくとコストパフォーマンスの面でもAthlonのPentium IIIに匹敵ないしは上回っており、性能面でも、コストパフォーマンスでもAthlonはPentium IIIを上回っていると言ってよい。では、Athlonの未来がすべてバラ色かと言えば、そう単純な話でもない。筆者はAthlonおよびAMDには以下の3つの課題があると思う。

(1)大手メーカー製マシンが未発売であること
(2)L2キャッシュがオンダイではないこと
(3)チップセットが時代遅れであること

 最も深刻な問題は大手メーカー製マシンが未発売であることだ。米国ではIBMとCompaq Computerから発売されることが決まっているということだが、8月17日のメーカー側の正式公開日になっても、発売を表明したのはいわゆるホワイトボックス(ショップブランド)メーカーだけだ。IBMの日本法人である日本アイ・ビー・エムや、Compaq Computerの日本法人であるコンパックコンピュータからは何の発表も無かった。どうも、この裏にはインテルの激しい価格攻勢があるようで、AMDに近い筋から聞いた話だとほぼ9割方採用が決まっていた某大手ダイレクトセールスメーカーはインテルの新しい価格のオファーによって採用を取りやめたという話もあったそうだ。特にコーポレートユーザーにとってはいくらCPUの性能が良くても、大手メーカーから発売されていない場合には、保証面を考えると購入に躊躇してしまう。できるだけ早期に大手メーカー製のAthlonマシンが購入できるように、AMDにはがんばって営業して頂きたい。

 2番目の問題はL2キャッシュがオンダイではないことだろう。CeleronやK6-IIIで明らかなように、L2キャッシュをオンダイにすることによる性能面のメリットは非常に大きい。インテルも次世代Pentium IIIであるCoppermine(コードネーム)で256KBのL2キャッシュをオンダイにすると言われており、Coppermineがリリースされた場合には、性能競争の評価はもう一度やり直しになる。幸いなことにインテルがCoppermineの出荷を11月まで延期してくれたおかげで一息つける状況にはなっているが、それまでにクロックをインテルより大きくあげるなどの対抗手段を講じないと、再び性能面でインテルに抜かれてしまう可能性もある。

 また、これは既に指摘したが現状のAMD-750チップセットが9月から出荷されるIntel820に比べて、機能面で見劣りすることも問題だ。アーキテクチャが異なるCPUを比較するときには、チップセットを含めたシステム全体での評価になる。この場合、AMD-750がせっかくのAthlonの足を引っ張ることになる。VIAやALiなどにいかに早くチップセットを出させることができるかがポイントになるだろう。

 このように課題もあるAthlonだが、少なくとも自作PCユーザーが性能重視でマシンを組み立てる場合、Athlonは真っ先に検討するCPUであることは間違いない。色々と辛口な事も書いたが、何はともあれ最も性能が高いCPUをインテル以外のメーカーから購入できるようになったことは消費者である我々には歓迎すべき出来事で、そのことには素直に喜びたい。それと同時にユーザーとしては、本気になったら恐ろしいインテルの反撃に期待したい。

□Athlon(Advanced Micro Devices)
http://www.amd.com/japan/products/cpg/athlon/index.html
□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【8月13日号】17日の公式発売日を待たずにAthlonがアキバでデビュー
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990813/athlon.html
【8月21日号】Athlon正式販売スタートするもマザーにトラブル
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990821/athlon.html
□関連記事
【8月26日】Athlon対応マザーボードの一部に不具合、交換へ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990826/athlon.htm


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[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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