■西川和久の不定期コラム■
2012年のCOMPUTEXでは、Ivy Bridgeを採用した第2世代Ultrabookとも呼べるノートPCが数多く展示され注目を集めた。今回はその中から、人気が高かった13.3型の「ZENBOOK Prime UX31A-R4256」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けする。
●死角がなくなった13.3型Ultrabook
2011年11月に初代11.6型「ZENBOOK UX21E」の記事を掲載した。プロセッサIntel Core i7-2677M(2コア/4スレッド、1.8GHz/Turbo Boost 2.9GHz、キャッシュ4MB、TDP 17W)、グラフィックスIntel HD Graphics 3000、チップセットIntel QS67 Express、メモリ4GB、SSD 128GB(64GBモデルもあり)、11.6型液晶ディスプレイ(光沢)/1,366×768ドットの第1世代Ultrabookだ。価格は84,800円と99,800円。13.3型は「ZENBOOK UX31E」。プロセッサなど主要なコンポーネントは同じで、解像度は1,600×900ドット。SSDは128GBまたは256GB。そしてSDカードスロットを搭載している。価格は109,800円と129,800円。
改めて記事を読み直すと、Ultrabook特有の薄さに驚いているものの、キートップに高級感が無い、(Macbook Airがライバルなら)キーボードにバックライトが欲しい、液晶パネルの視野角が狭く発色が青っぽいなど、数点不満な部分もあった。
そして今回ご紹介するのは13.3型の新型、「ZENBOOK Prime UX31A-R4256」。主な仕様は以下の通り。
【表】ASUSTeK「ZENBOOK Prime UX31A-R4256」の仕様CPU | Intel Core i7-3517U(2コア/4スレッド、 1.9GHz/Turbo Boost 3.0GHz、キャッシュ4MB、TDP17W) |
チップセット | Intel HM76 Express |
メモリ | 4GB |
SSD | 256GB |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 13.3型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 4000、miniVGA、microHDMI出力 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n、Ethernet(USBアダプタ)、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×2、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ |
サイズ/重量 | 325×226×3~18mm(幅×奥行き×高さ)/約1.3kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約8.5時間 |
直販価格 | 139,800円 |
プロセッサは第3世代Intel Core i7-3517U。2コア4スレッドでクロックは1.9GHz。TurboBoost時3.0GHzまで上昇する。キャッシュ4MBでTDPは17W。チップセットはIntel HM76 Express。メモリは4GB搭載する。前モデルと比較してプロセッサとチップセットが最新版に変わっている。従ってグラフィックもIntel HD Graphics 3000からIntel HD Graphics 4000へパワーアップ。ストレージは256GBのSSDだ。
液晶パネルは13.3型のフルHD(1,920×1,080ドット)で非光沢だ。前モデルは、1,600×900ドットなので、この差は大きい。またSDカードスロットが無い点以外はスペックが同じの11.6型「UX21A-K1256」も液晶パネルはフルHD。こちらも興味があるので機会があれば試して見たいところ。出力はminiVGAとmicroHDMI。前者はミニD-Sub15ピンへの変換アダプタが付属する。
ネットワークは有線LANはUSBインターフェイスのEthernetアダプタ(付属)、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n、そしてBluetooth 4.0にも対応。Gigabit Ethernet非対応なのが惜しいところか。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、SDカードスロット、音声入出力、92万画素Webカメラ。Ivy BridgeなのでUSB 3.0になっているのが嬉しいポイントだ。
サイズは325×226×3~.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.3kg。前モデルと比較してごく僅か奥行きと高さが増えているものの、ほぼ同じと思っていいだろう。価格は139,800円。液晶パネルの高解像度化の影響だろうか1万円ほど値上がりしている。なお、パネルサイズが11.6型の「UX21A-K1256」は129,800円。
トップカバーはダークシルバーでヘアライン仕上げ。その他の部分は渋いゴールド(真鍮色?)でチープさは皆無だ。全体的に薄いのはもちろんだが、パネル部分の厚みは約2mm、本体の先端部分は3mmとUltrabookの中でもボディがかなり薄い。また裏側は1枚のパネルとなっており、ネジを外せば内部にアクセスできそうだが、今回は外していない。この辺りは前モデルとあまり変わっていない印象を受ける。
左側面にはUSB 3.0×1、音声入出力、SDカードスロット。右側面には電源入力、USB 3.0×1、miniVGA、microHDMI出力、PowerLED。写真からもわかるように、一番厚みのある後部でさえもUSBコネクタの高さギリギリだ。先端に行くほど強烈に尖ってくる。Ethernetコネクタ自体は本体に無く、付属のUSBインターフェイスのEthernetアダプタとなる。miniVGAポートは付属のミニD-Sub15ピン変換アダプタを必要に応じて使用する。この辺りは、もう少し厚めでもいいのでフルサイズのコネクタになっているUltrabookがいいのか好みが別れそうだ。
付属のACアダプタは、プラグの部分が交換可能になっており、各国対応している。サイズは約60×60×30mm/182gと小型で持ち運びも苦にならない。
13.3型のフルHD液晶パネルは、明るく、視野角も広く、発色もsRGBに近い。また、非光沢なので映り込みもなく快適に操作できる。前モデルの弱点を完全に修正した形だ。加えてバックライト最小でも十分(以上に)明るく、通常用途ならバックライト最小でもOKなほど。バッテリ駆動時に威力を発揮すると思われる。またこのパネルサイズで1,920×1,080ドットは、筆者的には好みで非常に見易い。
驚いたのはキーボードだ。チープさが無くなり、たわみも(ほぼ)解消、そしてバックライトまで搭載している。感触はMacbook Airのようにカッチリした雰囲気ではなく、少しフワッとしているが、この点については個人の好みの範囲だろう。先にフルHDの液晶パネルで1万円ほど高くなったのではと書いたが、間違いなくこの部分にもコストがかかっている。液晶パネルとキーボードは最も使うインターフェイス。この2点が大幅に改善されているのはマシンの魅力を更に際立たせる。ちなみに、キーボードバックライト搭載と非光沢液晶パネルは、11.6型のUX21A-K1256でも同じだ。
パームレストは筐体のサイズで余裕がある分、十分な面積を確保。タッチパッドも大きい。ボタンはパッドの先端に切込みがあり、その左右がボタンの替りになるタイプだ。軽くもなく重くもなく、ジャストに調整されている。振動やノイズ、発熱に関しては、試用している限り皆無だった。
「Bang & Olufsen ICEpower」監修のサウンドは、前モデル同様、上品な音質でクオリティは高い。ただ最大音量が若干低め。コンテンツによっては迫力不足になるかも知れない。
●第1世代Ultrabookと比較してかなりパワーアップOSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。メモリ4GBでグラフィックスがメモリ共有型のIntel HD Graphics 4000と言うこともあり、できれば8GBのオプションも欲しいところ。
起動直後のデスクトップは、同社最近のモデルとほぼ共通となっており、左側に各種ツールへのショートカットなど、そして右側には、「Power4Gear Hybrid」と「Instant On」のウィジェットが置かれている。
SSDは「SanDisk SSD U100 256GB」。2パーティション構成で、C:ドライブがシステム用として約97GB、D:ドライブがデータ用として約123GB割当てられている。C:ドライブの空きは約71GB。
その他のデバイスはBluetoothモジュールとして「Intel Centrino Wireless Bluetooth 4.0+High Speed Adapter」、デバイスマネージャの画面キャプチャには無いが、後で調べたところ、USBインターフェイスのEthernetアダプタは「ASIX AX88772B USB 2.0 to Fast Ethernet Adapter」が使われていた。
プリインストールのソフトウェアは、「ASUS Splendid Utility」、「LifeFrame3」、「ASUS Tutor」、「ASUS FaceLogon」、「InstantOn for NB」、「ASUS Secure Delete」、「ASUS Virtual Touch」、「ASUS Power4Gear Hybrid」、「ASUS USB Chager Plus」、「ASUS AI Recoverey」、「ASUS Live Update」、「ASUS WebStorage」と、同社お馴染みのユーティリティ群、そして「Kingsoft Office 2012」、「ウィルスバスター2012クラウド」などとなる。
ユーティリティは部分的にバージョンが変わっているものもあるが、大筋、従来機種と同じ構成になっている。「ASUS Power4Gear Hybrid」と「InstantOn for NB」は、バッテリ駆動時間やスリープ/復帰の高速化/長時間化など、Ultrabookを活用するために欠かせない同社の技術だ。
ASUS Tutor | ASUS LIVEUPDATE | ASUS USB Charger+ |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 6.5、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 7.5。TDP17WのCore i7プロセッサ、Intel HD Graphics 4000、SSD搭載機としては平均的な値だ。とは言え、もちろん十分速い。
CrystalMarkは、ALU 44149、FPU 42206、MEM 42597、HDD 27958、GDI 15386、D2D 2319、OGL 7401。このスコアについては前モデルの「ZENBOOK UX21E」(Intel Core i7-2677M)と比較すると、ほぼ全項目で数倍早くなっている。先のWindows エクスペリエンス インデックスも含め、第2世代Ultrabookの性能はこの辺りとなりそうだ。
BBenchは、Battery Saving、バックライト最小(キーボード込み)、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果。バッテリの残5%で15,879秒/約4.4時間。最大約8.5時間の半分ほどになってしまったが、他社の同クラスと比較しても差が無く、BBenchで計測した場合、この程度となるのだろう。
以上のようにASUS「ZENBOOK Prime UX31A-R4256」は、第3世代Core i7プロセッサを採用し、世代替わりした上で、13.3型でフルHDの非光沢液晶パネルを搭載。加えて、バックライトに対応したキーボード装備と、前モデルの欠点を全て修正、マイナスポイントが見当たらない非常に魅力のあるUltrabookに仕上がっている。
Windows 8の出荷を数カ月後に控えているが、Windows 7搭載のUltrabookが欲しいユーザーにお勧めの逸品だ。