■西川和久の不定期コラム■
6月5日、レノボ・ジャパンから第3世代のCore i5プロセッサを搭載したUltrabookが発表された。TDP17Wの超低電圧版で長時間のバッテリ駆動も期待できる。事前に編集部から試作機が送られてきたので試用レポートをお届けする。
これまでモバイルの第3世代Coreプロセッサと言えば、4コアのi7が先行し、リーズナブルな価格帯のPCを構築できるデュアルコア版はリリースされていなかった。また超低電圧版も無く、Ultrabookの世代替りを待っていたユーザーも多いのではないだろうか。
ここ数日、各社から第3世代Core i5プロセッサを搭載したUltrabookなどが発表され、同社も「IdeaPad U310」として発表した。TDP17WのCore i5-3317Uを搭載したIvy BridgeのUltrabookだ。主な仕様は以下の通り。
レノボ・ジャパン「IdeaPad U310」の仕様 | |
CPU | Intel Core i5-3317U(2コア/4スレッド、1.7GHz/TB2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP17W) |
チップセット | Intel HM77 Express |
メモリ | 4GB/PC3-12800 DDR3 SDRAM(1スロット/空き0) |
HDD | 500GB + SSD 32GB |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 13.3型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 4000、HDMI出力 |
ネットワーク | 10BASE-T/100BASE-TX、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×1、2in1カードリーダー、音声入出力、HD720p Webカメラ |
サイズ/重量 | 333×225×18mm(幅×奥行き×高さ)/約1.68kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約6.2時間(3セル) |
価格 | オープンプライス(実売79,800円前後) |
プロセッサは冒頭に書いたように、Core i5-3317U。2コア4スレッド、クロックは1.7GHzでTurbo Boost時2.6GHzまで上昇する。TDPは17Wで超低電圧版となる。チップセットはIntel HM77 Express。メモリは4GBだ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。
ストレージはHDD 500GBに加えSSD 32GBを搭載し、「インテル・スマート・レスポンス・テクノロジー」に対応している。これはSSDをキャッシュに使い、低コストでハイパフォーマンスを得る仕掛けだ。
グラフィックスはCPU内蔵Intel HD Graphics 4000。ディスプレイは光沢タイプの13.3型液晶パネルで解像度は1,366×768ドット。外部出力としてHDMIを装備する。
ネットワークは、有線LANが10BASE-T/100BASE-TX、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0に対応。筆者的にはGbEでないのが不満点か。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、2in1カードリーダー、音声入出力、HD720p Webカメラ。Ivy BridgeなのでUSB 3.0は標準だ。
本体サイズは333×225×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.68kg。カラーバリエーションは、「グラファイトグレー」、「チェリーブロッサムピンク」、「アクアブルー」の3タイプ。3セルのバッテリを搭載し、「Lenovo Energy Management 7.0」によって最大約6.2時間となっている。
また、同社は独自の技術でWindowsを高速化する「Lenovo Enhanced Experience」を以前から積極的に展開してきたが、今回「Lenovo Enhanced Experience 3」となり、約25秒でWindowsを高速起動する「Rapid Boot(ラピッドブート)」、アプリケーションを大量にインストールしても初期の起動時間をキープする「Boot Shield(ブートシールド)」を加え、より改良されたバージョンとなった。
実売価格は79,800円前後。上記の様に機能も充実した上で、8万円を切ったUltrabookだ。より買い易いのはもちろん、コストパフォーマンスも高い。
筐体はトップカバーがグラファイトグレー、パームレストやその周囲、側面はシルバー、液晶パネル周辺が光沢ブラック、裏もトップカバーと同質なものと、シンプルにまとめられなかなかカッコイイ。
ただし、バッテリは内蔵で交換には非対応、また触った限り裏のパネルは簡単に外せないため、ストレージやメモリの交換が容易ではないのが残念なところ。この点は他社のUltrabookでも同じ傾向なのである意味割り切りが必要だ。
左側面にはOneKeyRecoveryボタン、Ethernet、HDMI出力、USB3.0×2が、右側面には電源入力、USB 2.0×1、音声入出力(マイク入力/ヘッドフォン出力コンボ)が並ぶ。正面左側面には2in1カードリーダーを装備。OneKeyRecoveryボタンは、同社のソフトウェア「OneKeyRecovery」を文字通りワンプッシュで起動する専用ボタンとなっている。
液晶パネルは光沢タイプで発色はハイコントラストで鮮やか。視野角も広めで好印象だ。ただ輝度を最小にすると結構暗く、バッテリ駆動時にある程度明るさを確保する必要がある。
パームレストは13.3型と言うこともあり十分広い。キーボードはアイソレーションタイプで一部キーピッチが狭くなっているものの、試した範囲では特に問題なかった。強く押すとたわむが許容範囲でキータッチもそれなりに良い。タッチパッドは先端の左右がボタン替りになるタイプだ。クリックは軽くも重くもなく、ちょうど良く調整されている。
また、このタッチパッドは「インテリジェントタッチパッド」と呼ばれ、指の動きを認識し、手のひらが当たった際の誤作動を防止する「スムースタッチセンサー」機能を持っている。特にUltrabookはキートップやパームレストとタッチパッドとの高低差があまり無く、誤作動しやすいため、この機能はありがたい。
サウンドは「DOLBY HOME THEATER V4」がONの状態ではバランスが良く、また最大出力も十分ある。OFFにすると極端にバランスが崩れ、出力も下がるので、通常はONのまま使うのがベストだろう。
Lenovo Enhanced Experience 3/Rapid Boot (ラピッドブート)の効果に関しては、電源ONからWindows 7が起動しサウンドが鳴るまで(パスワードをセットしていないのでダイレクトにデスクトップとなる)21秒だった。
●第3世代になって全体的にパフォーマンスアップOSは64bit版のWindows 7 Home Premium SP1。メモリ4GBで、Intel HD Graphics 4000と共有なので多くのメモリを必要とするアプリケーションを動かすには少し不足な感じだが、Ultrabookの用途を考えるとあまり問題にならないだろう。
デバイスマネージャー上のストレージは、インテル・スマート・レスポンス・テクノロジーで構成されたRAIDドライブで、実際は500GB/5,400rpmのHDD「HTS545050A7E380」と、32GBのSSD「MZMPC032HBCD」を搭載している(インテル・ラピッド・ストレージ・テクノロジーの画面キャプチャを参照)。実質C:ドライブのみの1パーティションで約420GBが割当てられ、初期起動時401GBの空きがある。
その他、BluetoothモジュールはAR3011、Wi-FiモジュールにAtheros AR9285、EthernetにRealtek製が使われている。
プリインストールされているソフトウェアは、「Google Chrome」、「CyberLink YouCam」、「KingSoft Office(30日無料体験版)」、「McAfee Virus Scan Plus(60日版)」、「Windows Live Essentials 2011」、「キングソフト辞書」、「i-フィルター5.0」、「Lenovo ReadyComm5.1」、「VeriFace 4.0」、「OneKey Rescue System 7.0」、「Lenovo Energy Management Software 7.0」、「Lenovo Smart Update」、「DOLBY HOME THEATER V4」、「Absolute Data Protect」、そして各デバイスのサポートユーティリティなど。
一部バージョンアップしているものもあるが、全体的にこれと言って特に目新しいのは無く、同社のこれまで通りだ(Lenovo Smart Updateは英語版のままなので、実際にインストールされるか不明)。いずれにしても試作機と言うこともあり、出荷版とは一部異なることもあるだろう。
Intel Graphics/Mediaコントロールパネル | Synaptics ClickPad V8.0 | Lenovo Smart Update |
DOLBY HOME THEATER V4 | Absolute Data Protect | Intelラピッド・ストレージ・テクノロジー |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.9。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4.9、ゲーム用グラフィックス 6.3、プライマリハードディスク 5.9。メモリが遅めなのは気になるが、他の項目では第2世代のCore i5と比較して全体的にアップしている。
CrystalMarkは、ALU 33823、FPU 32204、MEM 26717、HDD 22861、GDI 12003、D2D 1867、OGL 5324。HDDに関しては、インテル・スマート・レスポンス・テクノロジーによって、通常の倍ほどパフォーマンスアップしているのがわかる。2つ目のCrystalMarkの画面キャプチャは、右側がHDDテストの詳細になっているので参考にして欲しい。
BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残5%で10,601秒/2.94時間。最大の6.2時間には全く届かず、約半分の結果となってしまった。
さすがに気になり2回測定したものの、約3時間(10,849秒)と同じ。試作機の関係でまだチューニングできていない可能性もある。またCore i7-3610QMで6セルのバッテリを搭載したノートPCが約3.4時間だったことを考えると、半分の3セルでほぼ同じ時間動作していることから、これが実力かもしれない。
以上のように、レノボ・ジャパン「IdeaPad U310」はTDP 17WのIntel Core i5-3317Uを搭載、SSDをキャッシュに使う「インテル・スマート・レスポンス・テクノロジー」やWindows 7を他社より速く動かす「Lenovo Enhanced Experience 3 for Windows 7」に対応した、Ivy BridgeなUltrabookだ。
ルックスはもちろん、スペック的にもGbE非対応という以外はうまくまとめられている。しかも価格は8万円未満。バッテリ駆動時間が気になるものの、第3世代Coreを搭載したUltrabookを待っていたユーザーにお勧めできる1台と言えよう。