西川和久の不定期コラム

エプソンダイレクト「Endeavor AT980E」
XPプリインストール機購入のラストチャンス



 長らく親しまれていたWindows XPも、この10月22日をもって、メーカーによるプリインストール出荷が終了となる。個人でも企業用途でも、まだまだ利用者が多く、このMicrosoftの決定は残念ではあるが、時代の流れだろう。そこで今回は、エプソンダイレクトのデスクトップ機で、BTOによりXPのプリインストールに対応する最後のモデルの1つとなる製品をご紹介する。

●最小構成の仕様

 冒頭にも書いたように、Windows 7 Professonalのダウングレード権利用でWindows XP Professonalをプリインストールし、出荷するサービスが、Microsoftの方針から、2010年10月22日出荷分をもって全メーカーで終了となる。

 同社の対象となるデスクトップPCは、Endeavor Pro7000、Pro4700、MT9000、MT7900、MR6700/MR6700E、MR4000、AT980E、AT971/AT971E、ST125E、AY301。ノートPCは、NJ3300/NJ3300E、NA501Eとなっている。なお、10月22日で終了になるのは、メーカーがXPをプリインストールして出荷することだけで、ユーザーがWindows 7 Professonalのダウングレード権を使い自分でインストールするのは、Windows 7終了時まで引き続き許可される。

 今回、「Endeavor AT980E」ベースでXPを構築できる最小構成モデルが編集部から送られて来た。主な仕様は以下の通り。

【表】主な仕様
OSWindows XP Professonal 32bit(Windows 7 Professonalのダウングレード権利用)
CPUIntel Pentium G6950(2.8GHz)
チップセットIntel H55 Express
メモリ1GB(1GB×1使用/2スロット、空き1)
HDD250GB(SATA 3Gbps、7,200rpm)
グラフィックスIntel HD Graphics
光学ドライブDVD-ROMドライブ(SATA)
インターフェイスUSB 2.0×2(フロント)/×4(リア)、オーディオ入出力(フロントとリア)、Gigabit Ethernet、PS/2×2、ミニD-Sub15ピン、DVI-D
本体サイズと重量99×383×310mm(幅×奥行き×高さ、スタンド/突起物を除く)、 6.7Kg
付属品/ソフト109 PS/2キーボード、ホイール付きPS2/光学マウス、1年間無償お預かり保証(PC本体)、3年間部品保証、マカフィーPCセキュリティセンター90日期間限定版
価格70,350円

 CPUは、Intel Pentium G6950。デュアルコア、クロック2.8GHz、L2キャッシュ3MB。Turbo BoostやHyper-Threadingには非対応であるが、Intel VT(VT-x)そししてIntel 64にも対応しているので、後々Windows 7の64bit版やXP-Modeを使うことも可能だ。BTOでCore i3-530、Core i3-540、Core i5-661、Core i5-680に変更可能。

 チップセットはお馴染みIntel H55 Express。グラフィックスは、CPU内蔵のIntel HDグラフィックス。インターフェイスはミニD-Sub15ピンとDVI-Dだ。

 メモリはデュアルチャンネルアクセスに対応だ。評価機は1GBが1枚なので、シングルチャンネル作動になっている。もう1枚1GBを足して計2GBとすれば、メモリアクセスや共有メモリで動いているグラフィックスが速くなる。本体背面のネジ2本外せば簡単に内部にアクセスできるので、増設は簡単だ。

 HDDは7,200rpmのSATA 250GB、光学ドライブはDVD-ROMドライブ。USB 2.0はフロント×2/リア×4の計6ポート、業務用途なら特に問題無いスペックだ。ネットワークは有線LANのGigabit Ethernetのみ。無線LANやBluetoothは搭載していない。BTOでは、500GB、1TB(いずれも7,200rpm)、2台目のHDD、そしてDVDスーパーマルチドライブなども選択できる。

 増設用のスロットはPCI×2で、ボード長は178mmまでとなっている。PCI Express x16が無いため、基本的にグラフィックスの強化は行なえないものの、ゲームなど3D系を中心に使用しない限り十分なパフォーマンスだ。

 懸念事項としては、同じ構成でWindows 7 Home Premium 32bitの場合は59,850円と、10,500円安い。これはXPをプリインストールするにはWindows 7 Professonalのライセンスが必要なので仕方ないところか。

縦置き用スタンドあり。非常にスッキリしたデザインで何処に置いてもマッチしそうだ前面。DVD-ROMドライブ、電源スイッチ、電源/HDDアクセスLED、USB 2.0×2、オーディオ入出力背面。上側に電源コネクタ、拡張スロットは2つ。右上と右下のネジ2本でパネルが外れる
コネクタ部。PS/2×2、USB 2.0×4、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、DVI-D、シリアルポート、パラレルポート、オーディオ入出力内部(全体)。結構余裕のある配置だ。HDDはもう1つ内蔵可能内部(スロット近辺)。左下にメモリスロット2本。内1つ空き。右上にPCIスロットが2本見える
電源ユニット。出力は250W。PCI Express x16が無くグラフィックボードを増設できないので、特にこの容量で問題無いだろう付属のキーボード/マウス。PS/2仕様。付属のACケーブルは1つサービスコンセントが付いている。キーボードの下にあるのは、横置き用のゴム足本体の幅は実測で約10cm。机に置いても邪魔にならない大きさだ

 梱包から取り出した印象は、以前掲載した「Endeavor MR6700」同様「仕上げが綺麗」。梱包自体も無駄が無く、非常にスッキリ収められ好印象。この辺りは同社ならではと言えよう。

 フロントパネルは、光学ドライブ、USB 2.0×2、電源スイッチ、パワーLED、HDDアクセスLED、オーディオ入出力とシンプルにまとめられている。横置きはもちろん、付属のスタンドをつければ、縦置きにも対応できる。

 背面は、USB 2.0×4、Ethernet、電源コネクタ、ミニD-Sub15ピン、DVI-D、PS/2×2、オーディオ入出力、そしてパラレルポートとシリアルポートもある。パラレルポートは伝票専用のラインプリンタなどでまだ現役なこともあり、業務用PCとしては外せない部分だ。

 先に書いたように、ネジ2本外せば簡単に内部にアクセスできる。3.5インチのHDDマウンターに空きが1つ、SATAポートも2つ空きがある。メモリは1GBが1枚実装済みで、1スロット余り。従ってメンテナンスはもちろん、HDDやメモリの増設など、この範囲の拡張であれば、すぐに対応可能だ。割りとスペースがあるので、比較的作業も楽に行なえる。

 電源ユニットは250Wを搭載。あまりパワーは無いものの、グラフィックスカードの増設は出来ないので十分だろう。ファンはCPUと電源ユニットに各1つの計2つ。ノイズに関しては「ブーン」と低い音がし、若干振動も感じられるのが少し気になるところか。熱に関してはほんのり暖かくなる程度だ。

 いずれにしてもご覧のように、余計なものは一切無く、非常にシンプルでベーシックな作りのAT980Eは、素直な雰囲気を持っている。

●十分なパフォーマンス

 CPUクロック2.8GHz/デュアルコア、メモリ1GBは貧弱に見えるかもしれないが、Windows XPがリリースされた2001年の平均的なマシンパワーを考えれば、十分以上に強力な仕様だ。もちろんネットブックよりもスペックは上。従って通常用途において不満は無く、何をしてもサクサク動く。久々にこのクラスのマシンでXPを動かすと「こんなに速かったっけ」と驚く程だ。

 メモリ1GBは、グラフィックメモリが共有となるため、OSやアプリケーションがフルに1GB使える分けでは無いものの、それでも起動直後の使用メモリは400MBほどなので、余裕もある。

 HDDはSamsungのHD253GJが使われている。250GB(SATA 3Gbps)、7,200rpm、キャッシュ16MBモデルだ。パーティションは1つのC:ドライブのみ。光学ドライブはPLDS DH16D5S。DVD-ROMなので書き込みは出来ない。

 その他に関しては、デバイスマネージャを見てもIntel H55 Expressの標準的な構成で特に変わった部分は見当たらないが、Windows XPはSATAのAHCIモードには対応していないため、BIOSの設定でIDEモードとして作動している。

起動直後の使用メモリは400MB。流石にWindows XPは軽いHDDはSamsungのHD253GJ(7,200rpm、キャッシュ16MB)、DVD-ROMドライブはPLDS DH16D5SHDDは250GBワンパーティション。BTOオプションでパーティション分割にも対応している

 プリインストールのアプリケーションは、同社製の「インフォメーションメニュー」、「システム診断ツール」、「エプソンダイレクト初期設定ツール」、「PCお役立ちナビ」、そして「マカフィーPCセキュリティセンター90日期間限定版」、「InterVideo WinDVD for EPSON」など。どちらかと言えば、システムユーティリティ系の構成となっている。BTOでMicrosoft OfficeやATOK 2010なども選択できる。

 Windows XPはService Pack 3が適応済みだ。但しIEに関しては6が入っている。セキュリティ上、IE 8にするのが望ましいものの、業務用ではIE 6でしかうまく表示できないアプリケーションもまだ残っており、これが理由でIE 6が使えるXPから離れられない場合もある。必要な場合は、購入後にアップデートしておきたい。

インフォメーションメニューシステム診断ツールCrystalMark 2004R3

 ベンチマークテストとしてCrystalMark 2004 R3でシステムのパフォーマンスを調べてみた。結果は、Mark 102,047、ALU 26,021、FPU 30,634、MEM 18,548、HDD 14,391、GDI 6,064、D2D 3,962、OGL 2,427。Intel HDグラフィックスなのでOGLのスコアは伸びないものの、他に関してはなかなか。特に7200rpmのHDDなので、HDDのスコアは高い。

 過去の連載中、XP上でCrystalMark 2004 R3を動かしたパターンは、Atom 230、メモリ1GB、IONチップセットのマシンがあったので参考までにスコアを掲載すると、Mark 32,043、ALU 5,372、FPU 4,645、MEM 4,562、HDD 4,739、GDI 4,104、D2D 1,834、OGL 6,785となっていた。IONチップセットはGPUがGeForceなのでOGLは勝っているものの、他に関しては比較にならない。CPUのランクとしてはかなり低いPentium G6950とは言えAtomに対しては大きく勝る。


 以上のようにEndeavor AT980Eの最小構成は、Windows 7に対応した今時のマシンとしてはスペックが若干低いものの、XP登場時代のハードウェアに比べれば何倍も速く、XPで使うなら十分なCPUパワー、そしてメモリ/HDD構成となる。後にWindows 7をインストールするにしても主要コンポーネントは既に2010年版なので、メモリさえ増設すれば十分対応可能。

 社内システムの都合などで、OSをXPに統一している会社では、エプソンダイレクトの場合、10月13日までが面倒なくXPを発注できる最後のチャンスになる。まだまだXPを現役で使っているユーザーにお勧めの1台だ。