西川和久の不定期コラム

エプソン「Endeavor MR6700」
~コストパフォーマンスに優れたデスクトップPC!



Endeavor MR6700

 4月6日、エプソンからEndeavorの新型「Endeavor MR6700」が発表された。コンパクトな26Lタイプのミニタワーケースを採用し、チップセットはIntel H57 Express、CPUはLynnfield(Core i7系)もしくはClarkdale(Core i3/i5系)に対応と、2010年版のデスクトップPCだ。早速その実力を検証したい。
●オーソドックスな仕様

 同社のラインナップ中、この「Endeavor MR6700」は、14Lの高性能スリムタワーの「MR4000」、そして高性能ミドルタワー「Pro4700」の間に位置付けされるモデルだ。個人的には、MR4000は省スペースだがロープロファイルになるので拡張性が乏しく、Pro4700は机に置くには大き過ぎる。その意味で本機は、机の上に置いて実務に使いかつ拡張性を考慮したデスクトップPCとなっている。

 前モデルに相当する「MR6500」もCore i7/i5を使ったアーキテクチャであったが、Lynnfield+Intel P55 ExpressということもありGPUは外付けだった。しかしこのMR6700は、Clarkdale+Intel H57 Expressとなり、GPUはCPU内蔵のIntel HD Graphicsへ変更された(Core i7以外選択時)。

 なお「MR6700E」は、国際エネルギースターv5.0(2009年7月新基準)をクリアしたBTO構成のみを別モデルとしたものだ。内容的にはHDDは1基のみ(RAID構成は不可)、内蔵GPU(Calarkdale)のみ(外部GPU搭載不可)などの条件がある。

今回届いたマシンの仕様は以下の通り。

・OS:Windows 7 Home Premium 64bit
・CPU:Core i5-661(3.33 GHz/Turbo Boost時最大 3.6GHz、256KB×2 L2キャッシュ+ 4MB L3キャッシュ)
・チップセット:Intel H57 Express
・メモリ:8GB(2GB×4使用/4スロット、空き0)
・HDD:500GB
・グラフィックス:Intel HD Graphics、アナログRGB出力、HDMI
・光学ドライブ:スーパーマルチドライブ
・拡張スロット:PCI Express x16 ×1、PCI Express x4×1、PCI×2
・インターフェイス:USB 2.0×3(フロント)/×6(リア)、IEEE 1394、音声入出力(フロント/リア)、5in1マルチカードリーダ
・ネットワーク:Gigabit Ethernet
・サイズ:179×396×368mm(幅×奥行き×高さ)
・価格 64,890円から(税込/ディスプレイ無し)

 CPUは、Core i5-661。2コア/4スレッドで、クロックは3.33GHz、TurboBoost(以下TB)時は最大3.6GHz、256KB×2のL2キャッシュと4MBのL3キャッシュ、GPUとしてIntel HD Graphicsを内蔵したClarkdale。このモデルは、GPUクロックが900MHzと高くなっているのも特徴的だ(他は733MHz)。

 BTOで選択できるのは、LynnfieldのCore i7-870/860(外部GPUが必要)、ClarkdaleのCore i5-670/661/660/650、i3-540/530、Pentium G6950となっている。一般的な業務用であれば、最も安価なPentium G6950でも2コア/2スレッド、2.8GHz(TB無し)、256KB×2のL2キャッシュと3MBのL3キャッシュ、GPUクロック533MHz(他は733MHzか900MHz)となるものの、十分普通に使うことができると思われる。

 チップセットはメインストリーム向けのIntel H57 Express。Rapid Storage Technology 、Remote PC Assist Technologyなどをサポートする。Rapid Storage TechnologyによりオンボードのSATAでRAIDに対応しているので、HDDを2台以上にすると容易にRAID構成にすることが可能だ。なお、PCI Express x16に搭載した外部GPUと内蔵GPUは排他式となる。

 OSは、64bit版のWindows 7 Home Premiumだ。BTOでは、Windows 7 Professonal、Windows 7 Ultimateも含め32bitと64bitの選択可能、加えてWindows 7 Professonalのダウングレード権を使ったWindows XP Professonalにも対応している。

 他は、HDD 500GB、IEEE 1394、USB 2.0×9、Gigabit Ethernet対応有線LAN、スーパーマルチドライブ、5in1マルチカードリーダなど、チップセットにIntel H57 Expressを使ったマシンとしては非常にオーソドックスで、使いやすい構成と言えよう。メモリだけ2GB×4の計8GBになっていたが、筆者のように重い画像処理や動画のエンコード、VMwareなどの仮想マシン用途でもない限り、4GBもあれば普通に使用できる。

 1つ気になる点としては、ビデオ出力がアナログRGBとHDMIの2ポートで、DVIには対応していないことだ。もちろんHDMI→DVI変換コネクタ(またはケーブル)を使えば問題無いのだが、ホビー用途はともかくとして、ビジネス用途ではまだまだDVIのみのモニタが多く使われている。ものが届いて、さあ使おうと思ったらエッ! っとなり、変換コネクタを買いに走る……といったケースもあるのではないだろうか。

 BTOではこのほかに、HDD 256GB/500GB/1TB/2TB、RAID 0 1TB(500GB×2)、RAID1 250GB/500GB/1TB、Blu-ray Disc/DVDスーパーマルチコンボドライブ、外部GPUにRadeonやGeForce、シリアルボード、地デジ対応TVチューナ、eSATAポート、USB 2.0増設ポートなどを選択できる。

外観。なかなか仕上げの綺麗なケースだ。ただ側面の白は、長年使うと汚れが目立つかも知れないフロント。光学ドライブ、5in1マルチカードリーダー、電源スイッチ、POWER/HDDアクセスLED、USB 2.0×3、音声入出力と並んでいる電源とリアパネルにファンが2つ見える
背面のアップ。PS/2マウス/キーボードポート、HDMI/アナログRGB出力、プリンタポート、USB 2.0×6、Gigabit Ethernet、IEEE 1394、音声入出力などを備えている内部は非常にスッキリしたレイアウトだ。メモリスロットはHDDベイの後ろにあるバス近辺。SATAポートが下側に並んでおりケーブルを接続し易い
電源ユニットは350Wタイプが使われていたHDDスウィングアクセス。クルっと正面を向くHDD専用のベイ。2本のネジを外し、ストッパーを上げ、少し後ろに引っ張れば回転する
付属のキーボード/マウスは今時ちょっと珍しいPS/2ポートタイプだ本体の幅は約17cm。これなら机の上に置いても邪魔にならない

 梱包から取り出した第一印象は「仕上げが綺麗!」だ。ホワイトとブラックが程よい割合で塗り別けられ、サイドある「Endeavor」のロゴがなかなか雰囲気を出している。

 フロントは光学ドライブ、その下にもう 1台の光学ドライブ用ベイ、5in1マルチカードリーダ、左側に電源スイッチ、パワー/HDDアクセスLED、右側に3つのUSB 2.0と音声入出力があり、使いやすそうなレイアウトだ。特に目隠し用のカバーは無いものの、このレイアウトそしてデザインなら全く必要性を感じない。

 リアパネルにはHDMI/アナログRGB出力、USB 2.0×6、プリンタポート、有線LAN、IEEE1394などが並ぶ。eSATAポートが1つあればより便利なのだが、内部のSATAポートが大量に空いているので、BTOで選択するか、ブラケットへ引っ張り出すことは可能だ。

 内部へのアクセスは、リアにあるネジを2つ外せば簡単にパネルが外れる。HDDなどのメンテナンスは、HDDスウィングアクセスのマウンタにより容易で、SATAコネクタもマザーボード下側の触り易い部分にあるため即ケーブルを接続できる。また、PCI Expressなどバス周辺もスッキリしておりカードの増設も簡単そうだ。ただ、メモリに関しては、先のHDDマウンタの後ろに4スロットあるため、いったんマウンタを回転させ、空間を確保しなければならない。頻繁に交換するものでは無いので気にするほどでは無いだろう。

 ファンは、CPUに1つ、ケースのリアに1つ、電源に1つの計3つ付いている。静音とは言わないまでも、「ゴー」という感じで回転音は低く、音も小さいのでほとんど気にならないレベルだ。

 電源ユニットは確認したところ350Wタイプが使われていた。内蔵GPUと排他式になるもののPCI Express x16で外部GPUを使うことはできるが、あまり強力なGPUを使うと確実に容量不足になる。とは言え、最近1万円未満の安価であまり電源を必要としないGPUもかなり強力になっているため、この電源容量でも十分グレードアップ可能だろう。

●十分なパフォーマンス

 OSは64bit版Windows 7 Home Premiumだ。メモリを8GBも搭載しているのでWindows 7が余裕で動いている。加えて、HDDは7,200rpmの500GB(ST350418AS)なのでアクセスも速い。スーパーマルチドライブはAD-7230S(16倍速DVD±R/RW)が使われている。

 後述するWindows エクスペリエンス インデックスのグラフィックも5.1。同じクラスのノートPCより速く、ウィンドウの切れも良くもっさり感が無い。少なくとも筆者がテストした範囲では全く不満を感じなかった。

 今回Home Premiumなのでチェック出来なかったが、このクラスのスペックになると、Windows 7 ProfessonalでXP Modeをインストールしても十分使える環境となるため、ビジネス用途で互換性の問題が発生した時にでも安心だ。

OSは64bit版Windows 7 Home Premium。同社のツールなどがデスクトップに並んでいるデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはST350418AS(7,200rpm、キャッシュ16MB)。5in1マルチカードリーダはUSB接続ドライブ構成。OSとして1パーティション。約465GBとなっている

 プリインストールのアプリケーションは同社の「エプソンダイレクト初期設定ツール」、「PCお役立ちナビ」、そして「iフィルター5.0(30日試用版)」、「マカフィー・PCセキュリティセンター(90日試用版)」、「InterVideo WinDVD」、「Nero StartSmart Essentials」など結構控えめだ。

 「エプソンダイレクト初期設定ツール」は、「重要なお知らせ」、「アンケートについて」、「各種ツール紹介」/PCお役立ちナビ、「モニタ設定」、「有害サイト対策」/iフィルター5.0、「セキュリティ設定」/マカフィー・PCセキュリティセンター、「お勧めソフトウェア」などが順に並び、初心者でも簡単にPCを設定できるようになっている。

 「PCお役立ちナビ」はQAシステムで、オンラインもしくはオフラインでキーワードを入力することにより、必要な情報にアクセスできる。例えば「メモリ交換」で検索したところ、PDFになっているユーザーズマニュアルの該当箇所が開いた。なかなか便利で、(PCが起動する限り)紙のマニュアルは不要と言えよう。

エプソンダイレクト初期設定ツールPCお役立ちナビNero StartSmart Essentials

 Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.2。内訳はプロセッサ7.1、メモリ7.1、グラフィックス5.1、ゲーム用グラフィックス4.2、プライマリハードディスク5.9。CPUとメモリは7.1とかなり速い。ゲーム用グラフィックスが少し遅めであるが、用途を考えれば十分なパフォーマンスだ。

 CrystalMark 2004R3は、比較対象となる適当なデスクトップPCのスコアを持ち合わせていないので、例えばCore i5-430M(デュアルコア/2.26GHz/キャッシュ3MB/Turbo Boost時2.53GHz)+Intel HM55 Expressといったアーキテクチャ的には同等のノートPCで比較した場合、多くの部分が(大雑把に)約1.5倍となっている。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.2。内訳は、プロセッサ7.1、メモリ7.1、グラフィックス5.1、ゲーム用グラフィックス4.2、プライマリハードディスク5.9CrystalMark 2004R3。ALUとFPU、MEMの結果は流石といったところ。グラフィックス関連はあまり速くないが、一般的な用途なら全く問題無いレベルだ

 純粋なCPUパワーだけの比較として、RAW現像を行なった。比較対象はCore i7-980XとCore i7-920。素材はNikon D3XのRAW画像(6,048×4,032ピクセル)、現像ソフトは「Nikon ViewNX」だ。30枚の画像を同じ条件で現像したところ、4分43秒/5分19秒/7分35秒とそれぞれ172秒と136秒の違いが出た。決して小さな差ではないものの、高価なCore i7を使わなくても、Core i5でこの程度の違いであれば十分納得できる範囲ではないだろうか。ちなみに筆者のメインマシンであるCore 2 Quad Q9550では6分2秒だった。

 以上のように、パフォーマンスも十分で、仕上げが丁寧。価格が64,890円からと比較的安価なMR6700。机の上に置いて実務に使うPCとして、同社のMR4000はスリムタワーでロープロファイルになり拡張性がイマイチ、といってProでは大き過ぎて机の上には乗らないという、ちょうど間をとった多くの人が使い易いオーソドックスなデスクトップPCが欲しい人にぴったりな1台と言えよう。