■西川和久の不定期コラム■
「HP Officejet 6000」
HP Officejet 6000 |
ここのところ、激安PCの記事を続けて掲載しているが、今回は激安のカラーインクジェットプリンタ「HP Officejet 6000」を取り上げる。その価格は直販価格で9,870円! ちょっと大丈夫なのかと疑うほどだ。というわけで、その実力はどうなのか早速ポートする。
これまでこのコラムでレポートしたインクジェットプリンタは、全てスキャナ、コピー、機種によってはFAXなどの機能を備えた複合機だった。しかしこの「HP Officejet 6000」は久しぶりに単機能のカラーインクジェットプリンタである。
箱のサイズは501×228×439mm(幅×奥行き×高さ)、重量は7.7kg。事務所に届いた時、予想以上に小さく軽かった。開封すると、本体を挟み込んでいる梱包材と、その梱包材と箱との間をうまく支える形状になったダンボールが1枚。構成は非常にシンプルだ。もちろん、シンプルだからと言って強度が不足しているわけもなく、本体を取り出すときに変なところで引っかかることも無くスッと持ち上がった。
さて、本機の特徴は発表資料によると下記通りだ。
- モノクロ最高32枚/分、カラー最高31枚/分の高速プリント
- 黒インクは顔料、カラーインクは染料
- 黒インクは大容量カートリッジあり
- A4カラー文書で1枚7.6円の低ランニングコスト
- 250枚収納できる大容量前面給紙トレイの装備
もともと、超低価格なのだから性能はそれなりだろうと侮っていたが、この特徴を見て驚いた。特に1番目の印刷速度である。1分間に30枚以上印刷可能なのだ。印刷クオリティにもよるが、筆者は約2秒でA4 1枚を印刷できるカラーインクジェットプリンタを、これまで真近で見た事がない。テストするのが楽しみになってきた。
またビジネス用途を考慮し、黒インクは顔料と言うのがなかなか良い。後述するが、大容量カートリッジも装着できるので、それほどインク切れを気にする必要も無く常時使用できる。
更に、本体が安いのだから消耗品=インクで儲けるビジネスモデルかと勘ぐったがこれも間違いだった。一般的にA4カラー印刷は1枚数十円のコストがかかるのに、このプリンタだと10円未満となっており、ランニングコストも安上がりだ。
下表が、本機の主な仕様だ。
インクシステム | 4色独立インク |
インク種類・ノズル数 | K:顔料系720ノズル、C/M/Y:染料系 各672ノズル |
給排紙方式 | 前面給排紙 |
プリント解像度 | 最高4,800×1,200dpi |
プリント速度 | モノクロ:最高32ppm、カラー:最高31ppm |
自動両面印刷 | 非対応 |
種類 | 普通紙、インクジェット専用紙、フォト用紙、専用OHPフィルム、カード、郵便はがき、インクジェット郵便はがき、封筒、アイロンプリント紙など |
サイズ | A4、リーガル、レター、エグゼクティブ、A5、A6、B5、封筒(長形3号、長形4号)、はがき、往復はがき、10x15cm、L判、2L判、カスタム用紙設定(76.2×101.6~215.9×762mm)など |
給紙容量 | 普通紙250枚、フォト用紙80枚、カード80枚、封筒15枚 |
排紙容量 | 最高50枚 |
搭載メモリ | 32MB |
インターフェイス | USB 2.0(High Speed)、100Base-TX/10Base-T LAN |
サイズ/重量 | 458×164×389mm(幅×奥行き×高さ)/質量4.8kg |
ご覧の通り、純粋なカラーインクジェットプリンタとして、手を抜いている部分はどこにも無い。唯一あるとすれば最近では当たり前になってきている、無線LANが無い程度だろう。
フロント。シンプルなデザインで、ボタンやインク切れのLEDなども解り易い | リア。USB、Ethernet、電源入力を備える |
付属品一式。ヘッド、インクカートリッジ、ドライバCD、USBケーブル、電源コード、ACアダプタなど | 前面給紙トレイ。幅の調整は左側のスライダーで行なう |
外観は非常にシンプル。マニュアルレスでも容易に操作可能だ。A4最大250枚の大容量前面給紙トレイはしっかりした作りだ。リアはフラットだが、実際は、電源端子やUSBコネクタ、Ethernetケーブルなどが入るため、完全に壁などに付けることはできないだろう。デザインは白と黒の2色がバランスよく配置され、オフィスはもちろん、自宅でも十分マッチする。また、黒い部分も含めマットな感じで指紋跡はほとんど目立たないのも嬉しいところだ。
●セットアップ/ハードウェアハードウェアのセットアップは非常に簡単だ。まず電源ONにすると、ヘッドホルダが自動的に中央で停止するので、プリントヘッドを取り付ける。その後、■▲●の色などに合わせて各色のインクカートリッジをセットする。黒インクだけは他の色と違ってスペースの幅が広く(約3倍)、大容量インクカートリッジも装着可能だ(同梱の黒インクは標準サイズ)。
準備が終わってカバー閉めるとシステムの初期化が始まる。この時、テスト印刷用のA4用紙1枚を前面給紙トレイに入れる必要がある。一連の作業が終わるのに10分かかった。説明書をよく見ると砂時計が書かれ、そこに00:10:00の文字があった。作業に10分かかると言う意味なのだろう。
●セットアップ/ソフトウェア
ソフトウェアのセットアップは付属のCD-ROMから行なう。対応しているOSは、Windows 2000/XP(64bit版)/Vista、Mac OS X 10.4.11以降。Mac OSに関してはIntel CPUだけでなく、PowerPCも対応している。
ドライバのインストールはUSB接続かネットワーク接続かによる。過去掲載した同社のプリンタの記事は全てネットワーク接続にしていたので、今回はUSB接続で設定してみた。「HP Officejet 6000」を見つけドライバを組み込み、1度再起動すれば作業完了だ。
付属のCD-ROMからセットアップ。今回はUSB接続でのセットアップとした | USB接続。「HP Officejet 6000」を見つけると必要なドライバが組み込まれる | 再起動後。一通り終わった後、リブートして作業完了となる |
●使用感
純粋なインクジェットプリンタなので、特に難しい部分は無く、印刷したいものをアプリケーションで開き、プリンタの設定、印刷するだけとなる。今回試したのはPDFからの通常カラー印刷、エコノミーカラー印刷、黒インクのみを使ったモノクロ印刷、ここまではA4の普通紙を使用した。そして写真画質のチェックとして、Nikon D2Xで撮影したデータをプレビューからそのまま純正のL判光沢専用紙でフチ無し印刷してみた。
まず以前同社の複合機でも触れた、「ノイズ」と「横揺れ」は相変わらずだ。ノイズに関しては動画をご覧頂きたいが、横揺れは机が反動でユサユサ左右に揺れる。低価格な製品とは言え、これを許容できるかどうかが、評価の分かれ目となるだろう。国内メーカーが作るインクジェットプリンタは、これほどではないので、更なる改善はできるはずだ。
各モード毎のクオリティは、デジカメで撮ったものなので解り辛いが、相対的に比較して欲しい。まず通常カラー印刷は普通紙に印刷しているにも関わらず結構なクオリティだ。色のある部分は染料インクなのににじみも無い。印刷時間も結構速く、好印象だ。
対して、エコノミーカラー印刷は、速度アップ及びインクを控えめに使うモード。確かに全体的に色は薄くなるものの、これだけ小さい文字も若干かすれ気味とは言え普通に読める。動画はこのエコノミーカラー印刷での速度を録ったものだ。最後に飛び出して来るのが気になるが、確かに数秒で印刷が終わる。あまり品質を要求されない印刷や大量印刷の時に役に立つ。
モノクロ印刷は「カラーインクも使う」グレースケール(高品質)と、「黒インクのみを使う」グレースケールがある。試しに顔料の黒インクだけで印刷したところ遜色無いプリントが得られた。速乾性や保存性などを考えるとグレーも含めモノクロの場合は、この黒インクだけを使う方が良いだろう。
最後は写真画質のチェック。純正の専用光沢紙を使っていることもあり、十分満足できる写真プリントだ。印刷速度も速い。4色インクでこれだけの絵になるのだから文句無しと言ったところだろう。
【動画】カラー印刷(エコノミー印刷)の様子。確かに速く、給紙してから飛び出して来るまで約3秒強だ |
筆者とカラーインクジェットプリンタの付き合いはかなり長いが、正直、この価格でここまで出来るとは思っていなかった。書類はもちろん、通常用途なら写真も全く問題無くプリントができる。ノイズと横揺れは気になるが、安い、速い、(それなりに)ハイクオリティーの三拍子揃ったこのHP Officejet 6000は、価格性能比が高くお勧めの1台だ。