井上繁樹の最新通信機器事情

アイ・オー・データ機器「ポケドラCloud」

~スマートフォンやタブレットでも初期設定、外出先からもアクセス

 ポケドラCloudは、PCだけでなく、AndroidやiOS搭載端末でも初期設定して使い始めることができるNASだ。LANとの接続は1Gbps対応の有線LANポートで行なう。「Cloud」とある通り、インターネット経由で、オンラインストレージとして使えるのが特徴だ。税別価格は、500GBモデルの「HLS-C500」が16,500円、1TBの「HLS-C1.0」が22,100円、2TBの「HLS-C2.0」が28,800円となっている。

ポケドラCloud本体。側面が円弧状に湾曲した三角柱に近い形状。動作ランプのある角を正面から見て右側の側面下にロゴがある
天面側
底面側。MACアドレスや型番、シリアル番号を印刷したシールが貼られている
正面から見て右側面。背面側底面に舌のように伸びた部位がある
背面。下側左から、1Gbps有線LAN、DC INコネクタ、RESETボタン、電源ボタン
背面下側拡大図
同梱物一覧。ACアダプタ、LANケーブル、冊子類

 LANに接続すると特別な設定をしなくても共有フォルダとして利用できるが、Windows/Mac/Android/iOS用にそれぞれ用意されているアプリを使うことで、設定の変更や同期またはファイルのコピーが簡単にできる。メディアサーバー機能も搭載しているので、LAN内のDLNA対応機器でスマートフォンやタブレットにで撮影した画像や動画を視聴できる。

 最近の流行とも言えるクラウドストレージとの連携も可能で、Dropboxや「フレッツ・あずけ~る同期」等のクラウドストレージにバックアップをとれる。また、複数台のポケドラCloudを連携させて相互にバックアップをとることもできる(Remote Link Cloud Sync)。

 大きさは85×79×130mm(幅×奥行き×高さ)で、本体重量は340g。形状は正三角形の各辺が外側に丸く膨らんだ三角柱で、ケーブル端子のある面の底部に、ケーブル保護の為か、安定性を増すためか、小さな「舌」が付いている。消費電力は最大9.5W、平均8.0Wとしている。500GB、1.0TB、2.0TBの3種類の容量のモデルがある。

PCでは同期、スマートフォンやタブレットではコピー

 ポケドラCloudへのアクセスは、Windowsであればエクスプローラーが使える。初期設定が完了していれば、ネットワークフォルダの「HLS-」から始まる名前のアイコンから開ける。また、Windows版アプリでは、タスクバーやタスクトレイに表示されるアイコンマークから開ける。

iOS版アプリでのファイル表示。フォルダ作成、アップロード、ローカル保存、ファイル削除ができる
画像を拡大表示したところ。一旦サムネイルの拡大表示後、ファイル本体がダウンロードされて綺麗な状態で表示される
こちらはAndroid版アプリでの画像の拡大表示。左上に表示されるアイコンのおかげで、使用アプリがわかりやすい。スライドショー機能を搭載する
WMPでポケドラCloudのメディアサーバーにアクセスしたところ
iPhone版のアプリ。Android版アプリ同様、初期設定時にネットワーク環境の診断ができる
管理者パスワードは初期設定時に決める
PCフォルダに共有フォルダとしてマウントされるのはDLNAサーバーのもの。書き込むにはネットワークフォルダの「HLS-」で始まるPCアイコンからアクセスする必要がある
アイコンを右クリックして、開いたダイアログ左下のフォルダマークをクリックすると、ポケドラのフォルダが開く
Windows版アプリの設定画面トップ。同期チェックは初期設定では30分

 アプリの動作はOSによって異なる。Windows版アプリではフォルダを5つまで登録してポケドラ側と同期できる。iOS版アプリはユーザーが指定したカメラロールやフォトストリームの画像、動画ファイルをポケドラ側と相互にコピーできる。Android版アプリではユーザーフォルダの全種類のファイルがコピーできる。

 Windows版アプリが「同期」機能を搭載しているのに対して、iOSやAndroidアプリでは指定したファイルの「コピー」なのは、おそらくパケット料と電池の持ちが気になるユーザーのことを考えてのことだろう。同期機能は楽で便利だが、通信容量と電池を自動的に消耗する。不要なファイルのために浪費している場合もあるわけで、動作タイミングをユーザーが逐一決めるコピーの方が無駄が無いとも言える。

 速度についてだが、ポケドラCloud(500GBモデル)のフォルダを、1Gbps有線LAN環境でCrystalDiskMark 3.0.3にて測定してみたところ、読み込み約41MB/sec(≒343Mbps)、書き込み約34MB/sec(≒約282Mbps)だった。さらに、参考までにiPhone 5と無線LAN経由で接続した場合の書き込み速度をストップウォッチで測定したところ、8.22GBのファイルの転送に3時間22分55秒かかったということで、約5.8Mbpsという結果になった。

 ちなみに、8.22GB分、ファイル数にして2,833個もあると、サムネイルの表示に非常に時間がかかった。iOSやAndroidのアプリだけでなく、1Gbpsの有線LANで接続しているWindowsの共有フォルダ表示でも遅いと感じられるレベルだった。自分が利用する容量に合わせて面倒でもフォルダ分割を忘れないようにしたい。

複数端末、複数ユーザーで共用可能、クラウドストレージ同期対応

 ポケドラCloudの容量は500GB、1TB、2TBの3種類ある。一方スマートフォンやタブレット端末のストレージ容量は多い場合でもシステム領域込みで128GB程度だ。PCではHDD搭載環境であればテラバイト単位が普通だが、ユーザーファイルに限って言えばそう多くはないはずだ。スマートフォンとPC、さらにタブレット分を合わせても、500GBにも届くことは少ないだろう。

Windows版アプリで同期対象にできるフォルダは5つまで
iPhone版アプリは画像、動画ファイルの選択コピーができる
Android版アプリ。画像、動画を含むユーザーフォルダのファイルの選択コピーができる
ポケドラCloudのCrystalDiskMark測定結果
管理画面トップ。こちらはAndroid版だが、iOS版も、PC版(IPアドレス指定で開ける)もまったく同じ。マニュアルは公式サイトのマニュアルページへのリンク
Windowsで管理画面を開いたところ。faviconがポケドラCloudのサムネイルになっている。フォルダ単位でユーザー別にアクセス権限を設定できる

 むしろ容量的には持て余すくらいあるはずなので、家族との共用も視野に入る。フォルダ単位でユーザーごとにアクセス権限を設定できるので、家族間のプライバシーを守りつつ利用可能だ。なお、当然のことながらプライバシーを保ちたいフォルダは「マルチメディア共有」(DLNAサーバー)機能をオフにする必要がある。

 ただし、所有する全デバイスの写真や動画のバックアップとして考えると、1人ならともかく家族では足りない。1TBモデル、あるいは2TBモデルを選択することになるだろう。

 ポケドラCloud自体のバックアップは、搭載されているクラウドストレージ機能を使うのが簡単だ。だが、対応しているサービスは無料プランだと、Dropboxが2GB(初期状態)、フレッツ・あずけ~る同期が5GBと少なめだ。恐らく容量不足になると思うので、別途有料プランに加入しておくのがおすすめだ。

画面遷移の少ない管理画面と隠された? メディアサーバー管理画面

 管理画面はWebブラウザ、Androidアプリ、iOSアプリすべて共通のデザインで機能も動作も同じだ。おそらくアプリでも同じWebページをブラウザ機能を使って表示しているのだろう。タップ操作を考慮してかボタン類が大きく、操作した結果が画面遷移無しで反映されるので、操作がしやすく分かりやすいのが特徴だ。

クラウドストレージ同期はDoropbox、フレッツ・あずけ~るに対応している。他のポケドラCloudとも同期可能。
共有設定。共有フォルダとユーザーの作成と削除ができる
メディアサーバー設定。「データベース初期化」ボタンは、マウスでもタップ操作でも押しやすい大きさ
ディスク設定。省電力設定の変更や、フォーマットができる。初期状態では10分で省電力モードに移行する
システム初期化。システムを出荷時に戻すほか、内蔵ディスクに保存したファイルをまとめて消去できる
ログ表示。見やすくシンプルな日本語表示。
9000番ポートをブラウザで開くと表示される。メニュー項目がいくつかあるが動作はしない

 管理画面で設定できるのは、共有フォルダやユーザーの作成、削除と設定、メディアサーバーDBの初期化、システムやストレージの初期化、時刻やNTPサーバーの設定、ログの確認など。ちょっと面白いのはログ表示が日本語化されていること。もっとも、英語表示の方が馴染みのある諸氏もいるかもしれないが。

 対応しているファイル形式は、OSやアプリによって異なる。詳細はアイ・オー・データ機器の「仕様ページ」で確認できる。WindowsなどのPCからは共有フォルダとして見えるだけあって、やりとりするファイルの種類に制限は無いが、AndroidやiOSでは見えないファイルもあるので、端末間で相互にファイルをやり取りする場合は、事前の動作確認を忘れないようにしたい。

まとめと感想

 インターネット経由で自宅のNASにアクセスする、というのは誰にでもできることではなかったように思うが、ここ1~2年で随分と手軽なものになった。その間、クラウドストレージが低価格化して競合するようになるなど、パラダイムシフトもあった。

 しかし、元々速度の出ないモバイル環境ならともかく、まだ当面クラウドがローカルの速度に迫ることはない。大容量のファイルをできるだけ高速にやり取りしたいというニーズがある限り、ポケドラCloudのような機器の出番はあるはずだ。

 今回試用して印象的だったのは、アイ・オー・データ機器のような国内の老舗周辺機器メーカーが、PCなどの電子機器に詳しくない人でも簡単に使い始められる、オンラインストレージ機能搭載のNASを出してきたことだ。わずか1~2年で自宅と出先が誰でも繋げられるようになってしまったわけで感慨深い。

(井上 繁樹)