井上繁樹の最新通信機器事情

バッファロー「EasyStation for Backup BK441Dシリーズ」

~バックアップ特化の簡単シンプルなネットワークHDD

 「EasyStation for Backup」はWindowsのユーザーフォルダのバックアップに特化したネットワークHDDだ。USBメモリを使ったほぼ1本道の操作手順のおかげで、忘れにくくしばらくぶりの復旧作業でも迷わず操作できる簡単さがポイントだ。

概要

 「EasyStation for Backup」はバックアップに特化したネットワークHDDである。搭載容量が8TB(2TB×4)のモデルと4TB(1TB×4)の2つのモデルがラインナップされている。接続端子は1Gbpsの有線LANポート、USB 3.0×2(前面と背面に1つずつ)、USB 2.0を搭載している。USBポートは専用アプリのセットアップ用USBメモリ作成とUPSとの接続に使用する。

正面。右側に上からHDDの動作ランプ×4、電源ランプとボタン、ファンクションランプとボタン、USB 3.0ポートが並ぶ
正面の前面カバーを開けた状態。HDDが縦に4台装着済み
前面カバーは左側から取り外せる
正面から見て右側面
正面から見て左側面。正面側の縦の黒い溝は前面カバーを開くためのもの
背面。左側に上からUSB 3.0ポート、USB 2.0ポート、Gigabit Ethernet、電源端子。右側の鍵状のアイコンの右の穴は盗難防止のワイヤーホイール。底面側にはシリアル番号や、MACアドレスを印刷したシール
天面側。正面側の赤い部品はデザイン。スイッチ等ではない
底面。4つの四角のゴム足で本体を支える
同梱物。電源ケーブル、LANケーブル。他にマニュアル等冊子も付属。マニュアル類は公式サイトにも用意

 4台のHDDはXFS形式でフォーマットされていて、RAID 5形式でRAIDアレイを構築している。初期化後の空き容量は4TBモデルの場合で約2.7TBだった。RAID 5ということで、HDDが故障した場合同時に1台までなら交換して復旧できる。交換用のHDDとしてバッファローは「OP-HD/LS」シリーズを販売している。

 機能は至ってシンプルで、できることは、専用アプリでのユーザーフォルダ以下のファイルの自動バックアップと復元、Web UIでのRAID再構築や初期化など設定変更だ。バックアップ内容はエクスプローラーでは表示されず、専用アプリを復元モードで起動した場合のみ確認できる。NASのように「フォルダを作成してLAN内でファイルを共有する」といったことは一切できず、バックアップに特化した仕様だ。

 本体サイズは177×227×127.5mm(幅×奥行き×高さ)、本体重量は5.4kg、最大消費電力は90Wとなっている。正面側はプラスチックパーツで、ストレージを出し入れするための、取り外し可能な前面カバーが装着されている。正面以外は金属パーツで天面と側面を覆うカバーはマットな黒の塗装仕上げだ。底面には本体を支えるゴム足が4つ貼られている。

バックアップと復元

 バックアップは、同梱のUSBメモリから「Backup Navigator」をインストールすることで行なえる。対応OSはWindows 7/8.1。Windows 8には対応していない。インストールが完了するとBackup Navigatorは常駐して定期的にユーザーフォルダのファイルをEasyStation for Backup側にバックアップ保存する。

USBメモリのファイル構成。使用するのは「Setup」
「インストール」ボタン。復元時の表示されるので、慣れないうちは戸惑うかもしれない
バックアップ、復元の2つ動作モードがある
インストール時にバックアップに名前を付ける。デフォルトは「(ユーザー名)_(コンピュータ名)」
「復元」を選択すると、復元元のバックアップの選択リストが開く
前のダイアログで「フォルダーを開く」をクリックすると、バックアップフォルダが開いて、手動での復元作業ができるようになる
赤丸で囲ったアイコンがBackup Navigatorのもの。アイコンからログやバージョンの確認ができる
バックアップと復元のログはHTML形式で保存されている

 バックアップ内容についてだが、テンポラリファイル、パブリックフォルダ、Windowsが参照するユーザー固有情報ファイル、システムファイル、使用中のファイル、オフラインファイルなどは保存されない。バックアップは複数台のPCに対応していて、Backup Navigatorインストール時に設定する名前で区別する。推奨台数は8台まで。

 復元する際は「デスクトップ」、「ダウンロード」、「ドキュメント」、「ピクチャ」、「ビデオ」、「ミュージック」フォルダの内容をまとめて復元できる。それ以外のフォルダやファイルについては、ユーザーが必要なファイルを選んでコピーする「手動での復元」となる。

 復元にもBackup Navigatorを使う。バックアップ時同様、USBメモリから起動すると、「インストール」ボタンのあるダイアログが表示されるので、最初のうちは戸惑うかもしれない。次に表示されるダイアログで「復元」を選んで、さらにその次のダイアログで復元元のバックアップ選んで復元作業を行なう。

 なお、USBメモリは通常同梱されているものを使えばいいが、本体正面のUSB 3.0ポートに空きUSBメモリを挿して同じ内容のものを作ることができる。なお、この時空きUSBメモリの内容は初期化される。

初期化やIPアドレス、時刻の設定はWeb UIで

 システムの初期化や、保存内容の消去、IPアドレスの固定割り当て、時刻、UPS連動などの設定はWeb UIの管理画面で行なう。管理画面はバッファローが公式サイトで公開している「NAS Navigator2」を使うと簡単に開ける。ちなみに、NAS Navigator2を使わなくても、IPアドレスさえ分かっていればブラウザで開ける。

NAS Navigator2。EasyStationの管理画面を簡単に開ける
管理画面を開く以外ではIPアドレスの設定変更も可能
Web UIの管理画面トップ。最上段のアイコンは、左から公式サイトのダウンロードページ、マニュアルページ、システム情報、電源、ログアウト
「管理者ユーザーの設定」。管理画面のログインパスワードの設定ができる
「時刻」。NTPサーバーや時刻の設定ができる
「RAID」。ディスク情報の確認と、RAIDアレイの初期化ができる
「IPアドレス」でアドレスの固定割り当てができる
「ログ」。システムログとファイル操作ログをブラウザで開ける。画面はシステムログ
「アップデート」。初期設定では自動アップデートだが、手動でも可能
「初期化」。システムの初期化と、HDDの完全フォーマットができる

 ファームウェアのアップデートはインターネット経由で自動で行なわれる。そのため、インターネットとの接続環境は必須だ。ログはテキスト形式で、ブラウザ上で開かれる。システムログとファイル操作(SMB)ログの2種類あるが、どちらも解釈には専門的知識が必要なもので、どちらかと言うとトラブル対応の際に有用なものだ。実際使うことになるのはBackup Navigatorのタスクバーアイコンから開けるHTML形式のものだろう。

まとめと感想

 管理者不要の簡単さをセールスポイントにしてるだけあって非常に分かりやすい製品だ。ハードウェア的にはNASと言ってよいのだろうが、NASのように自由にファイルにアクセスできないバックアップ特化の仕様な分、リスク軽減にもなっているところがポイントだろうか。

 バックアップにも復元にも同じUSBメモリからアプリを起動して使う仕様は最初のうちは違和感があるが、長大に伸びたメニューの中からお目当てのアプリを探す手間が無い分わかりやすいかもしれない。さらに、USBメモリを無くしても手持ちの空きUSBメモリで即代用できる点は安心感があっていい。

 それから、本文では触れなかったが、動作音は低域寄りでやや気になると言ったところ。静かな部屋で使う場合は、静粛性の確保とファイルの安全性の向上のためにもケースに収納して使う方が良いだろう。

 少し気になったのは、OneDriveを始めとするクラウドストレージのフォルダの扱いだ。同じユーザーアカウントでノートとデスクトップ、最近ではタブレットも加わって、3台以上複数台持ちしているユーザーも珍しくない。EasyStation for Backupでは重複していても保存されるので、その分容量が無駄に使われることになる。場合によっては容量節約のためにクラウドストレージの保存フォルダをユーザーフォルダから移動するなどの工夫が必要かもしれない。

(井上 繁樹)