Hothotレビュー
東芝「dynabook N51/NG」
~デザインを一新し薄型軽量化を実現
(2014/11/14 06:00)
東芝は、低価格ノートPC“ネットノート”の新モデル「dynabook N51/NG」を11月14日に発売する。従来モデルから本体デザインを一新し、上位のdynabookシリーズに近い質感を実現。また、本体の薄型軽量化も実現し、携帯性も高まっている。店頭予想価格は税別90,000円前後。
この製品をいち早く試用する機会を得たのでレポートをお届けする。なお、今回試用したのは試作機のため、製品版とは細部や性能が異なる可能性があることをお断りしておく。
従来より薄く軽くなって携帯性が向上
「dynabook N51/NG」(以下、N51/NG)は、性能こそやや抑え気味ながら、Webアクセスやメール送受信、Officeなどのビジネス系アプリケーションが十分快適に利用できる、“ネットノート”と呼ばれるジャンルの製品だ。以前日本でも大いに話題となった“ネットブック”に近い位置付けの製品だが、プロセッサの進化などによって性能が底上げされ、ネットブックのような性能面への不満が少なくなっている点が特徴だ。
従来モデルは、天板やパームレスト部がシルバーだったものの、本体底面はブラックで、素材のプラスチックが直接伝わってくるデザインだったこともあり、やや安っぽい印象が強かった。それに対しN51/NGでは、天板やキーボード面だけでな底面もdynabookシリーズで広く採用されているサテンゴールドとなった。従来のようなプラスチックの素材感が弱まり、見た目の安っぽさが解消されている。エントリー向けの製品ではあるが、見た目で安っぽさが感じにくくなっているのは嬉しい改良点だ。
本体サイズは、289×199×21.9mm(幅×奥行き×高さ)となっている。11.6型液晶を搭載する点は従来と同じだが、幅は5mm大きくなっている。それに対し、奥行きは約9.6mm短くなり、高さも約1.6mm薄くなった。従来より薄くコンパクトになったことで、鞄などへの収納性が高まっている。
また、重量は公称で約1.3kg、実測では1,264.5gだった。従来モデルは約1.5kgだったため、200gほど軽くなっている。実際に手にしても、従来モデルほど重いと感じることはなくなり、軽快に持ち運べるようになった。2-in-1モバイルなどでも、より薄く軽い製品は存在し、それらに敵わないとしても、薄く軽くなって携帯性が向上した点は大きな魅力と言っていいだろう。
11.6型WXGA液晶を搭載
液晶には、1,366×768ドット表示対応の11.6型パネルを採用している。表示解像度は必要最低限といった感じではあるが、11.6型と比較的コンパクトなこともあり、映像や文字など荒さを感じることはほとんどない。フルHD液晶と比べると、さすがに表示領域の狭さを感じるものの、特別使いにくいと感じることもなく、利便性はまずまず納得できる範囲内だ。
輝度は十分に明るく、発色はまずまず鮮やかではあるが、全体的にやや淡い色合いで、もう少しメリハリが欲しいところ。表面が光沢処理で、外光の映り込みがやや激しい点と、TNパネルを採用していることもあって、視野角の狭さも気になる。このあたりは、コストダウンの影響が色濃く出ている部分と言える。ただ、N51/NGは2-in-1仕様ではないのでタブレットのような使い方は想定されておらず、視野角の狭さが気になる場面はそれほど多くないと思われる。
液晶表面には、静電容量方式のタッチパネルを搭載。10点マルチタッチに対応しており、タッチによる操作性は非常に軽快だ。エントリー向け製品ではあるが、操作性に優れるタッチパネルを搭載する点は競合製品に対する優位点となるだろう。
キーボードは十分扱いやすい
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを搭載する。配列はdynabookシリーズで採用されているものとほぼ同じで、「Esc」と「半角/全角」が横に並んで配置されている点がやや気になるものの、無理な配列は特に見当たらない。主要キーのキーピッチは縦方向がわずかに狭い。横方向のキーピッチは19mmとゆったりしており、Enterキー付近の一部キーのピッチが狭くなっているが、それも大幅に狭くなっているわけではなく、タッチタイプも問題なく可能だ。ストロークは1.2mmと薄型ノートPC同様にやや浅いが、しっかりとしたクリック感があり打鍵感は悪くない。キーボードに関しては、上位のdynabookとほぼ同等の感覚で利用できると考えていいだろう。
タッチパッドは、最近では珍しいクリックボタンが独立している点が特徴。クリックボタンがある分、縦の幅が狭くなってはいるが、確実なクリック操作が行なえるのはクリックボタン一体型タッチパッドにはない魅力。ユーザーによって好みは別れると思うが、個人的にはこの仕様は大きな魅力と感じる。
11ac準拠の無線LANを標準搭載
CPUはCeleron N2840を採用する。低価格ノートPCなどを中心に採用例の多いCPUで、性能的にはCoreプロセッサに及ばないものの、WebブラウザやOfficeなどを利用するうえで大きな不満を感じない性能を発揮する。メモリはDDR3L-1333を4GB搭載し、デュアルチャネル動作もサポート。これによって、プロセッサや内蔵グラフィックス機能の性能も最大限に引き出せる。内蔵ストレージは500GBのHDDを採用。SSDに比べるとアクセス速度が遅く、OSやアプリ起動でややもたつきを感じる場面がある。
無線機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載する。11ac時の通信速度は最大433Mbpsだが、エントリーモデルながら11ac準拠の無線LANを搭載する点は魅力的な部分だ。カメラは液晶面上部に約92万画素のWebカメラを搭載している。
側面のポート類は、左側面に電源コネクタ、D-Sub15ピン(アナログRGB出力)、HDMI出力、USB 3.0ポート×1、SDカードスロット、右側面にヘッドフォン/マイク共用ジャック、USB 2.0ポート×1、100BASE-TX準拠のEthernetポートをそれぞれ備える。電源ボタンは左側面に配置している。USB 3.0が1ポートのみとなっている点と有線LANが100BASE-TX準拠となる点は少々残念だが、ポートは必要十分で拡張性に大きな不満はないだろう。
付属アプリは「Office Home and Business PremiumプラスOffice 365サービス」や、写真、動画、TVなどを楽しめる独自アプリを豊富に搭載。こういった部分は、dynabookシリーズらしい特徴と言える。
性能は価格相応
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.282」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.4.778」の4種類。比較として、レノボの「ThinkPad 10 20C1002PJP」と、マイクロソフトの「Surface Pro 3」の結果も加えてある。なお、一部ベンチマークテストのバージョンが異なるものがあるため、結果は参考値として見てもらいたい。
結果を見ると、プロセッサにCore i5-4300Uを搭載するSurface Pro 3に大きく劣るのは仕方がないが、Atom Z3795搭載のThinkPad 10にも多くのスコアが劣っている。CPUコアの動作クロック自体はN51/NG搭載のAtom N2840の方が上回っているが、2コア2スレッドとなっている点が大きく足を引っ張っていると考えられる。
また、PCMark8やPCMark7などの総合スコアが低くなっているのは、内蔵ストレージが速度の遅いHDDとなっているからだろう。この結果を見る限り、性能的には価格相応と言っていいだろう。
dynabook N51 | ThinkPad 10 20C1002PJP | Surface Pro 3 | |
---|---|---|---|
CPU | Atom N2840(2.16/2.58GHz) | Atom Z3795(1.59/2.39GHz) | Core i5-4300U(1.90/2.90GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Inte HD Graphics 4400 |
メモリ | DDR3L-1333 4GB | LPDDR3-1066 4GB | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB |
ストレージ | 500GB HDD | 64GB eMMC | 256GB SSD |
OS | Windows 8.1 Update 64bit | Windows 8.1 Pro Update 64bit | Windows 8.1 Pro Update 64bit |
PCMark 8 v2.0.282(Surface Pro 3はv2.0.228を使用) | |||
Home Accelarated 3.0 | 1299 | N/A | 2190 |
Creative accelarated 3.0 | N/A | N/A | 2540 |
Work 2.0 | N/A | N/A | 3282 |
Storage | 1873 | N/A | 4882 |
PCMark 7 v1.4.0 | |||
PCMark score | 1760 | 2300 | 4816 |
Lightweight score | 901 | 1392 | 3209 |
Productivity score | 481 | 1041 | 2428 |
Entertainment score | 1497 | 1548 | 3107 |
Creativity score | 4176 | 4266 | 8691 |
Computation score | 8258 | 5631 | 14289 |
System storage score | 1530 | 3860 | 5135 |
Raw system storage score | 324 | 1501 | 4015 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 4124 | 4632 | 9081 |
Memory Score | 3941 | 2983 | 8446 |
Graphics Score | 1389 | 807 | N/A |
HDD Score | 4873 | 13259 | 38847 |
3DMark Professional Edition v1.4.778(ThinkPad 10/Surface Pro 3はv1.3.708を使用) | |||
Ice Storm | 17190 | 10605 | 29479 |
Graphics Score | 19739 | 10207 | 32413 |
Physics Score | 11841 | 12284 | 22387 |
Ice Storm Extreme | 10925 | N/A | N/A |
Graphics Score | 10705 | N/A | N/A |
Physics Score | 11772 | N/A | N/A |
Cloud Gate | 1329 | N/A | 2791 |
Graphics Score | 1520 | N/A | 3254 |
Physics Score | 925 | N/A | 1864 |
Sky Diver | 534 | N/A | N/A |
Graphics Score | 479 | N/A | N/A |
Physics Score | 1207 | N/A | N/A |
Combined score | 557 | N/A | N/A |
Fire Strike | 152 | N/A | 1679 |
Graphics Score | 170 | N/A | 1589 |
Physics Score | 1172 | N/A | 2672 |
Combined score | 50 | N/A | 1478 |
次にバッテリ駆動時間だ。N51/NGの公称のバッテリ駆動時間は、JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0で約4.6時間、同測定法Ver1.0で約5.4時間とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約5時間46分だった。駆動時間自体は特別長いというわけではなく、1日外出して利用する場合などは、ACアダプタも同時携帯したいところではあるが、実測で公称を上回る駆動時間が記録された点は好印象。従来モデルより本体重量が約200g軽量化されていることと合わせ、モバイル性能はまずまず満足できるレベルと言えるだろう。
なお、付属のACアダプタは十分にコンパクトで、重量も付属電源ケーブル込みで実測194gと軽量なため、本体との同時携帯も苦にならないはずだ。
もう少し価格面での頑張りがほしい
N51/NGは、スペックを抑えつつ安価な価格を実現した、エントリー向けのノートPCだ。ベンチマークテストの結果からも分かるように、性能面はあまり高くなく、ミドルレンジ以上のノートPCと比較すると、OSやアプリの起動の遅さや、重い処理の実行に時間がかかるなど、性能面で不満を感じる場面が少なからず存在する。それでも、Webブラウザを利用してWebアクセスやWeb動画の視聴を行なったり、メールの送受信、Officeを利用した文書ファイルなどの作成や編集など、比較的軽い作業であれば、あまり不満を感じることなく利用できる。そう考えると、この製品がターゲットとする価格重視のエントリーユーザーや、サブマシンとして利用する場合には、まずまず満足できそうだ。
ただ、予想実売価格の税別90,000円前後という価格は、マシンのスペックを考えると少々高く感じる。店舗での割引やポイントなどを考慮すると、実質80,000円前後が実際の価格帯になると思われるが、N51/NGに近いスペックで5万円を切る価格で販売されるノートPCが存在することを考えると、それでもまだ高いと感じる。
N51/NGでは、「Office Home and Business PremiumプラスOffice 365サービス」をはじめ各種プリインストールアプリが付属し、国内での手厚いサポートが受けられるなど、競合製品に対する利点があり、そのあたりが安価な製品との差別化になっているのも事実だ。そして、これら豊富な付属アプリやサポートに魅力を感じるかどうかで、この製品に対する印象も大きく変わるだろう。製品としてのコンセプトは悪くなく、従来モデルからの進化も十分に魅力的なので、今後は価格面での頑張りに期待したいところだ。