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富士通「ARROWS Tab QH33/S」

~幅が狭く持ちやすい8型Windows 8.1タブレット

富士通「ARROWS Tab QH33/S」

 2013年夏以降、続々と製品が登場し、1つのジャンルとして定着したのがWindowsタブレットだ。中でも人気があるのが、タブレットとしてはコンパクトな8型クラスの製品であり、激戦区となっている。

 富士通の2014年秋冬モデルとして登場した「ARROWS Tab QH33/S」(以下QH33/S)は、そうした8型Windowsタブレットの1つだ。8型Windowsタブレットとしては横幅が狭く、手の小さな女性でも片手で持ちやすいことがウリだ。ここでは、QH33/Sを試用する機会を得たので、早速レビューしてみたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や性能が異なる可能性がある。

女性の手でも持ちやすいサイズとデザインが魅力

 QH33/Sは、最近人気の8型Windowsタブレットだが、横幅が126mmと小さいことが特徴だ。例えば、デルの8型Windowsタブレット「Venue 8 Pro 3000」の横幅は130mm、東芝の8型Windowsタブレット「dynabook S38」の横幅は132mmであり、8型Windowsタブレットとしてはトップクラスの幅の小ささである。

 横幅だけでなく、本体の奥行きは215mm、高さ(厚み)は9.9mmと、かなりコンパクトである。重量は約390gで、8型Windowsタブレットとしては標準的だが、10型クラスのタブレットとは異なり、片手で楽に持てる重さとサイズであり、立ったままでも気軽に利用できることが利点だ。

 本体色はブラックで、質感は高い。背面には、立体的で触り心地のよい3Dテクスチャが施されており、滑りにくく持ちやすい。親指の根元で端末を挟んで利用する場合、女性が持った場合でも最低2本の指が本体の中央より反対側に来れば、長く持っても疲れにくいとされている。女性が持った場合でもその条件を満たすには、幅が127.2mm以下が望ましく、QH33/Sの幅126mmは、そうした理由で決められたという。

 実際に、身長165cmで手も大きい方ではない筆者が片手で持ってみたが、確かに片手でも把持しやすかった。身長がほぼ同じ妻にも試してもらったが、やはり持ちやすく、立ったままでも安心して使えたとのことだ。

QH33/Sの前面。液晶左右の額縁部分がかなり狭く、横幅が小さくなっている
QH33/Sの背面。立体的で触り心地のよい3Dテクスチャが施されており、持ちやすい
試用機の重量は、実測で373gと、公称よりも軽かった
筆者がQH33/Sを片手で持ったところ
筆者がQH33/Sを片手で持ったときの背面側。筆者も手が大きなほうではないが、片手でもしっかりと把持できる

ハードウェア仕様も合格点

QH33/Sのシステム情報。OSはWindows 8.1 with Bingである

 続いてハードウェア仕様を見ていこう。CPUにはIntelのAtom Z3735Fが搭載されている。開発コードネーム「Bay Trail-T」と呼ばれていたCPUで、Windowsタブレットを主なターゲットとして開発された製品だ。Bay Trail-Tは、消費電力当たりの性能が高いことがウリで、Atom Z3735FのSDP(Scenario Design Power)は2.2Wである。

 Atom Z3735FはクアッドコアCPUであり、動作周波数は1.33GHzだが、自動オーバークロック技術のインテル・バースト・テクノロジーによって、最大1.83GHzまで動作周波数が向上する。メモリは2GB固定で、ストレージは64GBのフラッシュメモリ(eMMC)を搭載する。

 液晶は8型で、解像度は1,280×800ドットである。10点マルチタッチ対応で、タッチパネルの操作性も良好だ。IPS液晶ではないが、縦画面にしても横画面にしても、視野角について特に不満は感じなかった。2014年秋冬モデルのWindowsタブレットとして、合格点を付けられる仕様と言える。なお、OSはWindows 8.1 with Bing(32bit)である。

インターフェイスやセンサー類も一通り搭載

 インターフェイスとしては、Micro USBポートとMicro HDMI出力、ヘッドフォン出力/マイク入力端子のほか、microSDカードスロットが用意されている。内蔵カメラは、前面カメラが約126万画素、背面カメラが約500万画素。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0に対応。センサーは、加速度センサー、地磁気センサー(電子コンパス)、照度センサー、ジャイロセンサーを搭載している。インターフェイスやワイヤレス機能、センサー類についても、必要十分なものを搭載しているといえる。

底面には、充電LEDとMicro USBが用意されている
底面のポート部分のアップ
上面には、ヘッドフォン出力/マイク入力端子とMicro HDMI出力、microSDカードスロットが用意されている
上面のポート部分のアップ
右側面には、電源ボタンと音量調整ボタンが用意されている
右側面のボタン部分のアップ
左側面には特に何も用意されていない
前面カメラは約126万画素である
背面カメラは約500万画素である
液晶下部(縦画面にしたとき)に、Windowsボタンが用意されている

【お詫びと訂正】初出時、NFC搭載と記載しておりましたが、正しくは非搭載となります。お詫びして訂正いたします。

バッテリ駆動時間も満足できる

 バッテリはリチウムポリマー電池を採用しており、容量は20Whである。公称バッテリ駆動時間は、JEITA 1.0準拠で約12時間、JEITA 2.0準拠で約10.5時間であり、こちらも8型Windowsタブレットとしては満足できる仕様だ。

 BBenchを用いて、無線LAN常時オン、液晶輝度「中」、電源プラン「バランス」に設定し、10秒ごとにキー入力のエミュレーション、1分ごとにWeb巡回を行なう条件で、バッテリ駆動時間を計測したところ、8時間23分の駆動が可能であった。無線LAN常時オンで8時間以上持てば、1日持ち歩いて使ってもバッテリの残りを気にしなくてすむだろう。ACアダプタもコンパクトで軽く、本体と一緒に気軽に持ち歩ける。

ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ
USB-Micro USBケーブル経由で充電を行なう
ACアダプタにUSB-Micro USBケーブルを接続したところ

Office Home and Business 2013などプリインストールアプリも充実

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークは、「PCMark 7」、「PCMark 8 Ver.2」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。結果は下に示した通りで、仕様から想定される結果に比べてややスコアは低いが、今回試用したのは試作機なので、参考程度としてほしい。実際の使用感は十分に快適であった。

【表】ARROWS Tab QH33/Sのベンチマークテスト結果

ARROWS Tab QH33/S
CPUAtom Z3735F
メモリ2GB
PCMark 7
PCMark score1977
Lightweight score1202
Productivity score880
Entertainment score1245
Creativity score3420
Computation score3935
System storage score3782
Raw system storage score1397
PCMark 8
Home conventional1009
Home accelerated1016
Creative conventional770
Creative accelerated823
Work conventional1485
Work accelerated1164
3DMark
Ice Storm7863
Cloud Gate547
Sky Diver232
Fire Strike計測不可
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1280×720ドット 最高品質109
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)104
1280×720ドット 高品質(ノートPC)161
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)200
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)231
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード105.4MB/sec
シーケンシャルライト47.01MB/sec
512Kランダムリード101.1MB/sec
512Kランダムライト27.86MB/sec
4Kランダムリード10.41MB/sec
4Kランダムライト11.05MB/sec
4K QD32ランダムリード29.81MB/sec
4K QD32ランダムライト12.66MB/sec

 QH33/Sは、Office Home and Business 2013がプリインストールされていることも魅力だ。低価格なWindowsタブレットでは、Officeがプリインストールされていないか、されていてもWordとExcel、OutlookのみのOffice Personal 2013がプリインストールされていることが多い。QH33/Sなら、さらにPowerPointやOneNoteも利用できるので、PowerPointで作成したプレゼン資料を出先でちょっと修正して、営業相手に見せるなど、ビジネスシーンでも役立つ。そのほか、電子辞書やフォトアルバム作成ソフトなどがプリインストールされている。電子辞書のコンテンツは、「広辞苑第六版」、「リーダーズ英和辞典第3版」、「新和英中辞典第5版」、「学研パーソナル統合辞典(4種)」が含まれており、こちらも実用的である。

広辞苑や学研パーソナル統合辞典などの電子辞書がプリインストールされている
広辞苑を使ってみたところ

8型Windowsタブレットが欲しい女性や手の小さい人にお勧め

 QH33/Sは、人気の8型Windowsタブレットであり、8型タブレットとしては幅が狭く、女性や手が小さい人でも片手で持ちやすいことがウリだ。基本仕様も最新モデルとしての水準を満たしており、Windows 8.1を十分快適に利用できる。最近は、もっと安い価格のWindowsタブレットも登場しているが、Office Home and Business 2013がプリインストールされていることを考えれば、価格もリーズナブルだろう。

 目立って尖ったところのある製品ではないが、Windowsタブレットとしての出来は悪くない。特に女性や手の小さい人で、気軽に持ち運べる8型Windowsタブレットが欲しいと思っているなら有力な選択肢となるだろう。

(石井 英男)