~高い拡張性とメンテナンス性が魅力の高性能ミドルタワーPC |
エプソンダイレクトの「Endeavor Pro5000」は、2009年10月に登場した「Endeavor Pro4700」の後継となるミドルタワーPCであり、同社のデスクトップPCのラインナップの中では、Endeavor Pro7000に次ぐハイエンド機として位置づけられている。Endeavor Pro5000は、CPUやマザーボードなどが一新されただけでなく、ケースのデザインや設計も変更されており、使い勝手がさらに向上している。
●最新の第2世代Core iシリーズを搭載まず、PCとしての基本スペックから見ていこう。Endeavor Pro5000は、BTOによって仕様のカスタマイズが可能であり、CPUは、最新の第2世代Core iシリーズから選べる。用意されている選択肢は、Core i7-2600/Core i5-2500/Core i5-2400/Core i3-2100)の4種類である。今回の試用機では、選べるCPUの中で最も性能が高いCore i7-2600(3.4GHz)が搭載されていた。チップセットはIntel P67 Expressで、DIMMスロットは4基搭載されている。試用機のメモリは8GB(4GB DIMM×2)だったが、メモリは最大16GBまで増設が可能だ。
ビデオカードもBTO対応で、Radeon HD 6970/Radeon HD 5870/Radeon HD 5450/GeForce GTX 580/GeForce GTX 460/GeForce GTS 450といった、一般向けのGPUを搭載したビデオカードから、FirePro V4800/Quadro 2000/Quadro 600といったCAD向けGPUを搭載したビデオカードまで、選択肢が充実していることが魅力だ。試用機には、ZOTAC製のGeForce GTX 460搭載ビデオカードが装着されていた。
●SSD+HDDやRAID 0/1/10構成も選べる
ストレージの自由度も高い。ケースには3.5インチシャドウベイが4基用意されており、最大4台のSSDまたはHDDを搭載可能だ。ただし、シャドウベイのうち2つはSATA 6Gbps対応で、残りの2つはSATA 3Gbps対応となっている。選択可能なストレージは、SSDが160GB/120GB/80GB、HDDが1TB/500GB/250GBであり、このうち120GB SSDのみSATA 6Gbps対応(Intel 510シリーズ)で、残りはSATA 3Gbps対応である。これらのストレージを組み合わせて、最大4台まで搭載できる(ただし、3台目と4台目はHDDのみ選択可能)。さらに、RAID構成を選ぶことも可能だ。BTOオプションとして用意されているRAID構成は、SATA 6Gbps対応120GB SSD×2のRAID 0、250GB HDD×2/500GB HDD×2/1TB HDD×2のRAID1、500GB HDD×4のRAID10である。例えば、システムドライブとして高速なSSDを利用し、データは大容量のHDDに保存するなど、用途に応じて柔軟なストレージ構成が可能なことは評価できる。なお、今回の試用機には、SATA 6Gbps対応120GB SSDと1TB HDDが搭載されていた。
光学ドライブも2台まで搭載可能で、1台目はDVD-ROMドライブ/DVDスーパーマルチドライブ/BD-ROMドライブ/Blu-ray Discドライブ、2台目はDVDスーパーマルチドライブ/BD-ROMドライブ/Blu-ray Discドライブから選べる。試用機には、BD-ROMドライブが搭載されていた。
キーボードやマウスもBTOで選択可能で、PS/2対応の標準的なものから、USB対応やワイヤレス対応製品まで用意されている。
試用機には、1台目のストレージとして、SATA 3.0対応の120GB SSDが搭載されていた | 2台目のストレージとして、Seagate製1TB HDDが搭載されていた | 試用機には、Philips & LiteON Digital Solutions Corp製のBlu-ray ROMが搭載されていた |
試用機のキーボードは、オーソドックスなPS/2タイプの109キーボードである。USB対応キーボードやコンパクトキーボード、ワイヤレスキーボードなどへの変更も可能 | 試用機のマウスは、PS/2対応の光学式マウスだったが、USB対応マウスやコードレスマウスも選べる |
●レガシーからUSB 3.0までインターフェイスも充実
Endeavor Pro5000は、インターフェイスも非常に充実している。最近のPCでは、シリアルやパラレルなどのレガシーインターフェイスは省略されていることが多いが、Endeavor Pro5000では、シリアルやパラレルも備えているので、シリアルやパラレル経由で接続する周辺機器(計測機器や工場の製造ラインなどでは、まだそうした機器が現役で使われていることも多い)をそのまま接続できる。USB 3.0ポートも背面とフロントI/Oユニットに1つずつ用意されている。工場出荷時には、フロントI/Oユニットは5インチベイの最下段に配置されているが、上に移動することも可能だ。フロントI/Oユニットには電源スイッチも用意されているので、本体の設置場所に応じて、手を伸ばしやすい位置に配置できるのは便利だ。
背面のポート類。PS/2×2、シリアル、パラレル、USB 2.0×5、USB 3.0、オーディオ入出力、有線LAN(Gigabit Ethernet)など、インターフェイスは豊富だ | フロントI/Oポートとして、USB 3.0、USB 2.0×2、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている。フロントI/Oユニットの位置も自由に変更が可能だ |
●拡張性とメンテナンス性に優れたツールフリー設計のミドルタワーケースを採用
前モデルのEndeavor Pro4700も、独自のミドルタワーケースの評価が高かったが、Endeavor Pro5000では、フロントパネルのデザインやドライブベイの設計などが変更され、よりスタイリッシュになり、利便性も大きく向上している。Endeavor Pro4700のフロントパネルは、シンプルでありふれたデザインだったが、Endeavor Pro5000では、正面から見ると、上がやや細くなった台形のようなデザインに変更されており、シャープな印象を受ける。ケース上面のデザインも変更され、中央に凹みが設けられている。この凹みを小型の周辺機器などの小物置き場として利用できる。また、本体を移動させる際に便利なキャリングハンドルの装着も可能だ。
Endeavor Pro5000のミドルタワーケースは、ドライバーなどの工具を使わずに、拡張カードの追加などの拡張やメンテナンスが可能な、ツールフリー設計になっていることが魅力だ。Endeavor Pro4700もツールフリー設計を採用していたが、Endeavor Pro5000では、いくつかの改良が施されており、より便利に進化している。
左側面のサイドパネルやフロントパネル、ケースファンなどは、すべてドライバーなどを使わずに着脱できるようになっている。3.5インチシャドウベイは、サイドパネルやフロントパネルを外さずに、手前に引き出せるようになっており、フロントアクセスベイと名付けられている。フロントアクセスベイを引き出したのち、さらにるHDDケースを引き出すことで、HDDやSSDの増設や交換が可能だ。Endeavor Pro4700のHDDケースは、3.5インチHDDにしか対応していなかったが、Endeavor Pro5000では、3.5インチHDDだけでなく、2.5インチSSDや2.5インチHDDにも対応するようになった。3.5インチドライブ固定用と2.5インチドライブ固定用のネジがHDDケースに付属しているのも便利だ。
フロントアクセスベイは、セキュリティを確保するために、鍵によってロックできるが、Endeavor Pro4700では鍵穴が剥き出しだったのに対し、Endeavor Pro5000では、鍵穴が3.5インチベイのダミーカバー内にあるので、セキュリティ性が向上した。また、3.5インチベイを固定するパーツも改良され、マルチカードリーダなどの奥行きが短いデバイスも固定できるようになっている。
搭載しているベイは、3.5インチシャドウベイ×4、3.5インチベイ×1、5インチベイ×2の合計7つで、ミドルタワーケースとしては十分な数だ。拡張スロットは、PCI Express x16が2基(ただし、ビデオカードが装着されているので空きスロットは1基)、PCI Express x4が1基、PCI Express x1が1基、PCIが3基で、こちらも不満はない。すべての拡張スロットで、フルサイズ(カード長312mm)の拡張カードを装着できることも評価できる。拡張カードを押さえるパーツも備えており、移動などの際に振動で拡張カードが緩んでしまう心配もない。電源ユニットの容量は670Wで、ストレージをフルに搭載しても余裕がある。
左側面のサイドパネルは、青いプラスチック製パーツでロックされている | 【動画】手でロックパーツをスライドさせるだけで、左側面のサイドパネルを外せる | サイドパネルを外したところ。内部の空間もゆったりしている |
背面のケースファンもドライバーなどを使わずに、着脱できるようになっている | ケースファンとしてミネベア製の120mmファンを搭載する |
4基の3.5インチシャドウベイ(フロントアクセスベイ)は、サイドパネルなどを外さずに、手前に引き出すことができる。Port0とPort1はSATA 3.0対応、Port2とPort3はSATA 2.0対応である | 【動画】フロントアクセスベイを引き出しているところ | 【動画】さらに青いプラスチック製パーツに指をかけて、上下のレバーを押しながら手前に引き出すと、HDDケースを取り外せる |
シャドウベイの内部。SATAコネクタと電源コネクタが一体化されており、ドライブトレイを挿しこむだけで接続される | HDDケースは、3.5インチ/2.5インチ両対応になっている |
SSDなどの2.5インチドライブは裏側からネジで固定する | 2.5インチドライブ固定用ネジと3.5インチドライブ固定用ネジが付属しているので便利 |
【動画】5インチベイのストッパーを外して、光学ドライブを取り外しているところ | 拡張カード押さえのステーもツールフリー設計になっており、上下のストッパーを動かすことで、取り外せる |
【動画】拡張カード押さえのステーを取り外しているところ | 拡張カード押さえのステーには、拡張カード2枚分の拡張カード押さえが付属している |
●Core i7とSSD搭載で非常に高いパフォーマンスを実現
Endeavor Pro5000は、最新プラットフォームを採用し、高い性能を実現していることが魅力だ。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。もちろん、BTO構成によってパフォーマンスは大きく異なるので、以下の値は今回の試用機での結果ということに注意してほしい。利用したベンチマークプログラムは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」で、比較用として富士通「ESPRIMO FH99/CM」の値も掲載した。ESPIRMO FH99/CMは、ノートPC用CPUを搭載した液晶一体型PCであり、Endeavor Pro5000とはカテゴリがやや異なるが、参考にはなるだろう。
Endeavor Pro5000 | ESPRIMO FH99/CM | |
---|---|---|
CPU | Core i7-2600 (3.4GHz) | Core i7-2630QM (2GHz) |
ビデオチップ | GeForce GTX 460 | CPU内蔵コア |
PCMark05 | ||
PCMarks | N/A | 8264 |
CPU Score | 12666 | 9378 |
Memory Score | 11736 | 9370 |
Graphics Score | 20419 | 5388 |
HDD Score | 48877 | 6801 |
PCMark Vantage 64bit | ||
PCMark Score | 19202 | 7353 |
Memories Score | 12735 | 4606 |
TV and Movie Score | 7317 | 5811 |
Gaming Score | 21329 | 5894 |
Music Score | 19655 | 7018 |
Communications Score | 18521 | 6956 |
Productivity Score | 20149 | 6040 |
HDD Score | 38469 | 4541 |
PCMark Vantage 32bit | ||
PCMark Score | 17407 | 6936 |
Memories Score | 12008 | 4440 |
TV and Movie Score | 7237 | 5775 |
Gaming Score | 18770 | 5169 |
Music Score | 18964 | 6888 |
Communications Score | 18140 | 6251 |
Productivity Score | 18192 | 5501 |
HDD Score | 39085 | 4372 |
3DMark03 | ||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 56824 | 10211 |
CPU Score | 3486 | 1567 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||
HIGH | 11092 | 3921 |
LOW | 12808 | 5477 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||
DP | 100 | 99.97 |
HP | 99.97 | 99.97 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 |
LLP | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 5 | 8 |
HP(CPU負荷) | 2 | 4 |
SP/LP(CPU負荷) | 1 | 3 |
LLP(CPU負荷) | 1 | 2 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||
シーケンシャルリード | 370.3MB/s | 98.77MB/s |
シーケンシャルライト | 205.7MB/s | 96.85MB/s |
512Kランダムリード | 316.0MB/s | 42.88MB/s |
512Kランダムライト | 198.9MB/s | 114.0MB/s |
4Kランダムリード | 20.46MB/s | 0.785MB/s |
4Kランダムライト | 43.15MB/s | 1.196MB/s |
PCMark Vantage 64bitの総合スコアは19202と非常に高く、ESPRIMO FH99/CMの3倍近い。Endeavor Pro5000は、CPU性能も高いが、HDD性能の差はそれ以上に大きい。SSDの中でも、高速なIntel 510シリーズをシステムドライブとして搭載していることが効いているのであろう。Windowsの起動も高速で、操作に対するレスポンスもよく、非常に快適だ。
また、今回の試用機には、ミドルレンジ上位に位置するGeForce GTX 460搭載ビデオカードが搭載されていたので、3D描画性能も高い。そこで、バイオハザード5とロストプラネット2のベンチマークテストを実行してみた。バイオハザード5(DirectX 10モード、ベンチマークテストB)の結果は、1,280×720ドットモードが134.5fps、1.920×1,080ドットモードが95.4fps、ロストプラネット2(DirectX 11モード、テストタイプB)の結果は、1,280×720ドットモードが46.5fps、1,920×1,080ドットモードが32.4fpsとなった。最新の3Dゲームでも快適に遊べるパフォーマンスを持っているといえるだろう。
●さまざまな用途に対応でき、アップグレードもしやすいEndeavor Pro5000は、高い拡張性とメンテナンス性を誇るミドルタワーPCであり、中上級者や業務用途などのプロユースの厳しい要求にも十分に応えられる製品だ。最小構成での価格は106,680円となっており、ケースの完成度や電源ユニットの容量などを考えると、コストパフォーマンスも優秀だ。HDDも最大4台搭載できるため、HD動画などの編集用途にも向いている。CPUやビデオカードのアップグレードもしやすいので、第一線のマシンとして末永く使い続けられるPCが欲しいという人にもお勧めだ。
(2011年 5月 23日)
[Text by 石井 英男]