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東芝「dynabook UX53/D」は斜め落下にも耐える堅牢13.3型薄型モバイルノート

dynabook UX53/D

 東芝クライアントソリューション株式会社は、モバイルノート新モデル「dynabook UX53/D」を発売した。

 タッチ操作に対応しない、薄型軽量筐体のUltrabookに位置づけられるクラムシェルノートPCで、優れた堅牢性も兼ね備えることで、ビジネスモバイルとしての利用をメインターゲットとしている。価格はオープンプライスで、実売価格は17万円前後。

米国国防総省調達基準「MIL-STD-810G」準拠の堅牢性テストをクリア

 dynabook UX53/D(以下、UX53/D)の最大の特徴となるのが、優れた堅牢性だ。モバイルノートでは、堅牢性を特徴とする製品も少なくないが、UX53/Dは米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠した堅牢性テストをクリアするという、競合製品を圧倒するような頑健な作りを実現している。

 UX53/Dがクリアしている堅牢性テストは、落下、粉塵、高度、高温、低温、温度変化、湿度、振動、衝撃、太陽光照射の10種類。しかも落下テストでは、全26方向で76cmの高さから落下させて正常動作を確認するというように、いずれのテストも一般的な堅牢性テストよりも非常に厳しい内容となっている(詳しいテスト内容はこちらのリンクにあるとおり)。

 また、UX53/Dがクリアしている堅牢性テストはこれだけではない。このほかにも、100kgf面加圧テストや、キーボード面への30cc防滴テストもクリアし、長期間の信頼性を確認する「高加速寿命(HALT)試験」も実施。さらに、第三者機関であるドイツの認証機関TÜV Rheinlandによる耐久テストもクリアしており、自社テストだけにとどまらず、その優れた堅牢性が確認されているという。

 こうした堅牢性は、筐体の素材として軽さと強度を兼ね備えるマグネシウム合金を採用するとともに、天板やパームレスト部の内部にひねりなどへの強度を高めるハニカム状のリブ”ハニカムリブ構造”の採用などによって実現しているとのこと。実際に、液晶部や本体をやや強い力でひねってみても、強度の弱さを感じることはほとんどなく、非常に安心感が高い。これなら毎日安心して持ち歩けるはずだ。

 本体サイズは、約316×227×15.9mm(幅×奥行き×高さ)。近年のモバイルノートは、液晶ベゼル幅を極限まで狭めてフットプリントを小型化した製品が増えており、それらと比べるとベゼル幅が広く、フットプリントもやや大きいという印象だ。

 ただ、このサイズも堅牢性を考慮してのもので、落下時のトラブルでは、外から加わる衝撃で筐体がへこみ、内部基板などに衝撃が直接伝わって破損し、起動不能になる場合がほとんどなのだという。

 そこでUX53/Dでは、あえて筐体サイズに余裕を持たせることで緩衝領域を確保し、落下などで筐体に衝撃が加わっても、内部基板などに衝撃が直接伝わりにくくしている。そういった意味での筐体サイズということなら納得だ。

 重量は公称約1,090g、実測では1,069gだった。13.3型液晶搭載モバイルノートで1kgを切る軽さの製品がかなり増えているため、特別軽いとは感じないものの、1kg少々という重量なら、モバイルノートとして十分納得できる軽さと言える。

 本体デザインは非常にシンプルで、dynabookらしさが伝わってくる。また天板やパームレスト部はヘアライン処理が施されて、質感も優れる。ただ、全体的にはやや地味な印象で、いい意味でも悪い意味でも、ビジネスモバイルらしいデザインと感じた。

本体正面。液晶ベゼルが狭められず、やや大きな筐体となっているのは堅牢性を高めるためのもの
天板部分。デザインはシンプルだが、ヘアライン処理で質感は優れる。フットプリントは約316×227mm(幅×奥行き)
本体正面
左側面。高さは15.9mmと十分な薄さとなっている
背面
右側面
底面
重量は実測で1,069gだった

13.3型フルHD液晶を搭載

 ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を搭載している。パネルの種類はIPS。タッチパネル非搭載のためタッチ操作には対応しない。視野角は十分に広く、斜めから見ても色合いや明るさの変化はほとんど感じられない。

 パネルの表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みは非常に少ないため、文字入力が中心の作業も快適だ。このほか、高輝度/高色純度といった特徴も謳われているが、具体的な表示品質の指標が公表されていない点は少々残念だ。

 ただ、発色は十分に鮮やかで、デジタルカメラで撮影した写真なども鮮やかに表示してくれる。この鮮やかな発色は、東芝が液晶TVなどで培ってきた技術をベースとした色補正技術を採用することにより実現しているという。

 具体的には、搭載する液晶パネルの特性に合わせて発色パラメータを用意し、補正を施すという手法を採用しており、個体ごとにキャリブレーションを行なうよりも低コストで表示品質を高められるとのこと。UX53/Dはビジネスモバイルをメインターゲットとしているため、プロレベルの表示品質が求められることはないが、こういった配慮によって表示品質が高められている点は好印象だ。

1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を搭載
液晶面は140度ほどまで開く
IPS方式で視野角が広く、独自の発色パラメータで表示補正を行なうことにより、鮮やかかつ自然な色合いの表示を実現

フルピッチ、ストローク1.5mmのキーボードを搭載

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを搭載している。仕様的には、ほかのdynabookシリーズに搭載されているキーボードに近く、無理な配列も見られない。

 主要キーのキーピッチは約19mmのフルピッチで、キーストロークも1.5mmと、薄型モバイルノートとしてはなかなかの深さを確保。タッチは標準的で、クリック感もしっかり感じられる。また、見た目にはほとんどわからないが、キートップに約0.2mmの凹みが施されており、指へのフィット感が高められている。こういった配慮によって、タッチタイプも快適に行なえる。

 ただし、Enterキー付近の一部キーのピッチがやや狭くなっている点は少々気になる部分。本体サイズにはまだ多少余裕があるため、できればすべてのキーでピッチを統一してもらいたかった。

 タッチパッドはクリックボタン一体型で、複数の指を使ったジェスチャー操作にも対応しており、利便性は申し分ない。また、タッチパッド左上には、Windows Hello対応の指紋認証センサーを搭載している。これにより、高いセキュリティ性を確保しながら、ワンタッチでのWindowsログオンを実現でき、利便性が高められている。

 毎日持ち歩くモバイルノートでは、優れたセキュリティの確保が不可欠だが、その点もUX53/Dなら問題がないだろう。

キーの間が開いた、アイソレーションタイプのキーボードを搭載。無理な配列がなく、扱いやすい
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保
ストロークは約1.5mmと深く、クリック感もしっかり。また、キートップには約0.2mmの凹みが用意されており、指にフィットして軽快にタイピングできる
Enterキー付近の一部キーはピッチがやや狭くなっている
タッチパッドはクリックボタン一体型。ジェスチャー操作にも対応し、操作性は申し分ない
タッチパッド左上には、Windows Hello対応の指紋認証センサーを搭載している

スペックは必要十分も、メモリは標準4GBと少ない

 CPUはCore i5-7200Uを採用しており、ビジネスモバイルとして十分な性能を発揮する。それに対し、メモリはDDR4-2133が標準で4GBと、やや心もとない容量となっている。実際に利用した場面でも、容量の大きな画像を開いたりする場合などに、メモリ搭載量の少なさを起因とする動作の重さを感じることがあった。

 ただ、UX53/Dでは標準のメモリ搭載量こそ4GBと少ないもの、最大搭載量は16GBとなっており、内部基盤にはメモリ搭載用SO-DIMMスロットを2本用意。そして、「東芝PCあんしんサポート」において、メモリの交換や増設が行なえるという。その場合、自分で購入したメモリモジュールを持ち込んで装着してもらうことも可能とのことだ。

 標準の容量が少ないことと、自分でメモリ増設を行なえない点は残念だが、購入後に増設できるという点は歓迎したい。

 内蔵ストレージは、128GBのSATA SSD(M.2タイプ)を採用。容量的には最低限という印象だが、クラウドの活用などで対処可能であり、大きな問題はないだろう。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.1を標準搭載。カメラは、液晶上部に約92万画素のWebカメラを搭載している。

 側面のポート類は、左側面にUSB 3.0×1とオーディオジャック、右側面にHDMI出力、Thunderbolt 3/USB 3.1 Type-Cポート×2、microSDカードスロットをそれぞれ用意している。

 このうち、Thunderbolt 3ポートは双方ともUSB PD(Power Delivery)をサポートしており、付属ACアダプタは、どちらのポートに接続しても給電および内蔵バッテリの充電が可能だ。

 ところで、UX53/Dではサウンド面も特徴となっている。本体底面にharman/cardonブランドのステレオスピーカーを搭載するとともに、大音量でも音割れなく高音質サウンドを再生できるように調整されている。

 近年では、プレゼンでの動画利用が増えていたり、遠隔地とのビデオ会議も日常的に行なわれており、ビジネスシーンで利用するモバイルノートでも、優れたサウンド性能が求められることが多くなっている。そういった意味で、高音質スピーカーを搭載する点も、競合製品に対する優位点となるだろう。

左側面には、USB 3.0ポート×1とオーディオジャックを備える
右側面には、HDMI出力、Thunderbolt 3/USB 3.1対応USB Type-Cポート×2、microSDカードスロットを備える。Thunderbolt 3ポートは双方ともUSB PDをサポート
液晶ディスプレイ上部には、約92万画素のWebカメラを搭載
本体底面にはharman/cardonブランドのステレオスピーカーを搭載。音量を上げても音割れせず、高品質なサウンド再生が可能
付属ACアダプタは小型で、携帯性に優れる
ACアダプタのコネクタは、本体に2つあるThunderbolt 3ポートのどちらに接続しても、給電および内蔵バッテリの充電が可能
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測239.5gだった

実測で約13時間弱の長時間駆動を確認

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1271」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3732」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、日本マイクロソフトの「Surface Pro 2017年モデル」の結果も加えてある。

製品名dynabook UX53/DSurface Pro 2017年モデル
CPUCore i5-72000U(2.5~3.1GHz)Core i7-7660U(2.5~4GHz)
チップセット
GPUIntel HD Graphics 620Intel Iris Plus Graphics 640
メモリDDR4-2133 SDRAM 4GBLPDDR3 SDRAM 16GB
ストレージ128GB SSD(SATA)512GB SSD(NVMe PCIe)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Pro 64bit
PCMark 10 v1.0.1271PCMark 10 v1.0.1238
PCMark 10 Score2,7933,530
Essentials5,3516,715
App Start-up Score5,4889,160
Video Conferencing Score5,3565,298
Web Browsing Score5,2156,241
Productivity5,1856,210
Spreadsheets Score5,9147,591
Writing Score4,5465,081
Digital Content Creation2,1322,864
Photo Editing Score2,5873,541
Rendering and Visualization Score1,3631,741
Video Editting Score2,7493,811
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.03,3063,373
Creative accelarated 3.04,1854,897
Work accelarated 2.04,4794,342
Storage4,9665,008
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)32.9965.46
CPU327417
CPU (Single Core)127157
3DMark Professional Edition v2.3.3732
Cloud Gate4,9658,642
Graphics Score5,80212,877
Physics Score3,3004,001
Sky Diver3,0565,103
Graphics Score2,9895,112
Physics Score3,8875,326
Combined score2,6544,743
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)1,4254,466
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)1,0703,244

 結果を見ると、搭載CPUやメモリ容量に相応するスコアが得られていることがわかる。上位CPU搭載のSurface Proに対して、ほとんどのスコアが劣るのは当然だが、これだけのスコアが得られる性能があれば、ビジネスモバイルで利用されるアプリケーションの多くを快適に利用できるはずだ。

 とはいえ、やはりメモリ搭載量の少なさを起因とする動作の重さは避けられない。また、3D描画性能がかなり低くなっているのも、標準仕様でのメモリ搭載量の少なさに加え、メモリがシングルチャネル仕様となっているために、内蔵グラフィックス機能の性能を最大限に引き出せていない点が大きな原因だろう。

 今回はメモリを増設した状態での検証が行なえなかったが、メモリを増設してデュアルチャネル動作にした場合には、スコアが大きく改善すると思われる。そういう意味でも、購入後にはメモリの増設を考慮したい。

 続いて、バッテリ駆動時間だ。

 UX53/Dの公称バッテリ駆動時間は約17時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver.2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約12時間54分と、13時間に迫る長時間の駆動を確認した。

 バックライト輝度を50%と厳しめの条件で計測してこの結果なら、通常利用でも十分に10時間を大きく超える駆動が可能だろう。モバイルノートとして、この長時間駆動は大きな魅力となるはずだ。

タッチ不要のビジネスモバイルを探している人に勧め

 UX53/Dの大きな魅力となるのが、MIL-STD-810G準拠の非常に優れた堅牢性を備えている部分や、公称17時間、実測でも13時間近い長時間のバッテリ駆動を実現する点。こういった特徴は、安心して持ち歩けるモバイルPCとして競合製品に対する大きな優位点となるだろう。

 ただし、メモリ搭載量が標準で4GBと少ない点はかなり残念な部分。購入後にメモリを増設する手段が用意されてはいるが、やはり最低でも標準で8GBは搭載してもらいたかった。また、本体デザインがやや地味という点も、やや魅力を損なっているように感じる。

 それでも、薄型軽量のビジネスモバイルとして、非常に高い完成度を誇っているのは間違いない。液晶にタッチパネルを搭載しない点も、文字入力が中心の場合にはそれほど気にならないだろう。そのため、毎日持ち歩いて利用する、タッチ操作不要のビジネスモバイルを探している人にお勧めしたい。