Hothotレビュー
CPU/dGPUが性能アップ、タイピング音もマイルド化したMacBook Pro 15インチ
2017年7月1日 06:00
Appleの開発者向けカンファレンス「WWDC 2017」で6月6日に発表された新型「MacBook Pro」が、6月7日から販売開始されている。
MacBook Proは2016年モデルにおいて、タッチパネルディスプレイ型ファンクションキー「Touch Bar」、指紋認証センサー一体型電源ボタン「Touch ID」を搭載するフルモデルチェンジが実施された。今回のマイナーチェンジでは、15インチMacBook Pro、13インチMacBook Pro、12インチMacBookの全モデルに第7世代(Kaby Lake)プロセッサが採用されている。
さて、今回Appleから2.9GHz駆動のCore i7を搭載する15インチMacBook Proを借用した。Apple Storeで購入するさいには3.1GHzのCore i7を選択可能だが、店頭モデルとしては最上位モデルとなる。
というわけで、このレビューでは、第7世代(Kaby Lake)のCore i7や上位dGPUにアップグレードされたことで、どのくらい性能が上がったのか、また細かな変更点についてレビューしていこう。
カタログスペック的にはCPUとdGPUのみ変更、メモリ(RAM)32GBは選択不可
カタログスペックにおける、MacBook Proの2016年モデルと2017年モデルの違いはCPUとdGPUのみ。2016年モデルは第6世代(Skylake)プロセッサとRadeon Pro 400番台のdGPU、2017年モデルは第7世代(Kaby Lake)プロセッサとRadeon Pro 500番台のdGPUを搭載している。
メモリはLPDDR3-2133 SDRAMを16GB、SSDはPCIe接続の256GB/512GB/1TB/2TBのSSDが用意されている点はまったく同じ。「iMac Pro」では最大128GB、「iMac」でも最大32GBのメモリを搭載できる点を考えると、プロフェッショナル向けのMacBook Proの最大メモリ容量が16GBに留まっているのは、正直不満だ。
それ以外のスペックも前モデルと同じだが、おさらいしておこう。ディスプレイは15.4型IPS液晶パネルで、解像度は2,880×1,800ドット(220dpi)、輝度は500cd/平方m、色域はDCI-P3。
インターフェイスは、充電、DisplayPort、Thunderbolt 3(最大40Gbps)、USB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)に対応するUSB Type-Cポートを4基備える。
サイズは349.3×240.7×15.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.83kg。本体カラーはシルバーとスペースグレイの2色が用意されている。筐体形状はまったく変更がない。
なお、MacBook Proの製品公式サイトにもプレスリリースにもまったく記載がないが、キーボードには改良が加えられているようだ。この点については章を分けて解説しよう。
モデル | MacBook Pro15インチ(2017) | MacBook Pro15インチ(2016) |
---|---|---|
ディスプレイサイズ | 15.4インチ | |
解像度 | 2,880×1,800ドット | |
ドット密度 | 220dpi | |
輝度 | 500cd/平方m | |
色域 | DCI-P3 | |
Touch Bar、Touch ID | 搭載 | |
価格 | 258,800円~ | 238,800円~ |
CPU | 第7世代Core i7(2.8/3.8GHz) Core i7(2.9/3.9GHz) Core i7(3.1/4.1GHz) | 第6世代Core i7(2.6/3.5GHz) Core i7(2.7/3.6GHz) Core i7(2.9/3.8GHz) |
iGPU | Intel HD Graphics 630 | Intel HD Graphics 530 |
dGPU | Radeon Pro 555(2GB) Radeon Pro 560(4GB) | Radeon Pro 450(2GB) Radeon Pro 455(2GB) Radeon Pro 460(4GB) |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | |
ストレージ | PCIe SSD 256GB/512GB/1TB/2TB | |
サイズ | 349.3×240.7×15.5mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 1.83kg | |
連続動作時間 | 最大10時間のワイヤレスインターネット閲覧、最大10時間のiTunesムービー再生、最大30日のスタンバイ時間 | |
バッテリー | 76Whリチウムポリマー |
キーボードがひっそり変更、タイピング音が改善、刻印も一部改訂
前述のとおり、MacBook Proの製品公式サイトでも、発表時のプレスリリースでも触れられていないが、MacBook Proの2017年モデルはキーボードに改良が加えられているようだ。
ぱっと見ですぐにわかるのはキートップの刻印。tab、control、shift、caps、option、return、deleteキーの刻印が、機能名ではなくシンボルに変更されている。ちなみに英語(US)キーボードは変更されておらず、第2世代のバタフライ構造を採用した12インチMacBookも刻印は変わっていない。
ただし、ワイヤレス外付けキーボードの「Magic Keyboard(テンキー付き)- 日本語(JIS)」やiPad Pro用のキーボードカバー「iPad Pro用Smart Keyboard」は、MacBook Proの2017年モデルと同様、上で挙げたキーが機能名ではなくシンボルで刻印されているので、日本語(JIS)キーボードは徐々に新しい刻印に統一されていく可能性が高い。
さて、刻印より大きな変更点がタイピング音の改善だ。
MacBookで従来のシザー構造ではなく、バタフライ構造のキーボードを初めて採用したのが12インチMacBook初代機。2016年に発売されたMacBook Proには、各キー下のドームスイッチを最適化し、優れた反応を返すように改良された第2世代のバタフライ構造キーボードが採用され、製品公式サイトには2017年モデルにも、同じ世代のバタフライ構造キーボードが採用されていると記載されている。
しかし、2017年モデルと2016年モデルのキーボードを打ち比べてみると、明らかにタイピング音がマイルドになっている。また打鍵感もわずかながら変化しているように思う。その差は個体差では説明がつかないレベルで、異なる日に目隠ししてそれぞれのキーボードをタイプしても、区別できるほどの違いだ。
2016年モデルの15インチMacBook Proを購入した筆者は、さすがに2017年モデルへの買い換えは予定していない。しかし、もし2017年モデルのキーボードに換装できるなら、2万円程度なら喜んで払う気になるぐらい、大きな進化だと感じている。
なお、今回MacBook Proの2017年モデルと2016年モデルでタイピング音が変化していることを確認したが、比較検証に使用した2016年モデルは筆者が発売直後に購入した初期型モデルだ。2016年モデルのなかでも、初期型と最終型の間でキーボードに関してなんらかの改善が実施された可能性もある。そのため、2016年モデルの最終型と2017年モデルの間では、タイピング音には変化がないことも考えられることを留意いただきたい。
プロフェッショナル仕様のディスプレイ、余裕あるサウンド設計は健在
ディスプレイのスペックは2017年モデルと2016年モデルでまったく変わらない。15.4型IPS液晶パネルの解像度は2,880×1,800ドット(220dpi)、輝度は500cd/平方m、色域はDCI-P3。輝度600cd/平方mの新型iPad Proに抜かれはしたが、写真現像にも十分活用できるプロフェッショナルスペックだ。
ちなみに2017年モデルと2016年モデルで発色が異なるか比較してみたが、筆者が見比べてみたかぎりでは、2016年モデルがほんのわずか淡く発色されているように感じられた。もともと微妙に発色が異なっていることも考えられるが、1年間使用した経年劣化で、ほんのわずかに輝度、コントラスト、階調、色域が変化した可能性のほうが高い。
サウンド面についても2017年モデルと2016年モデルで聞き比べてみたが、とくに差は感じられなかった。2016年モデル以降のMacBook Proは、従来モデルと比べてダイナミックレンジが2倍、音量が最大58%、低音が2.5倍大きくなっている。
筆者は2016年モデルのMacBook Pro購入以来、ノートPCのサウンド面をレビューするさいのリファレンス機として使用しているが、これまで本機を上回るサウンド機能を備えたノートPCとは出会えていない。MacBook Proにも、いつかはサウンド機能を強化する時期は来るが、現時点では必要ないということだ。
Touch Bar、Touch ID搭載モデルを1年使ってきて……
Touch Bar、Touch IDについてもとくに変更はないので、2016年モデルを約7カ月間使ってきた筆者の感想をお伝えしよう。
【お詫びと訂正】初出時に、「2016年モデルを1年間使ってきた筆者の感想」としておりましたが、約7カ月の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。
鳴り物入りで登場し、現在のMacBook Proの製品公式ページでも冒頭で大きくアピールされている、タッチパネルディスプレイ型ファンクションキー「Touch Bar」は、多くのユーザーに受け入れられているとは言えない状況だ。
「Premiere」や「Photoshop」、「Microsoft Office」、「DaVinci Resolve」、「Logic Pro X」などでTouch Barへの対応が進んでおり、筆者個人も「Premiere」、「Photoshop」、「Microsoft Office」を日常的に利用しているが、Touch Barはほとんど使っていない。
タッチタイピングで操作している筆者にとって、キーボード面を見るのは大きなタイムロスになるからだ。
目を画面からはずさなければ使えないTouch Barをユーザーに活用させるためには、アプリケーションのどんな機能でも割り当てられるようなカスタマイズ機能を搭載するなど、OSレベルでの抜本的なてこ入れが必要だと筆者は考えている。
この秋登場する「macOS High Sierra」にはそのようなカスタマイズ機能はないようだが、Touch Barの有効活用は、MacBook Proにとって喫緊の課題といえる。
一方、指紋認証センサー一体型電源ボタン「Touch ID」は非常に重宝している。そもそも筆者が現在日常的に使用しているPC、タブレット、スマートフォンで、生体認証機能を搭載していない端末はごくわずかだ。
そしてもう、生体認証機能を搭載しない情報端末を今後購入する予定はない。「MacBook Air」はともかく、12インチMacBookには早急にTouch IDを搭載するべきだし、iMacやiMac Pro、「Mac Pro」のためにも、Touch IDを搭載したワイヤレスキーボードを一刻も早く発売するべきだと考えている。
CPU、dGPU更新による処理スピードの向上は微増
最後にベンチマークスコアを見てみよう。
今回はMacBook Proの2017年モデルと2016年モデルを比較している。ただし2016年モデルはApple Storeでカスタマイズした最上位構成だが、2017年モデルは店頭で購入可能な標準構成モデルの上位モデルだ。
2017年モデルはApple Storeで購入すればCore i7を2.9GHzから3.1GHzにアップグレード可能なので、最上位モデル対決とはなっていないことをお断りしておく。
使用したベンチマークプログラムは下記のとおりだ。
- CPU、OpenGLのベンチマーク「CINEBENCH R15」
- CPU、OpenCLのベンチマーク「Geekbench 4.0.1」
- 3Dベンチマーク「GFXBench OpenGL」
- 3Dベンチマーク「GFXBench Metal」
- ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」
- ストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark 1.0.2」
- 「Adobe Photoshop Lightroom CC」RAW画像の現像時間を計測
- 「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画の書き出し時間を計測
- 「iMovie」フルHD動画の書き出し時間を計測
- iTunesムービーを連続再生した動作時間
下記が検証機の仕様とその結果になる。
モデル | 15インチMacBook Pro(2017) | 15インチMacBook Pro(2016) |
---|---|---|
CPU | Core i7-7820HQ(2.9/3.9GHz) | Core i7-6920HQ(2.9/3.80GHz) |
GPU | Radeon Pro 560(4GB) | Radeon Pro 460(4GB) |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | |
ストレージ | 512GB PCIe SSD | 2TB PCIe SSD |
TDP | 45W | |
OS | macOS Sierra バージョン10.12.5 |
モデル | 15インチMacBook Pro(2017) | 15インチMacBook Pro(2016) |
---|---|---|
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 92.35 fps | 85.35 fps |
CPU | 763 cb | 714 cb |
CPU(Single Core) | 159 cb | 152 cb |
Geekbench 4.0.1 | ||
32-bit Single-Core Score | 4,001 | 3,872 |
32-bit Multi-Core Score | 14,079 | 13,715 |
64-bit Single-Core Score | 4,737 | 4,563 |
64-bit Multi-Core Score | 15,865 | 15,402 |
OpenCL(iGPU) | 21,058 | 19,614 |
OpenCL(dGPU) | 49,920 | 49,779 |
Metal(iGPU) | 19,374 | 18,057 |
Metal(dGPU) | 29,280 | 32,286 |
GFXBench OpenGL | ||
マンハッタン | 2,508.5 Frames | 1,842.4 Frames |
1080p マンハッタンオフスクリーン | 7,036.6 Frames | 7,124.5 Frames |
ティラノサウルス レックス | 3,351.5 Frames | 3,346.7 Frames |
1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン | 14,391 Frames | 14,018 Frames |
GFXBench Metal | ||
マンハッタン | 3,347.19 Frames | 3,295.98 Frames |
1080p マンハッタンオフスクリーン | 11,088.5 Frames | 10,785 Frames |
ティラノサウルス レックス | 6,406.63 Frames | 6,405.86 Frames |
1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン | 18,999.9 Frames | 18,464.4 Frames |
Blackmagic Disk Speed Test(単位:MB/s) | ||
WRITE 1回目 | 1,903 | 1,882.1 |
WRITE 2回目 | 1,857.5 | 1,894.1 |
WRITE 3回目 | 1,893.8 | 1,875.8 |
WRITE 4回目 | 1,895.8 | 1,913.2 |
WRITE 5回目 | 1,869.2 | 1,904.9 |
WRITE 平均 | 1,883.86 | 1,894.02 |
READ 1回目 | 2,279.2 | 2,455.9 |
READ 2回目 | 2,131 | 2,429.5 |
READ 3回目 | 2,252.3 | 2,388.8 |
READ 4回目 | 2,362.7 | 2,423.6 |
READ 5回目 | 2,022.1 | 2,436.6 |
READ 平均 | 2,209.46 | 2,426.88 |
AmorphousDiskMark 1.0.2(単位: MB/s) | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 3,245 | 3,350 |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1,526 | 1,631 |
4K Q32TI ランダムリード | 661.7 | 865.2 |
4K Q32TI ランダムライト | 27.02 | 28.39 |
シーケンシャルリード | 1,410 | 1,852 |
シーケンシャルライト | 1,094 | 1,119 |
4K ランダムリード | 54.09 | 57.45 |
4K ランダムライト | 29.28 | 30.06 |
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912×3,264ドット、自動階調 | 1分32秒42 | 1分35秒31 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps(OpenCL) | 3分59秒99 | 4分10秒68 |
1,920×1,080ドット、30fps(Metal) | 4分1秒24 | 4分12秒70 |
iMovieで実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 2分7秒36 | 2分9秒22 |
iTunesムービーを連続再生した動作時間 | ||
ディスプレイの明るさ6/16 | 11時間8分51秒 | 10時間33分33秒 |
結果はおおむね順当なものだ。2016年モデルが搭載している「Core i7-6920HQ」と2017年モデルが搭載している「Core i7-7820HQ」は、ベース動作周波数は2.9GHzと同じで、Turbo Boost時の周波数も0.1GHzしか差はない。
Turbo Boost時の周波数を比較すると2.6%の向上に留まっているのに、「CINEBENCH R15」で6.8%、「Geekcench 4」の64-bit Multi-Core Scoreで3%スコアが向上しているのは、むしろできすぎな結果だ。
一方、iTunesムービーを連続再生したさいの動作時間において、カタログスペック値の10時間を大きく上回る11時間8分51秒動画を再生し続けることができたが、これはAppleが計測するときよりもディスプレイを暗く設定しているためだ。Appleが12/16の輝度でテストしているところ、今回は6/16の輝度で計測している。
しかし、個人的には室内なら6/16でも十分に使用に耐える明るさだと考えている。ちなみに第7世代(Kaby Lake)のプロセッサは第6世代(Skylake)より消費電力が改善されているが、今回の2017年モデルと2016年モデルの動作時間の差は、バッテリの経年劣化も影響しているので、判断は保留したい。
なお、高負荷時の発熱をサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」でチェックしてみたが、2017年モデルの最大温度は44.6℃、2016年モデルの最大温度は42.5℃という結果になった。今回の検証機では2017年モデルのほうがTurbo Boost時の周波数が0.1GHz高いので、発熱量に差が出た可能性がある。
処理性能は微増ながら使い勝手は進化、MacBook Proはほしいときが買いどき!
2017年モデルはCPU、dGPUがアップグレードされているが、処理性能は微増に留まっている。実際、製品公式サイトでも従来モデルとの性能比較は掲載されていないので、Appleにとってもアピールポイントではないという証拠だ。
しかし、本製品はCPU、dGPUの更新に留まらず、ひっそりとキーボードを改良し、着実に使い勝手を向上させてきている。
当然だが、2016年モデルを購入した人は今回の2017年モデルに買い換える必要はない。MacBook Proのマイナーバージョンアップに大きな進化はないからだ。
しかしそれ以外の方にとっては、いつでもMacBook Proの買いどきだと言っても過言ではない。MacBook Proは陳腐化を心配せずに、いつでも必要なときに購入できるプロフェッショナル向けモデルだからだ。