Hothotレビュー
Apple「21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデル」
~21.5型ディスプレイ一体型モデルにdGPUを搭載
2017年7月5日 06:00
アップルは、開発者向けカンファレンス「WWDC2017」で6月6日に発表した新型iMacを、6月7日より販売開始した。
今回の新型iMac最大の特徴は、21.5インチモデルにもdGPU(外部GPU)が搭載されたこと。写真現像や動画編集などのクリエイティブワークや、3Dゲームなどを快適に利用できることが期待できる。
そこで今回は21.5インチモデルの最上位モデルを借用し、レビューをお届けしよう。
第7世代(Kaby Lake)のプロセッサを採用、搭載可能メモリ容量も2倍に
標準構成として用意されているのは、21.5インチiMacが1機種、21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルが2機種、27インチiMac Retina 5Kディスプレイモデルが3機種で、すべて第7世代(Kaby Lake)のCore i5プロセッサが採用されている。
標準メモリ容量は全機種8GBだが、21.5インチの上位モデルは最大32GB、27インチの中位・上位モデルは最大64GBにApple Store購入時にカスタマイズ可能になった(27インチモデルはユーザーがメモリを交換可能)。
また、21.5インチの上位モデルと27インチモデルには、ストレージにSSDとHDDのハイブリッドドライブ「Fusion Drive」が標準搭載され、Radeon Pro 500番台のdGPUが採用されている。2017年モデル最大の売りは、「コンパクトでパワフルなiMacがほしい」というユーザーの声に応えた点だ。
ディスプレイもアップグレードされている。Retina 4Kディスプレイモデル、Retina 5Kディスプレイモデルは、従来モデルより43%明るい輝度500cd/平方mのディスプレイパネルを採用。MacBook Proと輝度が並んだことで、30-bitカラー(10億色以上)のピクセル深度を備えるiMacは、「Mac史上最高のRetinaディスプレイ」と公式サイトで謳われている。
Apple Store購入時には、プロセッサをCore i5/i7、メモリを8GB/16GB/32GB/64GB、ストレージを1TB HDD、1TB/2TB/3TB Fusion Drive、256GB/512GB/1TB/2TB SSDにカスタマイズ可能だが、モデルにより選べる項目は異なっているので注意いただきたい。
たとえば、今回借用した、21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルで選択できるのは、プロセッサが第7世代のCore i5(3.4~3.8GHz)/ Core i7(3.6~4.2GHz)、メモリが8GB/16GB/32GB、ストレージが1TBのFusion Drive、256GB/512GB/1TBのSSDとなっている。
なお、Fusion DriveはSSDの高速性とHDDの大容量を両立させたハイブリッドドライブだが、1TB版は32GB、2TB版と3TB版は128GBのSSDをHDDと組み合わせている。容量もさることながら、より高速なアクセススピードを重視するなら、2TB以上のFusion Driveを選択したいところだが、21.5インチiMacにはそのカスタマイズ項目は用意されていない。
インターフェイスは、Thunderbolt 2がThunderbolt 3(USB Type-C)に変更された。
よってインターフェイスの構成は、DisplayPort、Thunderbolt 3(最大40Gbps)、USB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)に対応するUSB Type-Cポートを2基、USB 3ポートを4基、Gigabit Ethernet、SDXCカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャックとなっている。
シリーズ名 | 21.5インチiMac | 21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデル | |
---|---|---|---|
モデル名 | 2.3GHzプロセッサ 1TBストレージ | Retina 4Kディスプレイ 3GHzプロセッサ 1TBストレージ | Retina 4Kディスプレイ3.4GHzプロセッサ 1TBストレージ |
CPU | 第7世代Core i5(2.3~3.6GHz) | 第7世代Core i5(3~3.5GHz)/Core i7(3.6~4.2GHz) | 第7世代Core i5(3.4~3.8GHz)/Core i7(3.6~4.2GHz) |
メモリ | DDR4-2133 SDRAM 8GB/16GB | DDR4-2133 SDRAM 8GB/16GB/32GB | |
ストレージ | 1TB HDD/1TB Fusion Drive/256GB SSD | 1TB HDD/1TB Fusion Drive/256GB/512GB SSD | 1TB Fusion Drive/256GB/512GB/1TB SSD |
GPU | Intel Iris Plus Graphics 640 | Radeon Pro 555 (GDDR5 2GB) | Radeon Pro 560 (GDDR5 4GB) |
ディスプレイ | 1,920×1,080ドットsRGBディスプレイ、数100万色以上対応 | 4,096×2,304ドットRetina 4K P3ディスプレイ、輝度500cd/平方m、10億色以上対応 | |
インターフェイス | Thunderbolt 3(USB Type-C)ポート×2、USB 3ポート×4、Gigabit Ethernet、SDXCカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック | ||
価格 | 120,800円~ | 142,800円~ | 164,800円~ |
シリーズ名 | 27インチiMac Retina 5Kディスプレイモデル | ||
---|---|---|---|
モデル名 | Retina 5Kディスプレイ3.4GHzプロセッサ 1TBストレージ | Retina 5Kディスプレイ3.5GHzプロセッサ 1TBストレージ | Retina 5Kディスプレイ3.8GHzプロセッサ 2TBストレージ |
CPU | 第7世代Core i5(3.4~3.8GHz) | 第7世代Core i5(3.5~4.10GHz)/Core i7(4.2~4.5GHz) | 第7世代Core i5(3.8~4.2GHz)/Core i7(4.20~4.50GHz) |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB/16GB/32GB | DDR4-2400 SDRAM 8GB/16GB/32GB/64GB | |
ストレージ | 1TB/2TB Fusion Drive/256GB/512GB/1TB SSD | 1TB/2TB/3TB Fusion Drive/256GB/512GB/1TB SSD | 2TB/3TB Fusion Drive/512GB/1TB/2TB SSD |
GPU | Radeon Pro 570(GDDR5 4GB) | Radeon Pro 575(GDDR5 4GB) | Radeon Pro 580(GDDR5 4GB) |
ディスプレイ | 5,120×2,880ドットRetina 5K P3ディスプレイ、輝度500cd/平方m、10億色以上対応 | ||
インターフェイス | Thunderbolt 3(USB Type-C)ポート×2、USB 3ポート×4、Gigabit Ethernet、SDXCカードスロット、3.5mmヘッドフォンジャック、IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.2 | ||
価格 | 198,800円~ | 220,800円~ | 253,800円~ |
一体型PCとして熟成されたデザインと完成された使い勝手
初代iMacが発売されたのが1998年。これまでCRT型、半球型、液晶一体型とデザインを大きく変化させてきた。
しかし、2007年にボディをポリカーボネートからアルミに変更してからは、光学ドライブの排除、薄型化が進められたものの、基本的なデザインコンセプトに変更はない。使い勝手は完成の域に達していると言える。
iMac最大の特徴は、フットプリントのコンパクトさ。21.5インチモデルの場合、スタンドの奥行きはわずか17.5cmで、本体の幅は52.8cm。机の上に最低限のスペースで設置可能だ。もちろんキーボードやマウスを使わないときは、ディスプレイの下に収納できる。
一方、評価が大きく分かれるのがインターフェイスの位置。SDXCカードスロットも含めて、背面にすべてのインターフェイスを集中させる仕様は、デザイン的にはスマートだが、SDカードやUSBメモリを頻繁に抜き差しするユーザーには使い勝手は良くない。
とは言え、いまや写真はスマートフォンで撮り、データはオンラインストレージサービスでやり取りするのが一般的だ。どうしても前面からSDカードやUSBメモリを抜き差ししたいのなら、スマートさには欠けるがUSB Hubなどを活用しよう。
標準キーボードとマウスの使い勝手についても言及しておこう。
Magic KeyboardとMagic Mouse 2は、安価なディスプレイ一体型PCに付属する標準キーボードとマウスとしては質感が非常に高い。iMacに合わせた薄型なボディもスマートな印象を与える。
しかし、あまりに薄く仕上げられているため、特にキーボードは快適に長時間入力できるとは言えない。メカニカル、静電容量無接点キーボードを好むユーザーのために、Apple Storeで購入するさいには、キーボードを購入しないという選択肢がほしいところだ。
高級4Kディスプレイ級の発色性能、MacBook Proを大きく上回るサウンド品質
AV性能については、まずアップグレードされたディスプレイからレビューしよう。
前述の通り新型iMacは「Mac史上最高のRetinaディスプレイ」が謳われているが、142,800円から購入可能な21.5インチのRetina 4Kディスプレイモデルでも、高級4Kディスプレイ専用機と同等のクオリティを備えている。
今回の検証用画像で例を挙げると、赤い花弁の裏の細かな質感まで克明に再現されており、発色性能のきめ細かさがよくわかった。
また、光沢ディスプレイは外光や室内光が気になりがちだが、従来モデルより43%明るい輝度500cd/平方mを実現しているだけに、黒い地の部分はともかく、画像が表示されている領域では反射がほとんど気にならない。
画面解像度も、21.5型で4,096×2,304ドットであれば219dpiとなるので、ルーペなどで覗き込まないかぎり、フォントのジャギーやアンチエイリアス処理などのドットは視認できない。これ以上の高解像度化は処理速度に悪影響を及ぼすことはあっても、多くの人にとっては解像感の向上にはつながらないはずだ。
サウンド面については、15インチMacBook Proと比較してみたが、圧倒的に21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルのほうがボリュームのある音を奏でていた。
iMacは、MacBook Proに比べれば大きなボディのなかに、容量の大きなスピーカーを搭載し、ディスプレイ下部の大きな開口部からサウンドを出力している。低音が腹に響くような迫力のあるサウンドを楽しめること請け合いだ。
ベンチマークは好成績だが、ストレージの遅さが実アプリの速度に影響あり
最後にベンチマークスコアを見てみよう。
今回は「Core i5-7500(3.4~3.8GHz、TDP65W)」を搭載する21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルと、「Core i7-7820HQ(2.9~3.9GHz、TDP45W)」を搭載する15インチMacBook Proの2017年モデルを比較している。
両者の製品ジャンルは異なるが、CPUや、Fusion DriveとPCIe SSDの違いによる性能差は、21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルをカスタマイズする際の参考になるだろう。
使用したベンチマークプログラムは下記のとおりだ。
- CPU、OpenGLのベンチマーク「CINEBENCH R15」
- CPU、OpenCLのベンチマーク「Geekbench 4.0.1」
- 3Dベンチマーク「GFXBench OpenGL」
- 3Dベンチマーク「GFXBench Metal」
- ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」
- ストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark 1.0.2」
- 「Adobe Photoshop Lightroom CC」RAW画像の現像時間を計測
- 「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画の書き出し時間を計測
- 「iMovie」フルHD動画の書き出し時間を計測
- iTunesムービーを連続再生した動作時間
下記が検証機の仕様とその結果になる。
検証機の仕様 | ||
---|---|---|
製品 | 21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデル(2017) | 15インチMacBook Pro(2017) |
CPU | Core i5-7500(3.40~3.80GHz) | Core i7-7820HQ(2.90~3.90GHz) |
GPU | Radeon Pro 560(4GB) | Radeon Pro 560(4GB) |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB |
ストレージ | 1TB Fusion Drive | 512GB PCIe SSD |
ディスプレイ | 21.5インチ、4,096×2,304ドット | 15.4インチ、2,880×1,800ドット |
TDP | 65W | 45W |
OS | macOS Sierra バージョン10.12.5 |
ベンチマーク結果 | ||
---|---|---|
製品 | 21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデル(2017) | 15インチMacBook Pro (2017) |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 93.50 fps | 92.35 fps |
CPU | 589 cb | 763 cb |
CPU(Single Core) | 159 cb | 159 cb |
Geekbench 4.0.1 | ||
32-bit Single-Core Score | 4,047 | 4,001 |
32-bit Multi-Core Score | 12,392 | 14,079 |
64-bit Single-Core Score | 4,876 | 4,737 |
64-bit Multi-Core Score | 14,045 | 15,865 |
OpenCL(iGPU) | - | 21,058 |
OpenCL(dGPU) | 56,155 | 49,920 |
Metal(iGPU) | - | 19,374 |
Metal(dGPU) | 33,460 | 29,280 |
GFXBench OpenGL | ||
マンハッタン | 1,853.9 Frames | 2,508.5 Frames |
1080p マンハッタンオフスクリーン | 6,543 Frames | 7,036.6 Frames |
ティラノサウルス レックス | 3,348.5 Frames | 3,351.5 Frames |
1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン | 12,926 Frames | 14,391 Frames |
GFXBench Metal | ||
マンハッタン | 2518.99 Frames | 3347.19 Frames |
1080p マンハッタンオフスクリーン | 10,680.9 Frames | 11,088.5 Frames |
ティラノサウルス レックス | 5,150.16 Frames | 6,406.63 Frames |
1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン | 18,319.4 Frames | 18,999.9 Frames |
Blackmagic Disk Speed Test | ||
WRITE 1回目 | 289.5 MB/s | 1,903 MB/s |
WRITE 2回目 | 323 MB/s | 1,857.5 MB/s |
WRITE 3回目 | 337.6 MB/s | 1,893.8 MB/s |
WRITE 4回目 | 377.8 MB/s | 1,895.8 MB/s |
WRITE 5回目 | 385.2 MB/s | 1,869.2 MB/s |
WRITE 平均 | 342.62 MB/s | 1,883.86 MB/s |
READ 1回目 | 309.1 MB/s | 2,279.2 MB/s |
READ 2回目 | 339.6 MB/s | 2,131 MB/s |
READ 3回目 | 373.4 MB/s | 2,252.3 MB/s |
READ 4回目 | 406.2 MB/s | 2,362.7 MB/s |
READ 5回目 | 427.9 MB/s | 2,022.1 MB/s |
READ 平均 | 371.24 MB/s | 2,209.46 MB/s |
SSDをAmorphousDiskMark 1.0.2で計測 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 1,594 MB/s | 3,245 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 853.2 MB/s | 1,526 MB/s |
4K Q32TI ランダムリード | 682.7 MB/s | 661.7 MB/s |
4K Q32TI ランダムライト | 27.62 MB/s | 27.02 MB/s |
シーケンシャルリード | 1,137 MB/s | 1,410 MB/s |
シーケンシャルライト | 890.6 MB/s | 1,094 MB/s |
4K ランダムリード | 53.05 MB/s | 54.09 MB/s |
4K ランダムライト | 29.16 MB/s | 29.28 MB/s |
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像 | ||
4,912☓3,264ドット、自動階調 | 2分8秒72 | 1分32秒42 |
「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps(OpenCL) | 5分12秒31 | 3分59秒99 |
1,920×1,080ドット、30fps(Metal) | 5分10秒49 | 4分1秒24 |
「iMovie」で実時間5分のフルHD動画を書き出し | ||
1,920×1,080ドット、30fps | 2分23秒08 | 2分7秒36 |
CINEBENCH R15の「CPU」ではMacBook Proのほうが約30%高速という結果が出たが、Geekbench 4.0.1の「64-bit Multi-Core Score」では約13%の高速化に留まっている。
GFXBench OpenGL/Metalの「マンハッタン」、「ティラノサウルスレックス」はスコア差が大きくなっているが、これはディスプレイ解像度の差が原因だろう。
1080pの解像度でグラフィックス速度を計測する「1080p マンハッタンオフスクリーン」、「1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン」ではほとんど横並びだ。
注目したいのがストレージベンチマーク。ランダムリード、ランダムライトではほとんど差はないが、シーケンシャルリード、シーケンシャルライトではFusion Driveを積むiMacが大きくスコアを落とした。
「Adobe Photoshop Lightroom」でのRAW画像現像、「Adobe Premiere Pro CC」での動画書き出しの速度差も、ストレージデバイスに連続的に読み書きするシーケンシャルリード/ライト性能の差が影響を及ぼしたと思われる。
なお、高負荷時の発熱をサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」でチェックしてみた。室温25℃の部屋で、「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行したさいの最大温度は、排気口部分で53.1℃だった。
ノートPCであれば高すぎる温度だが、ディスプレイ一体型デスクトップPCであるiMacは抱えて使用しないので問題ない。
標準構成で堅実に使うか、カスタマイズして高性能を享受するか悩みどころ
120,800円から購入できるiMacは、価格的にMacシリーズの廉価版的な位置づけだ。
しかし21.5インチiMac Retina 4Kディスプレイモデルは、「Mac史上最高のRetinaディスプレイ」を搭載しつつ、dGPUを内蔵したことによって、クリエイター向けマシンとしても十分活躍できるようになったと言える。
しかし今回のベンチマークで、アプリケーションの実効速度が少々物足りないということが明らかになった。
そこで筆者がオススメしたいカスタマイズ項目は、メモリ16GB(+22,000円)、512GB SSD(+33,000円)へのアップグレード。
もし予算的に厳しいのであれば、256GB SSD(+11,000円)のみアップグレードして、データドライブとして1万円以下の外付けHDDを装着するのもいい。これだけでアプリケーションの実効速度は目に見えて向上する。
現代のPCで最大のボトルネックとなるのはストレージだ。せっかく安価なiMacを標準構成で使うのも堅実な選択だが、長期間快適に、そして幅広い用途で快適に活用したいなら、ストレージに投資することを強くオススメする。