元麻布春男の週刊PCホットライン

堅実なアップデートにとどまった「iPad 2」



iPad 2

 2月24日の新しいMacBook Proの発表に続いて、Appleは新しいiPad、「iPad 2」の発表を行なった。発表はサンフランシスコで、病気療養中とされるスティーブ・ジョブスCEOも出席する力の入ったものだった。が、発表されたiPad 2が、力の入れ具合に見合うほど革新的なものだったかというと、それはどうも微妙に思える。

 発表されたiPad 2は、既存のiPadと同じLEDバックライトの9.7型IPSパネル(解像度1,024×768ドット)を採用する。ウワサとしてあった小型版は登場しなかった。外形上の大きな違いは薄くなったことで、初代iPadの13.4mmはもちろん、iPhone 4の9.3mmよりも薄い8.8mmとなっている。重量も680g(Wi-Fiモデル)および730g(Wi-Fi+3Gモデル)から、Wi-Fiモデルで601g、Wi-Fi+3Gモデルで613gと、79〜117gの軽量化に成功している。

 形状も、中央部がふくらんでいた初代に対し、iPad 2は厚みが一定でフラットな形状になった。ベゼルもほんの少しだが幅が狭くなり小型化したため、既存のケースやカバー類の流用は難しいかもしれない。

iPad 2カバー「Smart Cover」を10色用意

 ということもあってか、AppleはiPad 2に向けて新しいカバー「Smart Cover」を用意した。材質はポリエステルとレザーの2種類があり、前者が39ドル、後者が69ドルとなっている。磁石を利用して、iPadのサイド部に取り付け、液晶表面を覆うもので、iPadの美しさを損なわないものだという。磁石を本体とカバーの両方に備えることで、決まった位置にピッタリと取り付けることができる。

 このカバーには、3カ所に折りたたみ用のミゾがあり、ここを畳んでカバーを三角柱にすることで、スタンドにもなるという仕組みだ。文字にするとややこしいが、実物、あるいはWebページ上のムービーを見れば、その仕組みに納得がいくだろう。Smart Coverのカラーバリエーション10色に、本体カラー2色(白、および黒)を掛け合わせて、配色は20パターンあることになる。従来から提供されていたケース類は、どうしてもiPadの厚みが増したり、重量が増加する点が、Appleは気に入らなかったようだ。

 中身で目玉となるのは、プロセッサーに新しいA5チップを採用したことだ。動作クロックはA4チップの1GHzと変わらないが、CPUがデュアルコア化されている。AppleはCPU性能が2倍と言っているから、コア自体の性能は変わらない(2倍の性能はコアが2つになったことを反映したもの)だろう。その代わり、グラフィックス性能はA4の9倍だとしている。消費電力は、A4と同じとされ、バッテリ駆動時間(10時間)も変わらない。

 もう1つの大きな違いは、カメラを内蔵したこと。背面にHDビデオ撮影(720p)をサポートしたバックカメラ、ディスプレイ側にVGA画質のビデオ撮影をサポートしたフロントカメラを備える(最大30fps)。このHDビデオサポートに合わせて、HDMI出力をサポートしたApple Digital AVアダプター(米国価格39ドル)の提供も行なわれる。このAVアダプターは、iTunesストアで販売およびレンタルされるコンテンツへの対応にも配慮され、最大1080pの出力も可能だ。

 こうしたハードウェアに、組み合わされるのがiOS 4.3だ。バージョン番号が示す通り、現行iOS 4.2のマイナーバージョンアップという形だが、TV電話アプリケーションであるFaceTimeが加わるほか、AirPlayの強化、JavaScriptエンジンの性能が最大2倍になった新しいSafari、iTunesホームシェアリング、iPad本体横スイッチのカスタマイズ等がサポートされる。

 iOS 4.3は、iPad 2のほか、iPhone(3GSおよび4)、iPod touch(第3世代および第4世代)、初代iPadにも提供される。iPhone 4でのWi-Fiを使ったテザリング(パーソナルホットスポット)は、iOS 4.2でもサポートされていたが、このiOS 4.3では大きく取り上げられていることから、サポートするキャリアが増えるのかもしれない。ただし、日本のサイトに「日本を含む一部の国々では、ご利用いただけません」とハッキリ明記されている。

 ソフトウェア関連でのもう1つの発表は、Apple製のiPad対応アプリケーションとして、iMovieとGarage BandのiPad版がリリースされることだ。いずれもMac用のiLifeに含まれるアプリケーションで、すでにAppStore経由でiWorkが提供されていることを考えれば、ごく自然な成り行きと言えるだろう。とはいえ、各4.99ドルという価格は、iMovie(動画編集)やGarage Band(カジュアルな音楽制作)と同じジャンルのソフトウェア開発者には大きな脅威だ。というより、Appleにこの価格で提供されては、これらジャンルでのビジネスは、ハードルがものすごく高くなった、と言えるだろう。

●タブレットデバイスも既に成熟期か

 iPad 2は、米国では3月11日から発売される。価格は従来のWi-Fi版、WiFi+3G版を踏襲したもので、16GBモデルが499ドルから。最も高い64GBモデルのWi-Fi+3G版が829ドルとなっている。その他の国では3月25日から第1弾の26カ国(日本含む)で販売が始まることになっているが、本稿時点で日本のAppleストア(オンライン)による予約はスタートしていない。その代わり、初代iPadがディスカウント(16GBモデルで35,800円)で販売中だ。

 発表即出荷、あるいは発表即予約開始でなかったことは、冷静さを取り戻す上では良かったかもしれない。筆者は、とりあえずiPad 2は見送ろうかと思っている。内蔵カメラにそれほど興味がないだけでなく、基本的に外に持ち出さないので、80gの重量差の影響があまり大きくない。

 デュアルコア化とGPUの性能向上は興味をひかれるところだが、それとてアプリケーション次第。iPad 2の登場後に現れるアプリケーションがどれくらい重くなるのか、その様子を見てからで遅くはない気がしている。要するに、手持ちの初代機のiOSを4.3にアップデートし、その様子で判断して良いだろうと思ったわけだ。

 確かにiPad 2は、iPadの正常進化形の製品であり、堅実なアップデートだと思う。が、思った以上に機能的な上乗せが少なかった気がする。ディスプレイサイズも同じでは、初代と使い分ける、という風でもない。2011年はタブレットの年とも言われるが、タブレットデバイスは、想像以上の速さで機能的、デザイン的成熟を迎えつつあるような気がしてならない。果たして、それは良いことなのかどうか、市場の行方がちょっと心配になる。