大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

なぜ、Let'snoteとTOUGHPADは好調なのか?

〜パナソニック・原田事業部長に聞く

原田秀昭事業部長

 パナソニックのPC事業が着実な成長を遂げている。2013年度の出荷台数は、前年比6%増の72万台。中でも国内における「Let'snote」の出荷台数は2桁成長になったという。そして、2014年度についても、2桁成長を掲げ、数年先の年間100万台の出荷規模に向けた体制づくりを進める。この成長を支えているのは、Let'snoteにおける2-in-1戦略の加速をはじめとする差別化製品の投入、プロダクトソリューション事業の拡大、そして欧州での成長が著しい「TOUGHPAD」での成功が見逃せない。パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部・原田秀昭事業部長に、パナソニックのPC事業の成長戦略を聞いた。


――パナソニックのPC事業が好調のようですね。

原田 2013年度のパナソニックのPC事業は、国内のLet'snoteが2桁成長となるなど、順調な伸びを見せています。出荷金額でも前年比2桁成長を遂げることができました。2012年度には約1,000億円の事業規模を、2015年度には1,200億円に引き上げるという計画を打ち出していましたが、2013年度の売り上げ規模は1,114億円。2015年度に1,200億円の計画は軽く超えることができるのではないでしょうか。むしろ、2014年度には前倒しで、それを達成したいと思っています。

 実は、ITプロダクツ事業部では、日本および台湾の製造事業場、そして、英国のコンフィグレーションセンターという3つの生産拠点による売上高が事業計画のベースになっていたのですが、2014年4月からは製販連結として、米国、欧州、アジア、中国の4つのシステム販社を加えた数値がベースとなります。そのため、金額規模が膨れることになります。つまり、2015年度1,200億円という数字とは別に、新たな数字が求められるとも言えます。

 パナソニック全社では、2018年度には、BtoBソリューションで2兆5,000億円の売上高を目指しています。現在、1兆8,000億円ですから、7,000億円の差がある。ここでITプロダクツ事業部がどれだけ貢献するのかという点も、これから重要な意味を持ちます。まだ、社長の津賀(=パナソニックの津賀一宏社長)に具体的な形で示したわけではありませんが、2018年度には、2,000億円以上の売上高を製販連結で達成したいというのが、私が個人的に考えているITプロダクツ事業部の方向性です。

――2013年度に、PC事業が好調だった理由はなんでしょうか。

原田 国内のLet'snoteのビジネスを見ると、コンシューマ市場は厳しかったが、法人系ビジネスは、Windows XPサポート終了前の買い替え需要、消費増税前の駆け込み需要によって好調に推移したこと、さらには円安や株高、企業の好決算が相次いだこともあり、IT投資意欲が活性化したことも見逃せない要素です。

 2011年度、2012年度はIT投資にかけられる予算が限定され、低価格のPCに集中するといった傾向もあったが、それが2013年度には少し傾向が変わってきました。しっかりサポートをしてくれるメーカーのPCが欲しい、あるいはモバイルで利用するのであればバッテリ駆動時間でも一定水準以上のものが欲しい、品質面でも安定しているものが欲しいという声が一気に増えてきた。高機能、高性能、安定性のあるPCが選ばれるようになり、PCの購買平均単価も上昇してきている。その中で、Let'snoteが選ばれるようになったことが大きいといえます。

 もう1つはタブレットからの揺り戻しの動きがあったことも見逃せません。Let'snoteは、BtoBをターゲットにした製品ですが、この分野におけるタブレット利用に限界を感じているユーザーが少なくないというのが実態です。一度、iPadやAndroidを搭載したタブレットを導入してみたが、業務用デバイスとしては使いにくいと感じたユーザーも多い。特に海外でそうした事例が多く見られます。それらのユーザーが、改めてTOUGHPADや「Let'snote AX」シリーズ、「MX」シリーズを導入するという動きに転じているのです。

 一方で、製品という観点から見ると、堅牢性とモバイル性、高性能を実現した14型の「LX」シリーズ、あるいは12.5型のDVDドライブ搭載型2-in-1モデルのMXシリーズというように、他社には投入できない新製品を連打したことも、Let'snoteの評価を高めています。

Let'snote MXシリーズ
Let'snote LXシリーズ

 例えば、LXシリーズでも700台や、1,000台単位での一括導入商談がまとまっています。これまで14型のLet'snoteは、やや苦戦傾向にありましたが(笑)、LXシリーズは極めて好調な売れ行きを見せています。

 またMXシリーズも、3月には量販店で週500台以上も売れるという実績が出ていました。20万円を超える価格のノートPCが、量販店店頭でこれだけの台数が売れるというのは異例のことです。SXシリーズや「NX」シリーズよりも、MXシリーズの方が売れてしまったんですよ。これは私自身も少し驚きました。11.6型では、画面サイズがちょっと小さいと感じていたユーザーが、12.5型のサイズは日本人のモバイル利用には最適であるということ、さらにDVDドライブも入っているから便利だとして、MXシリーズを選択する例が多かったと聞いています。

 実際、Let'snoteのシェアは上昇しています。我々が重視している13型未満のノートPC市場(ミニノートを除く)におけるLet'snoteのシェアは、2012年には38%だったものが、2013年には41%と4割を突破しました。とくに法人市場においてはさらにシェアが高まっており、2012年には37%のシェアだったものが、2013年には46%にまで拡大しています。私が見る限りでも、新幹線車内や空港ラウンジのLet'snoteシェアは、さらに上がっていますよ(笑)。私はいつも見て回っていますから、それは確実です(笑)。

 それと、2013年度は多くの新聞社が、記者向けにLet'snoteを導入した1年でもありました。ですから、記者会見でのシェアも高まっている(笑)。先日も、パナソニックの経営方針説明会の様子を見ていたのですが、何人ぐらいの記者がLet'snoteを使っているのかということが、私は気になるんですよ(笑)。見たところ、これも確実に増加していましたね。

 Let'snoteは、軽い、バッテリ寿命が長い、パワフル、堅牢であるといったすべての要素を『コミコミ』で持ち併せている点が改めて評価されていると感じます。

 こうしてみると、日本のPCメーカー各社のPC事業が厳しいといわれる中で、Let'snote事業は持続的な成長を遂げることができた1年だったといえます。

――2-in-1モデルに対して、積極的な展開をしていますね。

原田 今後、Let'snoteは、14型以上の大画面モデルを除いて、すべて2-in-1にしていこうと考えています。これは、Appleの「iPad」や、日本マイクロソフトの「Surface」とも明確にスタンスが違うということを打ち出すことにも繋がります。タブレットは平面の板であり、差別化ができない。それに対して、Let'snoteの提案は、1つの筐体で、ノートPCのようなキーボード入力ができ、同時にタブレットとしても使えるという提案になる。この延長線上では液晶着脱式ということも検討していくことになるでしょう。今市場に出ている液晶着脱式タイプの2-in-1 PCは、まだまだ機構面で改良すべき点があると考えています。ODMベンダーに丸投げして作るのではなく、Let'snoteが求める水準を実現する形で、液晶着脱式ができるのであれば、取り組んでいきたい仕組みですね。いずれにしろ、ノートPCとしても、タブレットとしても利用できるというのが、今後のLet'snoteの製品開発の方向性になります。

――一方で、堅牢性を追求したTOUGHシリーズ(TOUGHBOOKおよびTOUGHPAD)の成果と、今後の展開についてはどう考えていますか。

TOUGHPADシリーズ

原田 TOUGHシリーズは海外での展開が中心となりますが、欧州は好調、米国は堅調、それに対して、新興国はあまり伸びなかったというのが実態です。一方で、堅牢性を追求したタブレット端末のTOUGHPADの構成比が伸びている点が特筆できます。2013年度は15%強がTOUGHPADでしたが、これが2014年度にはさらに上昇し、30%前後にまで高まるとみています。とくに欧州では、50%を超えることになるのではないでしょうか。

 北米は政府や警察などへの導入が中心となっているため、TOUGHBOOKの根強い需要が継続していますが、欧州では、民間企業への導入が多いということもあり、新たなフォームファクターであるTOUGHPADを活用したいという声があります。欧州の自動車メーカーでは、故障診断の現場での利用に続いて、営業現場での利用、さらには製造ラインでの活用などについても検討が始まっています。パナソニックは、欧州では製造業への導入が遅れていた部分もあったのですが、TOUGHPADでなくては安心して使えないということもあって、選んでいただいていますね。

 また、鉄道会社では車掌が運行管理にTOUGHPADを利用するといった導入が進んでおり、欧州の鉄道分野では圧倒的なシェアとなっています。ある鉄道会社では、4,000台のTOUGHBOOK Hシリーズを導入したのに続き、さらに4,000台単位でTOUGHPADの導入が決定したケースもあります。また、ガス・水道、通信、流通といった領域でもTOUGHPADの導入が促進されています。

 一方、TOUGHBOOKには、「CF-53」という廉価版の製品があり、自動車メーカーが、テストコースで自動車を走らせるといったような研究開発現場で、数多く利用されるなど、一定の需要がありますし、北米の警察では標準プラットォームとなっている「CF-31」、10年以上の長い期間に渡って提供しているコンバーチブルタイプの最新版である「CF-19」という製品も堅調です。これらの3つの基本ラインナップは、進化させながらも、これからも残していくことになりますが、TOUGHBOOKの需要全体を見れば、今後は右肩下がりになると予想しています。この減少を上回る形でTOUGHPADを成長させることができるか、どうかが今後の成長の鍵になります。

 パナソニックでは、昨年(2013年)秋に、10型の「TOUGHPAD G1」を投入し、続いて、1月の米CESでは、7型の「M1」を公開しました。また、6月からは、Windows Embedded 8 Handheldを搭載した5型の「FZ-E1」を、さらに、8月からは、Android 4.2.2を搭載した5型の「FZ-X1」を投入しますが、TOUGHPADのラインアップは、今年中にさらに拡大させたいと考えています。

 ここ数年、TOUGHPADに投資をしてきましたが、2013年度に、初めて、これは行けるという非常に強い手応えを感じました。そこがこれまでとの大きな違いです。

――2013年度は、事業部制を敷いて初めての年だったわけですが、その成果はどう出ていますか。

原田 国内は、Let'snoteの差別化戦略が功を奏したこと、海外はTOUGHPADにより、持続的成長を実現できたという点が2013年度の実績だったと言えます。ただ、事業部制がPC事業にどう影響したかというと、もともとPC事業部門は自主独立経営といった色彩が強い部門でしたから、その点ではあまり変化がなかったかもしれませんね。しかし2018年度までの道筋が見え始めたという点では、重要な意味を持った1年だったと言えます。

 一方で、事業部化にあわせて、POS、決済端末などを担当するターミナルシステムビジネスユニットとの一体運営を始めましたが、まずは、BizPadなどのタブレット端末事業を、TOUGHPADの事業に一本化し、さらに、双方の技術を生かして、5型液晶を搭載した「FZ-E1」や「FZ-X1」を製品化するというところまで展開してきました。2014年度においてはこうした動きを加速させ、POSや決済端末などの技術を取り込んだ融合製品も投入していきたいですね。小売業界では、売り場の中を持ち運んで、その場でクレジットカード決済するといったことが行なわれていますが、こうした利用をする際に、タブレット端末になにかの周辺装置を取り付ける場合が多い。パナソニックのタブレット技術と、POS、決済端末技術を融合すれば、モバイル環境で利用でき、セキュリティ面でも強固で、シンプルな決済端末というものが製品化できる。これはパナソニックの強みが生かせる領域だといえます。

――原田事業部長は、就任以来、ソリューションに力を入れることを宣言していましたね。

原田 その点でも強い手応えを感じています。ITプロダクツ事業部が描くソリューションは、あくまでもハードウェアによるプロダクトソリューションであり、本体を中心とした提案になります。

 例えば、パナソニックは、2012年度に、英国のカーマウント製品メーカーであるTempusを買収し、その機能を英国のコンフィグレーションセンターに置きました。これによって、TOUGHPADを利用するときに、片手に固定するためのストラップなどの数々のアクセサリの提供ができるようになりました。これは、売上高、利益という面でも大きく貢献しています。TOUGHPADソリューション、TOUGHBOOKソリューションを加速する1つの役割を果たしています。

 また、コンプリートケアという完全保証プログラムを用意するなど、保守やメンテナンスでも新たな仕組みを提供しています。さらに、日本のほかに、欧州、米国、カナダ、オーストラリアにコンフィグレーション拠点がありますので、これらの拠点を通じてハードウェアソリューションを提供することで、本体以外の販売金額が増加しているのです。2018年度までにはますます本体以外の売り上げが増加していくことになるでしょう。

――ところで、4Kタブレットの動きはどうですか。

4Kタブレット

原田 これは予想以上に好調なんですよ(笑)。すでに、金融機関や自動車メーカーでの対面販売の際に利用するというケースなど、一括導入の商談も出ています。この製品は、社長の津賀が、肝入りの製品として取り組んでいるものですし、4Kワールドの先兵になります。

 実は4Kタブレットは、最初は控えめに見ていたのですが、蓋を開けてみると、意外にも引き合いが多い。初年度だけで、数千台規模の実績となりそうです。振り返ってみますと、実際に活用できる提案を行なってきた点が大きかったようです。そして、一度使ってもらうと、次はこうして欲しいといった要望が出てきますから、次の製品の進化にもつなげることができる。これはLet'snoteやTOUGHPADでもやってきた手法ですが、その仕組みがすでにできようとしている。4Kタブレットは、4Kワールドの実現に向けて、いい助走ができているといえます。

――パナソニックの2014年度のPC事業の成長は、どう見込んでいますか。

原田 2014年は事業全体では、2桁成長を見込みます。ただ、地域別にみると少し温度差があります。日本では、2013年度は、消費増税前の需要増、Windows XPサポート終了に合わせた需要への対応という点で、かなり力を入れましたが、2014年度以降は若干ギアが落ちるかしれませんね。

 一方で、欧州はフル回転で取り組んでいます。これがあと2〜3年は続くと見ています。北米では、ギアがまだトップには入っていない。ここは数年をかけてトップギアに入れていくことになるでしょうね。中期的な成長は米国次第だともいえます。いずれにしろ、2014年度は、海外では2桁成長を狙いますし、国内もなんとか2桁成長を維持したい。そして、2015年度には年間100万台の大台に挑みたいですね。

 製品という点では、国内はLet'snote、海外ではTOUGHBOOK、TOUGHPADの拡充を引き続き行ないます。日本では、MX、LXに加えて、次の新たな製品も投入します。さらに、他のPCメーカーが出せないような融合製品を出していきたい。

 7型のTOUGHPAD JT-B1は、540gの軽量化を実現していますが、この軽さになると、PDAの置き換えや、物流業界や小売業界におけるハンディターミナルの置き換えといった動きが顕著になってくる。また、パナソニックには、他の事業部門に、セキュリティカメラや画像診断ソリューション、入退出管理ソリューションといったものがあります。これらを、TOUGHPADと組み合わせて、プロダクトソリューションとして提案していくこともできます。ここでは、特定顧客を対象に、他の事業部門と一緒になって営業活動をしていくということも可能です。これもパナソニックならではの提案になります。

――2014年度はどんな1年になりますか。

原田 2018年度に向けて、戦略を固める時期だと言えます。商品、ソリューション、投資という観点からも体制を固めていきたいですね。投資という点では、M&Aや開発部門への投資、組織の強化といったことも含まれます。2018年度にBtoBソリューションで2兆5,000億円の売上高を目指す中で、ITプロダクツ事業部がどんな貢献ができるか、決済端末などの領域を加えた貢献度はどれぐらいか、あるいはセキュリティカメラなどの他の事業部門との連携によって、どれぐらい貢献できるか、こうした2018年度の姿を描く中で、逆算したものが2014年度の取り組みということになっていきます。

 AVCネットワーク社という中においても、今年度からTVなどのコンシューマ事業がアプライアンス社に移管され、BtoBだけの体制となった。ここにおけるITプロダクツ事業の役割も重大になってきます。BtoBの商材同士の連携ということもさらに進むでしょうから、提案の幅も広がる。一例を挙げると、AVCネットワークス社の中には、広角で撮影できる高画質カメラソリューションがあるのですが、これを使用するとアメフトのフィールド全体を映し出すことができ、選手の動きなどを分析できる。ただ、これを現場で使うにはTOUGHPADが必要になってくる。アメフトの試合中に雨や雪が降ってきたら、他社のタブレットでは使い物にならないですからね。

 セキュリティカメラの映像監視も管理室から見ていたが、TOUGHPADを使えば、どこにいても監視ができる。移動中でも、全体の把握できるわけです。不審人物が入ってきた場合も顔認識で把握して、警備員がTOUGHPADを持ちながら、事前に現場に直行できる。このように、これまではできなかった警備体制が、モバイル端末で、リアルタイムに情報を得ることで実現できる。こうしたプロダクトソリューションとして、AVCネットワークス社全体で対応することができるわけです。TOUGHBOOKではくっつかなかったソリューションがTOUGHPADによって、くっつきやすくなったといえます。今後は、こうしたソリューションを、パナソニックのITプロダクツ事業部の強みの1つとして積極展開していきたいですね。

(大河原 克行)