■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■
宮崎県宮崎市のデル宮崎カスタマーセンター |
デルは、宮崎県宮崎市に、テクニカルサポート拠点であるデル宮崎カスタマーセンターを持っている。
同センターでは、企業向けPCや個人向けPC、サーバー製品のサポートを行なうほか、企業向け製品のテレセールスも行なっているが、ここにきて、同拠点におけるサポート体制のさらなる強化が進められることになるという。
2011年11月1日から、OptiplexシリーズおよびLatitudeシリーズ、Precisionシリーズにおいて、プロサポートを標準サポートとして提供。同サポートへの対応を宮崎カスタマーセンターが担うことになるほか、2010年8月から順次移行を進めていたハイエンドコンシューマ製品の「Alienware」および「XPS」のサポートについても、2011年10月から宮崎カスタマーセンターで完全対応することになった。
さらに、2012年にも個人PC向けの新たなサポートプログラムを開始する計画であり、これも宮崎カスタマーセンターが対応することになるという。
このほどデル宮崎カスタマーセンターを訪問し、同センターにおけるサポート体制強化への取り組み、デルの新たなサポート体制について聞いた。
●宮崎カスタマーセンターを4フロアに拡張デル宮崎カスタマーセンターは、JR宮崎駅から徒歩で約10分の場所にあるショッピングセンター「カリーノ宮崎」の4~7階までの4フロア、約6,000平方mを使用。企業向けPCや個人向けPC、サーバー、ワークステーションのサポート、およびアウトバウンド型のテレセールスなどを行なっている。
2005年11月のセンター開設時は、3フロアだったが、これを今年(2011年)になって4フロアへと拡張。勤務する約560人のすべてがデルの正社員であり、社員自らが、自分たちの製品のためにサポートを行なうという点が他社とは大きく異なる。デル日本法人のうち、約3分の1の社員が宮崎カスタマーセンターに勤務している計算だ。
カスタマーセンターの内部の様子。製品ごとに体制が分かれている |
デルのサポート体制は、日本法人の本社がある神奈川県川崎、中国・大連にも設置しているが、中でも宮崎カスタマーセンターは、日本市場に向けたサポートにおいて重要な拠点となっている。また、デルの全世界のテクニカルサポート拠点の中でも、最も高い顧客満足度を誇る拠点となっているのも特筆できる。宮崎カスタマーセンターでの成功事例をもとに、世界各国のカスタマーセンターが顧客満足度向上に向けた取り組みを採用するという動きもある。
宮崎カスタマーセンターは、4階および5階フロアでは企業向けPCなどのテクニカルサポート、5階の一部スペースでは、個人向けPCをサポート。また、6階フロアには中小企業向けテレセールスを行なう部門が入る。
現時点では7階フロアはフルには使用していないが、今年夏の首都圏での計画停電の実施に伴い、川崎の本社がその対象地域となっていたため、本社機能の一部移転の受け皿として、ここを活用する準備を進めていたという経緯もあった。
今後は、個人向けPC、企業向けPCのサポート体制の強化に伴って、宮崎カスタマーセンターにおける増員を図る姿勢をみせており、それに向けて、7階フロアの活用も考えられる。
デル宮崎カスタマーセンター長兼コンシューマー、スモール&ミディアムビジネス本部長の小林治郎氏は、「来年にはさらに50人ほど増員を図りたい」とする。
●個人向けPCのサポート強化に取り組むデル宮崎カスタマーセンター長兼コンシューマー、スモール&ミディアムビジネス本部長の小林治郎氏 |
実際、宮崎カスタマーセンターの役割は、拡大傾向にある。
個人向けPCに関するサポートについては、基本的には、中国・大連のカスタマーセンターで行なっていたが、昨年(2010年)8月から、上位モデルである「Alienware」および「XPS」に関しては、サポートの一部を宮崎カスタマーセンターに移管。今年10月からは、これら製品のすべてのサポートを宮崎に移管し、同センターからの24時間体制でのサポート体制を確立した。
「もう少し早いタイミングでの完全移行を目指していたが、24時間での体制を確立するまでに時間がかかった。個人向けPCについては、まずは、専門知識を持つユーザーが多い上位製品、付加価値製品から対応を図ったが、今後も、宮崎からサポート対応する個人向けPCを増やしたい」(小林治郎氏)という。
「Alienware」および「XPS」のサポートを行なう部門。10月から宮崎での完全サポート体制を確立した | 「Alienware」や「XPS」シリーズも歴代の製品を保管している |
具体的には、現在、中国・大連のカスタマーセンターからサポートを行なっている個人向けのInspironシリーズについても、今後、宮崎カスタマーセンターでの対応を検討しているという。
「まだ詳細な内容については言及できる段階ではないが、2012年早々には、デルヘルプデスクの内容を強化して、ユーザーに喜んでいただける内容へと進化させたい。それに伴い、宮崎カスタマーセンターでの対応を開始したいと考えている」という。
個人向けPCの顧客満足度の向上に向けて、宮崎カスタマーセンターの対応範囲が拡大されることになる。
●プロサポートの標準機能化で体制を強化一方、企業向けPCのサポートでも、これまで以上に宮崎カスタマーセンターの役割は重視される。
OptiplexシリーズおよびLatitudeシリーズ、Precisionシリーズにおいては、これまでは10,290円~14,910円の費用がかかる有償のアップグレードサービスとして位置づけられていた「プロサポート」が、2011年11月1日以降、これら製品で標準サービスとして無償で提供されるようになった。ここでも宮崎カスタマーセンターの役割が増大することになる。
プロサポートでは、3年間の翌営業日訪問修理や、ソフトウェアに関するサポートも提供される。
今回のプロサポートの標準提供によって、プロサポートの対象ユーザー数は約7倍に拡大することになる。対象機種の急激な拡大にあわせて宮崎カスタマーセンターの体制を拡充。プロサポートの陣容を120人体制とする。
実は、OptiplexシリーズおよびLatitudeシリーズ、Precisionシリーズに対して、プロサポートを標準で提供するのは日本独自の取り組みであり、グローバル標準での取り組みではない。
デル ジャパンサービス統括本部テクニカルサポート本部の金子知生ディレクター |
「日本のユーザーが求めるサポート品質は、グローバルに比べて高い水準を要求する。日本のユーザーに最適なものとして、提供することにした」(デル ジャパンサービス統括本部テクニカルサポート本部の金子知生ディレクター)とする。
一方で、中小企業向けのVostroシリーズでも、これまでは1年間の引き取り修理対応としていたものを、11月以降は1年間の翌営業日の訪問修理サービスへとサポート内容を強化している。
そのほか、サーバー、ストレージといった製品群のサポートについても、2010年9月から24時間365日対応を開始したのに続き、2011年度はソリューションサポートを切り口に、サポート体制の強化を図る。
これは、デルが推進しているハードベンダーからソリューションベンダーへの脱皮にあわせて展開しているもので、宮崎カスタマーセンターのスタッフのスキル育成にも取り組む。仮想化ソリューションなどにも対応するスキルを持った社員の育成に余念がない。
単にサービスメニューを強化するだけでなく、それによって、さらに質の高いサービスを提供することに、宮崎カスタマーセンターはこだわっているというわけだ。
オペレータの座席の様子 | 歴代のデルの製品が用意されており、不具合の状況を再現できるようにしている | プロサポートの対応を行なう部門 |
●Twitterを利用したプロアクティブな展開も
そして、もう1つユニークな取り組みが、ソーシャルメディアでのサポートだ。
宮崎カスタマーセンターでは、約2年前から、電子メールやチャットでのサポートも開始していたが、今回の取り組みはそれをさらに拡大したものだ。
サービス開始から約2年を経過しても、電子メールやチャット、ソーシャルメディアでのサポートを利用するユーザーはまだ少ないが、Twitterによるサポートでは、ユーザーからの問い合わせに対する回答だけでなく、オペレータの空いた時間を利用して、デルユーザーが使い方に関してつぶやいていたり、製品の不具合などについてつぶやいているものを検索し、宮崎カスタマーセンター側からプロアクティブに対応するといったことにも試験的に取り組んでいくという。
実は、デルでは、公式ブログや、Twitterをはじめとするソーシャルメディアでの公式アカウントで発言する際には、社内の認定制度を通過する必要がある。しかし、これまで認定制度は、英語でのみ対応しており、日本法人では認定を受けるという動きがあまり積極的ではなかった。しかし、今年(2011年)11月から、日本語での認定制度がスタートし、多くの日本法人社員がこれに取り組むといった動きが出ているという。宮崎カスタマーセンターからの参加者も多く、今後、ソーシャルメディアを活用したサポート体制の強化も促進されることになるだろう。
スキル向上は継続的な課題。ソリューションサポート体制の強化に取り組む | 電子メールやチャットでのサポートを専門で行なう部門。Twitterでの対応も行なう |
●今後も拡張する宮崎カスタマーセンター
デルでは、宮崎カスタマーセンターにおけるサポート体制の拡張には、今後も意欲的に取り組んでいく姿勢をみせる。
現在でも行なっているサーバーのPowerEdgeのサポートのほか、ストレージのイコールロジックやコンペレントといったエンタープライズ製品へのサポート開始についても、来年(2012年)2月から始まる同社新年度で宮崎カスタマーセンターでの対応を本格的に検討していくことになりそうだ。
宮崎カスタマーセンター内で、仮想化などのスキルを持った社員が増加し、ソリューションサポートを行なえる体制が整えば、こうした動きも加速することになるだろう。
「いかにお客様中心の組織を構築するかが鍵になる。それに向けたトレーニングを強化してきた。また、これまでの独自に展開していた顧客満足度調査に加えて、NPSと呼ばれる調査結果も重視している。ディシジョンメーカーの方々に、『第三者にデルの製品を進めることができるか』といった設問に対しても、高い支持をいただけるような形にもっていきたい。製品、価格、サポートといった点で満足していただき、投資に対する満足度を高めることができているのかといった点にこだわっていきたい」(小林センター長)とする。
今年7月にデル日本法人の社長に就任した郡信一郎社長は、社長就任後も、すでに何度か宮崎カスタマーセンターを訪問しているという。
「前任の社長であったジム・メリットに続き、郡自身もサポートの重要性を強く認識している。日本法人におけるサポート体制の強化は今後も継続的に行われることになる」と小林センター長は語る。
デルにおける宮崎カスタマーセンターの役割は、サポートメニューの拡充とともに、ますます重要になりそうだ。