山田祥平のRe:config.sys

WiMAXにクリアしてほしい次なる課題




 

 UQ WiMAXのサービスインが間近に迫っている。7月1日からの有料サービス開始にともない、さまざまな付加サービスの詳細も発表された。インテルが強力にプッシュし、世界標準のインターネット接続手段として注目されるWiMAXだが、その将来について考えてみたい。

●WiMAXが内蔵されていないノートPCを探すのが難しい時代へ

 帝国ホテルの光の間。今週初め、UQとインテルが共同記者会見を開いた会場だ。おそらく臨時の基地局が据えられているのだろう。携帯していたWiMAX端末で、必要十分な帯域幅でインターネットに接続できた。サービスエリアであるとされているところ、すべてでこういう感じでつながるのなら素晴らしい。

 UQは、WiMAXのサービスが、デバイスとネットワーク、双方ともにオープンモデルであることを強調する。それは、リテールデバイス市場の形成と、MVNOの普及によるものだ。つまり、さまざまなベンダーが接続用端末を提供し、また、UQから回線の提供を受けて独自のサービスを提供する通信事業者がたくさん出てくる。そして、そこでは当然、競争原理が働き、エンドユーザーは、自分の好きな端末を選び、自分の好きな事業者を使ってインターネットに接続することができる。MVNOによっては、帯域幅に制限を加えるなどで、UQの完全定額プランに対して大幅に安い価格で提供するようなところも出てくるかもしれない。

 今回の発表の中には、以前からぜひ実現して欲しいと思っていた「機器追加オプション」もあった。1つの契約に対して、最大2台の機器を追加できるというもので、機器あたり200円/月。つまり、400円をプラスすると1契約で3台までの機器を登録しておけるというものだ。これなら複数台のPCを所有していて、その日ごとに持ち出す機器が異なっても不便がない。ただ、同時に接続できるのは1台だけなので、自宅でうっかり放置しているデバイスが接続を占有し、外出先のデバイスから使えないといった間抜けなことにならないための方法は用意しておいてほしいと思う。

 また、UQ 1Dayは申し込み時から24時間600円で使えるサービスだ。登録料は無料なので、必要なときだけ契約できる。月額定額のUQ Flatが4,480円なので、一カ月に7日間以内の利用ならこちらでいいだろう。地方から数泊で東京に出張するときなどの利用、また、イベント時のみの利用といったケースには重宝するはずだ。

 今回の発表会では、多くのPCベンダーが、内蔵PCを発表した。現時点では内蔵することのプレミアで1万円程度の追加投資が必要になるが、その価格差が無視できるくらいに小さくなるのは時間の問題だ。今現在、無線LANを内蔵していないノートPCを探すのが難しいのと同じようになるに違いない。

 したがって、デバイスのオープンモデルという意味では、それは多彩なノートPCということになり、USBなどで接続する端末に関しては、さほど市場が広がることはないだろう。それよりも、いくつかのベンダーが発表しているようなモバイルゲートウェイルータなどの製品の動向に注目しておきたい。

●めざせ「勝手につながる」

 問題視されているのはサービスエリアで、UQも、その点を認めている。山手線の内側はほぼカバーできたが、多摩地区、埼玉、千葉は、まだまだ穴があるとのことだ。都市圏では名古屋市をほぼカバーしているが、関西は難航しているとのことで、まだまだ穴があるそうだが、この上半期が終わるころにはカバーできているはずと弁解する。

 当たり前の話だが、WiMAXは、インターネット接続のための一手段にすぎない。それですべてをまかなうには現状では無理がある。ただ、UQ自身がそれをいちばんよくわかっているはずで、穴が埋まっていくにはまだ少し時間がかかる。まずは、つながるはずのところでつながらないという不便を解消していってほしい。

 今、日本国内において、絶対につながる、確実につながるという点でサービスを想定すれば、もう、ドコモのFOMA網を使ったデータ通信サービスと、そのMVNOしか考えられない。ぼく自身の使い方としては、地下鉄駅やコーヒーショップなど、公衆無線LANがつながればそれを使い、都心の屋外ではWiMAX、そして、それが無理な場合にFOMA網といった使い方が想定できる。でも、多くの場合は、FOMA網だけで十分実用になるのだ。だから、数カ月WiMAX端末をポケットに入れて持ち歩いてきたが、つながるかどうかを試すよりも、さっさとFOMAでつないでしまうというケースが多かった。でも、これは、USB端末だったからで、もし、WiMAXを内蔵したPCを使っていたなら話は別だ。WiMAXは無線LAN同様にほおっておけば勝手につながる。IDやパスワードを入力しての認証の必要がない。ユーザーが、さあ接続しようと意識する必要がないのだ。

 ところが、発表された各社の内蔵PCを見てがっかりした。WiMAXとWi-Fiを同時にONにしておける機種が見あたらないのだ。アンテナを共用しているなどといった理由もあるのだろうが、これでは、使い勝手が大幅に悪くなる。

 無線LANとWiMAXの両方を同時に接続できる必要性は低い。でも、人間が、そのときいる環境で、どちらかを使うか判断し、切り替えなければならないのでは「勝手につながる」ことの利便性はないに等しい。「接続する」という行為と、「切り替える」という行為は、手間という点では同義だからだ。

 WindowsのようなOSから見たとき、今のWiMAXは、もう1つのネットワークアダプタが追加されているように見える。本当は、これが1つのネットワークアダプタに見えたらどうだろう。WiMAXの基地局がアクセスポイントのように見えて、他のWi-Fiアクセスポイントと同列に並び、OSが優先順位にしたがって接続を試行してくれればいい。もし、電源のコントロールが必要なら、そこもOSが面倒をみてくれればいい。ユーザーにとっては、WiMAXが特別なものではなく、普通のWi-Fiアクセスポイントに見えていれば、それでいいのだ。

 Windows 7では、モバイルブロードバンド接続に対して、モデムを使ったダイヤルアップではなく、ネットワークアダプタとして見えるようにするソリューションが提供される。そして、Windows 7の新しい省電力機能では、たとえば、ケーブルがささっていない有線LANはデバイスの電源がOFFになるといったことが実現されている。これらの機能を積極的に使ってWiMAXを柔軟に使えるようになるのがいいのか、それとも、単一のWi-Fiアダプタとして、WiMAXの基地局も、一般のWi-Fiアクセスポイントもまるっきり同列に見えるのがいいのか。

 どちらにしても、専用の接続ユーティリティを常駐させ、WiMAXを特別な存在として意識させているうちはダメだと思う。そこを早期に解決し、スリープから目覚めたときには、必ず何らかの方法でインターネットに接続しているPCを実現してほしい。