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最強のモバイルルーター“iPad mini”とHPの24型スリムディスプレイが支える米国出張

 CES 2013の取材で例年通り、米ラスベガスにやってきた。最初にCESを取材した2000年以来、14回目のCESになる。イベントは始まったばかりで、全体の雑感を頭の中で咀嚼するには少し時間が必要だ。今回は、ちょっと混乱気味のCES通信事情と出張モバイルについて考えてみる。

WiMAX不調を乗り切るために

 同じイベントを毎年取材するというのは、ぼくらの商売にとってすごく大事なことだ。イベントそのものが盛り上がっても盛り上がらなくても、相対的な状況を把握しやすいからだ。ぼくにとって、かつてはCOMDEXがその役割を果たしていて、1994年から通い続けていたが、2004年に消滅してしまっている。だから、今は、秋のIDF(Intel Developer Forum)と年初のCESが、ぼくが関わる業界のバロメーターになっている。サンフランシスコとラスベガスという米国を象徴する都市で毎年開催されるというのも比較のしやすさに貢献している。

 さて、渡米前、2012年暮れも押しせまったころから、米国取材中の命綱ともいえるWiMAXの不調が伝わってきた。WiMAX内蔵PCの場合、日本における契約があれば、米国ではClearのネットワークを無料で使えるので実に重宝しているのだが、それができなくなっているというのだ。容量の制限もなく、広帯域のモバイルネットワークが日本にいるときと同じように、しかも特にローミング料金などを支払うことなく使えることの有り難みは絶大だ。本当に頼りにしているのに、それが使えないとなると事態は深刻だ。

 通常は、Clearのネットワークに接続し、初めての接続であればメールアドレスなどを登録後、すぐにインターネットに接続できる。24時間ごとに切断されるが、ブラウザで更新すれば、再び使えるようになる。ところが、この更新処理ができなくなっているというのだ。

 ホテルの部屋の通信も、WiMAXに頼ろうと、専用のPCにUSBのWi-Fiアダプタを増設し、専用ルーターとして使えるような装備も持って来たのだが、使えたのは初日だけで、以降は更新ができなくなってしまった。モバイルノートPCも同様で、使えたのは初日だけだった。

 よりによって、日本人もたくさん渡米するこの時期に不調になってしまったのは不運だ。UQコミュニケーションズとしては、原因究明と事態の収束のためにベストを尽くしているそうだが、解決の見通しはたっていないと聞く。ここは、通信事業者として、なんとしてでも問題を解決してほしいと思う。サービスの提供をやめるというのとは次元が違う話だ。

 そんな情報を得ていたので、予備の通信手段も確保しておいた。1つは、いつも使っているAT&TのプリペイドSIMで、これに1GBのデータパックを追加しておいた。このSIMをスマートフォンに入れてBluetoothでテザリングする。本格的にCESが開幕するまでのプレス向けブリーフィングなどの期間は、これでなんとか凌ぐことができる。

 もう1つの手段は、昨年(2012年)入手した新しい「iPad」(iPad3)で、こちらはVerizonのLTEネットワークを利用できる。ただ、年末に、apple.comで「iPad mini」が、1週間待ちで入手できるとされていたので、オーダーして、滞在するホテルに配達されるように指定しておいた。出発前の情報では到着日の前日に届いているはずだった。

 だが、そうは問屋が卸さずに、年末に中国を出たパッケージは、大阪を経由して、結局、実機が配達されたのはラスベガスに到着して4日目だった。土日がからんだのが痛かった。その間、最初はWiMAXを使い、それが使えなくなった時点でAT&Tの3Gに頼った。

 Webでホテルへの配達を確認して、ビジネスセンターへ取りに行き、無事に入手することができた。ちなみにぼくの滞在しているホテルでは、UPSで配達される宅配便の取り置きには7ドルの手数料が必要だった。

最強のモバイルルーターとしてiPad miniを使う

 届いたiPad miniをスマートフォンのテザリング経由でアクティベートし、モバイルネットワークを登録する。今回は、これだけが頼りで、全ての通信をここに依存することになりそうなので、5GB/50ドルのプランを設定した。何せ、モバイルPCが3台とスマートフォンが1台、そしてiPad mini本体の通信がここに集約されるのだ。メールなども全部の端末が同期するので仕方がない。しかし、3日目にしてすでに半分の約2.5GBを消費している。このまま乗り切れるかどうか心配だ。

 Verizonのプランは購入した容量に達するか30日を経過した時点で、同じ容量のプランに自動更新される。不要な課金が心配な場合は、使い始めた時点でプランをキャンセルしておくといい。キャンセルしても、使用中のプランは容量を使い切るか、30日が経過するまで有効だ。なお、少なくとも新しいiPadでは、日本からでもWi-Fi経由でプランの設定とキャンセルは可能だった。

 ちなみに最後の使用から5カ月を経過するとアカウントが削除されてしまい、SIMは無効となりプランの購入ができなくなってしまう。次の渡米が5カ月目以降になる場合は、無駄を承知で最低料金の1GB/20ドルのプランを購入して無効化を回避するしかないようだ。

 端末は全てBluetoothで接続するように設定した。モバイル端末はLet'snote B10とSX1、富士通のARROWS Tab Wi-Fiを持参している。Windows 8だが、パナソニックのBluetoothは独自スタックでユーティリティを使ってPAN接続、富士通はWindows標準スタックを使い、コントロールパネルの「デバイスとプリンター」経由で接続ができた。同時接続台数は3台までのようだ。

 iPad miniのWi-Fiをオフにした状態で、スマートフォンをBluetoothでつなぎっぱなしにする。PCは時折開いてメモをとったり、メールを書いたり、Webを見たりするのだが、一度接続すれば、スリープから復帰したときに自動的に再接続するので、まるでずっと繋がっていたかのように使える。

 心配していたバッテリだが、こういう使い方でも丸1日は余裕だ。ぼくは、モバイル機器のバッテリ持続時間は16時間が理想だと思っているが、この使い方のiPad miniは十分に期待に応えてくれる。人間がくたくたになってホテルに戻る時間になっても、iPad miniには半分以上バッテリが残っている。さすがに新しいiPadほどではないのだが、これだけもてば十分だ。それに、おまけとして、ずっと通信をiPad miniに頼るスマートフォンもバッテリの心配をしなくてよくなる。自力で3G通信をしているのに対して2倍以上持つからだ。ただ、まれにBluetooth接続が切れてしまっていることがあるので、その時は再接続してやる必要がある。

 iPad miniの重量は300gちょっとだ。日本からの取材陣の多くは、ラスベガスでルーターを調達するなどしていたようだが、モバイルルーターとその稼働時間を延命するためのモバイルバッテリの合計重量を考えれば、カラー液晶までついてアプリまで動くバッテリ超長持ちのルーターとして、予想通り iPad miniは秀逸な存在だ。今年も何度かは米国取材にでかけるはずなので、主要装備の1つとして位置付けることにしたいし、ひょっとしたら日本でも重宝するかもしれない。ただ、それとは別にやはりWiMAXの早期復旧を願いたい。なんといっても無料というのは大きい。

 iPad miniそのものは、よくも悪くも小さなiPadで、個人的には文字が小さすぎて快適に使えるとはいえない。個人的に使っている著名アプリで、iPhone用とiPad用に別アプリとして提供されているのは、One Noteくらいだろうか。ただ、アクセシビリティでズーム機能をオンにしておくと、3本指のダブルタップで画面全体が数10%ズームし、3本指のスワイプでパンできる。iPadアプリを使っているときはこの機能がそれなりに便利なことが分かった。iPhone用のGoogle Mapsを使うときにもスクリーン全体をフルに使えるのがいい。

24型ディスプレイをホテルの部屋に持ち込んだ

 今回は、8泊10日もの長期出張なので、これらの通信装備に加えて、ちょっとしたことを試してみることにした。24型フルHD液晶を持参したのだ。そういうと驚かれるのだが、昨年末にHPから発売された「HP x2401 24インチ スリムボードモニター」(B6R49AA) ならそれができると思ったし、実際にできた。

 発表時に見せてもらったときに、これは使えると思って貸し出しをお願いしたのだが、その直感は当たった。ちゃんとスーツケースに入る。実際には、スーツケースの片側に下着などをいれたビニール袋を敷き、その上にダイソーで100円で購入した大判の発泡スチロールの板を置き、そこにうつぶせになるようにディスプレイをいれる。これで画面は保護できるはずだ。このディスプレイはスタンドを折りたためて全体をフラットな状態にできるので、収納しやすいというメリットもある。理想をいえば電源はACアダプタではなく内蔵してほしかったところだ。もっというなら、ポートレート表示にも対応していればよかったと思う。

 本体の重量は約4.5kgで、ACアダプタをあわせても5kgに満たない。一昔前の大型ノートPCのことを考えれば納得できる軽量さだ。国際線の預け入れ荷物の上限は20kg〜30kg程度なので、ほかの荷物を分散するような工夫をすればなんとかなる。

 モバイル用途の製品ではないので、当然画面は明るく美しい。ノートPCのものとは次元が異なる。個人的には非光沢スクリーンというのも気に入っている。ミーティングなどでちょっとしたプレゼンを見せる際に、ディスプレイやプロジェクタがないようなケースでも役に立ちそうだ。

 滞在先のホテルでは、15.6型ディスプレイのLet'snote B10に、このディスプレイを接続した。置き場所はいろいろ試した末に、部屋にあったアイロン台を使っている。部屋には32型のTVがあって、HDMI入力もあるのだが、作業机からは遠すぎて使えないのがちょっと悔しい。

 ノートPCのディスプレイは、文字が少し小さく感じるので125%スケーリングしている。24型なら100%でいいのだが、Windows 8では、接続したセカンダリディスプレイも同倍率のスケーリングになる。カラーマッチングはディスプレイごとに設定できるのだから、スケーリングもディスプレイごとに独立して設定できればいいのに残念だ。

 そんなわけで、滞在先のホテルとしては、極めて快適な環境を作ることができた。とはいえ、イベント取材の出張は、ホテルにいる時間が少なく、せっかくの環境なのにあまり活用できないのがもったいない。今回は借用したディスプレイを実験的に持参してみたが、企んだ目的を十分に達成できることが分かり、これは購入に値すると感じている。CESでのラスベガスも14年目。いろんなことが変われば変わるものだ。

(山田 祥平)