山田祥平のRe:config.sys

遠くを見ていたVista




 Windows 7 RCの派手なデビューに隠れ、あまり大きな話題になっていないようだが、Windows VistaのService Pack 2が完成したようで、現在、TechNetなどの会員向けに公開されている。適用済みの各エディション with SP2と、32bit & 64bitのSP2をまとめた統合版、どれもISOイメージをダウンロードすることができる。

●ようやく完成したVista

 XPがSP2の時点で大きく安定したように、Vistaも開発完了後、2年半が経過し、SP1を経て、Service Pack 2により、ようやく完成した印象が強い。VistaはSP1で生まれ変わったようによくなったが、今度のSP2では、その安定性がさらに高まったように思う。

 SP2を入れる前と入れたあとで、その見かけの何が変わるわけでもない。でも、ひとつひとつの操作に対する挙動の信頼感が向上している。新たな機能としては、Bluetooth 2.1への対応程度にとどまる地味なSPだが、改良箇所は700カ所に及ぶとされ、さまざまな部分がブラッシュアップされているようだ。なお、一般向けのリリースは、まだ公開日等が決定していないようだ。

 Vistaの開発が完了した2006年11月当時、一般的なWindows XP PCのスペックは、今からでは考えられないほど粗末なものだった。特にメモリは、512MB程度しか搭載していないケースがほとんどではなかったろうか。今から考えれば、Vistaのハードウェア要件は、それほど高いものではなかったように思えるが、翌2007年の春モデルとして、実際にVistaがプレインストールされて出荷されたメーカー製PCのスペックは、カツカツでVistaをようやく動かせる程度のものでしかなかった。

 一方、それから2年半が経過した2009年春時点での現行製品のスペックをみてみると、メモリ2GBは当たり前、グラフィックスは格段に性能が向上し、コンシューマー向けのノートPCやモバイルPCでさえデュアルコアである。そして、価格は当時の半分から1/3程度まで下落している。

●Vistaを取り巻く都市伝説

 Vistaが果たした功績のうち、もっとも大きいものは、ハードウェアスペックの飛躍的な底上げだ。メーカー製PCとしては、どんなにVistaの評判が悪かろうが、量販店頭に並べて売るモデルにVistaをプレインストールしないわけにはいかない。かくして、コンシューマが購入できるPCのOSは、ネットブックの登場までは、Vistaしか選択肢がなかったわけで、最新のPCを手に入れれば、自動的に最新のOSとしてVistaがついてくるという状況が続いていた。それにハードウェアスペックが追いついてきて、Vistaは評判の悪さのわりには、まんざらでもない環境を提供できるようになった。ある意味、Vistaは、当時として分不相応なリソースを要求していただけなのかもしれない。志が高かったともいう。そのおかげで、ハードウェアのスペックが向上し、Windows 7を軽々と動かせるお膳立てができた。もし、これが狙って起こしたお膳立てだったとしたら、などと考えてしまうこともある。そして、PCシーンを様変わりさせたという事実は事実なのだ。

 昨年末のボーナスシーズンあたりにPCを買い換えてVistaを使うようになったユーザーは、どうしてここまでVistaの評判が悪いのか理解に苦しんだかもしれない。「Vistaはよくない」という評判は、いわゆる都市伝説のように広がり、そして、ネットブックのような後ろ向きのプラットフォームで、XPが息を吹き返した。

 それに加えて、企業でのPC利用は、Vistaへの移行がなかなか進まず、いつまでたってもXPが主流だ。ごくごく一般的な社会人なら、会社でPCを使う時間と、自宅でPCを使う時間を比べれば、圧倒的に会社の方が長いはずで、それはXPでPCを使う時間が長いということを意味する。しかも、会社のPCというのは、TCOのために、あれをしてはいけない、これをしてはいけないという究極の管理下にあり、安定して稼働するのは当たり前だ。そういう面でもXPは安心、Vistaはたいへんという都市伝説が蔓延してしまう結果を生んでしまったのだろう。

 こうしたことを考えていくと、つくづくVistaは不幸なOSだと思う。出荷してからはもちろん、そのずっと前のベータ段階から、メインの環境としてVistaを使ってきた立場としては複雑な気持ちになる。個人的には嫌いなOSではないからだ。

 もちろん、VistaはSP1が出るまで、本当に安定せず、理不尽な不具合に頻繁に遭遇し、腹立たしい思いをさせられた。でも、PCのリソースを思いっきり贅沢に使って提供される環境は、XPでは得られないものだった。リソースさえ潤沢なら、Vistaはちゃんと期待に応えてくれるのだ。

 マイクロソフトの反省は、やはり、Vista RTMの完成度の低さにあるのだろう。志は高かったし、OSの世代交代だったから、やるべきことも多かった。だからといって、完成度が未熟なままで許されるはずもない。その反省が、現在の、Windows 7 ベータやRCの完成度につながっている。その挙動を体験すると、テスト環境につきものの、ハラハラ感はないし、あきらめ感を味わうこともない。比較のために、メインの環境は、Vista SP2の状態で、ずっと使い続けるつもりだが、いつまで、7 のRCを入れようという衝動を抑え続けられるか……。

●XPにはそろそろ引退してもらおう

 ネットブックでVistaが満足に動かないのは当たり前だ。リソースがXP時代と同じなのだから、そりゃ、XPを使いたくなるし、XPを使えば快適に使えるだろう。しかも、そのXPは長く使っている会社のXPと同じXPなのだ。ネットブックはネットブックで、安くて、持ち運びができて、個人が使う1+n台目以降のPCの市場が、きちんと存在することを証明した点で、その功績は認めたい。ここで「もしも」を言っても始まらないのだが、ネットブック登場のタイミングとWindows 7登場のタイミングが合致していれば、一気にXPの息の根が止まり、別な意味でのパラダイムシフトが起こっていたかもしれない。

 そろそろXPは引退させてやってもいいんじゃないか。2000の改良版なのだから、ベースはもう10年近く前のOSなのだ。Vista SP2と7 RCの双方を使いながら、つくづくそう思う。古いOSをメインテナンスし、サポートを続けるヒト、カネといったコストが、新世代OSの価格に上積みされるのも、無関係なユーザーにとってはあまりうれしい話ではないはずだ。

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