ジャストシステム、「ATOK監修委員会10周年記念シンポジウム」開催

冒頭で挨拶する浮川和宣代表取締役社長

11月29日開催



 株式会社ジャストシステムは29日、「ATOK監修委員会10周年記念シンポジウム」を開催した。

 ATOK監修委員会は、ジャストシステムの呼びかけにより、国内の有識者を集めて'92年に設立された組織。辞書編纂、変換候補の位置付け、AI変換用例など、ATOKに関するさまざまなテーマについて議論し、製品に反映させていくのが主な目的となっている。'93年発売のATOK8から、その活動内容が反映されているという。

 今回のシンポジウムは、監修委員会の発足10周年を記念して行なわれたもので、「ケータイ言葉から方言まで-デジタル時代の日本語」をテーマとし、委員会メンバーらによってパネルディスカッションなどが行なわれた。

 冒頭ではジャストシステム代表取締役社長 浮川和宣氏が挨拶、「ジャストシステムの日本語入力は当初原始的な単漢字変換からスタートしたが、次第にその規模は大きくなり、社会的な影響力も大きくなってきた。1つの会社ができることには限界があり、このままではマズいと思った。そこで国内の有識者に集まっていただき、ATOK監修委員会を発足することになった」と、委員会発足の経緯を語った。

 また、2002年2月発売予定のATOK15で採用される「方言」への対応については、「日本語入力の辞書はシチュエーションによって変わるべきだ。ATOKはあらゆるユーザーに満足してもらえるものを目指してきたが、ユーザー1人1人に適合したものがあってもいいのではないかと考えた。そこで、その1つのテーマとして「方言」を採用することになった」とその経緯を語った。



基調講演を行なう紀田順一郎氏

 パネルディスカッションに先立って行なわれた基調講演では、評論家で、ATOK監修委員会座長の紀田順一郎氏が登壇し、「グローバリズムと日本語」をテーマとして約1時間にわたり熱弁をふるった。

 そのなかで同氏は主に方言の置かれた現状についてふれ、「方言とはその地域の仲間意識、帰属意識の確認をするようなもの。仲間同士の親密度の保証でもある。そして地域の風土、文化の維持・継承をするためには重要なものだ」と、方言の重要性について強調。

 「2つ以上の言語がある場合、共通語は主、方言は従というように、必ず優劣が付けられてしまう。戦前は方言の撲滅運動など、今の常識では考えられないようなこともやっていたし、関西などを除き、方言を共通語に対して誇らしげにしゃべれる地域は少なく、無意識に共通語に合わせようとしてしまう傾向がある。これは方言を維持していく上で重大な障害となっている」、「地方の経済状況が悪化するにつれ、若者の中央志向が加速し、自然と方言の後継者も減ってきてしまっている」と、方言が現在置かれている厳しい状況についてもふれた。

 「言葉は変化していくもので、それ自体は決して悪いことではない。しかし、現代は、マスメディアなどの影響もあって、変化があまりにも速すぎるのが問題だ。簡単に言葉が変わっていきすぎる」と語り、「現在、日本語には活力がない。日本語を活性化するという方法、共通の意志が欠けているのではないか。言葉を使う側も保守的になりがちだ」、「さまざまな国の言語が飛び交うインターネット時代では、日本語がこのままでやっていけるのかという疑問はある。日本は、多言語を尊重して、いい意味での国際語になるきっかけをつかむようにしなければならない」として基調講演を締めくくった。

□ジャストシステムのホームページ
(11月29日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.justsystem.co.jp/index.html
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【10月25日】ジャストシステム、大阪弁に対応した「ATOK15」を発表
~日本語手書き機能に対応した「ATOK for Palm」も発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011025/just.htm

(2001年11月29日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]

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