NEC、中期経営戦略を発表。半導体事業で4千人規模のリストラ

西垣社長を始めとするNEC各カンパニーの首脳陣

7月31日発表



 NECは31日、「ITスランプの克服と次の成長への飛躍」と題した2001年度中期経営戦略について発表した。

 市況環境の悪化により、2001年第1四半期の業績が悪化、上期の見通しの下方修正と厳しい環境に置かれているものの、昨年来掲げた構造改革が一部で実り始め、「集中と選択、グローバルナンバーワンという戦略の成果が、すっきりとした形で見え始めた」(西垣浩司社長)として、これらの成果と市場環境の変化を捉えた中期経営戦略となっている。

NEC 西垣浩司社長

 西垣浩司社長は、今の状況を「現在のITスランプは、一時的な市況の停滞と見るのではなく、次の新しい時代への立ち上がりに向けた陣痛である」とし、「こうしたスランプの時期であるからこそ、安定的な経営基盤を確保した上で、その先のグローバル競争および成長の準備に力を注ぐ」と中期経営戦略の考え方を示した。

 数値目標としては、現在5兆4,097億円を今後3年間に渡って、年平均成長率6%で拡大し、6兆4,000億円とする一方、営業利益率を3.4%から6.4%に改善する。

 こうしたなか、経営課題となっているのは、やはり半導体分野への取り組みで、半導体事業を担当するNECエレクトロンデバイスにおいては、生産ラインの統合、4,000人規模の人員削減、設備投資の前年度比半減などによって、固定費を7%に削減するといったリストラ策も明らかになった。

○NECソリューションズ

 コンピュータ事業を担当するNECソリューションズは、事業の機軸をソリューション事業に集中させることを明確に打ち出し、なかでも、三井住友銀行による銀行統合、IYバンクでの新規事業の早期立ち上げをトラブルなく遂行した事実をあげ、ミッションクリティカル分野における事業強化を推進する方針を示した。

 官公庁需要に関しても、電子政府への取り組みをはじめ、e-JAPAN構想に関連したビジネスチャンス獲得を積極的に狙っていく考えのほか、企業向けEビジネスソリューションでは、ソニーのAIBOサイトをはじめ76件のECサイト案件の実績などをもとに事業拡大を図っていく考えである。

 また、BIGLOBEをベースとしたEC、コンテンツ事業などの付加価値展開を強化することでのストック型ビジネスの拡大、さらに、サーバー、ストレージ事業を中心としたプラットフォーム事業強化などを掲げた。サーバーでは、「IA-64での世界における主導権を握る」(NECソリューションズ・戸坂馨カンパニー副社長)との抱負を明らかにした。

 また、パーソナル事業では、今年10月に予定している国内パソコン事業の再編により、各組織体がプロフィットセンターとして自己完結した会社を目指す。

 再編では、開発、設計、資材調達、生産を担当するNECカスタムテクニカと、TAやFAXを担当するNECアクセステクニカ(旧・NEC静岡)の2つの独立製造会社に加えて、パーソナル事業の統括と、コマーシャル向け事業に関する新事業創出などを行なう本社パーソナル事業ライン、コンシューマ向けのマーケティング、商品企画、販売を担当するNECカスタマックス(旧NECパーソナルシステム)の4つの体制とする。

 また、現行商品の継続強化による売上げに関しては徐々に縮小傾向とし、その一方で、TVinPC、ホームサーバー、ホームネットワーキング、モバイル端末などのブロードバンド&モバイル時代の新商品/付加価値商品による展開、および、CRMをベースとした新サービス/新販売の創出による売上拡大を目指す。

 現在2兆2,000億円の売上高を年平均6%で成長させ、営業利益率は3.8%から5.7%にまで拡大させる考えだ。

○NECネットワークス

 通信事業を担当するNECネットワークスでは、中長期的にはブロードバンド&モバイル化の進展は続くと予測しているものの、短期的には北米のIT不況の影響、海外における第3世代携帯電話の立ち上がりの遅れなどによって厳しい事業環境が続くと見ている。

 そうしたなか、同社が得意とする領域での市場戦略、製品戦略を強化していく方針だ。 具体的には、光ネットワーク事業において、北米でのインフラ投資が鈍化する一方、アジア、中南米での需要が活発化していることから北米に向けていたリソースをシフト、さらに海底ケーブルで2位、陸上ケーブルで3位という強みを生かして、他社には実現ができない陸海統合ソリューションの提供をすすめるという。

 また、IPv6へ先行的に取り組んでいる実績や通信事業向けビジネスで培ったノウハウによるIPネットワーク事業に力を注ぐほか、NECソリューションズとの連携によりモバイルインターネット領域での世界展開をすすめる。また、北米市場から一度撤退した携帯電話に関しても、「実際には北米地区には技術部門を残しているほか、欧州でも技術者を増員しており、海外市場での2.5G、3Gでの巻き返しを図る」(NECネットワークス・杉山峯夫カンパニー社長)という。

 NECでは、西垣浩司社長の議長のもと、カンパニーを越えた担当者が参加する「移動体戦略会議」を月1回程度のペースで行なっており、PDA、携帯電話、インフラ、サーバーなどの戦略について、方向性を検討しているという。

 NECネットワークスでは、1兆8,000億円の売上高を年平均成長率8%増で見込んでおり営業利益率は現在の4.5%から6.5%に引き上げる。なお、海外事業比率は28%から35%に拡大させる予定だ。

○NECエレクトロンデバイス

 半導体事業を担当するNECエレクトロンデバイスは、今回の中期経営戦略のなかで、大幅な経営改革を迫られることになった。

 '85年にコンピュータスランプと呼ばれる半導体不況があったが、「ITスランプと呼ばれる今回の半導体不況の到来は、'85年の17%減を上回る26%減と試算しており、過去最大の落ち込みになる」(NECエレクトロンデバイス・杉原翰司カンパニー社長)と市況低迷の深刻ぶりを強調する。

 中期経営目標としては、現在の1兆2,000億円を、年平均成長率4%増を目標とし、営業利益率は5.6%から10.8%と2桁台の利益率を目指す計画を立てている。

 これを実現するために、構造改革をすすめる考え。  具体的には、カンパニーの固定費を7%削減するとともに、損益分岐点を約1,000億円引き下げて、効率性の高い経営体質とする。

 主要施策として、生産ラインの整理統合を掲げ、今年上期に実施した米国のローズビル工場からのDRAM撤退および700人規模の削減(1,600人の人員を900人への削減)に続き、今年度下期には英国工場からのDRAM撤退および1,600人の人員を1,000人未満へと削減、月間2万8,000枚(8インチ)の生産能力を1万5,000枚に引き下げる。さらに、上海の合弁会社の増強を凍結する。国内の生産基地に関しても、相模原事業場の6インチ試作ラインの集約、老朽ラインの閉鎖、九州地区の大分、福岡、熊本の3工場の統合決定に続き、山形の山形工場、高畠工場に関しても統合の検討を開始した。

 撤退したDRAMに関しては、日立製作所との合弁会社であるエルピーダメモリに移管し、来年度から製造受託へと事業を縮小、2004年度以降は、エルピーダからの一部組立受託だけに留める。

 さらに、人員削減として、4,000人規模の社員削減を予定しているほか、設備投資は500億円削減し、1,200億円程度に絞り込む。これは前年度比半減となる。

 今回の中期経営戦略は、順調に改善がすすんでいるNECソリューションズ、欧米の需要停滞の影響が予想外に軽微だったNECネットワークス、半導体不況の影響を直接受けたNECエレクトロンデバイスというように、3社3様の結果を反映したものとなった。

 しかし、NECソリューションズでは、サーバー、ストレージの拡大路線が明確に示されているのに対して、パソコン事業に関して、とくに、コンシューマ事業の回復の特効薬が、依然として打ち出し切れていないという感も否めない。CRMをベースとした新サービスや新たな製品群による事業計画の詳細が浮き彫りにされないという点からもそれは明らかだ。

 今後、パソコン事業の明確な指針が提示される必要があるだろう。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/japanese/today/newsrel/0107/3102.html
□関連記事
【7月27日】NEC、初の四半期決算を公開。半導体分野の損失大
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010727/nec2.htm

(2001月7月31日)

[Reported by 大河原克行]

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