TECHXNY/PC EXPOレポート CPU編

各メーカーが最新CPUを搭載ノートパソコンをデモ

会期:6月25~28日

会場:Jacob Javits Center



 Intel、AMD、Transmeta、VIAの各CPUメーカーは、最新のCPUを搭載したシステムを自社ブースに展示している。IntelはモバイルPentium III-Mを参考出品したばかり、TransmetaもTM5800を発表したばかりと、最新のモバイル向けCPUが相次いでデビューしたため、メインテーマはモバイルとなっている。また、TransmetaやVIAのブースでは、自社のCPUが低消費電力であることを利用し、低消費電力サーバーのアピールもされていた。このように、今年のPC EXPOにおけるCPUメーカーのキーワードは「モバイル、低消費電力」の2つであるようだ。


●HP、ソニー、富士通、エイサーの各社がモバイルPentium III-M搭載システムを展示

Intelブース
 IntelはPC EXPOの前日にTualatinのコードネームで知られてきた製造プロセスルールが0.13μmに微細化されたPentium III、「モバイルPentium IIIプロセッサーM」を参考出品したが、同社のブースでもモバイルPentium III-Mを展示、それを搭載した各メーカーのノートパソコンを展示していた。

 Intelのブースでは26日のレポートで触れた富士通とエイサーの両社に加え、別レポートでお伝えしたソニーのバイオノートGRが展示、さらに初公開となるデルコンピュータのLatitudeシリーズが追加されていた。型番はLatitude C610で、システムインフォメーションでCPUIDを確認したところ「Family 6 Model 8 Stepping 10」となっていた。Model 8は現行モバイルPentium IIIを意味しており、CPU自体は現行の0.18μmプロセスのモバイルPentium IIIである可能性が高い。ただし、クロックは933MHzとなっていた。現行のモバイルPentium IIIでは、システムバスのクロックは100MHzとなっており、システムバスのクロックが133MHzとなる933MHzはありえない。となると、チップセット側は133MHzをサポートした製品であるということなのだろうが、CPUは現行のモバイルPentium IIIを利用しているということなのだろう。

デルコンピュータのLatitude C610。Intelの説明員はTualatinだといっていたが、CPUIDで確認する限りはCoppermineだった。ただ、933MHzと現行Coppermineにはないクロックだったので、改良版と言われるCoppermine-Tを搭載している可能性が高い デルコンピュータLatitude C610のシステムインフォメーションによる表示

 このほかにも、HPも、モバイルPentium III-Mを搭載したシステムを展示していた。製品名は「HP OmniBook」とだけ表示されており、こちらのCPUIDは「Family 6 Model 11 Steping 1」となっており、ソニーと同じでこちらは間違いなくモバイルPentium III-Mだろう。なお、クロックは1,066MHzと表示されていた。

 また、Intelのブースには米国では発売されていないThinkPad i Series s30が展示されていた。このs30、同じく展示されていたX20、TransNoteなどは、低電圧版モバイルPentium III 600MHz(X20、TransNote)と、超低電圧版モバイルPentium III 600MHz(s30)のデモとして展示されていたもので、Tualatinが搭載されていた訳ではない。しかし、特に米国では発売されていないs30の注目度は抜群で、多くの来場者が「このThinkPadはなんだ、どこで売られているんだ」という質問を繰り返していた。A4フルサイズが主力の米国市場でも、こうしたノートブックへの注目度はそれなりにあるようだ。

HPのOmniBook(製品名は不明)。モバイルPentium III-M 1.06GHzを搭載 OmniBookのシステムインフォメーション 現時点では日本向けだけの限定モデルとなっているs30は、米国のユーザーも興味津々のよう。ただ、現時点では超低電圧Tualatinは供給されていないため、単なるCoppermineベースの超低電圧Pentium IIIだった


●AMDは発表されたばかりのHPのシステムを展示

HPのリテール向けノートPCであるHP Pavilion N5470。モバイルAthlon 4 1GHzを搭載している
 AMDは、6月初旬のCOMPUTEX TAIPEIでAthlon MPをリリースしたばかりであるため、特に今回は新しい発表などはない。しかし、自社ブースではAthlon MPを搭載したワークステーションや、モバイルAthlon 4を搭載したノートパソコンなどを展示していた。

 今回はHPの新しいモバイルAthlon 4搭載マシン「HP Pavilion N5470」が展示されていた。このHP Pavilion N5470はモバイルAthlon 1GHzを搭載し、チップセットにALiのM1647(つまりはMAGiK 1)、ビデオチップにTrident MicrosystemsのCyberBlade-XPを採用、128MBのSDRAM、DVD-ROM/CD-RWのコンボドライブを搭載しているという。

 見た目は一般的なA4サイズノートパソコンだが、既に米国のHPで販売されており、モバイルAthlon 4 1GHzを搭載したモデルが2,199ドル(日本円で約26万4千円)となっており、モバイルAMD Duron(つまりPalominoをベースにL2キャッシュを64KBに制限したPowerNow!対応のモバイルDuron)も選択することができるということだ。

□製品情報
http://notebooks.hp-at-home.com/products/notebooks/overview.php?modelNumber=n5470


●Transmetaでは324個の高密度サーバーなど展示

Transmetaが発表した0.13μmプロセスのCrusoeのTM5800
 TM5800/5500を初日に発表したばかりのTransmetaはCrusoeを利用したシステムを精力的に展示していた。中でも注目を集めたのはRLXのCrusoeを搭載した高密度サーバーだろう。

 Crusoeサーバーボードをラックに詰め込んだ高密度サーバーで、42Uのラックに実に324ものサーバーボードを詰め込んでいるという。スペックシートによれば、1.72TB(テラバイト=1,000GB)のメインメモリ、3.36TBのハードディスク、1,008個のネットワークポートを備えているという。324個ものサーバーが動作しているというのに、消費電力は5.4KWと、省電力とアピールしていた。


RLXのCrusoeを利用したラックマウントサーバー。324個のCrusoeサーバーで構成されている。光っているLED分サーバーが内蔵されている 内蔵されているCrusoeのサーバーボード。この1つのボードが1つのサーバーとなっている。これが324枚も内蔵されている

一見するとふつうのTablet PCのPaceBook
 また、TransmetaのブースにはPaceBlade TechnologyによるユニークなノートPCライクなPCが展示されている。PaceBookは、本体は液晶つきのペンオペレーションのいわばTablet PCと似ている。CPUにはTM5600の600MHzを採用し、128MBのPC133 SDRAM、20~30GBのHDD、PCカードスロット、12.1インチのTFT液晶ディスプレイを搭載しており、一見してみたところ単なるTablet PCに見える。

 しかし、本製品には赤外線で通信可能なキーボードがついており、付属のレザーケースに入れるとノートPCのように使うことが可能になっているのだ。ケースに入っている状態ではまるでノートPCそのもので、はずすとペンオペレーションのTablet PCになるというコンセプトは、言われてみればなんでもないものだが、まさにコロンブスの卵的発想と言える。

 東芝がDynaBookを発売して以来、ノートパソコンの形といえば、液晶ディスプレイが蓋になっていてこれを閉じるとキーボードが隠れる形、というのがいわば「常識」となっているが、ぜひともほかのメーカーにもチャレンジして欲しいユニークな製品と言える。ただ、現状ではA4サイズよりもかなり大きいサイズとなってしまっているので、できればサブノートやミニノートなどのもうすこし小さい形で登場すれば魅力的な製品となるだろう。

赤外線のキーボードが付属しており、キーボードによるオペレーションも可能
ケースに入れていると、まるでノートパソコンのように使うことができる


●VIAは低消費電力サーバーでC3搭載サーバーシステムをデモ

VIAのC3を搭載した1UサーバーのRauch MedienのGreenServ。システム全体でわずか30Wの電力消費量
 VIA TechnologiesはC3を搭載した1Uラックマウントサーバーをデモ。デモを行なったのはRauch Medienというサーバー・ワークステーションメーカーだ。搭載されていたのは0.15μmのC3プロセッサ(つまりSamuel2コア)で、全体でわずか30WとPCよりも少ない消費電力で動作するという。

 後藤氏のコラム「なぜCrusoeサーバーなのか--それはサーバー密度のため」でも触れているように、最近ではサーバー市場でも消費電力量は焦点の1つになってており、特に1Uラックのようなスペースの限られた環境では、Crusoeのような低消費電力のCPUを利用しようという動きが活発になっており、Intelも高密度サーバー向けCPUのラインナップを充実させようとしている。



 VIAのC3も同じく消費電力が低いCPUであり、そうした用途に使われる動きがでてきてもおかしくない。VIAの子会社でCPUの設計などを行なっているC.J.ホルトス氏は「COMPUTEX TAIPEIの発表会でも述べたように、C3の消費電力はx86プロセッサとしては最も低い部類に入る。既にTransmetaもそうした市場に参入しようとしているが、当社としても需要があると考えており、今後はそうした顧客をサポートしていきたい」と述べ、VIAも高密度サーバーの市場に参入していくという意向を明らかにしている。

 現時点ではVIAはこうしたエンタープライズ市場でほとんど実績が無く、AMDが苦しんでいるのと同じように、当初は苦戦する可能性がある。しかし、これからIntelが参入する高密度サーバーの市場では、条件は同じとも言え、Pentium IIIに比べて省電力の観点からは若干有利なC3にもチャンスがあるとも考えられる。期待したいところだ。

□TECHXNYのホームページ(英文)
http://www.techxny.com/

(2001月6月28日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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