NEC、第1四半期決算で構造改革の効果の兆し
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NEC 松本滋夫取締役専務 |
7月25日発表
日本電気株式会社(NEC)は、2002年度第1四半期の連結決算を発表した。
2002年度第1四半期決算概要 |
売上高は、前年同期比9.2%減の1兆212億円、営業損益はマイナス70億円で赤字、税引き前利益は前年同期比597.3%増の198億円、当期純利益は前年同期比867.0%増の72億円となり、売上高は縮小したものの、収益面での改善が見られるなど、昨年来実施している事業構造改革が徐々に成果を見せはじめていることを示した。
カンパニー別では、NECソリューションズおよびNECエレクトロンデバイスが前年実績を上回る売上高を達成したものの、NECネットワークスが28.9%減のマイナス成長。収益では、NECエレクトロンデバイスがマイナス32億円と引き続き赤字になったが、前年同期に比べて141億円の改善となっている。
NECソリューションズの売上高 |
NECソリューションズは、売上高が前年同期比3%増の4,448億円、営業利益は31億円減の33億円。
中でも、SIサービスおよびソフトウェア事業が前年比10%増の763億円と好調な動きを見せた。通信・メディア、医療市場向けのSIサービスの伸張が目立ったという。また、BIGLOBEのASPコンテンツ事業が貢献したインターネット/サポートサービスは前年同期比24%増の821億円、サーバー/ストレージ/ワークステーション事業は、NTTドコモ向けのオープンサーバーの大型受注案件により前年同期比25%増の820億円とした。
不振が続いているパソコンを中心としたパーソナルプロダクトは、国内および欧州市場の低迷の長期化によって、前年同期比9%減の1,742億円。とくに国内のパソコン出荷台数は10%減の72万台となった。
「パソコンに関しては、中国への生産シフト、群馬の生産拠点のサービスセンター化などの第2次構造改革によって、損益は改善の方向に向かっている。下期には予想通り黒字化するだろう」(松本取締役専務)としたのに加え、「法人向けパソコン需要は昨年に比べて著しく改善しているとはいえないが、個人向けパソコンの業績が回復している」とした。
前年同期に比べて450億円の固定費削減を達成したが、そのうちパソコン事業で40億円の削減を達成、これをさらに推進する考えで、中国からのパソコン完成品の調達比率を現在の25%から下期中には70%に引き上げるなどの施策に取り組む。
「全社規模では中国からの調達金額を昨年度の500億円から今年度は2,000億円規模に拡大する」(松本取締役専務)とした。
NECネットワークスは、売上高で前年同期比29%減の3,301億円、営業利益は259億円減少の53億円。
海洋通信市場、国内通信インフラ市場の停滞によって、ネットワークインフラが前年同期比26%減、国内の携帯電話機事業の低迷により、携帯電話の出荷台数が前年同期比50%減の180万台と低迷したことでモバイルターミナルが45%減の888億円といずれも減少。しかし、構造改革によるコスト削減効果により黒字を維持した。
NECエレクトロンデバイスは、売上高で前年同期比4%増の2,293億円、営業損益は141億円回復して、マイナス32億円。半導体は3%減の1,666億円となったものの、ディスプレイは33%増の291億円、電子部品は21%増の336億円。アジア地域の回復、ゲーム機需要など国内における民生機器需要の回復などのほか、電子部品ではトーキンが連結対象となったことが影響した。
全体の総括として、松本滋夫取締役専務は、「第1四半期は強含みで推移したが、第2四半期以降の不透明感があり、中間期および通期の計画値は変更しない」としたほか、「バランスシートは、依然として脆弱な状況であり、この改善が勝利のための重要な課題」として、総資産回転率、棚卸回転日数の改善、有利子負債の圧縮などをすすめる考えを示した。
一方、NECエレクトロンデバイスの完全分社化を発表していた同社は、同新会社を11月1日付けで設立することなどを明らかにした。
半導体の新会社の社名は「NECエレクトロニクス」で、社長にはNECエレクトロンデバイスのカンパニー社長の戸坂馨氏が就任する予定。資本金は500億円。国内1万8,800人、海外5,200人の合計2万4,000人の社員数を誇る半導体の専業企業が誕生することになる。初年度の売上規模は約7,000億円になる見通し。
新会社の事業内容は、汎用DRAMを除く半導体の研究、開発、製造、販売、サービス。
NECエレクトロニクス社長に就任予定の戸坂馨現 NECエレクトロンデバイス カンパニー社長 | NECエレクトロニクスの概要 |
社長に就任する予定の戸坂氏は、「新会社では、スーパーコンピュータや汎用機、ゲーム機などに向けた先端技術ソリューション、携帯電話、自動社、パソコン用周辺機器向けなどのシステムソリューション、マイコン、ゲートアレイ、ディスクリート汎用アナログ関連などのプラットフォームソリューションの3つのソリューションにフォーカスする」とした上で、「先端技術ソリューションは、最先端ニーズをとらえた新会社のテクノロジードライバーとして位置づけ、全売上の5割を占めると見込まれるシステムソリューションでは売上と収益の中核事業とする。また、短期間で低コストの設計ニーズが見込まれるプラットフォームソリューションでは、全売上の4割を見込み、安定成長、安定収益源の確保を狙う。この分野では、パートナーを通じた販売で売り上げおよびシェア拡大が課題」とした。
また戸坂氏は、ソリューション部門出身らしく、「半導体ソリューション専業企業への発展を狙う」と言明、半導体にかかわるシステム設計、ソフト開発、SE、SI分野への人材シフトの推進、ソリューション構築のための能力開発、教育の推進などをすすめる考えを明らかにするとともに、「顧客視点による全面PULL型オペレーションへの転換」を示し、「これまで半導体の会社ではあまり見られなかった顧客を注視した最適解の提供をすすめたい」と抱負を語った。
□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□決算概要
http://www.nec.co.jp/press/ja/0207/2501.html
□新会社設立のニュースリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0207/2502.html
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アフターサービスの拠点へ転換
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(2002年7月25日)
[Reported by 大河原 克行]
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