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在宅勤務でネットが重い! と思った人向けの入門用Wi-Fiルーター選び

 在宅勤務や自宅での活動が当たり前になった今、「ネットが重い」という悩みを抱えている人も多いことだろう。重い理由はいろいろあるが、見過ごされがちなのが家庭内の通信環境だ。「使っているWi-Fiルーターが古るくないか?」、「IPv6が活かされているか?」。このあたりを疑ってみると解決の糸口が見えてくるはずだ。今回、アイ・オー・データ機器から発売されたエントリー向けWi-Fi 6対応ルーター「WN-DAX1800GR」を使って解決方法を見てみよう。

高速なIPv6接続サービスに注目が集まる

 「夜になると重い」。いや、今では「昼夜問わず重く、ゴールデンタイムは劇的に重い」と言ったところだろうか。ここ数年、インターネット接続の遅さが話題になることが多かったが、在宅勤務や子供達の自宅待機の機会が増えてきた今、より一層、インターネット接続の「重さ」が深刻な状況になってきた。

 単純に利用者が増えてきたこともあるが、Zoomなどのビデオ会議など高い帯域を必要とするサービスの普及もあって、こうした状況がさらに一方悪化した印象だ。

 こうした状況を改善するサービスとして、IPv6を活用したインターネット接続サービスに注目が集まっている。

 従来のインターネット接続サービスでは、設備の制約上、利用者が増えたり、帯域が混雑しても設備を増強することが難しかった。これに対して、IPv6を活用した「v6プラス」や「transix」、「IPv6オプション」、「OCNバーチャルコネクト」などのインターネット接続サービスは、VNE(Virtual Network Enabler)と呼ばれる事業者が管理する設備を利用して、IPv6、およびIPv6上でカプセル化したIPv4を利用したインターネット接続サービスが提供される。

 こうしたサービスは、設備に余裕があるため、混雑時でも速度低下が発生しにくいことから、急速に利用者を増やしている。

 従来のインターネット接続サービスでは、ピーク時に数Mbpsでしか通信できない場合も珍しくなかったが、IPv6接続サービスであれば、混雑時でも数百Mbpsで通信することも可能だ。

 しかしながら、問題は、こうしたサービスの乗り換えた後でも「重い」という声が、ちらほらと聞こえてくることだ。回線は速いはずなのに、なぜ「重い」という状況になってしまうのだろうか?

Wi-Fiルーターが古くないか

 せっかくの高速な回線を活かせていない原因は、大きく2つ考えられる。1つは利用しているWi-Fiルーターが古いことだ。

 たとえば、今から5~6年前に購入したWi-Fiルーターの場合、対応する規格がIEEE 802.11n、もしくはさらに古いIEEE 802.11a/gにしか対応していない可能性がある。

 現在、最新の規格はWi-Fi 6ことIEEE 802.11axで、規格上最大9.6Gbps、実際の製品ベースで最大1.2Gbps~4.8Gbpsの速度で通信できる。

 これに対して、古いWi-Fiルーターの速度は、最大でも、Wi-Fi 4ことIEEE 802.11n対応モデルで300~600Mbps、IEEE 802.11a/gでは54Mbpsとなる。このため、せっかく回線が速くなっても、Wi-Fiがボトルネックになってしまう。

 さすがに、これでは実際に家庭内でPCやスマートフォンを離れた場所でつないだ場合、良くて数十Mbps、悪いと数Mbps程度でしか通信できず、重くなるわけだ。

【表1】Wi-Fiの規格と速度
規格名別名最大速度
IEEE 802.11axWi-Fi 69.6Gbps
IEEE 802.11acWi-Fi 56.9Gbps
IEEE 802.11nWi-FI 4600Mbps
IEEE 802.11a/g-54Mbps
IEEE 802.11b-11Mbps

 Wi-Fi 6は、PCはすでに100機種近く、スマートフォンもiPhone 11やGalaxy S20など、すでに13機種がWi-Fi 6に対応しているので、今後端末を買い換えることも考えると、今ルーターを買うならWi-Fi 6対応以外は考えられない。しかも、Wi-Fi 6対応ルーターは、実売価格で1万円前後のリーズナブルなエントリーモデルが増えてきたことで、誰でも入手しやすい環境も整ってきた。

 今回取り上げるアイ・オー・データ機器の「WN-DAX1800GR」の実売価格は、税別で9,800円前後となっている。

アイ・オー・データ機器の「WN-DAX1800GR」。実売価格は9,800円(税別)とリーズナブルなWi-Fi 6ルーター

 最大速度が1.2Gbps(2ストリーム、80MHz幅)となっており、ハイエンドモデルに比べると速度は控えめだが、前述したWi-Fi 4と比べると倍近い速度で通信できるため、エントリーモデルと言えども高い実力を備えている。

正面
側面
背面

 そもそも、iPhone 11やGalaxy S20などのスマートフォンも、最大速度は1.2Gbpsとなっているため、実用シーンを考えると、過不足ない仕様と言えるだろう。

【表2】WN-DAX1800GRのおもな仕様
対応規格IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax
バンド数2
最大速度2.4GHz=574Mbps、5GHz=1201Mbps
チャネル2.4GHz=1-13ch、5GH=W52/W53/W56(144ch対応)
ストリーム数2
アンテナ内蔵(2本)
WAN1000Mbps×1
LAN1000Mbps×4
動作モードRT/AP
IPv6
IPv4 over IPv6DS-Lite=○、MAP-E=○
WPA3
サイズ(幅×奥行き×高さ)180×120×186mm

 「WN-DAX1800GR」は、Wi-Fi 6でサポートされている「TWT」と呼ばれる機能にも対応しており、子機側のデバイスもTWTに対応していれば、Wi-Fiに接続するスマートフォンなどの消費電力を抑えることも可能となっている。

 これは、例えるなら、ネットワーク上の各端末が自分専用の目覚まし時計を持っているようなものだ。従来のWi-Fi 5以前では、全端末が共通の目覚まし時計を使っていたため、どれか1台端末をスリープから解除するタイミングで他の端末もスリープから復帰していた。これに対して、Wi-Fi 6では、端末ごとにスリープと解除を制御できるため、無駄な通信が発生しない。これにより端末の消費電力を軽減できることになる。

 また、OFDMAという技術もサポートしており、複数台の端末で同時通信した際でも速度が低下しにくい仕様になっている。

 前述したように、在宅勤務が増えた現在では、家庭では家族みんなが、それぞれにスマートフォンやゲーム機、PCを同時に使う環境が増えてきている。こうした状況でもWi-Fi 6対応の「WN-DAX1800GR」であれば、速度が低下しにくいことになる。

IPv6に最適化されているか

 高速な回線を活かせていないもう1つの原因は、現在利用しているWi-FiルーターがIPv6に最適化されていないことだ。一口にIPv6対応Wi-Fiルーターと言っても、製品によって、単純に接続方式に対応しているだけのものと、接続方式への対応に加えてIPv6に「最適化」されているものの2種類がある。

 アイ・オー・データ機器のWN-DAX1800GRは、後者の「最適化」されている製品の1つだ。

 対応プロバイダが豊富で、さまざまなサービスでも利用可能となっているのはもちろんだが、とにかく接続が簡単だ。回線を自動的に判別する機能が搭載されているため、つなぐだけで、v6プラスやtransixの各方式に適した接続方法が自動的に選択されるようになっている。また、IPv6オプション、OCNバーチャルコネクトにも後日対応予定だ。

 「IPv6なのに遅い」という原因に、回線契約はIPv6接続サービスなのに、接続方式に従来のPPPoEを選択してしまっているケースが希に存在するが、WN-DAX1800GRでは、自動的に回線に適した接続方式が選択されるため、こうした間違った設定を回避できるわけだ。

IPv6接続サービスを自動的に判別して接続してくれるため、手間なく接続可能。間違ってPPPoEで接続設定してしまうこともない

 さらに、IPv6の通信を高速化する「IPv6ブースト」も搭載されている。

 これは、Wi-Fiルーター内部でのIPv6の処理を高速化する技術だ。この技術が搭載されていないモデルでは、最大1Gbpsの回線でも通信速度が200Mbps前後で頭打ちになってしまうが、IPv6ブーストのような高速化技術が搭載されているモデルでは、回線速度をフルに活かすことが可能だ。

 IPv6接続サービスが登場した当初(1~2年前)に登場したWi-Fiルーターの場合、こうしたIPv6の高速化技術に対応していないケースがあるので、対応ファームウェアが提供されている場合はアップデートするか、提供されない場合は買い換えを強くおすすめしたいところだ。

便利な機能もプラスされた高コスパモデル

 このように、WN-DAX1800GRは、Wi-Fi 6対応であるだけでなく、IPv6に最適化されたWi-Fiルーターとなっているが、それだけでなく、さらにお得な付加機能も搭載されている。

 具体的には「ネットフィルタリング」だ。違法と思われるサイトや出会い、クラッキングなど、不適切なサイトを検知してアクセスをブロックする機能だが、これを5年間無償で利用することができる。

 こうした機能は、一般的なメーカーでは、ミドルレンジ以上のモデルで搭載されており、エントリーモデルでは省略されてしまうか、簡易的な機能しか搭載されないことが多い。

 これに対して、WN-DAX1800GRでは、アルプスシステムインテグレーションが提供する有料サービスを5年間無料で利用できる。簡易的なサービスや海外製のエンジンを利用するサービスでは、国内の不適切なサイトが見逃されてしまうケースもあるが、本サービスであれば的確に不適切なサイトをブロックできるため、自宅待機の子供にも安心してWi-Fiを使わせることができる。

 もちろん、端末ごとにフィルタリングレベルを切り替えることが可能なので、保護者のPCは制限なく利用可能にし、子供のスマートフォンやゲーム機のみ制限を加えることが可能だ。また、「リモートメンテナンス機能」も搭載し、機能追加などがあった場合は、自動的にファームウェアが更新される。

 このほか、時間を指定して端末のアクセスを制限できるペアレンタルコントロールも可能となっているうえ、こうした機能をスマートフォンからも簡単に設定できるなど、リーズナブルなエントリー向けWi-Fi 6ルーターながら、かなり使いやすい機能を備えている。

 コストパフォーマンスという点では、かなり高いレベルにある製品と言ってよさそうだ。

ネットフィルタリングを5年間無料で利用可能
接続できる時間も端末ごとに制御できる

実際にどれくらい効果があるか

 それでは、実際にWN-DAX1800GRで、どれくらいインターネット接続が快適になるのかを検証してみよう。

 今回は、木造3階建ての筆者宅の1階にWN-DAX1800GRを設置し、2階のリビングからWi-Fi 6対応のiPhone 11を使ってインターネット接続の速度を計測してみた。

 上の画面が、PPPoE接続のインターネット接続環境にWi-Fi 4(IEEE 802.11n 5GHz、最大300Mbps)で接続したさいの速度で、下の画面がIPoE IPv6(transix)のインターネット接続環境にWN-DAX1800GRのWi-Fi 6(5GHz、最大1.2Gbps)で接続したさいの速度だ。

PPPoE+Wi-Fi 4環境(上)とIPv6+Wi-Fi 6環境(下)の速度比較

 回線速度なので、時間帯によって差があるが、今回のテストでは、下り39.7Mbpsだった環境が129Mbpsにまで改善した。3倍ほどの速度向上となった。

 WN-DAX1800GRは、ハイパフォーマンスモデルではないため、ピークパフォーマンスは控えめだが、それでも古い環境に比べると大幅に速度が向上する。360コネクトと呼ばれる独自のアンテナ技術で上下左右奥行き360度の方向に電波を飛ばせるうえ、ビームフォーミングWによって特定端末に向けて電波を集中させることもできるため、どこで使っても、まんべんなく快適な通信速度が得られるという印象だ。

 同社は電波環境を見える化する「Wi-Fiミレル」アプリも提供しているので、これを使って実際に電波環境を確認しながら、WN-DAX1800GRの設置場所を工夫することなども可能だ。

お買い得のWi-Fi 6対応ルーター

 このように、WN-DAX1800GRは、最新のWi-Fi 6に対応し、価格も1万円を切り、IPv6に最適化され、子どもも安心して使え、自宅のネット速度を上げられるなど、コスパに優れた製品だ。

 Wi-Fi 6というとピークパフォーマンスを追求したハイエンドモデルに目がいきがちだが、本製品のように実用的な性能と機能をリーズナブルに手に入れることができる製品も登場してきたのは、消費者にとって歓迎したいところだ。

 在宅勤務や自宅待機で、重要視されるようになってきた自宅の回線環境やWi-Fi環境を見直すさいは、本製品を候補の1つとして検討してみるといいだろう。