レビュー

GeForce RTX 4080 SUPER発売。シリーズ最後となるピースの出来栄えは?

 NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 4080 SUPER」が1月31日、発売される。これにより、NVIDIAが今年1月9日に発表したGeForce RTX 40 SUPERシリーズ3モデルが全てが出揃うことになる。

 発売に先立ち、GeForce RTX 4080 SUPERのFounders Editionをテストする機会が得られたので、国内における税込販売価格が16万2,800円からとされている新型ハイエンドGPUの性能をベンチマークテストで確認する。

999ドルの新型ハイエンド「GeForce RTX 4080 SUPER」

 GeForce RTX 4080 SUPERは、Ada Lovelaceアーキテクチャに基づいてTSMCの4Nプロセスで製造されたGPUコア「AD103」を採用するハイエンドGPU。80基のSMが有効化されており、10,240基のCUDAコアや80基のRTコア、320基のTensorコアなどが利用できる。

 VRAMには23Gbps動作のGDDR6Xメモリを16GB搭載しており、GPUと256bitのメモリインターフェイスで接続することによって約736GB/sのメモリ帯域幅を実現している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TGPは320W。

 GeForce RTX 4080 SUPERのAD103コアはフルスペック仕様で、従来のGeForce RTX 4080よりSMが2基増加したほか、VRAMの速度が22.4Gbpsから23Gbpsに高速化したことで、メモリ帯域幅も微増した。

【表1】GeForce RTX 4080 SUPERの主な仕様
GPUGeForce RTX 4080 SUPERGeForce RTX 4080GeForce RTX 4090
アーキテクチャAda Lovelace (AD103)Ada Lovelace (AD103)Ada Lovelace (AD102)
製造プロセスTSMC 4NTSMC 4NTSMC 4N
SM80基76基128基
CUDAコア10,240基9,728基16,384基
RTコア80基 (第3世代)76基 (第3世代)128基 (第3世代)
Tensorコア320基 (第4世代)304基 (第4世代)512基 (第4世代)
テクスチャユニット320基304基512基
ROPユニット112基112基176基
ベースクロック2,295MHz2,205MHz2,235MHz
ブーストクロック2,550MHz2,505MHz2,520MHz
L2キャッシュ64MB64MB72MB
メモリ容量16GB (GDDR6X)16GB (GDDR6X)24GB (GDDR6X)
メモリスピード23Gbps22.4Gbps21Gbps
メモリインターフェイス256bit256bit384bit
メモリ帯域幅736GB/s716.8GB/s1,008.4GB/s
NVENC第8世代×2基第8世代×2基第8世代×2基
PCI ExpressPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16
消費電力 (TGP)320W320W450W

GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition

 今回テストするのは、NVIDIAより借用したGeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition。

 3スロットを占有する大型GPUクーラーを搭載したカードの設計は、従来のGeForce RTX 4080 Founders Editionを踏襲したものだが、カラーリングが黒一色に変更されている。補助電源コネクタは16ピンで、映像出力端子はHDMI(1基)とDisplayPort(3基)。

GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition
裏面側にはバックプレートと冷却ファンを搭載
GPUクーラーは3スロットを占有する
映像出力端子にはHDMI(1基)とDisplayPort(3基)を搭載
補助電源コネクタは16ピン
8ピン×3本を16ピンに変換するアダプタが付属する
GeForce RTX 4080 Founders Edition(右)との比較。カラーリングが変更された
GeForce RTX 4080 SUPER Founders EditionのGPU-Z実行画面

ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X

 NVIDIAから借用したFounders Editionのほかに、ZOTACからもGeForce RTX 4080 SUPER搭載ビデオカードが届いた。こちらのカードはテストしないが、その外観を写真で紹介しよう。

 ZOTACから届いたカードは、「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X」で、3基の冷却ファンを搭載するGPUクーラーを搭載しているが、占有スロット数は2.5スロットでFounders Editionより薄く軽量だ。GPUやVRAMクロックは定格仕様に準拠している。

 補助電源コネクタは16ピンで、映像出力端子はHDMI 2.1a(1基)とDisplayPort 1.4a(3基)。補助電源用の変換アダプタ(8ピン×3本→16ピン)と、カードを支えるサポートステイが同梱されている。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 SUPER Trinity Black Edition 16GB GDDR6X
基板裏面にはバックプレートを搭載
GPUクーラーは2.5スロットを占有する
映像出力端子にはHDMI 2.1a(1基)とDisplayPort 1.4a(3基)を搭載
補助電源コネクタは16ピン
8ピン×2本を16ピンに変換するアダプタと、GPUサポートステイが付属する

テスト環境と比較用GPU

 GeForce RTX 4080 SUPERを検証するにあたり、比較対象として従来モデルのGeForce RTX 4080とGeForce RTX 4090のFounders Editionを用意した。

 各ビデオカードのテスト時動作仕様は以下の通り。GPUドライバについては、GeForce RTX 4080 SUPERにレビュアー向けの「551.22」、GeForce RTX 4080は「GRD 546.33」、GeForce RTX 4090に「546.65」をそれぞれ導入している。

【表2】各ビデオカードの動作仕様
GPUGeForce RTX 4080 SUPERGeForce RTX 4080GeForce RTX 4090
ビデオカードベンダーNVIDIANVIDIANVIDIA
製品型番Founders EditionFounders EditionFounders Edition
ベースクロック2,295MHz2,205MHz2,235MHz
ブーストクロック2,550MHz2,505MHz2,520MHz
メモリ容量16GB (GDDR6X)16GB (GDDR6X)24GB (GDDR6X)
メモリスピード23Gbps22.4Gbps21Gbps
メモリインターフェイス256bit256bit384bit
メモリ帯域幅736GB/s716.8GB/s1,008.4GB/s
PCI ExpressPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16
Power Limit320W320W450W
温度リミット83℃83℃83℃
Resizable BAR有効有効有効
GPUドライバGRD 551.22 (31.0.15.5122)GRD 546.33 (31.0.15.4633)GRD 546.65 (31.0.15.4665)
GeForce RTX 4080 Founders Edition
GeForce RTX 4080 Founders EditionのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 4090 Founders Edition
GeForce RTX 4090 Founders EditionのGPU-Z実行画面

 各ビデオカードを搭載するベース機材には、Ryzen 7 7800X3Dを搭載したAMD X670E環境を用意した。

 そのほかの機材や条件については以下の通り。

【表3】テスト機材
CPURyzen 7 7800X3D (8コア/16スレッド)
CPUリミット設定PPT=162W、TDC=120A、EDC=180A、TjMax=89℃
CPUクーラーASUS TUF GAMING LC 240 ARGB (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS TUF GAMING X670E-PLUS [UEFI=2214]
メモリDDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V)
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 23H2 (build 22631.3007、VBS有効)
電源プランバランス
計測ラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温約25℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「エーペックスレジェンズ」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」、「サイバーパンク2077」、「Blender Benchmark」、「Cinebench 2024」、「Adobe Camera Raw」。

3DMark

 3DMarkでは、リアルタイムレイトレーシングを含む新世代テストの「Speed Way」、「Port Royal」、「Solar Bay」と、旧世代のテストである「Time Spy」、「Fire Strike」を実行した。

 GeForce RTX 4080 SUPERは、3つの新世代テストにおいてGeForce RTX 4080のスコアを1~2%上回り、GeForce RTX 4090を24~30%下回った。

 一方、旧世代のテストでは、GeForce RTX 4080とほぼ同等のスコアを記録しており、GeForce RTX 4090を10~17%下回っている。

【グラフ01】3DMark「Speed Way」
【グラフ02】3DMark「Port Royal」
【グラフ03】3DMark「Solar Bay」
【グラフ04】3DMark「Time Spy」
【グラフ05】3DMark「Fire Strike」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。スコアと平均フレームレートを比較した。

 フルHDではCPUのボトルネックで全GPUのスコアが横並びとなっており、WQHD以上の解像度でのGeForce RTX 4080 SUPERは、GeForce RTX 4080のスコアを1~2%上回り、GeForce RTX 4090を10~23%下回った。平均フレームレートついてもスコアと同程度の差がついている。

【グラフ06】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」
【グラフ07】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画品質をできる限り高く設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは300fps。

 フルHDでは全てのGPUが上限フレームレートに達して横並びとなっており、WQHD以上の解像度でのGeForce RTX 4080 SUPERは、GeForce RTX 4080を1~2%、GeForce RTX 4090を2~17%下回った。

 従来のGeForce RTX 4080を下回る結果となっているが、フレームレートの計測は多少のブレが生じるものなので、GeForce RTX 4080 SUPERとGeForce RTX 4080が同程度のパフォーマンスを発揮した結果であると捉えるのが妥当だろう。

【グラフ08】エーペックスレジェンズ (v3.0.54.31)

STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール

 STREET FIGHTER 6 ベンチマークツールでは、グラフィックプリセットを最高の「HIGHEST」設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でテストを実行。各シーンの平均フレームレートを比較した。上限フレームレートは「FIGHTING GROUND」が60fps、「BATTLE HUB/WORLD TOUR」が120fps。

 結果として、このテストでは全ての条件で全てのGPUが上限フレームレートを維持しているため、パフォーマンスの差は生じなかった。

【グラフ09】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「フルHD/1080p」
【グラフ10】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「WQHD/1440p」
【グラフ11】STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール「4K/2160p」

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

 ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)で平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは120fps。

 フルHDとWQHDでは、全てのGPUが上限フレームレートをほぼ維持している。差が生じた4Kでは、GeForce RTX 4080 SUPERがGeForce RTX 4080を約1%上回り、GeForce RTX 4090を約2%下回った。

【グラフ12】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON (v50)

サイバーパンク2077

 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度(フルHD/WQHD/4K)でベンチマークモードを実行した。テスト時はDLSS 3による超解像とフレーム生成を有効化しており、超解像の設定はフルHDとWQHDが「クオリティ」、4Kは「パフォーマンス」。

 GeForce RTX 4080 SUPERは、GeForce RTX 4080を1~4%、GeForce RTX 4090を16~28%下回った。

【グラフ13】サイバーパンク2077 (v2.1)

Blender Benchmark

 Blender Benchmarkでは、3つのシーン(monster、junkshop、classroom)をGPUレンダリングした際の速度を比較した。

 GeForce RTX 4080 SUPERのレンダリング速度は、monsterとjunkshopでGeForce RTX 4080を約1%上回り、classroomでは逆に約1%下回った。また、GeForce RTX 4090を23~24%下回っている。

【グラフ14】Blender Benchmark

Cinebench 2024

 Cinebench 2024では、最低実行時間10分でGPUレンダリングを実行した際のスコアを比較した。

 GeForce RTX 4080 SUPERが記録したスコアは「27,551」で、GeForce RTX 4080を約1%上回り、GeForce RTX 4090を約22%下回った。

【グラフ15】Cinebench 2024「GPU」

Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

 Adobe Camera Rawでは、2,400万画素のRAWファイル×20枚に対して「AIノイズ除去(適用量=50)」を実行。1分あたりの処理枚数(Frame per minute)を比較した。

 GeForce RTX 4080 SUPERは分速14.37枚の処理速度を記録。GeForce RTX 4080の14.43をわずかに下回り、GeForce RTX 4090を約24%下回った。

【グラフ16】Adobe Camera Raw「AIノイズ除去」

システム消費電力とワットパフォーマンス

 ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、各ベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した。

 アイドル時消費電力がもっとも低かったのはGeForce RTX 4080の76.5Wで、GeForce RTX 4080 SUPERはそれに次ぐ77.1Wを記録した。ワーストはGeForce RTX 4090の80.0W。

 ベンチマーク実行中の平均消費電力は、GeForce RTX 4080 SUPERが277.3~429.6Wを記録。最小を記録したGeForce RTX 4080の273.8~397.4Wよりやや高い数値となっているが、最大を記録したGeForce RTX 4090の347.7~578.5Wよりはだいぶ低い消費電力だ。

【グラフ17】システム消費電力 (平均/最大)

 ベンチマークスコアを平均消費電力で割ることで求めた各システムの「ワットパフォーマンス」を、GeForce RTX 4080を基準に指数化したものが以下のグラフ。

 GeForce RTX 4080 SUPERのワットパフォーマンスは、GeForce RTX 4080比98~100%というほぼ同等の結果となっている。GeForce RTX 4090についてもGeForce RTX 4080比96~104%となっており、今回テストしたGPUのワットパフォーマンスは同程度であると考えて良さそうだ。

【グラフ18】システムのワットパフォーマンス比較 (GeForce RTX 4080比)

GeForce RTX 4080を置き換えるGeForce RTX 4080 SUPER

 今回実施したテストにおけるGeForce RTX 4080 SUPERのパフォーマンスは、従来のGeForce RTX 4080と同程度と言えるほど近いものとなっている。GPUのネーミングからするともう少し性能向上を期待したいところだが、両GPUのスペック差を考えればおかしな結果ではない。

 NVIDIAはGeForce RTX 4080 SUPERの税込み国内価格を16万2,800円からとしており、これは現在販売されているGeForce RTX 4080の最安値より若干安い。もちろん、この価格で販売されるビデオカードは限定的だろうが、GeForce RTX 4080 SUPER搭載製品の多くは、GeForce RTX 4080搭載製品と全く同じ価格帯に投入されることになるだろう。

 結果として、GeForce RTX 4080 SUPERはGeForce RTX 4080を置き換えるGPUとなりそうだ。基本スペックでGeForce RTX 4080 SUPERが優れていることは確かだが、同価格帯でGeForce RTX 4080が併売されているうちは、ビデオカードのデザインや販売価格といった要素の方に注目すべきなのかもしれない。

頂点の4090に迫る新GPU「GeForce RTX 4080 SUPER」をライブレビュー!【1月31日(水)23時配信開始】
「GeForce RTX 4080 SUPER」をライブ配信でもレビューします。製品の特長、仕様、搭載カードの外観に加えて、従来製品や競合も交えてのベンチマーク結果比較、実動デモなども盛り込んで一気にお届け!解説はGPU解説を得意とするKTU・加藤勝明氏。MCは改造バカこと高橋敏也氏です。(ライブ終了後は即アーカイブをご視聴いただけます)