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装着しっぱなしでも疲れないのが魅力。オープン型イヤフォンおすすめ10選
2024年8月27日 06:27
人気の高いワイヤレスイヤフォンの中で、最近特に注目度を高めているタイプがある。それが「オープン型」と言われるイヤフォンだ。これは、特殊なドライバーや装着方法に工夫を加えたイヤフォンで、耳を塞がないことが大きな特長。一般的なイヤフォンは耳の穴にイヤーチップを介して挿入するタイプ、おおざっぱに言うと耳栓型に分類できる。装着時は耳を塞いでしまうので、イヤフォンからの音以外は耳に入りにくくなり、屋外のような周囲に雑音がいっぱいあるような状況でも音楽に集中できる。良い音をじっくりと聴けるわけだ。
しかし、イヤフォンが普及していくると、イヤフォンをつけっぱなしでいつでも音楽を聴いていたいという人が増えてくる。路上などたくさんの人が往来していて、時には自動車がすぐ側を走るような状況で音楽しか耳に入らないというのは危険だ。また、急に他人から話しかけられたときにも気付かないことが多いし、イヤフォンをしたままでは会話などもしづらい。
そこで登場したのが、耳を塞がない「オープン型」のイヤフォンだ。耳を塞がないので周囲の音はほぼそのまま耳に入り、音楽を聴いたまま会話もできるし、来客があればすぐに気付いて対応できる。ジョギングなど、屋外でスポーツをしながら音楽を楽しみたいという人にも人気だ。
ここでは2製品を実際にレビューしつつ、そのほかにおすすめの8製品を取り上げている。耳を塞がないイヤフォンに興味がある方は参考にしてほしい。
(1) オープン型イヤフォンはダイナミック型と骨伝導型の2種類
(2) Anker Soundcore AeroFit Pro
(3) Shokz OPENRUN PRO
(4) ソニー LinkBuds
(5) Bose Ultra Open EarBuds
(6) HUAWEI FreeClip
(7) JBL SOUNDGEAR SENCE
(8) NTT sonority nwm MBE001
(9) SOUNDPEATS GoFree2
(10) Victor HA-NP150T
(11) Xiaomi Openwear Stereo
オープン型イヤフォンはダイナミック型と骨伝導型の2種類
耳を塞がないオープン型のイヤフォンには、大きく分けて2種類がある。一般的なイヤフォンと同じダイナミック型と骨伝導型だ。
ダイナミック型
ダイナミック型は基本的な仕組みは通常のイヤフォンとほぼ同じで、音を出すドライバーから発せられた音(空気の振動)を耳の穴の奥に届けるタイプ。耳の穴を塞がないので、耳の穴のすぐ近くにドライバーを浮かせておくような特殊な装着方法をする。耳を塞がないので音漏れも生じるが、音の放射方法の工夫やモデルによってはノイズキャンセリングのような仕組みで周囲への音漏れを相殺するような仕組みを持つものもある。
基本的に同じダイナミック型で音が耳に届く仕組みも同じなので、音質的な違いが少ないことが特長。オープン型なので装着感などに違いはあるが、音質の差が少ないので違和感を感じず、いつもの感覚で使える。オープン型を初めて使う人にとっても比較的使いやすいことが特長と言える。
骨伝導型
もう一つの骨伝導型は、頭蓋骨など骨に音を伝えるタイプのイヤフォンだ。骨伝導イヤフォンは技術的には昔からあり、激しい騒音の場所など特殊な場所で使われることが多かった。
ただし、耳(聴覚器官)へ音を伝達する経路がまったく異なるので、音の聞こえ方も違っていて、再生周波数範囲が狭い、大音量が出しにくいなど、音楽用には不向きと言われてきた。現在のものはこうした音質的な不利などはずいぶんと改善されている。だが、聞こえ方には若干の違いもあるので初めての人などは違和感を感じることもある。
逆に長所となると、比較的小さな音量で鮮明に音が伝わる。伝達経路が異なることもあり、周囲の音がかなりやかましいような場所でも音楽が聴き取りやすい。つまり周囲の音に音楽が埋もれてしまわないので、無理に大音量にする必要がない。周囲の音も聞き取りながら音楽をきちんと聴きたいという場合にはよく適しているとも言える。
ダイナミック型と骨伝導型に大きく分けるとこのような違いがあるが、共通する点としては、どちらも決して大音量で音楽に集中するには適していない。ダイナミック型は大音量を出すこともできるが、そのぶん周囲の音が聞き取りづらくなるし、音漏れの心配もある。
骨伝導型は音量には限界があり、特に身体に響くような重低音を存分に感じようとすると違和感が出る場合もある。あくまでも音質を重視して、音楽に集中するような聴き方をするならば通常のイヤフォンのほうが適しているということは覚えておこう。
音質的な違和感もなく、低音も比較的しっかりと鳴る
Anker Soundcore AeroFit Pro
ダイナミック型は種類が豊富だが、人気の高いモデルで音質的にも印象が良かったAnkerのSoundcore AeroFit Proを実際に試してみた。
タイプとしては耳掛け式で、やや大きめなドライバー部は耳の穴の付近に載せるイメージ。耳の穴の中に挿入する音道部分やイヤーピースがなく、耳の上に載ったドライバーから耳の穴に向けて直接音が放射される感じだ。
もちろん、装着しても耳は塞がれず周囲の音は聞こえるし、圧迫感もほとんどなく軽快な装着感だ。イヤフォン自体は左右分離型となっているが、両方を接続するバンドが付属していて、激しい運動などでの脱落防止も万全。
音漏れについては、ドライバーからの音に指向性を持たせて周囲への音漏れを防ぐ仕組みを持っており、イヤフォンのごく近くにまで耳を近づけないと音漏れが気になることはなかった。実用上でも身体が密着するような距離でもない限り音漏れの心配はなさそうだ。
また、一般的なイヤフォンと異なり、ハウジングが耳に密着せず適度な空間を保って浮いている感じなので夏の熱い日でも蒸れるような感じがないのは好ましかった。
通信規格はBluetooth 5.3。対応コーデックはSBC、AACに加えて高音質コーデックのLDACにも対応する。再生時間はイヤフォン単独で最大14時間、充電ケースとの併用で最大46時間(充電時間は約1時間/イヤフォンのみ、約2時間/充電ケース)。アプリによる細かい設定や操作ができるほか、IPX5相当の防水規格に対応する。
ドライバー部分がやや大きめにも感じるが、そのぶん低音もなかなか力強い。装着感は軽快だが髪に触れたときなどにハウジングに手が当たってしまうことが何度かあった。ハウジングが大きいぶんだけ操作もしやすいのでこのあたりは慣れてしまえば問題ない。
クラシックのオーケストラ演奏は低音が出るぶんスケール感や迫力も出る。低音楽器の最低音域のあたりはやや不足も感じるが、これは耳を塞がないタイプの限界もあり仕方のないところ。実音としてはコントラバスの胴の鳴りや大太鼓の力強い響きもきちんと分かる。ビートの効いた曲でも低音はパワフルで低音感を求めるならばこちらのほうが有利だと感じた。
特筆したいのはオープン型ということもあって、音が開放的で広がり感が良好なこと。周囲の音が聞こえることもあって気持ち良く音が広がる感じが好ましい。基本的な音質はクリアでボーカルも鮮明。細かい音はやや周囲の音に埋もれやすいこともあって少し不足しがちだが、くっきりとした音なので不満はない。歌声にコーラスが重なるような曲でもボーカルとコーラスがきれいに分離してハーモニーが美しいし、ニュアンスも良好だ。
はっきりとした音なので楽器の質感もきちんと伝わるし、エネルギー感がしっかりと出るので聴き応えも十分。通常のイヤフォンと音質的な差がまったくないこともあり、違和感もないし十分に楽しめる音質だ。
周囲の音に小さな音が埋もれやすいこともあって音量を大きくしがちだが、そうなると周囲の音が聞き取りにくくなる。音楽優先か周囲の音をきちんと聞くかで音量を調節する必要はある。このあたりでやや音量操作をひんぱんに行なう必要があって少々面倒だと感じることもある。
オープン型のため、最低音域の伸びなど通常のイヤフォンとの違いはあるが、音質的な不満もなく、気軽に使えるモデルだ。ただし、周囲の音と音楽がまざりやすく、音量次第で音楽が聞きづらかったり、周囲の音が聞こえないこともあるので音量調整はわりとシビアになると感じた。
骨伝導型の定番モデル
Shokz OPENRUN PRO
Shokzは骨伝導イヤフォンを長く発売しているメーカーで、OPENRUN PROまさに定番的なモデルだ。独自の骨伝導ドライバーを使用して、音質的にも改善を加えることで骨伝導型にあった違和感を解消し、スポーツはもちろん、ふだんの生活でも使いやすいものになっている。
装着方法は専用のフックを耳に引っかけるような形で、骨伝導ユニットは耳の穴のすぐわき(頬骨の末端)に装着する。装着感は耳の周囲にぴたりとはまる感じで圧迫感はほとんどないが、ずれてしまうような不安感はない。左右のユニットは専用のバンドで結合されていて、片側だけが外れてしまうようなこともない。
機能としては手元(耳の裏側にある本体部)での操作ボタンもあるし、通話用のノイズキャンセリングマイクもあるなど、一般的なTWS(完全分離型ワイヤレスイヤフォン)とほぼ同じ使い方が可能だ。ワイヤレス接続方式はBluetooth 5.1で、バッテリの持続時間は約10時間。5分間の充電で最大1.5時間の使用ができる急速充電機能も備えている。防水・防塵性能はIP55相当となっている。スマホアプリも用意されており、実用上では一般的なイヤフォンとの違いはない。
実際に音を聴いてみよう。通常のイヤフォンと同じ位の音量もきちんと出るので十分な音量が得られないという心配はないだろう。クラシックのオーケストラ演奏を聴いてみると、案外中低域もしっかりと出る。これは第9世代の骨伝導テクノロジー「TurboPitch」を搭載し、2つの低音増強ユニットを内蔵しているため。低音弦の音色もしっかりと出るし、打楽器などの打音もやや軽い感触になるが鳴っているのは分かる。
感心したのは微小音も鮮明に聞こえることで、クラシックでの弱音部の演奏も聞き取りやすい。周囲の音はそのまま聞こえているし、屋外などのうるさい場所で聴いていても、小さな音が周囲の音に埋もれることなく聞き取れる。この聞き取りやすさには感心した。小さな音でもきちんと聞こえるので無理に大きな音を出す必要はなく、適度な音量で鮮明な音を楽しめる。
ビートの効いた音楽やドラムスの力強い演奏を聴くと、低音はやや軽い感触になるのが分かる。クラシックでも雄大なスケール感は多少こぢんまりとしてしまうし、ドラムスの強い打音のエネルギー感などはやや迫力不足にも感じる。音量を上げると低音感は不満がないレベルにまで鳴らすこともできるが、骨伝導ユニットがブルブルと震えているのが分かるので、ちょっと違和感もある。低音をエネルギーたっぷりに聴こうという使い方には合わないタイプだ。
逆に中高域は鮮明で、特にボーカルは発声もしなやかで美しい。頭の中で声が美しく響いているような独特の定位感が気持ち良く、歌声のニュアンスや表情もよく出る。音像定位や音の厚みというと、ダイナミック型のものとは聞こえ方がやや異なるが、フワっと浮かび上がるような独特の感触のボーカルはなかなか好ましい。
小さな音まで鮮明な骨伝導らしい鳴り方は好みの差も分かれそうだが、周囲がうるさい場所でも気軽に音楽を楽しみたいという使い方ではよくマッチしていると思う。周囲の音に音楽が埋もれることもないし、音楽のせいで会話が聞き取りづらいということもなく、音楽のながら聴きを快適に楽しめるのは良い。音質的な違和感や物足りなさを感じることも少ないので、骨伝導型が初めてといった人にも使いやすいモデルだと感じた。
以下は各社から発売されているオープン型イヤフォンを8機種集めて紹介。メーカーや方式などで音質にも違いがあるし、デザインもかなり幅広い。自分の好みに合うモデルを探してみよう。
ソニー LinkBuds
独自のリング型ドライバーユニットを採用。耳にはめ込むダイナミック型だが、中央に穴が空いているので周囲の音もそのまま聞き取れる。同社の上位機と同じ「統合プロセッサーV1」を搭載して高音質を実現。アプリによる設定ではイコライザー機能による音質調整も行なえる。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大17.5時間、クイック充電にも対応する。防滴機能はIPX4相当。
Bose Ultra Open EarBuds
耳掛け式と耳たぶに挟むスタイルが融合した新しいデザインを採用。BOSE独自の「OpenAudioテクノロジー」を搭載。簡単な操作でステレオ再生や3Dオーディオ再生が切り替えできるほか、周囲の騒音に合わせて音量が変化する自動音量調整機能なども備えるなど、ハイテク機能を満載。バッテリ駆動時間は最大7.5時間、IPX4相当の防水規格に対応する。
HUAWEI FreeClip
耳の穴に軽くひっかけて耳たぶで挟むスタイルのダイナミック型。邪魔になりにくい軽快なデザインが大きな特長。コンパクトで独特なスタイルながら激しい運動でも脱落しにくいデザインとなっている。イヤフォンの左右を自動で判定する機能や音漏れ防止のための逆音波システムなどを採用。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大36時間、IP54相当の防塵防滴機能に対応する。
JBL SOUNDGEAR SENCE
耳に載せるように装着する耳掛け式のダイナミック型。イヤフォン本体の角度を4段階で調節でき好みに合わせた快適な付け心地を実現する。別売のネックバンドによる装着などさまざまなスタイルが選べる。JBL独自の低音強化アルゴリズムを採用し、迫力ある音を楽しめる。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大24時間、IP54相当の防水規格に対応する。
NTT sonority nwm MBE001
nwm(ヌーム) MBE001は、耳掛け式で耳の付近に装着するドライバーが比較的コンパクトで装着しやすくなっている。NTT sonorityが開発した音漏れ抑制技術「PSZ」を搭載し、周囲への音漏れを最小限に抑えている。高音質コーデックとしてaptXにも対応している。バッテリ駆動時間は最大6時間、IPX2相当の防水仕様に対応する。
SOUNDPEATS GoFree2
耳掛け式デザインで軽快に装着できるダイナミック型。ドライバーは16.2mmと大型で独自の「ラムダ型音響空間2.0」でクリアな音を再生する。高音質コーデックのLDACに対応し、ハイレゾ相当の高音質で音楽を楽しめる。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大35時間、IPX5相当の防水規格に対応する。
Victor HA-NP150T
耳掛け式で耳の穴の付近にドライバー部を装着するダイナミック型。片側約8gと軽量で装着時の負担を減らしている。大型ユニットの採用で低音の再生能力も高めている。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大38時間、IPX4相当の防滴仕様を採用。音声アシスタント機能の起動にも対応している。
Xiaomi Openwear Stereo
流線形のスマートなデザインを採用した耳掛け式のダイナミック型。音漏れ検知機能を備えたドライバーを使用し、さらにAIノイズリダクション搭載のデュアルマイクを備え、通話時の音漏れを抑えている。17×12mmの大型ドライバーで低音再生能力を向上した。バッテリ駆動時間は充電ケース併用時で最大38.5時間、IP54相当の防塵防水性能に対応している。