やじうまPC Watch

KDDIの公開FTPサーバーに幕。ファイルを高速に届け続けた30年超の軌跡

 KDDI総合研究所の公開(anonymous)FTPサーバーが、2025年6月30日をもって運用を終了した。KDDI Tech noteが7月11日に投稿した記事で、その30年以上の歴史を振り返っている。

 KDDIの公開FTPサーバーは、LinuxやBSDなどのOS、GNUやTeXなどのオープンソースソフトウェアを配布元からコピーして公開するサーバー、いわゆる「ミラーサーバー」である。海外など遠方の配布先ではなく、国内の近いミラーサーバーからファイルを取得することで、高速なダウンロードや負荷分散を実現できる。

 日本国内では、理化学研究所、山形大学、IIJなどが有名だ。ミラーサーバーは、運用している組織が帯域や資源を提供し、インターネット互助の精神で運用されている。KDDI総合研究所の公開FTPサーバーは日本国内では有名なミラーサーバーの1つで、オープンソースソフトウェアを活用してきたユーザーに利用されてきた。

公開FTPサーバーの役割

 KDDI Tech noteの記事内では、この公開FTPサーバーのプロトコルやドメイン、トラフィック、ハードウェアの変遷などが紹介されている。意外(?)なのはハードウェアで、初代はCPUにIntel 486DX2、(実投入された)最終5代目のCPUもIntel Xeon X5690(6コア12スレッド)といった辺りなので、「これなら自宅のPCでも代替できそうだ」と感じる人もいるだろう。ただ、KDDI総合研究所の回線は一般的なベストエフォートではなく、帯域が確保された1Gbpsの回線であるのだが……。

ハードウェアの変遷

 記事の最後で今回、公開FTPサーバーが停止に至った理由が紹介されている。これによれば、某国のハッカー集団が、実運用に向けて動作確認中の6代目公開FTPサーバーへのアクセスに成功したとX(Twitter)上で投稿したとのこと。実際は公開エリアへのアクセスで不正侵入はなかったものの、これが契機となり、以下の理由を踏まえて停止が決定されたという。

  • 公開FTPサーバー運用によるリスクとリターンを判断した会社の方針
  • ハッキング激化によるセキュリティリスクの増加
  • CDNの普及や海外帯域の強化といったネット環境変化に伴う公開FTPサーバーの意義低下
  • 有志による運用維持の困難さ

 KDDIの公開FTPサーバーは、弊誌の読者の中でも、一度は利用したことがあるかもしれない。かくいう筆者も、かつて何度も利用させていただいた。30年以上にわたり運用を続けてこられた皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げたい。