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反物質も重力に引っ張られることが実証

実験を行なったALPHA-g装置(CERN提供)

 あらゆる物質は重力に引っ張られる。では、通常の物質と電荷が逆である反物質もそうなのか? これは1932年に反物質が発見されて以降の謎だったが、このたび、国際研究チーム「ALPHA」が反物質も通常の物質と同様に地球の重力に引っ張られて自由落下することを確認した。

 アインシュタインの一般相対性理論では、反物質も物質と同じ質量を持つことから、物質同様に重力に引っ張られると予想している。しかし、重力は他の基本的な力、たとえば電磁気力と比べはるかに弱いため、素粒子1つ単位で生成される反物質においては、その効果を観測するのが非常に困難。加えて反物質は物質と衝突すると対消滅してしまうため扱いが難しい。

 今回同チームは、負の電荷を持った"反陽子"と正の電荷を持った"反電子"(陽電子)を結合させた"反水素原子"を100個作り、磁気トラップの中に閉じ込めた(反水素は電気的に中性だが、わずかな磁性がある)。

 コンピュータのシミュレーションによると、これを1つずつ放出させ、トラップの上部と下部の電流を弱めていくと、重力の影響で2割は上部に、8割は下部に集まると予測された中、7回の放出試験の結果の平均結果がそのシミュレーションと一致した。つまり、反水素原子が地球の重力によって自由落下した証明となる。

 宇宙は、誕生時に物質と反物質が同じ数だけ生成されたはずだが、物質と反物質に電荷以外の何らかの違いがあるため、物質の方が多く残ったとされているが、その原因はまだ解明されていない。

 今回の研究結果は9月28日付けでNature誌に掲載された。