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Windows business部門担当副社長Bill Veghte氏 |
Microsoftは米ロサンゼルスにおいて、5月11日から15日まで、ITプロフェッショナル向けのカンファレンスtech・edを開催中だ。その初日のオープニング基調講演には、同社Windows business部門担当副社長Bill Veghte氏が登壇、Windows 7の出荷時期見通しなどについてアナウンスした。
●パートナーシップこそが重要な財産
tech・edは17年間も続いてきた、ITエンジニアのためのカンファレンスだ。Microsoftがワールドワイドに展開するカンファレンスには、デベロッパーのためのPDC、ハードウェアエンジニアのためのWinHECがあるが、それらと並ぶものだと考えることができる。ちなみに、edは、エデュケーションを意味し、その統合ポータルサイトとして、techNetを擁する。
「Moving Forward Together The Potential IT」と題した基調講演のために、ステージに登壇したVeghte氏は、まず、会場の7,000人の観衆に、これまでの支援に対する感謝の言葉を述べたあと本題に入っていった。
Veghte氏によれば、Microsoftは不況の時代にもかかわらず、研究開発予算を増加させているという。そもそも、現在のITコンセプトを支えるダイナミックITの振り子は2003年のWindows Server 2003で振られはじめ、今はエンドユーザーに向けたバックスウィングの時期に入っているという。そのような状況だからこそ、Veghte氏は、パートナーシップとフィードバックが、自分たちMicrosoftにとっての重要な資産だと明言する。
ここで、最初の発表として、SQL Server 2008 R2のテクニカルプレビューが、今年の第2四半期に登場することがアナウンスされ、さらに、Office 2010のテクニカルプレビューを7月に公開することが告げられた。そして、tech・edの参加者が最初のユーザーになると約束された。実際、tech・ed参加者のためのイベントポータルサイトには、スペシャルオファーのバナーが置かれ、そこから、テクニカルプレビューの招待を申し込むことができるようになっている。
●Windows 7はパートナーとの共同作業Veghte氏は、観衆に対してWindows 7のRCをぜひ使ってほしいと懇願し、そのテレメトリデータは開発の進捗に実に効果的で、これまで約1,000万のデバイスにインストールされたベータビルドでは、そのデータがきわめて有用だったことを報告した。
また、すでにWindows Logoプログラムを通過した2つのソフトウェアがあることをアピールした。それは、グラフィックスドライバであり、現在のWindows 7がRTMでもなく、GAでもなく、RCの段階で、こうしたソフトウェアがあることを強調した。氏によれば、RCではショーストッパー、すなわちブルースクリーン等の致命的なクラッシュを体験することはないだろうということだ。
続いてVeghte氏は、もう1つの重要なコアパートナーとしてIntelを紹介した。Intelとの協業では、Windows 7の計画段階からコアとチップセットに深く関わるパワーマネジメントの実装で緻密な協力体制を維持してきたという。
また、NehalemのマルチコアシステムとHyper-Threadingの活用に関しても、Intelの協力体制を活かし、Windows 7のスケジューラが、これらの機能を最大限に活用し、より優れたエクスペリエンスを実現していることを明かした。
そして、Windows 7とWindows Server 2008 R2の組み合わせによるダイレクトアクセスとブランチキャッシュの有用性をアピールしたあと、自ら、Windows 7のデモンストレーションに移った。
●親しみやすさと対話性に富むWindows 7デモ中には、Veghte氏は、Windows 7を何度もVistaと言い間違えて観衆の笑いを誘うのが印象的だった。
ともあれ、論旨はWindows 7はさまざまな観点から優れているということであり、親しみやすさと対話性に富んでいることが強調された。
たとえば、基調講演の会場にいるようなユーザーは1つのセッションで30程度のウィンドウを開き、任意の時点では15から20あるいは30のウィンドウがを開いているのが普通だ。ごく一般的なユーザーでも5から20のウィンドウを開いている。
その開いたウィンドウの数が作業効率を抑制する結果につながっているのが問題だが、Windows 7では、それらのウィンドウを最小化してしまっても、タスクバーボタンにポインタを重ねてウィンドウ内容のサムネールが表示されるAeroプレビューで対話できるため、自分の作業を見失うことはなく、さらに、タスクバーボタンの右クリックによって表示されるジャンプリストが、最短の手順で作業を進められるようにお膳立てをしてくれることを見せた。
ちなみに、このデモンストレーションは、Office 2010のスニークプレビューでもあった。Windows 7の魅力は、完全にジャンプリストに対応するOffice 2010によって、さらにパワーアップするということだった。その詳細に関しては、7月のテクニカルプレビューまでのお楽しみだ。
また、Veghte氏は、PCの実行率についても触れ、それを60%程度に上げることを目指しているという。特に、ユーザーは、ウィンドウの再配置に相当の時間をかけていることに注目、Windows 7に実装されたAeroスナップを披露、ウィンドウをデスクトップの左右上端にスナップすることで、最適化されたサイズになり、それがPCの実行率の向上に貢献するはずだとアピールした。
そのあと、テクニカルフェローのMark Russinovich氏が登壇、補足のデモンストレーションが披露された。
●Windows 7はホリデーシーズンの出荷に向けて順調に開発が進むWindows 7はホリデーシーズンの出荷 |
Russinovich氏のデモをはさみ、再びステージに登場したVeghte氏は、重ねてフィードバックの重要性を告げ、観衆に向かってRCを使ってほしいと訴えた。
そして、Windows 7は、ホリデーシーズンに出荷される見込みであることを表明した。MicrosoftがWindows 7の出荷時期を具体的に告げるのは初めてのことになる。ただし、クオリティが優先で予定は予定であることを述べたものの、開発のプロセスは良好に進んでいると付け加えた。また、秋のPDCではSDKを配布して体制は完璧になることをアナウンスし、同時にリリースとなるWindows Server 2008 R2のデモンストレーションをはさんでステージを降りた。
(2009年 5月 13日)
[Reported by 山田 祥平]