イベントレポート

タッチでレンズが駆動して切り替わる、遠近両用メガネ

TouchFocus

 CEATEC JAPAN 2018の会場で意外な盛り上がり見せたのが、三井化学株式会社の遠近両用メガネ「TouchFocus」のブースだ。

 筆者は近視だがまだ老眼ではないので、遠近両用メガネを使う機会がないのだが、三井化学によると、一般的な遠近両用メガネは、遠方/中間/近方のすべてに対応する異なる度数のレンズが1枚のレンズに集約されているため、レンズ内の度数の変化が大きく、視界の歪みも大きくなるという。

 これにより「特定の距離がきれいに見えない」、「階段や運転時に距離感がつかめない」、「視線の移動が大変」といった現象が発生し、目の疲れや気分が悪くなるといった症状を引き起こす原因になるという。

 そこでTouchFocusでは、レンズの下部分に、オン/オフで中間/近方を切り替える「液晶レンズ」を封止。オフ時では遠方と中間が見やすく、オン時では液晶レンズが入っている「リーディングゾーン」が近方のものを拡大して見やすくする仕組みとなっている。

 具体的な構造はこうだ。本レンズは9層構造となっており、レンズ内には度数を実現する回折構造が刻まれ、液晶を閉じ込める。オフ時は液晶の屈折率がレンズ材料であるMR-10(屈折率1.67)と一致しているため回折構造を感じないが、オン時は液晶分子が垂直配列となり、液晶の実効屈折率が1.53へと変化。液晶とレンズ材料の屈折率の差、そして度数を実現する回折構造により、電子的に近方度数を実現する仕組みとなっている。

 なお、オン/オフに関しては、ツルの部分に内蔵されているシェブロン(紋章)形状のタッチセンサーに約1秒触れることで切り替わる。バッテリはツルの後方に搭載され、着脱式となっており、USB Type-A接続の充電器で充電を行なう。4時間の充電で約10時間の連続使用ができ、1日平均1時間の利用であれば、1週間程度利用できるとしている。

光の当たり具合によっては、下部の「リーディングゾーン」に搭載された液晶と回折構造が確認できる
右側面のシェブロンを1秒タッチすると液晶レンズのオン/オフが行なわれる

 フレームのデザインは「T」、「P」、「C」の3種類で、色は20種類から選べる。デザインはIDEOと共同で開発したという。筆者も試しにかけてみたところ、通常のメガネとさほど変わらない装着感であることが確認できた。

 ちなみに気になるお値段は、税別25万円となかなか高級な部類だ。とは言え、かなりユニークなアプローチであるのも確かで、遠近両用メガネで困っている読者はぜひ実際にブースを訪れ体感してみてほしい。

基本的に右のツルの部分に回路などを搭載しているようだ
バッテリは着脱式で、USBで充電する
別のフレームデザイン