マイクロソフト、Windows 7のアクセシビリティに対する説明会を実施

Windows 7の周辺機器及びソフトの対応状況

10月19日 開催



 マイクロソフト株式会社は10月19日、Windows 7における、障碍者や高齢者などがより簡単にPCを使いこなすためのアクセシビリティ機能への取り組みに関する説明会を開催した。 

 マイクロソフトではアクセシビリティ対応を、製品開発における社会的責任(Trustworthy Computing)の1つと捉えている。

 「OSの中でさまざまなプログラムが動いているが、全ての機能を読み上げソフトで読み上げることができる、点字ソフトで点字印刷を行なうことができるといったことを実現する必要があり、さらに最近増加している写真、動画といったリッチコンテンツについてもどんなものが表示されているのかといった説明をきちんと行なう必要がある」(マイクロソフト 最高技術責任者 加治佐俊一氏)。

マイクロソフト 最高技術責任者 加治佐俊一氏社会を取り巻く環境マイクロソフトの製品開発における社会的責任

 Windows 7のアクセシビリティ機能としては、(1)コンピューターの簡単操作センターとして、PCを使いやすくするための機能を1カ所に集約し、目的別にわかりやすい設定を実現、(2)拡大鏡機能は、Windows 7どの画面からでもキーボード操作によるショートカットで起動。表示も「全画面表示」、「レンズ」、「固定」を用意、(3)スクリーンキーボードを搭載し、大きさの変更、タッチ機能にも対応。1つの入力信号で文字入力を可能に、(4)快適なデスクトップ環境として、マウスやキーボードの操作が難しい人でも少ない操作で快適なデスクトップ環境を提供の4点が搭載されている。

マイクロソフトのアクセシビリティへの取り組みWindows 7のアクセシビリティ機能1カ所に集約されたコンピューターの簡単操作センター
どの画面からもキーボード操作だけで起動できるようになった拡大鏡大きさの変更が可能となったスクリーンキーボード

 「Windows 7はこれまでの製品の中で最もお客様の声を聞いて使いやすくなった製品。具体的な改善としては、拡大機能についてはいちいちメニューをたどって起動するのは面倒という声が多く、OSレベルで対応することで、どこにいてもすぐに起動できるよう改善した。また、フォントの表示サイズについても、さまざまな解像度のPCが出ているにもかかわらず大きさが固定されているのは不満という声が多かったために、自由に大きさを変えられるように変更している」(加治佐氏)。

 アクセシビリティ機能に対応したソフトウェア、ハードウェアを開発しているサードパーティーとの連携についても強化。マイクロソフトが障碍者支援のための技術開発を行なっている企業および団体向けに提供するプログラム「Microsoft Assistive Technology Vendor Program(略称=MATvp)」に参加する日本のパートナーは、Windows Vistaの時点では9だったが、今回は25に拡大している。

 このプログラムに参加しているのは、アイネット株式会社、株式会社アメディア、アライド・ブレインズ株式会社、株式会社エーアンドエム、有限会社エクストラ、NECパーソナルプロダクツ株式会社、クリエートシステム開発株式会社、ケージーエス株式会社、株式会社高知システム開発、特定非営利活動法人 サイエンス・アクセシビリティ・ネット、静岡県立大学、JOHNAN株式会社、株式会社スカイフィッシュ、有限会社ストラトゲイト、「できマウス。」プロジェクト、テクノツール株式会社、東京大学 先端科学技術研究センター バリアフリー系、株式会社ナレッジクリエーション、HeartyLadder Labo.、株式会社日立ケーイーシステムズ、株式会社日立製作所、富士通デザイン株式会社、特定非営利活動法人 みんなのICT、株式会社ユニプラン、株式会社両備システムソリューションズの25団体。

マイクロソフト株式会社 コマーシャルWindows本部 中川哲本部長全世界で実施されているアクセシビリティ支援技術開発を行なう企業や団体向けプログラムMATvp日本におけるMATvpメンバー

 Windows 7が発売する10月22日には、クリエートシステム開発の音声合成・認識プログラム「ドキュメントトーカ」、JOHANの「ほんほんらんど シリーズ」、ストラトゲイトの直交ローラー操作方式マウス「かおマウス」、テクノツールの「あいうえおキーボード」など、高知システム開発の画面情報読み上げソフト「PC-Talker」、スカイフィッシュの読み上げソフト「FocusTalk」、「できマウス。」プロジェクトの身体の残存機能を活用してPCを操作する機器やソフトウェアが対応製品が発売される。

日立製作所「伝の心」テクノツール「あいうえおキーボード」、「小型ひらがなキーボード」ストラトゲイト「かおマウス」
スカイフィッシュ「FocusTalk」ケージーエス「点字ディスプレイ ブレイルノート460」JOHAN 楽しくまなべる「ぼんぼんらんど シリーズ」

 「さらに年内だけで5パートナーからも製品が出荷予定となっており、マイクロソフトだけでは実現できないソフトやハードをパートナーの皆様に、開発していただくことで、より多くの方が簡単にPCに触れてもらう機会を作っていきたい」(マイクロソフト コマーシャルWindows本部・中川哲本部長)。

 なお、アクセシビリティ製品以外のものも含めたWindows 7対応のソフト、ハードの対応状況は好調で、「10月19日現在でソフトウェアパートナーが164社、ソフトが1,622種類、周辺機器パートナー50社、ハードが4,141種類が既に対応しており、Windows Vistaの時の2.5倍以上となっている」(中川本部長)ことも明らかにされた。

 MATvpに参加する日本のパートナー代表として、身体の不自由な人が意志を伝達するための装置「伝の心」を開発する日立製作所 新事業開発本部 アクセシビリティ推進グループの小澤邦昭氏がWindows 7に対する期待を述べた。

 「我々の製品は筋萎縮性側索硬化症という身体が自由に動かなくなる病気にかかった社員がいたことから、'92年に開発をはじめ、'97年に製品化した。身体の中で動く箇所を使ってスイッチを押し、PCを操作する。ベッドの上で動けない状態にある人が、家族や同じ病気にかかった人とメールのやり取りを行なうといったコミュニケーションに活用できるもので、現在では文字の入力だけでなく、メールの送受信やホームページ閲覧といった機能を持っている。来年のできるだけ早い時期にWindows 7対応を行なう計画だが、あるメニュー部分がどうしても表示することができず、マイクロソフトと交渉を行なったところ、米本社とやり取りしてプログラムに組み込めるサンプルをもらうといったやり取りをした」と語った。

日立製作所 新事業開発本部 アクセシビリティ推進グループ小澤邦昭氏日立製作所が開発している身体の不自由な人向け意思伝達支援装置「伝の心」伝の心の使用場面

 マイクロソフトでは、こうした取り組みと共に、(1)マイクロソフトとパートナーとの連携により、障碍のある方へのICTサポートを行なう方や高齢者を対象とした「 Windows 7 のハンズオンセミナー」を10月17日から順次実施し、Windows 7のアクセシビリティ機能についてまとめた「アクセシビリティ ガイドブック」を、Webサイトを通じて、無償提供、(2)Windows 7に搭載されている、視覚障碍者向け音声読み上げソフト「ナレーター」機能で利用できる日本語の音声合成エンジンを、視覚障碍者向けのITサポートを実施している人や、視覚障碍者を対象に、数量限定で無償提供、(3)視覚に障碍があり、音声読み上げソフトのみでWindows 7を利用する人向けに、社会福祉法人 日本盲人職能開発センター協力のもと、「視覚障碍者向け Windows 7 簡易マニュアル」を作成し、Webサイトを通じて無償提供する。

 マイクロソフトでは、Windows 7が実現した機能拡大や、支援策を強化していくことで、障碍者や高齢者のPC利用環境充実をはかる方針だ。

Windows 7発売時のアクセシビリティ製品の出荷状況無料で配布される「アクセシビリティガイドブック」。ショートカットキーの一覧も紹介されている

(2009年 10月 20日)

[Reported by 三浦 優子]