NECは19日、個人向けPCの夏モデルを発表。これに合わせて都内で新製品発表会を開催した。
夏モデルでは、高性能な「LaVie L」シリーズのほか、スリム化した15.6型ワイドノート「LaVie S」を追加するなど、エントリー向けラインナップの強化を図った。また、VALUESTAR EシリーズがNシリーズへ統合されたことや、LuiクライアントソフトがLaVie Light全モデルに搭載されたことなどがトピックとなっている。詳細については関連記事を参照されたい。
●3つの強化ポイントで月間12万台の出荷を目指すNECパーソナルプロダクツ 執行役員常務 高塚栄氏 |
発表会の冒頭では、NECパーソナルプロダクツ 執行役員常務 高塚栄氏が挨拶。同氏はまず2009年度の実績を振り返り、「2009年度の上期は世界同時不況によりかなり厳しかったが、下期はWindows 7や学校などでのIT教育需要、中堅企業のPC入れ替えなどがあり、在庫部材が不足するほど好調だった。個人向けで言えば、PCはエコポイント対象外だったものの、3月はかなり盛り上がった。2010年度もこの回復基調が続くことに期待したい」とした。
夏モデルのポイントは主に3つ。1つ目はスタイリッシュなLaVie Sの投入。高塚氏は、「ノートPCをメインに使っているエントリーユーザーにヒアリングしてみると、“機能は充実しているが、ちょっとスタイリッシュではない。カラーバリエーションも1色しかない”という声が多かった。今回のLaVie Sではより薄型で、さまざまなカラーバリエーションを用意することで、これらのエントリーユーザーのニーズにも応えていきたい」とした。
2つ目は地デジ機能の強化。一体型PCでTVを個室で観るトレンドは定着してきており、一定の成功を収めているという。しかし、個室で大きな画面だけでなく、持ち運んでどこでも観られるニーズもあったため、今回LaVie MにもWireless TVモデルを投入した。また、外に持ち運んでも録画番組を観られる機能なども重点的にアピールしていく。
3つ目はLaVie Lightの、WiMAXとLuiクライアントソフトの全モデルへの導入。LaVie Lightは外出先に気軽に持ち運べる携帯性を持つが、「いつでもどこでもメインのPCの機能や性能を活用したい」というユーザーのニーズに応えた。また、7月にはサーバー側のソフトもアップデートし、専用ハードウェアなしでアクセスできるようにするアップデートを提供する予定で、さらなる利便性の向上を図るという。
高塚氏は、「これらの新製品の提供により、エントリーユーザーを中心とした市場拡大を目指し、月間12万台の出荷を目指す」と述べた。
●新製品の特徴
新製品の特徴については、同社 商品企画開発本部 本部長の渡邉敏博氏が説明にあたった。
新製品のLaVie Sについては、LaVie Lと比較して13%薄くし、奥行きも18mm短くしたことでよりスタイリッシュになったと強調。また、エアリーブルー、 ラズベリーレッド、スノーホワイト、エスプレッソブラックの4色展開で、さまざまなユーザー層に訴求していきたいとした。
さらに、Core i5/i3や64bit/32bitセレクトOS(標準は64bit)などを搭載しLシリーズ相当のCPU性能を維持したほか、テンキー付きキーボード、電源がOFFの時でもUSBデバイスに給電できる機能など、NECならではの機能を継承した。
LaVie Sを手にする渡邉敏博氏 | 2010年夏モデルの強化ポイント | LaVie Sの主な特徴 |
スタイリッシュな筐体を採用 | テンキー付きキーボードやUSBパワーオフ充電はLaVie Lを継承 |
CULV CPU搭載の「LaVie M」は、Wireless TV対応モデルが目新しい。従来はLaVie Lのみでの展開だったが、モバイルラインナップにも展開することで、外出先でも気軽に録画番組を楽しめるとした。
渡邉氏は、「標準のB-CASカードだと地デジ/BS/CSの3波が受信できるが、カードが大きいため、LaVie Mのようなフォームファクタには収まらない。一方、mini B-CASも登場しているが、これは地デジ1波しか受信できない。その点、Wireless TVであれば、コンパクトなLaVie Mで3波の放送が楽しめる」とした。
また、B-CASの情報を本体内に記憶することで、Wireless TVと通信できない環境でも録画番組の再生ができる機能、5.2GHz帯と2.4GHz帯の混信を避けて通信する機能、バンド幅が狭くなったときに画質を落としてスムーズな転送を維持する機能などを搭載するのも、NECの独自技術だとアピールした。
3波対応のB-CASカードをモバイルで観られるWireless TV | LaVie Mの主な特徴 |
音声出力を維持しつつ再生速度を変更する「きこえる変速再生」 | CMへの自動チャプタ付与や高画質化した「外でもVIDEO」機能 |
このほか新機能として、再生速度を8段階に調節できる「きこえる変速再生」、CMと本編の間の無音部分を自動的に解析してチャプタ情報を付与する「オートチャプタ機能」を追加。さらに、640×360ドット/30fpsでmicroSDなどに録画番組を転送して携帯電話などで鑑賞できる「外でもVIDEO」機能の強化を図った。
このほか、LaVie LightへのWiMAX/Luiクライアントの全面採用、LaVie Lightを除くすべてのモデルへの64bit OSの標準採用、LaVie LのUSB 3.0搭載モデルの拡大なども紹介された。
LaVie Lightの主な特徴 | Luiクライアント機能の全モデル展開 |
LaVie Lの主な特徴 | デスクトップPCも含めた共通の強化点 |
質疑応答では、「iPadのようなタッチスクリーンをメインとするデバイスをNECがどう捉えているか」という質問がなされ、高塚氏は、「タッチパネルの標準対応はWindows 7のトピックでもあり、我々もデスクトップでは展開している。一方、モバイル環境においてはマウスが使えず、これまでスライドパッドなどで対応してきたが、画面に直接触れて操作できるタッチパネルは良い解決策だと考えている。しかし、1つはコストとの兼ね合い、もう1つはタッチパネルを活かすアプリケーションが登場しないことには、実現が難しいと考えており、コストとアプリのタイミングがあったときに、市場へ投入していきたい」と答えた。
また、マイクロソフトが提唱している3スクリーン(PC、携帯電話、TV)の融合について、高塚氏は、「我々のPC開発部隊と携帯電話開発部隊はビジネスユニットとして1つであり、月に1回お互いの商品に関する議論を行なっている。マイクロソフトが提唱するものに沿うかどうかわからないし、現時点では詳細を語れないが、早期にPCと携帯電話が融合した使い方を提案していきたい」とした。
発表会の会場では、新製品のほかに、3D液晶ディスプレイを搭載した一体型PCを参考展示。詳細スペックは不明だが、偏光式の液晶ディスプレイとメガネを組み合わせた製品で、VALUESTAR Nをベースとしていた。投入時期については「2010年度上半期中」としており、3D Blu-rayなどの3Dコンテンツの登場を見込んだ製品と思われる。価格について高塚氏は、「過去に3D液晶を搭載したモデルもあったが、当時はコンテンツもなく、なおかつ40万円していたので、個人は手が出しにくかった。今回の製品は、我々が現在提供している通常モデルから、プラス1万円~2万円程度で提供していきたい」と述べた。
(2010年 4月 19日)
[Reported by 劉 尭]