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キャンペーンサイト生成も商標チェックもAIが実行。Adobeが開発中の機能がSneaksで公開

Adobe SummitのSneaksの様子

 米Adobeは、3月26日~28日(現地時間)にデジタルマーケティングに関する年次イベント「Adobe Summit」を、ネバダ州ラスベガス市において開催している。Adobe Summitで最も人気を集めるイベントの1つが、「Sneaks」(スニークス)と呼ばれるイベントだ。

 SneaksはAdobeのもう1つの年次イベント「Adobe MAX」でも人気で、Adobeが開発中の製品をチラ見せして、観客がそれをビール片手に見るというユニークなイベントになっている。今回のSummitのSneaksでは、同社が開発中の製品/機能が7つ紹介された。

バスケットボール界の伝説的選手であり、起業家、メディアパーソナリティーでもあるシャキール・オニール氏(左)と、Adobe エバンジェリスト エリック・マティソフ氏(右)の2人が司会で行なわれた

 Adobeでは開発中の製品を「Project xxxx」というコードネームで呼んでいる。Lightroom CCは製品になる前は「Project Nimbus」と、Premiere Rushは「Project Rush」と呼ばれていた。そうしたことからも分かるように、Project xxxxの名称がつけられ、Sneaksで紹介される開発中の製品は、将来実際に製品として、あるいは製品の新機能の一部として登場する可能性が高い。

Project Perfect Plays

Project Perfect Plays(写真提供: Adobe)

 企業はさまざまなマーケティング施策を常時行なっているが、計画を立ててから実施するまでに長い時間がかかる場合がある。Project Perfect Playsはその行動計画を立てる時間を、生成AIを利用して短縮し、マーケティング施策までのリードタイムを短縮する。

プロンプトにマーケティング施策の目的や概要などを入力する(写真提供: Adobe)

 マーケティング担当者は、マーケティング施策の目的や概要を入力したり、それらの資料などをアップロードする。すると、あとはボタンをクリックするだけで、ターゲットとなる顧客層、戦略、目標などを含む行動計画を生成AIが自動で作成してくれる。

Project Get Personal

Project Get Personalを利用すると顧客一人一人に最適化したコンテンツを生成AIが自動生成してくれる(写真提供: Adobe)

 「Adobe Experience Cloud」では、「Personalization@Scale」(どの規模でも顧客一人一人に特化したユーザー体験を提供するという意味)というスローガンのもと、リアルタイムに顧客データを処理するサービス(リアルタイムCDP)や顧客一人一人に特化したサービスを提供する仕組み(Adobe Journey Optimizer)などが提供されている。

 たとえばエンドユーザーが通販サイトで製品を検索すると、Adobe Experience Cloudが顧客データを分析し、欲しがっているものを特定してそのクーポンを電子メールで送るといったことができる。

 Project Get Personalは、そうした顧客一人一人に特化したユーザー体験を提供するため、マーケティング担当者の取り組みを生成AIがアシストする。具体的には、顧客の好みなどを類推し、それに応じた画像をFireflyが生成し、Webサイトや電子メール、アプリなどで画像を表示させることが可能になる。

Project Ready Click Go

Project Ready Click Goではプロンプトに欲しいサービスを入れると、Webサイト立ち上げなどを自動で行なってくれる(写真提供: Adobe)

 企業はAdobe Experience Cloudのようなデジタルマーケティングツールを導入して、顧客のユーザー体験をリアルタイムに改善している。しかし、リソースが十分な大企業であっても通常は数週間や数カ月といった長いリードタイムが必要になることも多い。

 そこでProject Ready Click Goは、プロンプトにどのようなユーザー体験を実現するサービスを立ち上げたいのかを入力すれば、生成AIがAdobe Experience Managerを利用してWebサイトを立ち上げ、リアルタイムCDPを利用してターゲットになる顧客層を設定し、Adobe Journey Optimizerがキャンペーンを作るといったことを自動で行なってくれる。

Project Brand Slam

プロンプトにどんなものを作りたいのかをいれると、企業内のルールに従ったブランドロゴなどを生成してくれる(写真提供: Adobe)

 デジタルマーケティングを行なうにあたり、さまざまなデジタルコンテンツが企業内外で作成される。その際、企業のブランドイメージを守るために、あるいはそれが他社の商標を侵害していないかなどをチェックするためなど、さまざまな関係者が関わる。

 Project Brand Slamでは、マーケティングキャンペーンのロゴ、画像、テキスト、フォーマットなどが企業のブランドガイドラインと合致するかを生成AIが照らし合わせて、違反があれば自動的に修正する。これにより、法務担当者のチェックに数週間といったことを大幅に短縮できる。

Project Promo Mojo

Project Promo Mojoはインフルエンサーマーケティングを効率よく行なう

 インフルエンサーマーケティングに注目が集まる一方で、インフルエンサーが企業と契約していることを明らかにしないまま、宣伝を行なうステマ(ステルスマーケティング)が問題となっている。日本でも2023年10月から景品表示法が改正され、ステマを依頼した企業が罪に問われることになり、企業としてはしっかりとした契約をインフルエンサーと結ぶことなどが重要になっている。

 そうした事情を反映して、適切なインフルエンサーを見つけ、きちんと法的に処理された契約を行ない、さらにインフルエンサーからそれを告知してもらうなど、インフルエンサーマーケティングを始めるまでにかかる時間は以前よりも長くなっている。

 Project Promo Mojoでは、企業に対して売り込みたいインフルエンサーがあらかじめ登録しておくと、インフルエンサーを企業とマッチング。さらに、生成AIによってそのインフルエンサーの声や顔を使った動画を生成できる。これにより、インフルエンサーが作成したコンテンツをいち早くキャンペーンとして展開できるようになる。

Project Mighty Micro

B2B向けのマーケティングサイトを自動生成してくれる(写真提供: Adobe)

 企業のデジタルマーケティングは、B2CだけでなくB2B向けもある。Adobeは2018年に、B2Bのデジタルマーケティングツールを提供する「Marketo」(マルケト)を買収し、現在はAdobe Experience Cloudの一部として提供している。

 Project Mighty Microでは、そうしたB2Bのマーケティング活動に使えるような高度にパーソナライズされたマイクロサイトから始めて、最終的には大規模なWebサイトにまで対応できるWebサイトなどを自動生成してくれる。

Project Infograph It

Project Infograph Itはインフォグラフィックを自動で生成してくれる(写真提供: Adobe)

 SNSで何かを展開するときに、そうしたインフォグラフィックを添付することで、メッセージがより明確になり、有益なコミュニケーションが可能になる。しかし、インフォグラフィックには、デザイナー、マーケター、データサイエンティストのような複数の関係者がかかわるため、作成、編集などに時間がかかるというのが一般的だ。

 Project Infograph Itは、インフォグラフィックの作成プロセスを、Fireflyなどの生成AIを利用して簡素化する。クリエイターは伝えたいメッセージ、データ、アートスタイルなどの指定を行なうと、奨励されるデザイン、ビジュアル要素はFireflyが生成してくれる。それに必要なデータセットを読み込み、メッセージを説明する短いテキストを入力するだけで、インフォグラフィクを迅速に完成させることができる。

完成したインフォグラフィックの例(写真提供: Adobe)